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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

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第117話 預言~変質~

~前回までのゼユウ~


ビッケの賛同を得る事は出来なかった。だから一度、拘束しないと。

サダキと二人でビッケと戦い、優勢に進められていたと思う。

でも、サダキがビッケに操られてしまって。彼は黄金の竜へと変身した。


◇登場人物◇

●ゼユウ:トリド●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:天使●サダキ:天竜

〇アニア    :トリドの大事な人

〇イルハーナ  :アニアの妹

〇フィアトリーヤ:フレン王国の王女

〇ハンネ    :ゼユウがお世話になった人

〇ポーン    :トリドの仲間

 半年前に比べて、俺は強くなった。

 ついさっき魔王から、世界最強トップ10に入るとも言われた。


 でもやっぱりビッケの方が強い。

 タイマンなら勝てる気がしない。


 でも、サダキと二人なら?

 勝てると思った。実際、いい勝負が出来てたと思う。


 このままビッケを無力化し、サダキを人間にして。

 三人で、旅に出る。


 船の上から星を見て、この戦いを振り返るんだ。

 ビッケが色々言ってくるが、要は負け惜しみ。サダキと二人で笑ってやろう。


 そういうので、よかったじゃないか。




 避けたのに、風圧で飛ばされる。ウイングで踏ん張るが、力負けだ。

 壁に激突。意識が飛ぶ、が、激痛で覚醒。


 寝る訳にはいかない。寝たら、死ぬ。

 全力で飛んで、尻尾の叩きつけを避けた。


 で、迫ってきた左前腕に直撃。


 叩かれたボールのように勢いよく飛んで、魔王城の外まで吹っ飛ばされて。

 俺は岩山に突っ込んだ。


 直撃の直前。メタモルフォーゼで岩山をクッションに変えた。

 お陰で、即死は免れた訳だが。


 (勝負になってない…。)


 ビッケとサダキ、いや、意識はないから天竜と呼ぼう。

 ビッケと天竜のコンビが強すぎる。


 コンビネーションは、俺とサダキの方がよっぽど上手かった。

 あいつらは共闘している感ゼロだ。


 (いや、負け惜しみか…。)


 天竜は暴れているだけ。そこをビッケが、いい感じに誘導している。

 意思の疎通なんて出来なくても、立派なコンビネーションだ。


 幸い、今は夜。天竜は暗くて俺を完全に見失ったらしい。

 見当違いな場所を破壊している。


 (…折角だから、少し休憩だ…。)


 動かなければ、ビッケの音制御ノイズコントロール対策にもなる。


『もう頑張らなくてもいいんじゃないか?』


 前方から、声が聞こえた。


 (…は?)


 俺がいる。俺を見下ろしている。


『不思議そうな顔だな?いつもの脳内会議だよ。』

 (いや、脳内じゃないだろ?目の前にいるぞ?)


『メタモルフォーゼの使い過ぎかもな。まあ、いいじゃないか、新鮮で。』

 (え、怖すぎだろ。なんでお前は普通そうなんだよ?)


『そんな事よりも。』


 自称、脳内ゼユウが近づいて来て、屈む。俺と目線を合わせて、続ける。


『もう諦めよう。俺じゃあ勝てない。』

 (ふざけるな。

 勝てるから戦った、なんて事あったか?

 勝たないといけないんだろうが。)


『でも、このままだと、俺は死んでしまう。』

 (なら、サダキが死んでしまうだろ?そんな事を見過ごせる訳がない!)


『どうして?』


 顔面を思いきり殴ってやるつもりで、右手を突き出した。

 手ごたえはなく、すり抜ける。脳内だけの存在っていうのは、本当らしい。


『サダキはまだ子供だ。それに彼が死んだら仲間が悲しむ。だから助けたい?』

 (分かってるじゃないか。)


『君が死んだら、君の仲間が悲しまないとでも?サダキはトラウマになるよ。』

 (…。)


『現実的な話をしよう。

 もう俺は、メタモルフォーゼを使えるような状態じゃない。

 そして、サダキ。あんなに巨大なドラゴンになって、理性なく暴れている。

 半年分の天力を使い切るつもりだ。

 あと数分で、いや、今すぐもとに戻った所で、猶予はない。

 君がメタモルフォーゼを使えるぐらい回復するまでは、持たないよ。』

 (…何の根拠があって、そんな事を言っている。

 俺はまだ、メタモルフォーゼを使えるし、サダキの天力も残っている。)


『サダキは助けられず、君も死んでしまう。』

 (そうならない為に、戦っている!)


『そうやって戦って、どうだった?』

 (…なに?)


『アニアは、守れなかったんだ。』


 こいつは、ひょっとして、トリドか?


 なんて事を考えて、何を考えているんだと笑えてくる。

 もともとトリドとゼユウは、同一人物だ。


『せめて、イルハーナには笑顔でいてほしかった。

 でも、俺が覚えているのは、彼女の泣き顔だ。』


 それは、見た。いや、覚えている。


『コア王国、僕達の故郷。もちろん守りたかったよ。でも、滅んだ。』

 (滅びないものなんてあるか。800年も栄えていたんだぞ。)


『800年の中で、侵略者になってしまった。

 英雄の存在が、歪めてしまったんだよ。』


 コア王国が大陸の統一を宣言した理由。

 自分達こそが、大陸の中心であるという主張。


 自分達が、唯一、天上の国に一矢報いた国だから?

 その英雄が眠る国だから?


『ほら、思い出してよ。

 君は都合よく忘れている、いや、耳を閉ざして聞こえないふりをしていたかもしれないけど、当時の国王が、俺に宣言しにきたじゃないか。

 大陸を統一し、その英知を集め、必ずや、あなたを開放すると。』


 …なんだって?


『実行部隊の皆だって守りたかった。

 …実行部隊の皆が作ったフレン王国も、今、滅びそうだ。』


 (…それは、大丈夫だ。ホーメナ達が、魔法マジック聖域サンクチュアリがある。この戦いの結果に関係なく、安全は保障されている。)


『アニアの、イルハーナの血脈は、絶えてしまったみたいだけどな。』

 (…。)


『世界は、闇鍋。

 肉が食いたいなんて思うな。期待するからガッカリする。

 掴んだ物を楽しめ。そういう奴が強い。

 元々お前は、そういう奴だっただろ?』


 どこかで聞いた事がある。ハンネだったか?


『そうだ。そして、ポーン博士も似たような事を言っていた。』

 (…。)


『俺は答えた。

 もう肉を食ってしまった。あの味が忘れられない、また食べたい。

 肉を求めて、箸を伸ばして、魔竜と、超兵器と、天獣と戦った。』


 脳内ゼユウが笑った。


『もうこのせかいにはさ。のぞむものなんて残ってないんだよ。』


 こいつの、俺の、トリドの、ゼユウの、求めるモノは存在しない。


『無いものを探して、かき乱すから、碌な事にならない。』


 アニアが死んだのは、俺の所為。

 俺が守れなかったから。


 イルハーナが泣いたのも俺の所為。

 俺が弱かったから。


 コア王国が侵略戦争を始めたのは俺の所為。

 俺がちゃんと死ななかったから。変な形で生き残ってしまったから。


 コア王国が滅んだのは俺の所為。

 天上の国へ一矢報いて、変な特別感を与えてしまったから。


 コア王国の残党が、フレン王国を襲撃するのは俺の所為。

 約束したのに、帰れなくて。フレン王国が俺を迎えにきてしまったから。


 フィアトリーヤ様が亡くなったのは俺の所為。

 コア王国の残党が襲撃してくるのは俺の所為だから。


 クーノが罪を犯したのは俺の所為。

 フィアトリーヤ様が亡くなったのは俺の所為だから。


 ハンネが死んだのは俺の所為。

 フィアトリーヤ様が亡くなったのも、コア王国の残党が襲撃してくるのも俺の所為だから。


 ホーメナが寂しい思いをしているのは俺の所為。

 ハンネが死んだのは俺の所為だから。


 サダキが今、苦しんでいるのは俺の所為。

 メタモルフォーゼが使いこなせていないから。


 ビッケが王国を滅ぼそうとしているのは俺の所為。

 サダキのも、クーノのも、フィアトリーヤ様のも、コア王国残党のも、全部、俺の所為だから。


『だからもう、止めよう。もう、頑張らなくていい。』


「いやだ。」


 ぼそりと、口から出た。


 脳内ゼユウは、小さく首を振る。


『どうして?』

「全部、俺が原因なら、尚更、止める訳にはいかない。」


『もっと事態が悪くなる。皆、不幸になってしまう。

 予感がある。俺が戦う事によって、フレン王国が滅ぶんだ。』

 (…。)


『そして、その事が原因で、数百年後に、戦争が起こるんだ。

 たくさん死ぬ。皆、死ぬ。

 そして、俺は、何故か、その世界を見る羽目になる。

 そして後悔する!なんで、今、ここで、戦ってしまったのか!』

 (…。)


『考えつかない?そんな事、ある訳がない?

 そうだった!あの時も!

 でも、結果、この様さ!!』


 脳内ゼユウは、泣いていた。

 それを見て、ああ、こいつって泣けるんだ。みたいな、感想が浮かぶ。


 感情が爆発した。気持ちは分かる。

 そして、助かる。


 無様な自分の姿を見て、逆に冷静になれるから。


「そんな未来の事なんて、分からないさ。」


 少しは休めた。身体を動かす。


「分かるのは、このままだとサダキが死ぬって事。

 サダキは大事な仲間なんだよ。だから、止めにいかないと。」


 よし、立てた。次は、脚を動かしてみる。


『だから、守れないって、言ってんだよ!』


 耳元で怒鳴られる。


『だいたい、仲間ってなんだよ!?

 お前をこんなにしたのは、サダキだろうが!』

「それはビッケに、そうさせられてるだけだろ。」


『そう、それだ!!』


 脳内ゼユウが、俺の眼前に回り込む。


『ビッケこそ、仲間じゃない!

 あいつは、今、フレン王国を滅亡させようとしている!

 サダキの天力がなくなれば、爆発するって知っていて、それを狙っているんだぞ!

 仲間の訳がない!

 それを、お前はまだ仲間だと言って!

 あの時だ、あの時、輝刃ブレイズブレイドじゃなくて、メタモルフォーゼなら、あいつの頭を石ころにでも変えてやれば、さっさとあいつを殺しておけば、まだ、違う結末があったはずなのに…!』


「ビッケは、確かに今、目的が別だよ。

 あいつは天使で、自分の世界とか、法律とか、そういうのも守らないといけなくて。

 そういう観点から見た時の、最悪の被害を避けようとしているんだ。

 それは、分かる話だ。間違いだとは思わない。」

『…。』


「それに、ほら。あいつ、言ってたじゃないか。本当は断海に捨てる予定だったって。

 つまりサダキを人間にして、天獣を断海に捨てた事にすれば、丸く収まるんじゃないか?

 そうすれば、また別の目的を一緒に目指せる。また仲間になれるんだよ。」


 脳内ゼユウが、俺の両肩を掴もうとして、すり抜けて転んだ。

 両手を地面につけて、俺を見上げ睨む。


『すがりたいだけだろ!?

 アニアの変わりを求めているだけだろ!?

 それで、仲間仲間いってるだけだ!

 変わりなんて、ないんだよ!

 もう1000年だぞ!いい加減、気づけ!!』


 今度は俺が、屈んだ。目線を合わせる。


「いきなり1000年前の事とか思い出して、混乱してるんだ。

 思い出せよ。

 ハンネ達と過ごした日々を、コーホとして過ごした日々を。

 ちゃんと、楽しかっただろ?

 守りたいんだ。命を賭けるだけの価値がある。

 全然、頑張れる。まだ、失ってないんだから。」


 ウイングを発動。さあ、第三ラウンドだ。


『お前は殉じたいだけだよ。

 最後まで仲間を守ったって、アニアに言い訳したいだけなんだ。』


 何て言うか、すまないな。

 こんな、俺で。


 お前はそこで、俺の代わりに、泣いていてくれ。

覚悟は決めた。弱い心は、置いて行く。

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