表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/175

第118話 預言~伝説~

~前回までのゼユウ~


ビッケと天竜のコンビに大苦戦。

脳内の俺にも、ボロクソ言われてしまう。

それでも。俺は諦めない。


◇登場人物◇

●ゼユウ:トリド●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:天使●サダキ:天竜

〇フィアトリーヤ:フレン王国の王女。愛称は『フィア』

〇レフィアラ  :この世界でフィアが名乗るはずだった名前。フレン王国40代目の女王の名前。

 ウイングで、闇夜を翔ける。

 目指すは、天竜。


 ビッケと目が合った。しかし、スルーされる。


 (お手並み拝見って、そういう感じか。)


 そうじゃないかと思った。

 さっきまで独り言を喋っていたのに、攻撃されなかったから。


 それにだ。

 彼の目的を考えるなら、さっさとサダキを殺せばいい。


 でもそれだと、何だか、俺との勝負に逃げた感じになるから。

 だから、それをしないのは、魔王、もしくは役職持ち天使のプライドか。


 もしくは、彼は戦いを楽しみたいのだ。

 俺達の、この世界での、コーホでの生活の締めに。


 だからあまりに一方的だと、楽しくないのだろう。


 まあ、素直に嬉しい。


 まずは天竜をどうにかして、その後、ビッケだ。


 天竜は、明後日の方向を見ている。

 遠慮なく、奇襲させてもらう。


 風縄ウイングロープの発展型、風網ウイングネットを発動。


 積んであるニードルを、まとめて回収。


 (使いづらいし、正直、邪魔だ。ついでに、処理させてもらう。)


 脳内ゼユウも言っていた。

 迅速に倒さないと、サダキの天力がなくなってしまう。


 時間的猶予もなく、そもそも出し惜しみして勝てる相手ではないのだ。


 (メタモルフォーゼを使う。)


 そもそもメタモルフォーゼを使わない理由とは?

 激痛を伴い、気分が物凄く悪くなるからだ。


 そんなの気合でなんとかすればいい。

 1000年前の英雄を舐めるな。


 魔力消費は、輝刃ブレイズブレイドよりよっぽど少ない。

 コスパがいいとは、これの事。


 天竜が反応した。

 しかし、動きが鈍い。天力の消耗しすぎで、弱っているのか。


 (…今、終わらせてやる。)


 イメージは、魔竜戦。

 そう、もっと可愛げのないドラゴンを一度倒しているのだ。


 (絶対、殺すな。間違えるなよ。)


 爆発の話もあるが、助ける為の戦いなのだ。

 サダキを救わなくていいなら、さっき逃げ出している。


 天竜の上空で、網を破く。

 落下する、100個以上のニードル。


 そこに、全力の竜巻トルネードだ。




 トリドは魔竜を、無数の剣で斬り刻んで倒した。

 無数の剣は、ビッケ曰く、輝刃ブレイズブレイド


 使えるようになった今だから言える事だが、そんなに連発可能な魔法じゃない。

 しかし実際に、そのシーンを目にした。誇張表現ではなかった。


 1000年前は、今より魔力制御が上手かった?化け物みたいな魔力量だった?


 そんな事はない。

 あれは、輝刃ブレイズブレイドであり、輝刃ブレイズブレイドでは無かったんだ。


 あの時の魔竜は、俺達の用意した罠を悉く、破壊した。

 その過程で、体中、粘液性のある液体まみれ。


 トリドは、その液体を輝刃ブレイズブレイドに変化させた。

 メタモルフォーゼは、物質を魔力に、魔法にすら変質させる事が出来る。




 ニードルは、強力な爆弾だ。


 魔法で周辺の防御力を落としてから爆発するという、ふざけた特徴がある。

 そして、もう一つ。めちゃくちゃ硬いという特徴もある。


 それこそ、魔王の魔法じゃないと誘爆しない。

 だから俺の竜巻トルネードは、耐える。




 混合魔法と言われる、複数の属性を組み合わせて放つ魔法がある。


 複数属性を扱える人物が、稀。

 それを組み合わせられる人物は、もっと稀。


 賢者と呼ばれる、ホーメナにも扱えない魔法だ。


 まあ、今回、ビッケが天法を使える事が判明し、天竜ヘブンドラゴンなんて混合天法を使っている訳だが、それは別によくて。


 つまり、何が言いたいのかというと。

 魔法は組み合わせる事が可能という訳だ。


 そして、メタモルフォーゼは魔法だ。




 俺は、竜巻トルネードとメタモルフォーゼの混合魔法を放った。


 ニードルを輝刃ブレイズブレイドに変質させるという、超ピンポイント魔法。

 魔竜に使った、粘着性液体を輝刃ブレイズブレイドに変質させる魔法の亜種。


 ニードルは、その突風に運ばれて行く。予想通り、誘爆はない。


 一番重要なのは、タイミング。

 天竜状態を維持できないほどのダメージを与え、かつ、致命傷にならないような場所で変質させ、斬る。


 そんなのどうやって見極めるって?


 大丈夫。

 すでに俺の右目は、そういうのが分かる瞳に変質している。


「ぐ…。」


 髪の毛、と言うか、体中の毛を引き抜かれるような感覚。

 (この程度なら、問題なく耐えられる。)


 無理やり口を開けられて、歯を素手で、強引に引き抜かれるような感覚。

 (痛いというか、不快感、そして恐怖か。でも、まだまだ、いける。)


 指の骨が折れた。

 (甘いな、腕を貫かれて入院経験がある俺は、この程度でビビらない。)


 腹が突き破られ、中から、おぞましい何かが出てきた。

 (幻覚だ!変な物は食べてない!)


 天竜が、地に伏した。

 我慢比べは、俺の勝ちだ。


 地面に降り立つ。

 よろめいて、膝をつく。そのまま両手もついて、四つん這いだ。


 こんな事をしている場合ではない。

 早くビッケを倒して、サダキの元へ行かないと。


「話に聞いた、ブレイドストーム。

 本物を見れるなんて、ファンとしては嬉しいね。」


 ビッケの声だ。

 近づいてきてくれるとは、有難い。


 正直、飛ぶのは面倒なんだ。


「流石だよ、ゼユウさん。

 これは本気にならないと、いけない。きっといい勝負になる。

 …そう思ったんだけどさ。」


 なんだよ、随分歯切れが悪いじゃないか。


「もう、止めないかい?ゼユウさん。」


 聞き間違いか?


「俺は、勝ったのか?」

「いや、諦めてほしいんだけど。」


「そりゃあ、無理だ。」


 まったく、何なんだよ。

 まあ、お陰で立ち上がれたからいいけど。


「…ゼユウさん。

 僕は自分の選択を間違いだとは思わない。

 サダキさんには爆発してもらうけど、フレン王国の方はもういい。

 きっと魔法マジック聖域サンクチュアリで無事なはずさ。

 クーノさんの事は、何とかする。

 だから、僕と一緒に王国へ戻ろう。」


「いや、どうしたんだよ?いやだけど?」


 爆発に巻き込まれるのが怖い訳でもないだろう。

 天使は天力が残っている限り、身体がバラバラになったって死なないんだから。


「正直さ、僕はゼユウさんが怖い。」


 どういう意味だ?


 頭が痛いんだから、無駄に使わせないでほしい。…いや、痛くないか?

 違和感を覚えつつ、とりあえず流れてきた汗を拭う。


「気づいてないと思うけど、凄い状態だよ。ゼユウさん。」


 拭った手が真っ赤だった。

 ああそうか、右の眼球が潰れたのか。


「怖いなら逃げてくれよ。正直、その方がありがたい。ビッケは強いからな。」


 ビッケはしばらく俺を見て。

 深い溜息をついた。


「ゼユウさんの事、嫌いじゃない。寧ろ好きさ。

 その君を追い詰めたのは、僕。

 引導を渡すのが、せめてもの責任か。」


 なんだよ。結局、戦うのか。しかも、飛んだし。

 まあ、こっちも少しは休めたし、よしとするか。


「魔王の、いや、天使の祝風さ。もう苦しまなくていいよ。」

「別に、苦しくないさ。」


 さて、魔王の特大魔法がくる訳だが、どうしよう?


 あいつの魔法をメタモルフォーゼで変質させる?

 それは、難しそうだ。却下だな。


 メタモルフォーゼで、凄い硬い盾を造るしかないか?

 1000年前、天獣の爆発にも耐えた奴。


 …ん?待ってくれ。どんなのだっけ?


 (あ、そうか。)


 サダキも守らないといけない。

 今の彼は、余波でも死んでしまう。


 キュロキョロして、あ、いた。人の姿に戻っている。

 爆発してないから、生きているはず。


 サダキの元へ走る。


 (くそ、なんだこれ…。)


 走りづらい。痛くはないんだけど。

 これじゃあ、間に合わない。


 俺は、脚を、動くように変質させた。


 (それでも遅いな、もう、いっそ!)


「クインタプルトルネード!!」


 ウイングで飛ぶ。

 放たれたその魔法に、突っ込む。


 盾のイメージは湧かなかった。

 頭の回転が、非常に悪い。


 だから、シンプルに。


 ビッケと同じ魔法で相殺しようと思う。

 大層な名前だったが、要は竜巻トルネードだろ?


 竜巻トルネードは俺も得意なんだ。

 でも、どう見ても威力が段違い。


 左目を変質させる。

 見本は目の前にあるし、じっくり観察しようじゃないか。


 …なるほど、そうか。


 あいつの発射口は五か所ある。

 なら、こちらも発射口を増やさないと。


 魔力が足りない?

 いや、天力か?天力がいる。


 丁度、目の前に。

 高密度の魔力があるから、ちょっと借りよう。


 などとやっていたら、時間切れ。

 ちょっと悠長にしすぎたな。


 俺は、ビッケの魔法の直撃を受けた。


 まあ、いい。


 防ぎきれた。


 サダキも無事だし、結果オーライ。


「…ゼユウさん。」


 ビッケの声がした。


「覚えているかな?

 ゼユウさんが魔王城へ初めてやってきた時の事。

 幻惑魔法を発動させて、僕と二人で話したじゃないか。」


 覚えているけど、このタイミングで、急にどうした?

 自慢の魔法が防がれて、混乱した?


 そう言おうとした。

 でも、声が出なかった。


「あの時、君は言ったんだ。

 『何者かは、自分でも分からない。勇者でも賢者でもない。そういう肩書は、一つもない。』ってね。」


 言った気がする。随分、懐かしい話をするじゃないか。


「今の君は、勇者でも、魔王でも、天使でも、化け物でも、名乗り放題さ。」


 そうなのか?


「1000年前の伝説の勇者であり、魔王の魔法であるドラゴンフォーム、天竜ヘブンドラゴンを身に纏い、頭に天使の光輪さえある。

 知ってるかい?その光輪。天力の結晶、貯蔵分なんだよ。

 ほら、天使って天力が無くなると死んじゃうからさ。」


 照れるね。偉くなったもんだ。


「眼球、いや魔眼かな。

 一応は動いている。僕の話に反応はしている。

 耳は生きていて、感情は残ってそうだ。

 でも、知性が感じられない。もう喋れないんだろうね。」


 酷いな。悪口はやめてくれ、悲しいだろ。


「痛覚は死んでる。神経は、どうなってるんだか。

 最大の問題は、まだ動ける事。

 そして、メタモルフォーゼが使える事。

 それさえなければ、君を、ホーメナさんの所へ戻してあげられるのに。」


 ……………ホーメナ?


「…君を、倒す。」


 突風が、風の刃が、攻撃してきた。


 負けないぞ。

 さっき、褒めてもらったんだ。


 俺は、勇者で、えぇと、とにかく、凄いんだ。


 ほら、痛くない。全然きかないぞ。


 でもこれだと近づけない。風に押されてしまうんだ。

 どうしよう?


 風を全部変質させるのは、大変そうだ。


 そうだ、風に飛ばされないように、風の影響を受けないように、魔力の質を変質させよう。


 へへん。知性を感じないなんて、失礼な奴だぜ。俺は、賢いんだ。


 左眼で、よく見て。確認して。


 どうだ。これで、かぜに、ながされないぞ。


 ちかづけてる。さくせんは、せいこうだ。


 こうげきしても、むだだ。おまえのこうげきは、きかない。


「所謂、纏う系の魔法。

 火鎧ファイアーアーマーで火傷はしない。

 魔力制御の技術の一つ、完全同調と呼ばれるモノさ。

 自分の魔力であったとしても、一度、離れてしまえば。

 例えば、自分の火球ファイアーボールに自分が当たればダメージを負う。

 ほんの少し、魔力が変わっただけでも反発は起きるんだよ。」


 かぜのつるぎをにぎりしめ、おもいきり、きりつける。


「他人の魔力と、魔法とを完全同調させるとか。まったく、君って、やつは…。」


 ああ、そうだ。ころしちゃだめだった。


 きって、きって、とめる。


 これで、しんだりはしないだろう。


 おれの、かちだ。


 (…えっと、つぎは…?)


 たすけないといけない、ひとがいたはず。


 いた、あそこだ。


 おれは、かれに、ちかづいていく。




*ビッケ視点*


『と、いう事で。めでたく女王様になれたのでした。』


 満点の星空の下。

 王宮の最上階のバルコニー。


 彼女、女王レフィアラは、上機嫌だ。


『ビッケが協力してくれたお陰だよ、ありがとう。』


『謙遜だね。君の実力なら、僕の助力は必要なかった。』

『そう言われると、そんな気がしてきたわ。流石、私。』


 (浮かれてるねぇ。)

 しみじみ思う。


 (でも、いいさ。今日だけは。)

 ようやく、夢が叶ったんだから。




 彼女、フィアトリーヤには二人の妹がいる。三姉妹ってやつだ。


 本来なら順当に、長女であるフィアが女王になるはずだった。


 でも、彼女は病弱で。女王が務まるのか疑問視されて。

 最終的に、姉妹と女王の座を賭けて競い合う羽目になった。


 僕が協力したのは、ただの、なりゆき。


 三年かかると思われた任務が、一か月で終わった。運がよかった。

 都合により、期限までは帰れない。だから観光する事にして。


 その最中、フィアに出会った。

 彼女は善人で、しかも弱い。戦う術を持っていない。


 女王競争には勝てると思えなかったし、だからこそ、その戦況を僕の力でひっくり返すのは気分がいいなと思った。


 ようするに、暇つぶし。


 そんな風に、フィアとのドタバタコメディが始まって。

 一緒に数々の試練を乗り越えて。


 彼女の18歳の誕生日。

 めでたく、女王の座とレフィアラという名前を獲得した訳だ。




『そう言えば、なんでそんなに女王様になりたかったのさ?』


 レフィアラが、凄い顔で僕を見た。


『い、今更!?』

『今だからこそだよ。理由を聞いて、じゃあ、ならないとねってなった後、なれなかったら悔しいじゃないか。

 ようやく安心して聞けるよ。』


 そして聞いたのが、トリドの話。

 レフィアラは、彼のファンだった。


『えぇ…。会った事もない男を待つ為に女王になったの?まじ?』

『ちょっと!言い方!』


 不本意だけど、認めざるを得ない。

 僕は、彼女に惹かれている。だから、他の男の話は面白くない。


 まあ、過去の偉人相手に、嫉妬するのも馬鹿らしいのだが。


『トリドは頑張ったのよ。』


 あんまりにも得意げに話すものだから、僕も少し興味が出てくる。

 特に、魔竜を倒した時の魔法についてとか。


『頑張って、ちゃんと守りぬいたの。

 でも、その事に気づいていない。それは悲しいし、寂しい事なのよ。

 だから彼に伝えたい。

 あなたが守ってくれたお陰で、私達は、今も幸せですって。』


 僕は空気が読めるからね。ここは、大人しく聞いておくべきさ。


『ありがとう。お疲れ様。ゆっくり休んで。

 あ、最初はおかえりなさい、かな。

 そう言うのを伝えたい。そうしないといけない。

 何て言うのかな?魂の繋がりみたいな?

 きっと私達が、彼に伝えないといけないのよ。』


 眉唾ではあるけれど。

 魂に刻み込んだ魔法の、遺伝する可能性の話だってある。


 想いなんてものが受け継がれるなんて話も、あるかもしれない。


『そういう、なんか、ふんわりした感覚みたいなのもあるけど、それだけじゃないわ。

 きちんと形に残しているものだってある。

 この国そのものがそうだし、女王の名前もそうね。

 あと、剣。アニアとトリドの思い出の品の。

 叩いたら折れちゃうと思うけど、内包している魔力は凄まじいっていう、…えっと、何て名前だったかしら?』


『儀剣ウィルダネスだね。

 魔法使用時の補助道具としては最高レベルで、フレン王国の賢者に代々受け継がれている代物さ。』


『そう、それ!』


 照れくさそうに、彼女は笑う。

 大切だと言った剣の名前を忘れてた事か、それとも、これから言う言葉に対してか。


『ねえ、ビッケ。

 私はね、この国が好きなの。

 たった一人を、世代を越えて想い続ける。

 1000年もよ?とっても、ロマンチックじゃない。』


 とんでもない執念で、ちょっと引くぐらい怖い。

 僕は自重できるからね。口には出さないよ。


『国の在り方としては、間違っていると思う。

 でも、こういう国が、あってもいい。ビッケはどう思う?』


『国の在り方なんて、そこに住む人達が決めるんだ。

 1000年も続いたなら、間違いじゃないよ。』


 レフィアラが口を膨らませている。

 どうやら求められていた答えでは無かったようだ。


『ビッケは、ビッケなんだよねぇ…。』


 お褒めいただき、ありがとうございます。


『でも安心する。私が好きになったビッケのまんまだ。』

『…。』


『ねえ、ほんとに行っちゃうの?』

『行っちゃうさ。実は、滞在期間を過ぎてしまってね。

 まあ、でも、君が女王になる瞬間に立ち会えて、よかったよ。』


『…そっかぁ…。』


 女王は星を見た。僕は、女王を見ている。


『私が本気で、行かないでって言ったら、ビッケは残ってくれるんだろうな~。』

『残念だけど、それはないね。』


『ううん。ビッケは、自分で思ってるほど冷たくないよ。

 寧ろ、凄く優しい。そして、真面目。

 だから、本気で止められない。止まっちゃうから。』

『…。』


『ビッケは風みたいな人だから。そこも魅力だから。

 縛りたくないし、後悔なんてさせたくない。』


 彼女は笑顔で、僕に告げる。


『ルートレスの魔王、エンビッケ。今までの忠節に感謝を。

 あなたの旅路に幸あらんことを。

 そして縁があれば、いずれまた。』


『フレン王国、女王レフィアラ。

 …楽しかったよ。

 バイバイ。またね。』




 それで、最後。

 以降、僕は彼女と出会っていない。


 風の噂で聞いた限りだと。

 なんでも、世界規模のデカい会議を開いたり、遠海遠征で大活躍したり。


 なんとも豪快な人生だったそうじゃないか。

 それこそ、伝説になるくらい。


 彼女こそ、最高の女王様。


 そんな彼女の、歴史的第一歩を支えられたのは、僕の誇りだ。

 レフィアラになりたいと言った彼女の、その隣を歩けて楽しかった。


 だからこそ。


 彼女以外に、レフィアラを名乗ってほしくなかった。

 どんな並行世界でも。


 …いやいや、だからってさ。


 『フィアが女王様になれない世界の、フレン王国』は滅べばいい、なんて。

 そんな極端な思想にはならないよ。


 まあ、積極的に救いたいと思えない要因にはなったけど。

 フィアの扱いが、個人的に気に食わないし。


 …僕はさ、ちゃんと自分の仕事をしたと思う。

 途中、結構楽しんじゃったけど。


 仕方ないだろ?トリドがいたんだ。

 レフィアラ絶賛の、伝説の英雄。気になるじゃないか。


 楽しかったし、仕事もこなした。

 言う事はない。


 なのに。


 こうも後ろ髪を引かれるのは。


 まだ出来る事が、あるからかもしれない。

完全同調。

条件を満たす事で、魔法攻撃の一切を無効化する。


理論上は可能だけど、実現は不可能な技術。

それを、魔眼とメタモルフォーゼで無理やり実行。

そんな事をされたら、どんなに凄い魔王でも負ける。


そういう話でした。

メタモルフォーゼの影響で、分かりづらかったらごめんなさい。


あと、2話で終わります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ