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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第一章 勇者レーラスの魔王討伐記

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第11話 後悔~旧友~

~前回までのサニア~


ちょっと失敗して、皆とはぐれてしまった。

でも待っていれば、合流出来そう…。

なら、情報収集しておこうかな。


カルフラタの町での話が、本格的に始まります。

 服屋さんに来た。この街に溶け込む為にだ。


 つい、いつもの癖で、露出高めな服を手にしてしまう。


 着始めた切っ掛けは、男性であるレーラスを、どぎまぎさせる為。

 今は、レーラスが女性だと知っている。


 だから本来もう着る必要はないのだが。


 私が服の系統を変えたら、何事かという話になって、きっと理由を聞いてくる。

 私はクレスタの追求を躱せる自信が全くない。


 バレてしまうだろう。

 しかし、レーラスは、自分が女だと、いや、レーラスではないという事を、誰にも知られたく無いのだ。


 例えそれが、信頼出来る仲間であっても。


 ガットルとディオルには、バレてしまったから仕方なく。

 そして私は、確認はしていないが、きっと悲しい理由だろう。


 積極的にアピールしてくる女の事を憐れんで。とか、そういう感じの。


 話が逸れたが、私は今のレーラスも友達だと思っているし、だから、意思を尊重したい。


 レーラスは男の子で、何も変わっていないのだから、私も変わらず、露出が多めの服を着続ける。


 (でも今は着る必要、皆無。)


 手にした服を戻す。目立たない為の服を買いに来たのだ。目立ってどうする。


 (とは言え…。)


 目立たない為には、周りと似たような格好をする必要がある。

 街のトレンドに乗っかる訳だ。


 (ここはみんな可愛いな。)


 オシャレのレベルが高い。ミニスカート率も。

 町全体が裕福なのか、この辺りだけが豊で、貧富の格差が大きいのか。


 (あ、でもそれは商会に聞けばいいのか。)


 調べるなら別の事だなと、レーラスと出かける時のような気合を入れた格好で、私は店を後にした。




 一日歩いた感想としては。


 町の雰囲気は明るい。活気もある。物品の数も多い。料理も美味しい。

 陽当りのよくない路地裏も、清掃されていて綺麗。


 フフゴケ商会の商品も多く、全体の四割はありそう。


 勇者の話もちらほら。友好的に感じる。


 (すごくよい町なのでは?)


 しかし、どれも商会に聞けば分かりそうな事で。

 魔王崇拝者に関しての情報は得られなかった。


 (やはり、ここ、か。)


 情報収集と言えば酒場というイメージ。


 夕方になれば人が多いし、酒が入れば口が軽くなるかもしれない。

 しかもこの酒場は街の中心部に近く、規模も大きい二階建て。


 期待出来る。


 (問題があるとすれば…。)


 私はお酒が飲めない。


 別に飲んではいけないという法律は無い。


 国によってはあるかもしれないが、少なくとも、王国やこの国には無い。


 単純に味が好きではない。

 気分が悪くなる事はあっても、気分が良くなる事はない。私は。


 ちなみにクレスタは大好きだ。家でも飲んでいた。


 ディオルはどうだろう。見たことはないが、何か一人でチビチビ飲んでいそう。


 レーラスは、私より年下だし飲まないでしょう。

 でも確か、水魔法使いはアルコールに強いなんて話を聞いた事がある。


 (飲むの?レーラスは、飲めるの?お酒を。)


 いつもと変わらない様子でお酒を飲むレーラス。


 飲んでも飲んでも様子が変わらず、周りが酔い潰れていく中、尚も様子が変わらず、一言。


 『どうかしましたか皆さん、こんな所で寝たら風を引きますよ?』


 想像出来てしまう。あり得るかもしれない。


 ガ、ガットルは飲めないよね。甘いのが好きだもの、私と一緒で。


 でもガットルは商会の人。商会はあのクレスタのいる所…。

 仕事上の付き合いとかもあるかも知れない。


 (ひょっとして勇者パーティーで飲めないの、私だけ?)


 最近疎外感を感じる時があって、寂しい。


 みんなの顔が見たい。


 (…。)


 迷ったが、やはり注文はミルクにした。

 隅っこに座って、チビチビ飲む。美味しい。


 聞き耳を立てるまでもなく、色んな話が聞こえてくる。


 もちろん、内容まで理解するには集中が必要だ。

 しばらくはぼんやりと、気になる単語が飛び出さないかを聞いていた。


 そして私は、見つける。

 勇者とその仲間達の悪口を言っている連中を。


 (反勇者勢力…!)


 静かに席を立ち、さりげなく近くの席に座る。あくまで自然に。


 三人組だ。もう大分酒が入ってそうな。


「だいたい魔法を無くすってなんだよ!頭いかれてんじゃねぇの!?」


 怒声とガン!っと机を叩く音。その大きさに思わず萎縮してしまう。

 しかし酒場では珍しくないのだろう。気に留める者はいない。


「連中も酒の飲みすぎですかねぇ、飲み過ぎると溶けるって聞きましたよぉ。」

 (なにか溶けるの?怖い。)


「魔王が何かしたか!?うまくやってんだよ俺達は!」

 (魔物の被害は多いけど、魔王の被害は確かに聞かない。勇者は返り討ちにあってるけど、向こうから攻めてきたのは、40年前の一度だけ。)


「侵略者っすねぇ。やってる事は。」

 (こちら側の都合と言えば、そう、なのよね。)


「正当化する御託ばかり、偉そうでぇ。」

 (…。)


「勇者達、美男美女らしいですよぉ、しかも若いぃ。」

 (ん?褒められた?)


「どこのアイドルだぁ?なめてんのかぁ!!」

 (なめてないです。)


「戦略っすよ王国の戦略ぅ。人気ださせて支持を得るんすよぉ。」

 (王国の考えは分からない。)


「どっかのパンダかよぉ!で、実際丸め込まれてるバカが多いと!」

 (…。)


「やってられるかよぉ…」


 席を変えた時、ふざけた事を言っていたら殴ってやろうかと、思っていたけど。


 (反勇者勢力と言えば、まぁそうなのだけど…。)


 でもこれは愚痴で、ここは酒場だ。


 吐き出したいだけなのだろう。それだけなのだろう。

 迷惑をかけていたら別だが、周りをみる限り、何処も似たようなものだ。


 (私の探している人達では、ないわね。)


 前の場所に戻ろうと席を立とうとした時だ。


「ロストン、飲み過ぎだ。」


 今まで聞こえなかった声がして、思わず振り返ってしまった。


「あぁ?これからだろぅが…。」

「すまない、送ってやってくれ。払っとく。」

「わっかりやした!」


 帰り支度をして撤収していく様子を、まじまじと見てしまう。


 最後まで残っていた男が、私の不躾な視線に気付き話しかけてくる。


「すまないね、騒がしくて。」


 その容姿は確かに面影があった。


「トバ、なの?」

「という事は、サニアかな?」


 私は、思いがけず旧友と再会した。


 彼はお酒を手に隣に座った。もちろん、歓迎する。


 トバは、私がスターマークの町にいた時の友達だ。

 歳は一つ上で、当時は一番仲が良かったと思う。


 私が12歳の時、一稼ぎしてくると町を出て、それっきりだった。


「本当に久しぶり。無事に会えて嬉しいよ。元気だった?」


 再会出来ない人もいるから。本当に嬉しかった。


「まぁ健康ではあるな。それに、」


 カードみたいな物を渡される。これは、名刺だ。


「ニージュ商会で、頑張ってる。」


 アッブドーメンでのニージュ商会は、王国でのフフゴケ商会に近い。

 つまり、大きい商会で、このドヤ顔も分かるのだが…。


 (こっちの事情をある程度分かっているって事ね。)


 皮肉めいたものも感じた。

 ニージュ商会は、父さんの会社だ。


「何処で何をしているかは知らないが、戻らないのか?父親の元に。」


「戻らない。やる事がある。」


 即答する。前に決めた事で、今も揺るがない事だ。


「へぇ…そう、かい。」


 感情が読み取れない返事をして、手に持っていた酒を飲み干す。


 彼は続けた。


「こっちには、いつまで居るんだ?」


 勇者が来るのが四日後で、何日か滞在するはずだから、

「一週間くらいかなぁ。前後するかもだけど。」


「そうかい。」

 彼は立ち上がった。


「もう行くの?」


 こんな話ではなく、楽しい話がしたかった。


「国内にいるんだ。父親に顔ぐらい見せてやれ。」


 答える間もなく彼は去った。…用事があったのかもしれない。


 (一週間もあれば、また会える、かな。)


 ニージュ商会の人だと分かったし。

 流石にこれでお別れは嫌だった。もう会えないかもしれないのだ。


 (切り替えよう。有益な情報は、得られていない。)


 ミルクをチビチビしながら、周りの音を聞く作業に戻ろうとして、

「今のやつ、知り合いか?」


 吹き出しそうになるのを堪える。


「ガットル!?何でここに!?」

「そりゃ、サニアが心配だったからだよ。」


 事も無げにそう言った。

トバ、ロストン。二人は今回のゲストキャラ。

メインは五人のまま、魔王戦まで行く予定です。


あと、ガットルはサニアを呼び捨てに出来るくらいには仲良くなっています。

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