第114話 預言~真相①~
~前回までのゼユウ~
クーノの話を聞いて。俺の過去を思い出して。
今までの半年間を振り返って。報告書とかも読んだりして。
俺なりの、預言の真相に辿り着いた。
◇登場人物◇
●ゼユウ:トリド●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王●サダキ:天使
〇アニア:トリドの大事な人〇イルハーナ:アニアの妹
ここは魔王城跡地。
思い出の場所であり、始まりの場所。
初めてここを訪れた日、あの日から俺の世界は変わった。
ホーメナが開けて、そのままになってる穴から空を見る。
なんて見事な星空だろう。
足音が近づいて来る。
俺は立ち上がり、両手を広げて歓迎する。
「やあ。待ってたよ、ビッケ。」
エンビッケ。ルートレスの魔王にして、この城の主。
「まったく、何をやっているんだい、君は?」
勢いよく食べ物を口にして、むせる。そんな友人を窘める。
そういう雰囲気で、彼は言った。
「指輪を外して、こんな所に。
しかも、誘拐?
記憶を取り戻した反動でも出たのかい?」
位置を追える指輪を外してはいけない。コーホのルールだ。
それを破ったんだ。問答無用で取り押さえられてもおかしくない。
「…確かに、記憶を取り戻した事は、関係してるよ。」
でも、ビッケは会話をしてくれている。
そう、こういう奴なんだよ。
常識もルールもちゃんと知っていて。
その上で、自分のルールが最優先。
この状況なら、会話になると思ってたさ。
気になるもんな、俺の行動理由が。
「あれを見てくれよ。」
指を指す。真っ暗な場所を。
そこに明かりがつく。協力者が、つけてくれた。
「200個の、ニードルだ。」
これで、ニードルは1000個。
「ひゅう~♪」
ビッケが口笛を吹いた。
「フレン王国はさ、英雄を待つ為の国だった。」
俺の考えを、ビッケに語る。
「俺、つまり、トリドはフレン王国にやってきた。
目的は果たせた、ようにも見える。」
彼は、静かに聞いてくれる。
「でもイルハーナのした約束は、そうい事じゃない。
戻ってきた英雄が、ただいまと言えて。
それを、お疲れ様と迎えて、功を労い、安らいでもらいたい。
そういう願いだったんだ。」
トリドにも、そう伝わったはず。
「でも、帰ってきた時、彼の魂は既に無くて。
ただいまは言えなかった。時間がかかり過ぎた。
フレン王国は、トリドの状況を知っていた。自力で来れない事を知っていた。
迎えに、行くべきだったんだ。」
もしかすると、あの200年前。トリドを迎えに行ったのかもしれない。
「結果、約束は守られず、嘘をついた事になってしまった。」
ここからは、そういう意図だったのではないかという、考え。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます。」
去年のふれあい教室で、そう約束する親子を見た事がある。
「異世界から伝わった歌らしいんだ。
約束を破ると、指を切られて、一万回殴られて、針を千本飲まされる。
それだけ、約束は守れって意味みたいだけど。」
ビッケを見る。彼は帽子を深く被り、口元がにやけていた。
「王国は約束を破った。だから針を千、用意した。
そうだろ?ビッケ。」
数秒の間。
それから、低い笑い声。
「その歌は知ってるけど、実際に用意する奴は、そういないさ。」
「お前はその少数派だよ。だって面白そうじゃないか、用意された相手のリアクションを想像すると。
ほんとに飲ませたら笑えないけど、その直前までなら、な。」
「針という名前でも、実態は爆弾。一時の笑いの為に用意するのは手間過ぎるね。」
「お前にとっては手間じゃなかった。財力があったから。
そう、お見舞いの品を用意するみたいな感覚だったんだろ?」
「そもそも、誰に対してだよ?僕は誰のリアクションが見たかったっていうんだい?」
「俺だよ。いや、トリドかな?
勇者トリドの英雄譚のファンだって言ってただろ?お前。
たぶん、トリドの事情も、俺がトリドだって事も、最初から知ってたんじゃないか?
だから興味があると言って、俺に近づいてきた。」
おそらく、あのナポリタンの時から。
直接そうだと伝えなかったのは、自力で思い出してほしかったから。
こいつは、過程を大事にする。
全部、ヒントだったんだ。
俺に血縁だとか関係者だと言ったのも、千個のニードルも。
そして思い出した、その後。
「トリドの選択が気になったんだ。
もし、トリドがフレン王国を滅ぼしたいなんて言ったら、お前は喜んで千個のニードルを渡すつもりだった。
使用する事も視野だったから、本物を用意したんだ。」
「なるほどね、読めたよ。」
ビッケが帽子の角度を上げる。現れた瞳が、俺を見る。
「ゼユウさんは、僕が、預言の犯人。
フレン王国を滅ぼす者、だと言いたいんだね?」
ビッケは笑う。魔王の風格で。
「違うよ。」
面白い顔になるビッケ。格好つけたのに出鼻を挫かれてしまったから。
「でも、かなり中心にいる人物だと思っている。」
横に、誰か来た。協力者だ。
「フレン王国の滅亡、その原因は。」
その手を握る。安心させたくて。
「サダキだ。」
サダキも俺の手を握り返す。大丈夫だと言うように。
「へ~、なるほど。」
ビッケが、適当な所に腰かける。久々のビッケポーズ(頬杖つき脚組み)。
「ゼユウさんの推理を聞かせてよ。」
推理か。そう言われると、緊張する。
妄言だとバカにされないか心配だ。
でも、話す。伝えるという事だけは、決めている。
先の話をしたいから。
「トリドは、幻獣と戦った。
天上の国から来た、というか、連れてこられた奴だと思う。
一応、天獣って呼ばせてもらう。
その天獣は、特徴が二つあった。
一つは変身能力。最初は馬っぽかったのに、途中、熊みたいになって、また馬に戻った。
そしてもう一つが、自爆能力。
辺り一面、本当に更地になった。
それこそ、フレン王国の領土ぐらいの広さがだ。
そう俺は、この天獣の自爆で、フレン王国が滅亡すると思っている。」
ビッケは何も言わない。だから、続ける。
「数か月前、俺はこの天獣を見た。賢者の森でだ。
いったいあいつは、いつから、そしてどこから来たのか?
クーノに確認してもらった。
王宮の研究室は、転移の反応があれば分かるらしくて、ワイバン大陸西側までの範囲はカバーしているらしい。
中央や東側、ライダ大陸からやって来たのだとしたら、目撃情報がないのはおかしい。
海や空から来たのなら、王宮が気付くはず。
ずっと賢者の森にいた?ハンネが気付かない訳がない。
そして、最後に観測された転移でやってきたのは、サダキ。」
サダキには、この辺、全部話してある。クーノと一緒に。
それで、辿り着いた結論もある。
「サダキの正体は、天獣。変身能力で、人の形になっている。」
無意識にだろう。天力の制御が、まだ甘いから。
(あの日クーノは、ちゃんと動物を連れてきたんだ。)
勿論、サダキが家族なのは変わらない。
意思の疎通も出来る。天使と何も違わない。
賢者と魔王と天使と天獣と、千年前の人。
コーホメンバーとして違和感はゼロだ。
そう、これだけなら、何の問題もないんだ。
「…クーノが教えてくれたんだ。
サダキの寿命は、あと半年。…以内と言われている。」
ビッケの表情は、変わらない。
「日々、天力が落ちてきてるって。
天上の国に生きる者にとって、天力は命らしい。
前日まで普通に生活していても、天力がゼロになった瞬間に亡くなるって。
この辺は驚いた。俺達は魔力が空っぽになっても死んだりしないから。」
以前ビッケから、天使は死なないっていう話を聞いた。
でもそれは、天力が残っている場合で。
サダキは、天力の回復が出来なくなってしまった。
だからクーノは、俺がサダキに天力の制御を教えるのは許しても、サダキに天法を教える事はしなかった。
天力を消費させる天法は、使えば使うほど、その分、早く死んでしまうから。
ちなみにクーノが、この事実を告げられたのは、ハンネが死んだ後くらい。
それはもう取り乱したそうだ。
でも、サダキが笑顔だったから。最後までクーノと一緒がいいと言ったから。
自分がこんなのではいけないと、最期までサダキの面倒を見ようと決意した。
サダキを天上の国へ戻しても、よくなる保障がない。
サダキは孤児で、身寄りのないという話だったから、その点を考えても、戻そうとはしなかった。らしい。
実際、サダキは野生動物の扱いだから正しかった、と思う。
天上の国の事がよく分からない俺は、何も言えない。
「原因は二年前の天力暴走事故。
そこから、歯車が狂いだした。
打つ手なし。それが、研究チームの出した結論。
だから、サダキはコーホに入ったんだ。
最後の一年は、可能な限り自由にさせたいってクーノが言って。」
酷い話だ。
好きで起こした事故ではないとしても、それのお陰で、俺は今、動けているのだけれど。
そう思う、心から。
でも、俺も三日前、実験動物に対して酷い事をした。だから責められる立場ではない。
「クーノも、研究チームも知らなかったし、分からなかった。
サダキが天獣だという事も、そして天獣だとすると、大きな問題がある事に。」
検証なんてやりようもないから、可能性の話。
「トリドと戦った、天獣。あの時、奴は瀕死だった。
勝てないと悟り、自らの意思で自爆した。
そう見えたけど、別の可能性だってある。
天獣とは、命が尽きると爆発する生物。みたいな。」
何であんな大爆発したのかは、さっぱりだ。
でも確かに、爆発はした。
「サダキが死ぬと、爆発が起こる。
それでフレン王国の、領土内全てが光に包まれて消える。
サダキの死が確定したのは二年前の事故。
だから、それ以降でクーノの閲覧する世界全部で、フレン王国は滅亡したんだ。
それが俺の考える、預言の真相だ。」
言い終わっても、拍手はない。
当たり前だ。喜べる話ではない。
「…僕が気になったのは。」
ビッケが口を開く。
「ゼユウさんの推理に、僕が出てこなかった。
中心人物って言われたから、いつ出てくるのか楽しみにしてたのに。」
なるほどな。そこか。
「…俺も、気になったんだよ。」
ここからは、とても推理なんてもんじゃない。
でも、言うよ。お前の話も聞きたいから。
「俺は、俺の考える預言の真実に結構自信がある。
あってると思う。
でもさ?そうなると、おかしいんだよ。
だってコーホがいるんだぜ?フレン王国最強部隊。
サダキ抜きでも、賢者と魔王と天使とトリドがいる。
事故みたいなものなんだ、守れない時だってあるかもしれない。
でも、全ての世界で敗北するなんて思えない。」
例えばだ。
サダキの天力がいよいよ少なくなったとする。
クーノなら分かるだろう。
そしたらクーノは、皆に伝える。
サダキを看取る為、集まる。
そして亡くなって、爆発が起こる訳だが。
トリドの回想で見た、天獣の最期。
身体に罅が入り、光が漏れ出して。
天力なんて感じられない俺でも分かる異常事態。
それを見た、ホーメナやビッケが、何も出来ないなんて思えない。
いくら深い悲しみの中であったとしても。
だって、預言がある。そういう可能性を知っているんだ。
被害を全くださないのは難しくても、全滅なんてしない。
手前味噌だが、いいじゃないか。
コーホは強いんだよ。
「クーノの閲覧能力は、前提が近しい並行世界を覗ける力だ。
前提が近いなら、コーホは結成される確率が高い。
そりゃあ、俺やお前がいない場合もあると思う。
コーホの力が今より弱くて、そんな時は守れない。
なら、納得できる。
でも、違う。
コーホが弱い時も、強い時も、フレン王国は滅んでいる。」
ビッケは、ニヤニヤしている。
「ならさ。
『サダキを王国領土内で死亡させ、その爆発をコーホに阻止させないようにする。』
そんな事をやっている奴がいる。
そういう風に思うだろう。
とんでもない奴さ。毎回、コーホを出し抜いている。
きっと、あらゆる情報を持っていて、知らない事なんてないような、そんな規格外な奴なんだ。」
左手はサダキと繋いでいる。だから、右手を伸ばす。指をさしてやる。
「それがお前だよ。ビッケ。」
ビッケは、笑った。
33話分のまとめ。一話にまとめきれませんでした…。
第二章が全34話だから、長くやったものです。
見て下さった方、本当にありがとうございました。




