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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第四章 理想家オーズンの四人の後継者

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第123話 発端~勇者捜索~

~前回までのクレスタ~


2年ぶりにサニアちゃん達と再会。色々あったみたいで、勇者隊なんて大所帯になってたわ。

マーアの勇者、ワッポノ君が行方不明。城塞都市ヨダーシルにいるかも知れないって話よ。

私とツツジちゃんとリハネの3人は、ワッポノ君の捜索の為、ヨダーシルへ向かうわ。


◇登場人物◇ ※●が視点者

__勇者捜索隊

●クレスタ:フフゴケ商会、商会員

〇ツツジ :勇者隊、サポート員

〇リハネ :ゾトの勇者


__行方不明

〇ワッポノ:マーアの勇者

 霞がかる早朝。私は駅前で二人を待つ。

 今日は、ヨダーシルへ出発する日。


「おはようございます。」

「はい、おはよう。」


 ツツジちゃんが来た。やはり、集合時間より大分早い。


 彼女の格好は、昨日、皆で選んだ物だ。


 白基調の薄地の長袖に、白のロングスカート。

 ベストとか、小バックの黒色がいい感じで気に入っている。

 本人も、私も。


 戦闘、というか激しい運動には適さないけど、長時間歩き回っても疲れないような物を選んだ。


 あえて地味目にはしてある。

 ツツジちゃん、可愛いし、知らない人に声とかかけられたくないし。


 彼女の持ってきた、大きな旅行カバンの中に入っているであろう着替えもそんな感じ。


 (列車で、ヨダーシルまで二泊三日。で、二週間滞在予定。

 まあ、不都合があれば向こうで買えばいいか。)


 などと考えていると。


「おはよう。二人共、早いな。」

「おはようございます。」


「おはよう。あなただって早いわよ。」


 ゾトの勇者、リハネがやってきた。


 真っ赤な長髪と、挑発的なつり目。

 身長は私と同じくらい。


 こう見えて私は、若い商会員の子に「脚が長くてカッコイイです~。」ってお世辞を言われるんだけど、その私からみても、いいスタイルだと思う。胸おっきいし。


 (昨日選んだ服、ちゃんと着てくれて嬉しいわ~。)


 赤のタンクトップに、青のジャケット。黒の長ズボン。

 一見すると、ただの服。

 しかし彼女は護衛役。しっかり戦闘服だ。


 単純に丈夫だし、伸びる。

 ジェケットの内側は回復薬やら治療薬が入っているし、袖の下に隠し武器がある。


 ヨダーシル内は鎧で武装してる人はいないっていうから、目立たないように工夫した訳だ。


 一番こだわったのは、丈。

 動いた時、きっとへそチラする。そのギリギリのラインを、攻めた。


 本人も動きやすいって言ってくれたし、問題は何もない。


 二人に合わせて、自分の服も新調した。


 黒の長袖に、白ジャケット。ブラウンの長ズボン。

 ちなみに髪色は、今まで通り黄色。髪型も、ポニーテールのまま。


 全員に黒色を入れた感じね。


 機能性はツツジちゃんと同系列。戦闘用ではなく、動き回るよう。


 マーアでこの服装だと目立つけど、ヨダーシルなら目立たないはず。

 着いてから着替えればいいって?だって早く、着たいじゃない。


 二人共、ちょっと楽しみなのが伝わって嬉しいわ。

 大丈夫。目的はポノ君。忘れてなんか、いない。




 私達の乗る、貨物列車。

 正確には貨物魔列車は、コンテナを積載した貨車を牽引するタイプ。


 前の方に乗客・乗務員用の車両があり、私達はそこに乗り込む。

 なんと贅沢に一人一部屋の個室な訳だけど、お喋りしたいから私の部屋に集合。


 昨日の買い物の時の事を喋っていたら、列車が動き出す。


 二人は列車が初めてだ。

 最初は緊張した面持ちで。でも動きだしてからは、窓の外に釘付けだ。


 私はそんな二人を眺める。


 遠い昔。電車に乗った事はある。正直、そんなに覚えていない。

 こんな感じだったような気も、しないでもないけれど。


「凄いですよ、クレスタさん。窓の外、見ないんですか!?」


 窓の外より、あなたを見てた方が楽しいわ。

 なんて、もちろん言わない。


「ええ。私はマーアに来る時、乗せてもらったから。

 ここは二人に譲るわ。」


「いや、私もいい。確かに馬より大分早いが、見慣れたマーアの国だ。

 それより、ヨダーシルの話が聞きたい。」


 リハネが、私を見る。


「話によく聞く町だ。名前だけは知ってる。凄い所という事も。

 実際、こんな物を造るんだから、相当なんだろう。

 でも具体的な事は、何も知らないんだ。」


 勉強熱心で大変よろしい。

 私だってそんなに詳しい訳ではないが、知っている事は教えましょう。


「OK。え~と、ね…。」


 私が、話しだそうとした時。


「あ!」


 窓を見ていたツツジちゃんが叫んだ。


「大変!魔物です!」


 確かに。

 馬っぽい魔物が数頭、体当たりする勢いで突っ込んでくる。


 確かに人参の入ったコンテナはあるけれど…。

 まあ、魔物だし。こういう事もある。


「大丈夫。」


 心配そうなツツジちゃんと、飛び出しそうになるリハネに向けて。


「列車を動かすというのは、安全に動かせる状況を造るという事よ。」


 魔物を跳ね飛ばして進めない事もないかもだけど、それで脱輪でもしたら大惨事だ。


 魔物がいる世界で、列車を動かすなら。

 当然、魔物対策はしてある。


「何だ、あれは?」


 流石のリハネも驚いたみたい。

 そうよね。世界観がおかしいとは思うわ。


 魔物の前に現れたのは、三機の人型ロポットだ。


 見た目は、バクー王国にある古の魔導超兵器と似ているかもしれない。

 大きさは、あれと比べると小さく、だいたい二~三メートル。


 ロボットは掌から光弾を発射して、瞬く間に魔物を蹴散らす。

 そして、どこかへ飛んで行った。


竜機兵りゅうきへい、というらしいわ。レールの守備兵ね。

 人が乗って操縦するタイプでもないし、人が纏っている鎧でもない。

 自動制御で動く、完全な無人機。

 空を飛んで、熱弾を発射する。

 ドラゴンをイメージして造られたから、この名前ね。

 前は、もっと竜っぽかったらしいけど、不評だったらしくて今のデザインになったそうよ。

 中継地点に数機配置されていて、レールに魔物が接近すると迎撃する為に飛んでくる。

 レールに悪さする輩がいた場合も飛んでくるらしいわ。」


 列車やレール自体にも、そういう撃退用の仕掛けがあるらしい。


 機械と魔法のなせる業、とでもいうのだろうか。

 ここまで来ると、流石に仕組みは分からない。


竜機兵りゅうきへいか。戦ってみたい所だが…。」


「おすすめはしないわね。一機造るのに、相当かかるみたいだし。

 レールが敷かれた六か国には、列車関係の法律が出来たし。

 戦うのは簡単かもしれないけど、得る物より失う物が大きすぎるわ。」


 だからこそ、そのパーツは高く売れる!

 なんて、一瞬だけ盛り上がったけど、一瞬で廃れた。

 あれに慈悲なんてない。死のリスクがあまりにも高すぎる。


 あれに挑むなら海に潜って鉱石を掘った方がいい。

 それが、盗賊達の共通認識。


「ヨダーシルはね。」


 トラブルも片付いた事だし、改めてヨダーシルの話に入る。


「東西南北の四区に分かれているのよ。

 前都市長であるオーズンの、四人の弟子達がそれぞれの区長を務めている。」


 窓の外を見ていたツツジちゃんも、私を見る。


「ヨダーシルは、国としては世界で二番目に狭い領土なんて言われているけど、その領土全てが、一つの都市。

 つまり、町としては世界最大。

 世界一の領土を持つウーイングの、王都よりも大きい。

 広すぎるというのも影響していると思うけど、それぞれの区の独立性が高いのよ。

 区間の移動に手続きが必要になるくらい。

 別の町が四つある、みたいなイメージかしら。」


「別の区とは、仲がよくないんですか?」


 ツツジちゃんが、聞いてくる。


「どうかしらね。対抗意識みたいのはあるみたいだけど。

 区ごとに特色があるのよ。」


「特色?」


 こんどはリハネだ。


「そう。

 例えば、南区。

 オーズンから技術を受け継いだ場所。

 あの竜機兵りゅうきへいも、この列車も、造ったのは南区よ。

 区長はユンゼスさん、30歳。」


「クレスタさんのお知り合いですよね。情報提供もしてくれた方だとか。」


「ツツジちゃんの言う通りよ。

 私達は、最初に彼に会いにいくわ。

 事情を聞く為と、協力を得る為ね。

 普通だと区の移動手続きに、下手すると三日、なんて事もあるらしくて。

 だからその辺りの融通を利かせてもらう。

 列車は南区の駅まで行くから、そのまま区役所までいく感じかな。」


 私は、ヨダーシルの地図を広げて二人に見せる。


「次に、東区。

 区長はラデュームさん、30歳。

 オーズンから受け継いだのは、力。」


「力…。」

「力?」


 そうよね、抽象的すぎるものね。


「ヨダーシルは魔法とか機械とかが有名だけど、それらを使いこなす力も重要って訳。

 学問やスポーツ。人を育てる事にも力を入れているのよ。」


「つまりこのデカい建物は、学校であったり、競技場だったりするのか?」


 地図を指さしながら、リハネが聞いてくる。


「そういう事。

 【トリッキーシューター】っていう的当ての競技があって、それの発祥もヨダーシルみたい。

 ワイバン大陸中央だと、メジャーで大人気なスポーツらしいわ。」


 二人の様子をみる。

 OK。興味はトリッキーシューターじゃなくて、ヨダーシルね。


「北区。

 区長はロミスオッドさん、30歳。

 オーズンの夢を引き継いだ、らしいわ。」


 リハネの眉が動く。

 元魔王の夢と聞いて、不穏な空気を感じ取ったのかもしれない。


「実は、夢の内容は分かっていないの。

 一説には、コア王国の復興なんてのもある。

 オーズンは若い時、コア王国の王都にいた事もあって、無二の友人とコア王国をよくしようなんて約束をしたらしいわ。」


 そして、それは叶う事なくコア王国は滅びた。


「…コア王国の王都の場所は、今はネクーツの領土だな。

 まさか、戦争を?」


「あくまで、そういう話もあるってだけ。確証はないわ。

 オーズンの遺産である凶悪兵器を受け取った、なんて話も噂に過ぎない。」


「でも、火のない所に煙は立たない。」

「根が無くとも花は咲くわ。とはいえ、警戒する事には賛成だけど。」


 なるべく、明るく言う。


 風評被害は嫌いだし、先入観もよくないけど。

 信じる根拠だってない。


 出来れば、北区に行くことなくポノ君を見つけたい。


「最後は、西区ね。

 区長は、ソルテローラさん、23歳。

 オーズンから託されたのは、ヨダーシルに住む、人々。」


「…それは、前都市長から、直々に都市長になるよう頼まれた、という事では?」


 なるほど。ツツジちゃんにとって町とは、人なのね。

 人が集まって町になるのだから、その考えは分かりやすい。


「そうね。

 実際、西区の区長の評判はいいわ。

 でも、人数がいるからね。

 否定的な人も当然いる。

 それこそ、今回の都市長選。言い出したのは西区なんて話もある。

 自慢の区長を都市長にしたい派もいるでしょうけど、都市長を別にする事で区長の権限を落としたい派もいるとか。

 こう言っては何だけど、若い女性だから支持されないなんて噂もある。」


「あ、それ思いました。区長の方、皆さん若いですよね。

 23歳と、30歳が3人。

 マーアだと町長は、だいたい年長者が多いですから。」


「他の所でも経験が豊富な方が選ばれたりするわ。

 ヨダーシルのケースは、かなりレアよ。

 誰が都市長になったとしても、相当話題になる。

 お世話になってるからユンゼスさんを応援してるけど、西区のソルテローラさんにも頑張ってほしいわ。私達と同年齢だしね。」


 ね、リハネ。と、同意を得ようと彼女を見ると、何やら険しい顔。


「クーデター未遂があったんだよな。10年くらい前に。

 それで、大規模の粛清があって。

 ほとんどの側近が処罰されて。

 だから若いのしか残らなかった。だろ?」


「リハネ~。

 何も知らないなんて、謙遜?

 詳しいじゃない。その通りよ。」


 おっと、ツツジちゃんが反応に困ってる。

 面白い話じゃないものね。


 じゃあ、さらっと流しますか。


「でも、それだけじゃない。

 四人は、オーズンに認められて区長になったの。

 その仕事を、一年間やりきって。

 偉大なる前都市長の、その後継者として。

 新都市長になる為に、今回、選挙をするのよ。」


 辺りが少し暗くなる。


 太陽が雲に隠れたから。

 よく見ると、分厚い雲だ。


 一雨、くるかもしれない。


「私達は。」


 ツツジちゃんが、独り言のように呟いた。


「そういう所に向かっているんですね…。」


 窓に一滴、ついたと思ったら。

 あっという間に降り出した。


 さっきまで、いい天気だと思ったのに。


 (ヨダーシルの選挙か。)


 この天気みたいに、荒れないといいけど。

1章でも2章でも3章でも、名前だけは登場していたヨダーシル。

第4章の舞台は、ここです。

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