第119話 預言~願い~
~前回までのゼユウ~
確か俺は、戦いに勝って、…それで?
◇登場人物◇
●ゼユウ:トリド●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:天使●サダキ:天獣
〇ハンネ :ゼユウがお世話になった人
〇アニア :トリドの大事な人
〇イルハーナ:アニアの妹
*ゼユウ視点*
「よう、久しぶりだな。顔が見れて嬉しいよ。」
「…ハンネ?」
え、どういう状況?
待ってくれ。今、思い出す。
(フレン王国の滅亡を防ぐ為、俺はコーホって言う部隊に入って。)
半年間、コーホで活動して。
記憶も思い出した。実は俺は、トリドだった。
(それで俺なりに考えて、王国滅亡の原因はサダキの爆発で、ビッケもサダキに爆発してほしくて…。)
二人と、戦ったんだ。
いや、戦っている途中じゃなかったか?
「ここは、どこだ?」
呟くように、目の前にいるハンネに尋ねる。
ちなみに。
ハンネは死んでいる。しっかり覚えている。
「私の家だよ。見覚えあるだろ?」
それは分かる。俺の暮らした、あの場所だ。
木造の、優しい雰囲気の家。何度も飯を食った、イスとテーブル。
記憶と何も変わらない。
「そうじゃなくてさ。」
聞きたいのは、何でこんな所にいるのかという事。
「俺は、死んだのか?」
所謂、ここは、あの世とかいう場所なのか?
だとしたら、ハンネがいる事にも納得できるが。
「ここは、どういった場所なのか。
お前は生きているのか、死んでいるのか。
それはな…。」
いざ、言われるとなると、耳を塞ぎたくなった。心の準備とか、必要だろ?
「私にもわからん。」
ズッコケたくなった。緊張したんだぞ?
「賢者だろ?何で分からないんだよ!?」
「うるせーな。賢者が何でも知ってると思ったら、大間違いだ。」
それからギャーギャー言い合いながら、現状について考察していく。
「…つまり、考えられるパターンは4つ。
1、ゼユウは死んだ。ここはあの世。
2、ゼユウは生きている。が、死にそう。所謂、臨死体験みたいな感じ。
3、ゼユウは生きている。気絶しているだけ。ここは、お前の脳内。
4、ゼユウは生きている。お前は幻惑魔法をくらった。
5、ゼユウは生きている。メタモルフォーゼが暴走した。で、よくわからん世界に変質してしまった。
これくらいか?」
「1番と5番じゃない事を祈る。」
一番、楽なのは3番だ。寝てるだけで、これは夢。
その内、目覚める。そういうのがいい。
「…。」
ハンネの視線に気づく。不思議な表情だ。
間違いを正そうとしている?それともただ、憐れんでいる?
「なあゼユウ。1番だと、ダメか?」
「いや、ダメだろ。」
言った後、失言だと思う。
ハンネは、死んでいる。配慮とか、全然しなかった。
「1番だとしたら、私と一緒にいられる。
ずっとここにいて、いいんだぞ。」
「…ハンネに会えて、こうしてまた会話が出来て、その事は嬉しい。
もし1番だったら、許されるなら、また一緒に暮らしたい。
でも、生きているのなら。
俺には、やらないといけない事がある。」
サダキを人間にする。
そうすれば、ビッケとこれ以上戦わなくてすむ。
それで、ハッピーエンドだ。
「そうか。」
ハンネがカップを渡してきた。
紅茶かな?いい香りがする。
「お前を否定する気はない。資格もない。
なにせ私は、最期まで我儘を貫いた奴だからな。」
ハンネはテーブルに両肘をついて、腕を組む。そこに顔を乗せて、続けた。
「でも今だけは、死んだことにしておけ。仮に生きていたとしても。」
「…。」
「要は、心の持ちようだよ。
どの道、何が出来る訳でもない。
死んだと思った方が、気楽だろ?リラックスできる。」
「現状が不明な分、リラックスなんて出来ない。4番の、幻惑魔法をくらった場合なら、何とか目覚める方法を探さないと…。」
「そういうのを、一旦、忘れろって言ってるんだ。
ほら、まずはこれ飲んで落ち着け。」
何かの本で読んだ。
なんか、あの世の食べ物を口にすると、帰れなくなる、みたいな。
2番の、臨死体験中だった場合、かなりやばいんじゃないか?
いや、流石にハンネはそんな事をしないだろう?
でも、ハンネにそのつもりが無くても実は、みたいな展開かも?
そもそも、目の前の人が本当にハンネとは限らないだろう?
まあ、死んでたら関係のない事なんだろうけど。
「客人も呼んだんだ。」
熟考していると、そんな声が聞こえた。
「ホーメナ?」
俺とハンネの共通の知り合いという事で、その名を上げる。
逆に、もしホーメナが来るなら、あの世説は崩れるんじゃないか?
(いや、あの後どうなったかは不明だ。
つまり、爆発が起きた後の可能性はあって。
それで、王国が滅んでしまったとかなら、ありえてしまう…。)
「違うよ。」
否定され、ちょっと安心。
「私が呼んだのは、アニアだ。」
最初、意味が分からなかった。
アニアとは、トリドの、俺の大事な人の名だ。
1000年前、俺が守れなかった人。
(アニアがくる?会える?)
心が、ぎゅっとなった。
不思議だ。彼女に関しては、まだ、顔すら思い出せないのに。
いや、それでもだ。覚えてるんだ。
彼女といると楽しくて。
あの日々が、あの安らぎが、忘れられなくて。
もう、どこにも無いなんて、嫌で。
どこかに、どこかにあるだろう?残っているだろう?
そんな縋る想いで、戦い続けた。
鍋の中に肉はもう無い、そう言われても探し続けた。
そして、1000年。
(もうすぐ、その肉が食える?のか?)
俺はカップを持った。
酷く緊張して、喉が渇いたから。
一口、飲む。
温かくて、安心する。
心が、軽くなった。
(…なあ、俺。)
夢でも幻でも、あの世でも。いいんじゃないか?
報われる時がきたのではないか?
「やりきったんだよ、お前は。」
ハンネは、笑顔だ。
「お前は、頑張った。1000年前も、今もだ。
こんなにボロボロになるまでな。
もう、いいんじゃないか?
お前は、ここにいる。ここにいていい。」
その言葉は、沁みた。
込み上げてくるものがある。
(ここには、俺の求めた、安らぎが…?)
スッと。
ハンネが新しいカップを置いた。
まだ、最初にもらったやつは残っているのに。
「こっちも、いい味なんだよ。
是非、飲んでほしい。…でもな。」
ハンネは笑顔のまま。
「こっちは、お前の想像した物だ。
これを飲むと、お前は帰らなくてよくなる。」
それは、知っている人が言える事だ。
「えっとつまり、2番の臨死体験みたいな感じが正解って事?
なんだよ、わからないって言ったのは嘘か?」
「戻り方が分からないって事は本当さ。
だから、時間があった。一緒に考えたかったんだ。
ほら、過程って大事だろ?
相撲でさ、贔屓の力士が負けたとする。
で、結果だけ聞いても納得できない。
納得するには、試合を一部始終見るのがいいんだ。
…まあそれでも、納得できない時もあるけど。
ともかくだ。
納得するには、話し合うのが一番いい。」
「はは、そのあってそうで、ややずれているというか、分かりそうで分かりづらい例え。
ビッケみたいだ。」
ビッケも、過程が大事って言っていたし。
やっぱり偽物か?俺の脳内ハンネなのか?
でも彼女は、こうだった気もするな…。
「今すぐ飲まなくていい。
まずは、アニアを待とう。彼女と話して、それから決めるといい。」
彼女はカップを口に運ぶ。
俺も、さっき飲んだ方をもう一口飲む。
少しの沈黙。
だからこそ。
その声が聞こえた。
俺の名を、ゼユウを呼ぶ声が。
静かに、立ち上がる。
「ありがとう、紅茶も美味しかった。
でも俺、もう行くよ。」
「…。」
「声が聞こえた。きっと、声の方へ行けば帰れると思う。」
「まあ、待てって。」
ハンネの声は、優しいまんまだ。
「言っただろ?アニアが来るまでは、ゆっくりしとけって。」
「それは、無理だ。」
弱音を吐くのは、ちょっと恥ずかしい。
「アニアに会ったら、心が折れる。そしたら、もう帰れない。」
「なら、そういう事だ。帰らなくていい。一緒にいよう。」
ハンネも立ち上がり、近づいて来る。
「例えばお前は、まだ生きているなら、生きている内は頑張ろうって思っているかもしれない。
いい心がけだよ、その通りさ。
でも、聞いてくれ。ここはさ、奇跡みたいな場所なんだ。」
彼女は、俺の肩に手を乗せる。
「頑張ったお前への、ご褒美みたいな場所だ。
一度離れたら、もうここへは戻れない。
アニアに、もう二度と会えない。」
なるほどな。
偶然、たまたまの、超ラッキーだったって事か。
道理で、最高な場所だと思ったよ。
「俺はさ。
もう一度、アニアに会えるなら。
何でもする、神にも挑む。そんな気持ちで、戦った。
それは、間違いない。
でも、今、名前を呼ばれて。
嬉しかったんだ、凄く。
それも、間違いない。」
ハンネの手の上に、自分の手を重ね、続ける。
「色んな人に言われた気がする。トリドは悲しい奴だって。
ありもしないモノの為に戦って、なにも手に入れられなかった奴だって。
でも、そんな事はない。
コア王国の人達に、実行部隊の人達に、アニアに、イルハーナに。
フレン王国の人達に、賢者の森で働く人達に、ハンネに、コーホの皆に。
出会えた。
辛い事も、悲しい事も、腹立たしい事も、嬉しい事も、楽しい事もあった。
そう、楽しかった。脳内で自分にも言ったんだ。」
その手を、肩から離す。両手で包む。
「鍋の中の肉を探した、そして見つからなかった。でも途中で食った、野菜もキノコも得体の知れない何かも。
ちゃんと楽しめたんだ。
なあ、ハンネ。」
心から、思う。
「俺、人生、楽しいよ。」
だから人生を続けたい。
「…そうか。」
ハンネは、噛みしめるように言って。
「それは、なによりだな。」
二人で笑いあった。
「自分で言うのもなんだけど、俺、恵まれ過ぎてないか?
ここに残っても、向こうへ戻っても幸せだろ?
マルチハッピーエンドじゃないか。
幸せの形を選ぶなんて、こんな贅沢な選択あるか?」
「いいんじゃね?
だいたい向こうへ戻ったら、特大のバッドエンドがある事も忘れるなよ?
緩み過ぎて、そっちを選ばないようにな。」
「…確かに。」
「ほら、決めたんなら、さっさと行け!」
背中を思いきり叩かれた。
「ゼユウ。」
ハンネとは、これで最後だ。
「存分に、楽しんでこい!」
彼女は、最後まで、カッコ良かった。
「ああ!楽しんでくる!」
思い切り扉を開けて、森の中に向かって駆け出す。
俺を呼ぶ、声の方へ。
走り続けて、そろそろ帰れる予感がした時。
ある女性を、見つけた。
木々の間に立っている。
俺は、彼女を見る。
彼女も、俺を見て。
優しく微笑んだ。
「ほら、魔眼が動いた。反応がある。
成功だよ、僕の言った通りさ。」
ビッケの声が聞こえる。
「いいから続けて。あなたに無駄口を叩いている余裕はない。」
ホーメナの声もする。
「でもさ、呼びかけるというのは大事で…。」
「ならそれは私がやるよ。
私は魔力の提供をしているだけだから、二人より余裕がある。」
クーノまでいるのか。
声は聞こえる。すぐ近くにいるのは分かる。
でも、何も見えない。真っ暗だ。
「ゼユウ、クーノだよ。」
聞こえているよ。
…くそ、声が出ないな。
「状況の説明をするね。
ゼユウはビッケを倒した。そしてサダキを人間にしようと近づいた。
そこで、気を失っちゃったんだよ。」
うん。なんとなく、そんな気がする。
「私とホーメナは、魔法聖域を、いつでも発動できる状態にして待機していた。
そしてサダキの天力が、異常に増大し、急激に減少するのを確認した。
なおのこと離れちゃダメな状況になったんだけど、仲間の危機に、じっとしているのは辛い事だよ。
ホーメナが飛び出しちゃって、私はそれを追いかけた。」
ホーメナが先とは、意外だ。
国防の面ではダメな判断だと思うけど、ちょっと嬉しい。
でも、それでクーノまで来たら不味くないか?
「二人でゼユウを見つけて、驚いたよ。
ゼユウはボロボロだった。
そして、気を失った状態で、魔法を、メタモルフォーゼをサダキに使い続けていた。」
それは、なんというか。
…怖いな。
そんな状況に遭遇させてしまい、すまない。
「メタモルフォーゼは、私達でも分からない魔法。
ゼユウもサダキも動かす訳にはいかなくて。
ヒールリングで、外傷は可能な限り治したけど、意識は戻らなくて。
そんな時、ビッケがノコノコやってきたんだよ。」
最後の方、ちょっと怒気、いや殺気があった。
まあ、サダキがこんなになったのも、ビッケの所為と言えなくもないし。
でも、斬り刻んだのは俺なんだ、ごめん。
「いやぁ二人共、結構本気で殴ってきてね。
こっちは重症だってのに、まったく酷い話だよ。」
ああ、見えなくても目に浮かぶ。
二人に睨まれるビッケの姿が。
「で、こんなのでもいないよりマシだと思って。
力でねじ伏せて、ゼユウの回復に協力させたんだよ。」
「…クーノさんの説明には、語弊があるから訂正するよ。」
特に遮られなかったから、ビッケは続ける。
「気が付いた時、メタモルフォーゼによるサダキさんの変質は始まっていた。
しかもゼユウさんは、まともな状態じゃない。
爆発力に影響する所から、変質させている可能性があった訳さ。
そんな状態でゼユウさんとサダキさんを殺したら、被害はフレン王国にとどまらないかもしれない。
つまり、ゼユウさんを正常にして、人間への変質を完了させてもらう。
それしかないと思って、仕方なく、手を貸しているんだよ。」
「なら初めから、ゼユウに協力していればよかったのに…。」
ホーメナが怖い。
「…ゼユウさんには言ったけど、メタモルフォーゼなんて怪しい魔法、信じられる訳ないじゃないか。
でも、実際に戦って、何度も使われて、わかったよ。
あれは僕らが言うところの、レベル4の天法に近い。
世界のルールすらも、上書きして書き換える能力さ。
粗もあるし、不安定でもある。
でも、そこを僕らが補えば、サダキさんを人間にするぐらいなら、可能だと、そう思った。」
「なら初めから、ゼユウに協力していればよかったのに…。」
クーノが呟いて。
「だーかーらー。協力するには、信用が足りなかったの!
で、今は信用できるって言ってんの!」
ビッケが、やけくそ気味に答えて。
「面倒くさいわね。
シンプルに、やっぱり好きだから協力した、でいいじゃない。」
ホーメナが、まとめた。
安心する。いつものノリだ。
「…でさ、今、変質は止まっている状態なんだ。
ただ、メタモルフォーゼは停止できない。
サダキさんの生命維持の役割になっているからね。
そこら辺は、ホーメナさんに頑張ってもらっている。
だけど、これはその場しのぎ。
状況を進める為に、ゼユウさんには早く戻って来てほしいんだよね。」
俺だって戻りたいよ。
というか、戻ってきてる。
ただ、思うように身体が動かせないんだ。
「今のゼユウさんは、天使の性質もある天使モドキ。
自覚は無かったかもしれないけど、自分で変質させたんだよ。
でもまあ、そのお陰で、僕の天法の対象に出来る。
僕にはそういう権限があるんだ。
だからサダキさんみたいに、ゼユウさんの精神に干渉して、修復を試みている状況さ。
ホーメナさんが持ってきてくれた、儀剣ウィルダネス。
これは元々、伝説の英雄を、君を助ける為の物なんだ。
そこに込められた、君の魔力、君との思い出、君を想う気持ち。
そういうのを参考にさせてもらってる。」
代々賢者に引き継がれてきた、ハンネの剣。
そこに込められているのは、俺の知らない、あるいは忘れてしまった話。
「でも、ここらが限界値。外部からは、ここまでだ。
ゼユウさん、聞こえているんだろう?
後はゼユウさんが、何とか自力で起きてくれ。」
そう言われてもな。
「ゼユウ、頑張って。これが終わったら、打ち上げだよ。
美味しい物、いっぱい、食べられるよ!」
俺も、クーノにいっぱい食べてもらいたい。
「ねえ、ゼユウ。」
落ち着いた、ホーメナの声。
「ゼユウが話してくれたじゃない?
あなたの過去の、トリドの話。
フレン王国の始まりの話。そこに出てくる、イルハーナ様の話。
彼女は、トリドの帰る場所を守ると誓ったわ。
凄いと思う。彼女も、彼女の意思を継いだ女王達も。
でも、私は思うのよ。
イルハーナ様は、本当は、別の事が言いたかったんじゃないかって。
でもそれは無理だから。
だから出来る事を、精一杯やろうと思ったのよ。」
本当に、言いたかった事?
「あなたについていきたかったのよ。
そして、あなたの守りたいモノを、一緒に守りたかったの。」
あの泣き顔の、本当の意味。我慢した願い。
「フレン王国は、その為にある。」
英雄と、共に戦いたいと。
「さあ、目を開けて。
今度こそ、守りたいものを守りましょう。
私達と、一緒に。」
その手を、取った。
左手は、メタモルフォーゼを使っているから、右手で。
目の前がクリアになって。
皆の顔が見れた。
ホーメナも、クーノも、泥まみれで。
ビッケなんて、顔が腫れているし。
なんとも、頼もしい顔つきじゃないか。
「イッショニ、マモロウ…。」
びっくりするぐらいのガビガビ声。
ホーメナが頷いて、クーノが笑って。
ビッケが、俺の肩を叩く。
「さあ、頑張ろうじゃないか。
ホーメナさんとクーノさんがここにいるからね。
魔法聖域の出力が足りないんだよ。
つまり、僕らが失敗してサダキさんが爆発すると、フレン王国は滅亡。
皆仲良く、あの世往きさ。」
ハンネの言っていた特大のバッドエンドが、それか。
そう言えば、脳内ゼユウも俺が戦うと滅亡するなんて言っていたな。
やるじゃないか、大正解だよ。
もちろん、その道を選ぶつもりは、無い。
「メタモルフォーゼを沢山みて、わかった事がある。
こんなとんでも魔法を使うなら、とんでもない魔力が必要になるはず。
それなのに、こんなにも連発できている。なぜか?
ゼユウさんはね。
メタモルフォーゼと一緒に、もう一つ別の魔法を思い出していたんだ。
魔力以外で魔法を使う魔法。足りない魔力を補う魔法。
コストチェンジ。
少量の魔力と、ゼユウさん自身を代償に、メタモルフォーゼを発動していた訳さ。」
メタモルフォーゼという魔法を完成させた。しかし、魔力が足りない。
ならば、どうする?そうして作られた魔法。
コストチェンジを使い、メタモルフォーゼを使う。
1000年前、編み出された戦法。
「想定としては、1、2回、発動できればいいという考えのはず。
それをこんなに使えるなんて。
使い慣れていたのもあるかもしれない。
1000年間、魔法で封印されていた事も影響しているかもしれない。
君自身、メタモルフォーゼを扱えるような何かに、変質していたかもしれない。
本当に、興味が尽きない人だよ、君は。」
素直に、凄いって褒めてくれればいいのに。
まあ、それがビッケか。
「話を戻すよ。
ホーメナさんが、魔法解除で、君のコストチェンジを打ち消してくれている。
だから、君へのダメージはなくなったけど、魔力量が全然足りない。
ぎりぎり発動できるぐらいの魔力は、クーノさんが送ってくれている。
魔力贈物、ホーメナさんに習っていたらしいよ。
そして、これから。」
ビッケは、初めて見るような真剣な表情だ。
「君の修復行動が終わった僕が、君に魔力を送る。
僕は天力を魔力に変えられる。
全力の魔王の魔力全部を、君に託す。」
そんな事をして、ビッケは大丈夫なのか?
「ゼユウさん、メタモルフォーゼに集中してよ?
サダキさんの体力的に余裕はない。ここで決めるんだ。
ホーメナさんもね?
ゼユウさんがメタモルフォーゼを全力で使ったら、コストチェンジの効果も上がるかもしれない。
魔力は一気に全部を送れないから、もっと早くよこせってゼユウさんの命を狙うかもしれない。
ゼユウさんの意識がとんだら終わりだよ?」
「…わかったわ、頑張る。」
右手を、強く握り返される。
「ゼユウ。」
「ウン。」
サダキ、今、助けるからな。
そして辺りは、光に包まれた。
次回、第三章、完結。




