第115話 預言~真相②~
~前回までのゼユウ~
俺はサダキと二人で魔王城跡地にいた。
やってきたビッケに、俺の辿り着いた真相を話す。
王国滅亡の直接原因はサダキで、利用しているのがビッケだ。
◇登場人物◇
●ゼユウ:トリド●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王●サダキ:天獣
〇ハナ先輩 :職場の先輩
〇チゴマ :王宮の偉い人
〇フィアトリーヤ:フレン王国の王女
〇アルテド :王女の死亡記事を書いた男
〇ドットテカ男爵:ルフロンの町周辺の領主
〇カナミア :アイーホルの勇者
「裏で糸を引く王国滅亡の真の黒幕。
いいじゃないか、気に入ったよ。」
ビッケは手を叩く。拍手のつもりか?
「力業の脳筋というよりは、知能的なイメージでいいね。
規模感も悪くない。僕は魔王だからね。
数人殺すぐらいじゃあスケールが小さいし、世界を滅ぼすなんて言い出したら、スケールが大きいというより、バカっぽいし。」
拍手が止む。ビッケが俺を見る。
「さあ、続けてよ。
ここまではよかったんだ。最後まで期待してるよ?」
続き。
なぜビッケはそれをしたのか。なぜ俺は、ビッケがそうだと思ったのか。
そして、この後、俺達はどうするのか。
「レフィアラ。」
「…。」
「ビッケは、アンカバーズの雑誌に書いてあって、だから知ってるって言った。
でも、それは嘘だ。」
「へ~。なぜ嘘だと?」
「雑誌を見た。」
「…どこで?」
「ハナ先輩、覚えてるか?確か、半年前に、姿を見た事があったはず。」
「覚えてるよ?僕を見るなり逃げだした、挙動不審のお姉さんだ。」
「そうなんだ。怖がりなのに、噂とか、情報に詳しくて。
母親の影響って言ってた。
ハナ先輩のお母さんも、そういうのが大好きらしい。
非日常を求めてたんだ。
だからさ。
秘密を暴く事をテーマに、強引な取材で有名だった月刊誌とかも読んでたよ。
家に、バックナンバーがきれいに揃ってた。」
ビッケが吹きだす。
「物好きっているんだね~。」
「レフィアラって名前は、どこにも書いて無かった。」
「ありゃ、勘違いだったか~。ごめんね~。」
「そうでもないんだよ。」
ビッケが脚を組み替える。にやけ面のまま。
「チゴマさんに聞いたんだ。
レフィアラって言うのは、王女の名前の第一候補だった。
でも、生まれてきた子は、病魔に、呪に侵されていた。
コア王国残党の仕業だ。
勿論、女王様も、皆も、王女を見捨てるような事はしない。
後に、天使を召喚した事からも、愛情があったのは間違いない。
でも、最悪の事は考えていたはずだ。
39代続けた名前の法則。
それで名付けた子供が、亡くなってしまったら?
伝統が途絶えるとまではいかないが、泥を塗るような行為になるのではないか?
そういう意見が、少なからずあったみたいで。
それだけ、大事にされていた願いだったんだ。血脈を、名を繋げるという事が。
だからこその妥協案。
一先ず、フィアトリーヤと言う名前で育て、成人し、女王に就くその時に。
レフィアラという名前も贈られる。そういう事になっていた。」
結局、フィアトリーヤ様は亡くなってしまった。
その事は悲しい。でも、今は別の話だ。
「王女は成人時に名前を変える。この話を知っている人はそこそこいるらしい。
でも、レフィアラという名前まで知っているのは、チゴマさん含めて三人だけだ。
なんでビッケは知っているんだ?」
「王宮に協力者がいるんだよ。そこから情報を貰っている。」
ビッケは即答。
おそらく、用意されていた答え。
「アンカバーズの記者のアルテドを覚えているかい?
君から聞いた様子だと、彼もレフィアラと言う名前を知っていたみたいじゃないか。
そこまで秘密にされている内容じゃないんだよ。
それもそうさ、あくまで候補の名前の一つ。バレたからってなんだい?」
それは、まあ、そうだ。
「白状するよ。古本屋で、三冊買う前に、一冊買ったのは僕さ。
そして、買われてしまったと嘘をついた。
言い訳の為の工作だね。名前以外にも使うつもりだった。
雑誌で見たよって情報を公開しようとしたんだよ。情報源の存在を隠しつつね。
疑われてしまったから、存在は明かす。
でも、誰が情報源かは絶対に言わないよ?
魔王の眷属だからね。バレたら酷い目にあってしまう。それは可哀そうだよ。」
王宮にビッケの協力者がいるか、いないか。
それを調べるのは大変そうだ。
「流石だな、ビッケ。俺なんかより、よっぽど頭がいい。」
「ありがとう。素直に賛辞として受け取るよ。」
「だからさ。」
気づいたんだよ。
「俺より頭のいいお前が、何であのタイミングで、レフィアラっていう名前を出したのか、疑問だった。」
「…。」
「ちょうど墓の前にいた。折角だから、王宮は隠し事をしているぞって警告した。
そう考えたから、別に不思議に思わなかった。
でも、名前を出す必要はない。俺から尋ねた訳でもない。
王宮は王女の死を隠している、それだけでいいんだ。
なのにお前は、王女様の墓とは言わず、王女フィアトリーヤ様のお墓とも言わず、王女レフィアラ様のお墓って言ったんだ。」
ビッケは、一度も動揺を見せていない。
ずっとニヤニヤしている。
それでも、俺は続けるだけだ。
「フィアトリーヤ様の名前を知らない?無いよな、レフィアラの名前を知ってるんだ。
レフィアラの名前まで知っているのに、状況を知らない訳がない。
あのビッケが、言い間違える訳がない。
レフィアラという名前には、意味があるんだ。
理由がなく、口に出す訳がないんだよ。」
「どんな理由があるって言うんだい?」
ビッケは、いつもの、落ち着いた声だ。
「買い被ってくれるのは嬉しいけど、僕だって間違える時はある。
あの時は、知ったかぶりたかっただけさ。
王女の名前まで知ってて、博識だろってね。
あーあ、カッコ悪い。言わなきゃよかったよ。」
「それでも、言わないといけなかったんだろ?」
間違う時はあるだろう。でも、あの時は違う。
真相をドヤ顔で語るのが好きな奴だ。
ドヤ顔で語った事が間違っていたら、きっと悶絶すると思う。恥ずかしくて。
だから不十分な状況なら語らない。
素直に王女様の墓と言えばいい状況で、変な冒険はしない。
それでも言った。なぜか?
「トリドに、レフィアラ様だと伝えたかった。
魔法で俺に違和感を与えて、わざわざ墓の前に誘導までして。
伝える事が、目的だったんだ。」
なぜ?
わからない。
深い事情があるとは思う。
けど、フィアトリーヤ様はずっと寝たきりで、元気になったあとはクーノと一緒だった。
ビッケがフレン王国に来たのは、第二次クーラン大戦から逃げてきたからで。
そんな二人に、接点なんてあるか?
それでも、深い事情があったなら。
その理由こそが。
「それこそが、王国を滅亡させる動機に繋がるんじゃないか。と、思う。」
「…話が飛んだね。ゆっくりいこうよ。」
「どうしてお前は、勇者トリドの英雄譚の本のファンになったんだ?
お前は、よく本を読む。
でも、ジャンルが違う。
お前が好きなのは、情報誌とか、考察系なんだよ。
所謂、物語系は、碌に読まない。」
「たまたま読んで気に入ったんだよ。あるだろ?そういうのも。
それにあの本は、内容よりも作られた背景に興味がある。
なぜ書いたのか、なぜ隠したのか。どんな思惑があったのか。
ゼユウさんには話したじゃないか。」
「王宮にお前の協力者はいない。根拠はない。ただの勘だ。」
「…。」
「半年前、お前は初めてフレン王国にやってきた。
なのにトリドのファンで、協力者もいないのに、詳し過ぎる。
魔王だから、じゃあ納得できない。訳の分からない奴なんだよ、ビッケは。」
「…。」
「でも俺達は、そんなお前の状況を説明できるんだ。
俺達の仲間には、クーノがいるから。」
「聞こうじゃないか。君の、君達の出した結論ってやつを。」
「ビッケ、お前は天使だ。
こことよく似た、並行世界に行った事がある。
そこで、この世界ではフィアトリーヤ様という名前だった、レフィアラ様と仲良くなったんだ。クーノと同じように。」
そこで、レフィアラ様から聞いたんだろう。
フレン王国の事を、トリドの事を。
だからトリドに興味を持って、フレン王国に詳しい。
「はっはっは!」
ビッケが声を出して笑った。
「僕が天使か、それはいい。確かに、色んな事が説明できるよ。
でもさ、順序が変だよ。
ゼユウさんの考え方はね、まず、僕を犯人にするでしょう。
で、僕が犯人なら、どうすれば犯行を行えるかを考えてる。
それで、僕が天使なら辻褄があうって閃いて、喜んでいる。
これじゃあ、魔女狩りの魔女裁判。何でもありじゃないか。
確かに、天使は存在するし、並行世界だって存在する。と、僕達は認識している。
でも、これだと、僕をホーメナさんに変えても成り立ってしまうんだ。
いや、コーホである必要すらない。
東門近くの商店街近くに住む、爺さん。エロジジイで有名だったけど、もう1年くらい大人しいって話だよ。
きっと、天使に身体を乗っ取られてしまったんだよ。
その天使は並行世界を経験しているから、この国の内情に詳しい。
実は悲しい過去があって、この国を恨んでいて、滅ぼしたい。
裏で糸を引く王国滅亡の真の黒幕は、彼なんだ。」
思わず吹き出してしまった。
バカにしていない。素直に、その通りだと思ってしまった。
しかも、俺が言及していない、天使がやって来た理由まで付け加えてくれた。
確かに、前世界での恨みを晴らしたいっていう動機も、なくはないな。
「確かにそうだ。そうなると、国民全員容疑者で…。
…凄いな、ホーメナは。半年前にこの結論を出している。
まさしく、賢者だ。」
「何、ゼユウさん。諦めるの?次の説はないの?」
「ああ。俺がビッケに口で勝てるイメージが出来ない。」
俺とサダキは指輪を外していて、俺は魔力遮断効果のある布を被っていたのに、なんでここにこれたんだ?
きっとサダキの天力を察知して追ってこれたんだ。
天力を察知できる、つまり、お前は天使だ!
そんな感じのも用意していたけど、きっと躱される。
『忘れたのかい?廃城とは言え、魔王城。ここには~』とか言い出しそう。
「でも、いいんだよ。
ビッケに口で勝てなくても、ビッケを納得させられなくても。」
初めてビッケが、にやけ面を止めた。
「そうなんだ、証拠なんてある訳がない。
まだ事件は起きていない。フレン王国は、健在なんだ。
そして、コーホの目的は、フレン王国を滅亡させない事、そうだろ?」
「そうだね。で、ゼユウさんは何が言いたいのかな?」
「俺とサダキとビッケ。
三人で、このまま旅行に行こうぜ。」
満面の笑顔で、告げる。
ちなみに、真剣だ。
「…詳しく、聞こうかな。」
ビッケは、数秒考えた後、そう言った。
「サダキに世界を見せてやりたい。
まずは南下して、オスノとウスーマ。そこでしっかり準備する。
次の航海は長いからな。
ガーフィンまで、一気に行くつもりだ。
まあ、問題があれば、アスゴフソアに寄るかもだけど。
ガーフィンは、ワイバン大陸最南西。フレン王国とは全然違う文化だ。
ドンハまで行ったっていい。
借りた船も新型みたいでさ。ここまで乗ってきたけど、いい感じなんだよ。
半年かけて、ゆっくり周るんだ。きっと、楽しい。」
「…一つずつ、いこうか。」
「望むところだ。」
ビッケは立ち上がり、伸びをして、座る。脚を組んで、頬杖をつく。
「僕達は、フレン王国を守らないといけない。国を離れていい訳がない。」
「魔法聖域は完成した。
かつてないほどの防衛力さ。
秘密がバレて、暴動が起きる事も当初は懸念されていた。
でも、もうバレちゃって、しかも、予想より荒れなかったよな。
コア王国残党の集落も発覚して、監視も開始。
ドットテカ男爵や、カナミア達も協力してくれるし、賢者や天使が守ってるんだ。
俺達三人が抜けても、きっと大丈夫。」
「それでも、ヨダーシルやウーイング、勇者隊には対抗できるとは思えないね。」
「調査結果を見た。フレン王国を攻撃する素振りは一切ない。
半年以内なら、確実に攻められる事はない。」
「僕らは容疑者でもある。野放しにするのが危険だから、国を出るなとも言われているはずさ。」
「野放しじゃない。俺達三人の相互監視は続く。
定期連絡だって入れる。
この船についてるヨダーシルの最新通信機は、航路範囲をカバー出来る計算だ。
壊れたとしても、各都市の伝書鳥を借りればいいし。問題はないんだ。」
「それ、どうするの?」
「ニードルか?連絡して回収してもらうけど?」
「サダキさんは半年以内に死ぬんだろ?
だからこその旅行だと思うけど、君の推理だとサダキさんは死ぬと大爆発だ。
フレン王国さえ無事なら、他国は滅んでもいいのかい?」
「そうなんだよ。
だから、出発前にやる事がある。」
ずっと繋いでいたサダキの、手を離す。
その左手をビッケに突き出す。
そして、巻いてある包帯を外していく。
「説明だけしたよな。俺の新魔法、メタモルフォーゼ。
変質させる魔法。」
ビッケはもう笑っていない。真剣に話を聞いてくれている。
「今からサダキを、この世界の人間にする。」
真相の説明はお終い。
今は、解決策の提示の途中。
この後、少々のやり取りを挟み…。
最終決戦へ突入します。




