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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

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第119話 預言~願い~

~前回までのゼユウ~


確か俺は、戦いに勝って、…それで?


◇登場人物◇

●ゼユウ:トリド●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:天使●サダキ:天獣

〇ハンネ  :ゼユウがお世話になった人

〇アニア  :トリドの大事な人

〇イルハーナ:アニアの妹

*ゼユウ視点*


「よう、久しぶりだな。顔が見れて嬉しいよ。」

「…ハンネ?」


 え、どういう状況?


 待ってくれ。今、思い出す。


 (フレン王国の滅亡を防ぐ為、俺はコーホって言う部隊に入って。)


 半年間、コーホで活動して。


 記憶も思い出した。実は俺は、トリドだった。


 (それで俺なりに考えて、王国滅亡の原因はサダキの爆発で、ビッケもサダキに爆発してほしくて…。)


 二人と、戦ったんだ。

 いや、戦っている途中じゃなかったか?


「ここは、どこだ?」


 呟くように、目の前にいるハンネに尋ねる。


 ちなみに。

 ハンネは死んでいる。しっかり覚えている。


「私の家だよ。見覚えあるだろ?」


 それは分かる。俺の暮らした、あの場所だ。

 木造の、優しい雰囲気の家。何度も飯を食った、イスとテーブル。


 記憶と何も変わらない。


「そうじゃなくてさ。」


 聞きたいのは、何でこんな所にいるのかという事。


「俺は、死んだのか?」


 所謂、ここは、あの世とかいう場所なのか?

 だとしたら、ハンネがいる事にも納得できるが。


「ここは、どういった場所なのか。

 お前は生きているのか、死んでいるのか。

 それはな…。」


 いざ、言われるとなると、耳を塞ぎたくなった。心の準備とか、必要だろ?


「私にもわからん。」


 ズッコケたくなった。緊張したんだぞ?


「賢者だろ?何で分からないんだよ!?」

「うるせーな。賢者が何でも知ってると思ったら、大間違いだ。」


 それからギャーギャー言い合いながら、現状について考察していく。


「…つまり、考えられるパターンは4つ。

 1、ゼユウは死んだ。ここはあの世。

 2、ゼユウは生きている。が、死にそう。所謂、臨死体験みたいな感じ。

 3、ゼユウは生きている。気絶しているだけ。ここは、お前の脳内。

 4、ゼユウは生きている。お前は幻惑魔法をくらった。

 5、ゼユウは生きている。メタモルフォーゼが暴走した。で、よくわからん世界に変質してしまった。

 これくらいか?」


「1番と5番じゃない事を祈る。」


 一番、楽なのは3番だ。寝てるだけで、これは夢。

 その内、目覚める。そういうのがいい。


「…。」


 ハンネの視線に気づく。不思議な表情だ。

 間違いを正そうとしている?それともただ、憐れんでいる?


「なあゼユウ。1番だと、ダメか?」

「いや、ダメだろ。」


 言った後、失言だと思う。

 ハンネは、死んでいる。配慮とか、全然しなかった。


「1番だとしたら、私と一緒にいられる。

 ずっとここにいて、いいんだぞ。」


「…ハンネに会えて、こうしてまた会話が出来て、その事は嬉しい。

 もし1番だったら、許されるなら、また一緒に暮らしたい。

 でも、生きているのなら。

 俺には、やらないといけない事がある。」


 サダキを人間にする。

 そうすれば、ビッケとこれ以上戦わなくてすむ。

 それで、ハッピーエンドだ。


「そうか。」


 ハンネがカップを渡してきた。

 紅茶かな?いい香りがする。


「お前を否定する気はない。資格もない。

 なにせ私は、最期まで我儘を貫いた奴だからな。」


 ハンネはテーブルに両肘をついて、腕を組む。そこに顔を乗せて、続けた。


「でも今だけは、死んだことにしておけ。仮に生きていたとしても。」

「…。」


「要は、心の持ちようだよ。

 どの道、何が出来る訳でもない。

 死んだと思った方が、気楽だろ?リラックスできる。」


「現状が不明な分、リラックスなんて出来ない。4番の、幻惑魔法をくらった場合なら、何とか目覚める方法を探さないと…。」


「そういうのを、一旦、忘れろって言ってるんだ。

 ほら、まずはこれ飲んで落ち着け。」


 何かの本で読んだ。

 なんか、あの世の食べ物を口にすると、帰れなくなる、みたいな。

 2番の、臨死体験中だった場合、かなりやばいんじゃないか?


 いや、流石にハンネはそんな事をしないだろう?

 でも、ハンネにそのつもりが無くても実は、みたいな展開かも?

 そもそも、目の前の人が本当にハンネとは限らないだろう?

 まあ、死んでたら関係のない事なんだろうけど。


「客人も呼んだんだ。」


 熟考していると、そんな声が聞こえた。


「ホーメナ?」


 俺とハンネの共通の知り合いという事で、その名を上げる。

 逆に、もしホーメナが来るなら、あの世説は崩れるんじゃないか?


 (いや、あの後どうなったかは不明だ。

 つまり、爆発が起きた後の可能性はあって。

 それで、王国が滅んでしまったとかなら、ありえてしまう…。)


「違うよ。」


 否定され、ちょっと安心。


「私が呼んだのは、アニアだ。」


 最初、意味が分からなかった。


 アニアとは、トリドの、俺の大事な人の名だ。

 1000年前、俺が守れなかった人。


 (アニアがくる?会える?)


 心が、ぎゅっとなった。


 不思議だ。彼女に関しては、まだ、顔すら思い出せないのに。

 いや、それでもだ。覚えてるんだ。


 彼女といると楽しくて。

 あの日々が、あの安らぎが、忘れられなくて。

 もう、どこにも無いなんて、嫌で。


 どこかに、どこかにあるだろう?残っているだろう?

 そんな縋る想いで、戦い続けた。


 鍋の中に肉はもう無い、そう言われても探し続けた。


 そして、1000年。


 (もうすぐ、その肉が食える?のか?)


 俺はカップを持った。

 酷く緊張して、喉が渇いたから。


 一口、飲む。

 温かくて、安心する。


 心が、軽くなった。


 (…なあ、俺。)


 夢でも幻でも、あの世でも。いいんじゃないか?

 報われる時がきたのではないか?


「やりきったんだよ、お前は。」


 ハンネは、笑顔だ。


「お前は、頑張った。1000年前も、今もだ。

 こんなにボロボロになるまでな。

 もう、いいんじゃないか?

 お前は、ここにいる。ここにいていい。」


 その言葉は、沁みた。

 込み上げてくるものがある。


 (ここには、俺の求めた、安らぎが…?)


 スッと。

 ハンネが新しいカップを置いた。


 まだ、最初にもらったやつは残っているのに。


「こっちも、いい味なんだよ。

 是非、飲んでほしい。…でもな。」


 ハンネは笑顔のまま。


「こっちは、お前の想像した物だ。

 これを飲むと、お前は帰らなくてよくなる。」


 それは、知っている人が言える事だ。


「えっとつまり、2番の臨死体験みたいな感じが正解って事?

 なんだよ、わからないって言ったのは嘘か?」


「戻り方が分からないって事は本当さ。

 だから、時間があった。一緒に考えたかったんだ。

 ほら、過程って大事だろ?

 相撲でさ、贔屓の力士が負けたとする。

 で、結果だけ聞いても納得できない。

 納得するには、試合を一部始終見るのがいいんだ。

 …まあそれでも、納得できない時もあるけど。

 ともかくだ。

 納得するには、話し合うのが一番いい。」


「はは、そのあってそうで、ややずれているというか、分かりそうで分かりづらい例え。

 ビッケみたいだ。」


 ビッケも、過程が大事って言っていたし。


 やっぱり偽物か?俺の脳内ハンネなのか?

 でも彼女は、こうだった気もするな…。


「今すぐ飲まなくていい。

 まずは、アニアを待とう。彼女と話して、それから決めるといい。」


 彼女はカップを口に運ぶ。

 俺も、さっき飲んだ方をもう一口飲む。


 少しの沈黙。


 だからこそ。

 その声が聞こえた。


 俺の名を、ゼユウを呼ぶ声が。


 静かに、立ち上がる。


「ありがとう、紅茶も美味しかった。

 でも俺、もう行くよ。」

「…。」


「声が聞こえた。きっと、声の方へ行けば帰れると思う。」

「まあ、待てって。」


 ハンネの声は、優しいまんまだ。


「言っただろ?アニアが来るまでは、ゆっくりしとけって。」

「それは、無理だ。」


 弱音を吐くのは、ちょっと恥ずかしい。


「アニアに会ったら、心が折れる。そしたら、もう帰れない。」

「なら、そういう事だ。帰らなくていい。一緒にいよう。」


 ハンネも立ち上がり、近づいて来る。


「例えばお前は、まだ生きているなら、生きている内は頑張ろうって思っているかもしれない。

 いい心がけだよ、その通りさ。

 でも、聞いてくれ。ここはさ、奇跡みたいな場所なんだ。」


 彼女は、俺の肩に手を乗せる。


「頑張ったお前への、ご褒美みたいな場所だ。

 一度離れたら、もうここへは戻れない。

 アニアに、もう二度と会えない。」


 なるほどな。

 偶然、たまたまの、超ラッキーだったって事か。


 道理で、最高な場所だと思ったよ。


「俺はさ。

 もう一度、アニアに会えるなら。

 何でもする、神にも挑む。そんな気持ちで、戦った。

 それは、間違いない。

 でも、今、名前を呼ばれて。

 嬉しかったんだ、凄く。

 それも、間違いない。」


 ハンネの手の上に、自分の手を重ね、続ける。


「色んな人に言われた気がする。トリドは悲しい奴だって。

 ありもしないモノの為に戦って、なにも手に入れられなかった奴だって。

 でも、そんな事はない。

 コア王国の人達に、実行部隊の人達に、アニアに、イルハーナに。

 フレン王国の人達に、賢者の森で働く人達に、ハンネに、コーホの皆に。

 出会えた。

 辛い事も、悲しい事も、腹立たしい事も、嬉しい事も、楽しい事もあった。

 そう、楽しかった。脳内で自分にも言ったんだ。」


 その手を、肩から離す。両手で包む。


「鍋の中の肉を探した、そして見つからなかった。でも途中で食った、野菜もキノコも得体の知れない何かも。

 ちゃんと楽しめたんだ。

 なあ、ハンネ。」


 心から、思う。


「俺、人生、楽しいよ。」


 だから人生を続けたい。


「…そうか。」


 ハンネは、噛みしめるように言って。


「それは、なによりだな。」


 二人で笑いあった。


「自分で言うのもなんだけど、俺、恵まれ過ぎてないか?

 ここに残っても、向こうへ戻っても幸せだろ?

 マルチハッピーエンドじゃないか。

 幸せの形を選ぶなんて、こんな贅沢な選択あるか?」


「いいんじゃね?

 だいたい向こうへ戻ったら、特大のバッドエンドがある事も忘れるなよ?

 緩み過ぎて、そっちを選ばないようにな。」


「…確かに。」

「ほら、決めたんなら、さっさと行け!」


 背中を思いきり叩かれた。


「ゼユウ。」


 ハンネとは、これで最後だ。


「存分に、楽しんでこい!」


 彼女は、最後まで、カッコ良かった。


「ああ!楽しんでくる!」


 思い切り扉を開けて、森の中に向かって駆け出す。

 俺を呼ぶ、声の方へ。


 走り続けて、そろそろ帰れる予感がした時。


 ある女性を、見つけた。

 木々の間に立っている。


 俺は、彼女を見る。

 彼女も、俺を見て。


 優しく微笑んだ。




「ほら、魔眼が動いた。反応がある。

 成功だよ、僕の言った通りさ。」


 ビッケの声が聞こえる。


「いいから続けて。あなたに無駄口を叩いている余裕はない。」


 ホーメナの声もする。


「でもさ、呼びかけるというのは大事で…。」

「ならそれは私がやるよ。

 私は魔力の提供をしているだけだから、二人より余裕がある。」


 クーノまでいるのか。


 声は聞こえる。すぐ近くにいるのは分かる。

 でも、何も見えない。真っ暗だ。


「ゼユウ、クーノだよ。」


 聞こえているよ。

 …くそ、声が出ないな。


「状況の説明をするね。

 ゼユウはビッケを倒した。そしてサダキを人間にしようと近づいた。

 そこで、気を失っちゃったんだよ。」


 うん。なんとなく、そんな気がする。


「私とホーメナは、魔法マジック聖域サンクチュアリを、いつでも発動できる状態にして待機していた。

 そしてサダキの天力が、異常に増大し、急激に減少するのを確認した。

 なおのこと離れちゃダメな状況になったんだけど、仲間の危機に、じっとしているのは辛い事だよ。

 ホーメナが飛び出しちゃって、私はそれを追いかけた。」


 ホーメナが先とは、意外だ。

 国防の面ではダメな判断だと思うけど、ちょっと嬉しい。


 でも、それでクーノまで来たら不味くないか?


「二人でゼユウを見つけて、驚いたよ。

 ゼユウはボロボロだった。

 そして、気を失った状態で、魔法を、メタモルフォーゼをサダキに使い続けていた。」


 それは、なんというか。

 …怖いな。


 そんな状況に遭遇させてしまい、すまない。


「メタモルフォーゼは、私達でも分からない魔法。

 ゼユウもサダキも動かす訳にはいかなくて。

 ヒールリングで、外傷は可能な限り治したけど、意識は戻らなくて。

 そんな時、ビッケがノコノコやってきたんだよ。」


 最後の方、ちょっと怒気、いや殺気があった。

 まあ、サダキがこんなになったのも、ビッケの所為と言えなくもないし。


 でも、斬り刻んだのは俺なんだ、ごめん。


「いやぁ二人共、結構本気で殴ってきてね。

 こっちは重症だってのに、まったく酷い話だよ。」


 ああ、見えなくても目に浮かぶ。

 二人に睨まれるビッケの姿が。


「で、こんなのでもいないよりマシだと思って。

 力でねじ伏せて、ゼユウの回復に協力させたんだよ。」


「…クーノさんの説明には、語弊があるから訂正するよ。」


 特に遮られなかったから、ビッケは続ける。


「気が付いた時、メタモルフォーゼによるサダキさんの変質は始まっていた。

 しかもゼユウさんは、まともな状態じゃない。

 爆発力に影響する所から、変質させている可能性があった訳さ。

 そんな状態でゼユウさんとサダキさんを殺したら、被害はフレン王国にとどまらないかもしれない。

 つまり、ゼユウさんを正常にして、人間への変質を完了させてもらう。

 それしかないと思って、仕方なく、手を貸しているんだよ。」


「なら初めから、ゼユウに協力していればよかったのに…。」


 ホーメナが怖い。


「…ゼユウさんには言ったけど、メタモルフォーゼなんて怪しい魔法、信じられる訳ないじゃないか。

 でも、実際に戦って、何度も使われて、わかったよ。

 あれは僕らが言うところの、レベル4の天法に近い。

 世界のルールすらも、上書きして書き換える能力さ。

 粗もあるし、不安定でもある。

 でも、そこを僕らが補えば、サダキさんを人間にするぐらいなら、可能だと、そう思った。」


「なら初めから、ゼユウに協力していればよかったのに…。」

 クーノが呟いて。


「だーかーらー。協力するには、信用が足りなかったの!

 で、今は信用できるって言ってんの!」

 ビッケが、やけくそ気味に答えて。


「面倒くさいわね。

 シンプルに、やっぱり好きだから協力した、でいいじゃない。」

 ホーメナが、まとめた。


 安心する。いつものノリだ。


「…でさ、今、変質は止まっている状態なんだ。

 ただ、メタモルフォーゼは停止できない。

 サダキさんの生命維持の役割になっているからね。

 そこら辺は、ホーメナさんに頑張ってもらっている。

 だけど、これはその場しのぎ。

 状況を進める為に、ゼユウさんには早く戻って来てほしいんだよね。」


 俺だって戻りたいよ。

 というか、戻ってきてる。


 ただ、思うように身体が動かせないんだ。


「今のゼユウさんは、天使の性質もある天使モドキ。

 自覚は無かったかもしれないけど、自分で変質させたんだよ。

 でもまあ、そのお陰で、僕の天法の対象に出来る。

 僕にはそういう権限があるんだ。

 だからサダキさんみたいに、ゼユウさんの精神に干渉して、修復を試みている状況さ。

 ホーメナさんが持ってきてくれた、儀剣ウィルダネス。

 これは元々、伝説の英雄を、君を助ける為の物なんだ。

 そこに込められた、君の魔力、君との思い出、君を想う気持ち。

 そういうのを参考にさせてもらってる。」


 代々賢者に引き継がれてきた、ハンネの剣。

 そこに込められているのは、俺の知らない、あるいは忘れてしまった話。


「でも、ここらが限界値。外部からは、ここまでだ。

 ゼユウさん、聞こえているんだろう?

 後はゼユウさんが、何とか自力で起きてくれ。」


 そう言われてもな。


「ゼユウ、頑張って。これが終わったら、打ち上げだよ。

 美味しい物、いっぱい、食べられるよ!」


 俺も、クーノにいっぱい食べてもらいたい。


「ねえ、ゼユウ。」


 落ち着いた、ホーメナの声。


「ゼユウが話してくれたじゃない?

 あなたの過去の、トリドの話。

 フレン王国の始まりの話。そこに出てくる、イルハーナ様の話。

 彼女は、トリドの帰る場所を守ると誓ったわ。

 凄いと思う。彼女も、彼女の意思を継いだ女王達も。

 でも、私は思うのよ。

 イルハーナ様は、本当は、別の事が言いたかったんじゃないかって。

 でもそれは無理だから。

 だから出来る事を、精一杯やろうと思ったのよ。」


 本当に、言いたかった事?


「あなたについていきたかったのよ。

 そして、あなたの守りたいモノを、一緒に守りたかったの。」


 あの泣き顔の、本当の意味。我慢した願い。


フレン王国(わたしたち)は、その為にある。」


 英雄おれと、共に戦いたいと。


「さあ、目を開けて。

 今度こそ、守りたいものを守りましょう。

 私達と、一緒に。」


 その手を、取った。

 左手は、メタモルフォーゼを使っているから、右手で。


 目の前がクリアになって。

 皆の顔が見れた。


 ホーメナも、クーノも、泥まみれで。

 ビッケなんて、顔が腫れているし。


 なんとも、頼もしい顔つきじゃないか。


「イッショニ、マモロウ…。」


 びっくりするぐらいのガビガビ声。


 ホーメナが頷いて、クーノが笑って。

 ビッケが、俺の肩を叩く。


「さあ、頑張ろうじゃないか。

 ホーメナさんとクーノさんがここにいるからね。

 魔法マジック聖域サンクチュアリの出力が足りないんだよ。

 つまり、僕らが失敗してサダキさんが爆発すると、フレン王国は滅亡。

 皆仲良く、あの世往きさ。」


 ハンネの言っていた特大のバッドエンドが、それか。


 そう言えば、脳内ゼユウも俺が戦うと滅亡するなんて言っていたな。

 やるじゃないか、大正解だよ。


 もちろん、その道を選ぶつもりは、無い。


「メタモルフォーゼを沢山みて、わかった事がある。

 こんなとんでも魔法を使うなら、とんでもない魔力が必要になるはず。

 それなのに、こんなにも連発できている。なぜか?

 ゼユウさんはね。

 メタモルフォーゼと一緒に、もう一つ別の魔法を思い出していたんだ。

 魔力以外で魔法を使う魔法。足りない魔力を補う魔法。

 コストチェンジ。

 少量の魔力と、ゼユウさん自身を代償に、メタモルフォーゼを発動していた訳さ。」


 メタモルフォーゼという魔法を完成させた。しかし、魔力が足りない。

 ならば、どうする?そうして作られた魔法。


 コストチェンジを使い、メタモルフォーゼを使う。

 1000年前、編み出された戦法。


「想定としては、1、2回、発動できればいいという考えのはず。

 それをこんなに使えるなんて。

 使い慣れていたのもあるかもしれない。

 1000年間、魔法で封印されていた事も影響しているかもしれない。

 君自身、メタモルフォーゼを扱えるような何かに、変質していたかもしれない。

 本当に、興味が尽きない人だよ、君は。」


 素直に、凄いって褒めてくれればいいのに。

 まあ、それがビッケか。


「話を戻すよ。

 ホーメナさんが、魔法解除マジックキャンセルで、君のコストチェンジを打ち消してくれている。

 だから、君へのダメージはなくなったけど、魔力量が全然足りない。

 ぎりぎり発動できるぐらいの魔力は、クーノさんが送ってくれている。

 魔力贈物マジックパワーギフト、ホーメナさんに習っていたらしいよ。

 そして、これから。」


 ビッケは、初めて見るような真剣な表情だ。


「君の修復行動が終わった僕が、君に魔力を送る。

 僕は天力を魔力に変えられる。

 全力の魔王の魔力全部を、君に託す。」


 そんな事をして、ビッケは大丈夫なのか?


「ゼユウさん、メタモルフォーゼに集中してよ?

 サダキさんの体力的に余裕はない。ここで決めるんだ。

 ホーメナさんもね?

 ゼユウさんがメタモルフォーゼを全力で使ったら、コストチェンジの効果も上がるかもしれない。

 魔力は一気に全部を送れないから、もっと早くよこせってゼユウさんの命を狙うかもしれない。

 ゼユウさんの意識がとんだら終わりだよ?」


「…わかったわ、頑張る。」


 右手を、強く握り返される。


「ゼユウ。」

「ウン。」


 サダキ、今、助けるからな。


 そして辺りは、光に包まれた。

次回、第三章、完結。

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