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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

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第110話 クーノの秘密~後編~

~前回までのクーノ~


私はフィアに会いたかった。だから王宮の協力を得て、彼女を蘇らせる事にした。

レンバト博士が主導となり、プロジェクトは進む。私もサダキを召喚したりした。

ある日、ハンネがやって来た。私は、彼女と話をする為、会いに行く。


◇登場人物◇

●ゼユウ:主人公●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王●サダキ:天使

〇フィアトリーヤ:フレン王国の王女。愛称は『フィア』

〇ハンネ:王女の護衛隊長、兼、世話係〇チゴマ:王宮の偉い人

〇レンバト:あるプロジェクトのリーダー

「人も増えた事だし、もう一度いう。

 いや、何度でも言う。

 フィアを生き返らせるなんて、バカな事は止めろ。今すぐに。」


 私は、心臓を掴まれたような気がした。


 ハンネの瞳は、怒りに燃えている。


「ほう。

 先程も少し言いましたが、私はそのプロジェクトのリーダーです。

 止めろと言う理由をお伺いしても?」


 博士は涼しい顔だ。


「理由だと?」


 対してハンネは、今にも爆発しそうな激しい顔。


「フィアは、死んだんだ。」


 その顔が歪む。


「悲しいし、悔しい。自分の胸を、引き裂いてやりたい。

 でも受け止めて、進まないといけない。

 それが、生き残った者の責務だ。」


 絞り出すような、声だった。


「それは、何故?」

「なぜ!?」


 表情を変えない博士と、そんな事も分からないのかと激昂するハンネ。

 今にも、掴みかかりそうな雰囲気。


 博士が言う。


「それは、そうすることしか、受け入れる事しか出来ないからだ。

 だから理由をつけて、納得しようとする。

 しかしそれは、過去になるのだよ。

 我々の研究が完成すれば、君の苦しみは無くなる。

 開放されるんだ。

 もう少しで我々は、死を超越する。」


 横から殴られた気がした。死を超越?そんな事は考えてなかった。

 私は、フィアに会いたかっただけで…。


「ふざけるな!そんな事、出来る訳がない!」

「天上の国では確立された技術だ。

 同等の技術力があれば、不可能ではないのだよ。」


「今、その技術は無いだろう!」

「だから研究を続けているのだよ。今は止まっているがね。」


「既に8年だぞ!まだ、研究を続ける気か!?」

「ここで止めたら、その8年も無駄になってしまうんじゃないか?」


「そんな事を言っていたら、いつまでも止まれない。

 人も、時間も、金もかけている。

 他の事に使っていたら、助けられた命だってあったはずだ。

 今止まれば、救える命があるんだぞ。」


 そこで、一旦、静かになる。

 博士は、少し考えてから、また口を開く。


「2年だ。」

「なに?」


「あと2年でフィアトリーヤ様を蘇らせる。

 クーノさんが天上の国へ帰る前に、必ず会わせてみせる。」


 それは、私の望んだ事だけど。


「フィアトリーヤ様だけなら、可能な話だと考える。

 誰にでも使えるようなレベルにするには、更に金も時間も必要になるだろう。

 この国が付き合えないというのなら、それでいい。

 私はここを去り、個人で研究を続けよう。

 この研究には、私の一生を懸ける価値がある。」


「だから、あと2年は黙っていろと?」


 ハンネは顔を伏せる。その身体は小さく震えていて。


「あんた、本は読まないのか?

 どれだけの、不死を求めた悪役が、主人公に罵倒されながら倒されたと思ってる。

 命は一つだから、失われるものだから尊いと吠える彼らは、カッコイイだろ。」


「それほど題材にされるほど、魅力的なテーマだという事だ。

 それに私の読んだものだと、確か主人公の言い分は『大事な人を生き返らせる代わりに、別の人を犠牲には出来ない。』だった。

 つまり、犠牲や代償が小さければ、許容できるものだったなら、あの主人公は喜んで大事な人を生き返らせた事だろう。

 この技術は、完成さえすれば犠牲も代償もない。彼は私を支持してくれるさ。

 命は一つだから尊いという考えは、私も好きだ。

 しかし同様に、外道に落ちようと大事な人を生き返らせたいという考えも、私は好きだ。」


「OK。」


 ハンネが顔を上げた。


「あんたとは、分かり合えない。それが分かった。」


「ならばどうする?

 死者を冒涜し、蘇らせようとする私を、この国を力で滅ぼすかね?

 君の好きな本の、主人公達と同じように。」


 ドキっとした。滅ぼすという単語に、預言を思い出して。


「私の好きな主人公達は、そんな事しないよ。」

 そう言ってハンネは。


「ねえ、クーノ。」

 私を見た。


「仮に後2年でフィアが生き返ったとして、フィア本人は、そして国民はどう思う?

 本来なら16歳のはずなのに、あの子は6歳なのよ?」


「コールドセーブという魔法がある。失魔法ロストマジックだが、実在はしていた魔法だ。

 その魔法にかかると、一切の行動が取れなくなるが、歳もとらない。

 魔力調整さえ完璧なら、数十年そのままでも問題なかったそうだ。

 病にかかった王女を助ける為に、止む無くこの魔法を使い、特効薬が出来たから魔法を解除した。

 そういうストーリーでよいだろう。」


 口を挟んできた博士を、ハンネは睨む。


「うるせえな。今、クーノと喋ってるんだ。

 で、クーノはどうなの?どう思うの?」


「わ、私は…。」


 ハンネは知っているかどうか分からないが、フィアを生き返らせたいと最初に言ったのは私だ。

 だから当然、この問いには、「それでいい。生き返ってほしい。」そう答えるべきなのだ。


 なのに。

 私は答えられなかった。


 ショックだったのだ。


 だって私は。

 フィアが生き返ってくれれば、皆が喜んでくれると思っていたから。


 実際、今まで、大変そうだという声はあったけど。

 反対する人はいなかったから。


 なのに、あの、フィアと仲のよかったハンネが、こんなにも怒ってる。

 フィアを生き返らせる事に、反対している。


「ハンネは、フィアに生き返ってほしくないの?」


 私は、彼女の質問に答えず、逆に質問していた。


「ああ。生き返ってほしくない。」


 ハンネは迷わず答える。


「それはきっと。

 あの時の後悔も、誓いも。それからの私の人生、全部を否定する事になるから。

 フィアの死を受けれて前に進んだ人、全員に対して失礼な事なんだよ。」


 あのテロの後、王宮を去るハンネの後ろ姿。

 それから、泣きながら故郷へ帰ったメイドさんの顔も浮かんだ。


 ハンネが立ち上がる。


「一つ聞きたい。」

 博士を睨む。


「何かな?」

 博士はハンネの事を見ない。


「フィアが生き返った時、その魂の器は…。」

「何を考えたか知らないが、安心したまえ。

 人間そっくりな人形を用意するつもりだよ。ヨダーシル製のやつさ。」


「…2年だな?」

「ああ。」


「了解した。」


 ハンネが部屋を出て行く。


 私は、逡巡して。そして、彼女を追いかけた。


「ハンネ!」


 あの日と同じように、王宮を去ろうとする後ろ姿に声をかけた。

 しかし、呼び止めたはいいものの、何て言ったらいいか分からない。


 そんな私に、ハンネは言った。


「私はさ。研究、上手くいかないと思ってるんだ。」


 その声は、優しい。


「何て言うかさ。多分、そういうものなんだよ。」


 そして、悲しそうにも聞こえた。


「でも、王女様が、チゴマさんが、そしてクーノが。

 この2年でフィアと、さよなら出来るなら、それでいいと思う。」


 距離は近いのに。

 私とハンネは、遠くにいる気がした。


「だから、それまではちゃんと守る。私が、この王国を。」


 その距離が、また近づくまで。


「それが、私がフィアに誓った事だから。」




 その半年後。ハンネにも預言の話をして、彼女の協力を得た。


 その1年後。再びコア王国の残党による襲撃が発生し、ハンネは命を落とす。

 彼女は宣言通り、この王国を守ってくれた。




「まったく、あの女は、こんなに機材を壊して。やはり、研究の邪魔をしたかったんじゃないかね。」


 半壊した研究室を見ながら、隣で博士がそんな事を言う。


「すまない、冗談だよ。こうして我々が生きているのは、彼女のお陰さ。」


 王国の防衛の打ち合わせで、ハンネと博士は顔を合わせては、いがみ合っていた。


「これで研究は一時中止せざるを得ない。

 まあ、今は、魔法マジック聖域サンクチュアリの方に力を入れねばならないから、丁度いいのかもしれない。

 国が滅んだら、元も子もないからね。」


 二人共頭が良かったから、何だかんだで認め合っていた。気がする。


「次の賢者はホーメナさんだったか?

 今度は素直な子だといいが、あの女の弟子じゃあ、期待できないかね。」


 だから、その背中は、寂しそうだった。




「それから半年後に、ビッケがやってきて、サダキが攫われて。

 ホーメナと一緒にビッケを追いかけて、ゼユウと合流して。

 ビッケと戦って、色々あって、コーホが誕生した感じだよ。」


 長かった私の話はこれで終わり。

 こんなに喋ったのは久しぶりで疲れたよ。


 途中から、サダキが私の手を握ってくれていた。

 私の声が震える時があったから、励ましてくれたのかもしれない。


 優しい子なんだよ。


 ホーメナは、顔を伏せている。ハンネの話が出たから、思い出して悲しくなったのかもしれない。


「お疲れ様、クーノ。」


 ゼユウの言葉に、私は頷く。


 恥ずかしいから口には出さないけど、皆、聞いてくれて、ありがとうだよ。


「結局、レフィアラっていう名前は出てこなかったね。」


 ビッケが言った。

 そういえば、そうだね。


「ゼユウさんの話も出てこなかった。アルテドさんは、10年前に見たって言ってたらしいけど?」


「そう言われても、私は見てない、と思うよ。」


「…思い出したんだけどさ。」


 ゼユウが口を開いた。


「テロの犯人は、毎回、全滅って書いてあるのを見たんだ。

 全滅っていうのは、全員、死んだか、捕らえたって意味でいいんだよな?

 つまり、俺が犯人の一味だとすると、一度、捕まって、脱走したって考えられるんだけど、捕まった連中ってどこにいるんだ?

 そういう記録は残ってないか?」


「私の聞いた話だと。」


 答えたのは、ホーメナ。


「テロの犯人は、全員、死んでるわね。」


 沈黙する。

 という事は、ゼユウは犯人の一味ではない?


「となると、アルテドさんは、何でゼユウさんを見た?見れた?

 クーノさん、本当に知らない?何か、忘れてない?」


 そう言われても。10年前だし…。

 あ、でも、一つ思い出した。


「そう言えば、爆弾が、どうとか?」


「爆弾?」

「それって、ニードルの事?直近のやつで100個、押収したけど、10年前もあった?」


 ニードルは私も見た。運ぶのを手伝ったから。

 一つ一つは、両手で運べるサイズだった。


「たぶん、違うと思うよ。

 もっと大きくて、ぱっと見、爆弾だと分からなかったって…。

 確か、ハンネから聞いたと思う。」


 ビッケが落胆したように、溜息をついた。

 アルテドとハンネから話を聞ければ、もっと進展したと思うけど、それは無理だから。


「…まあ、とりあえず。」


 そのビッケがまとめに入った。


「王宮が隠している事は分かった。

 亡くなった王女様を生き返らせようとしている。

 だから、死んだ事を隠している。」


 いつの間にか、脚を組んで頬杖をついている。


「そして、2年前だ。

 ゼユウさんが発見されて、王宮では事故があって。

 クーノさんが、滅亡の未来を預言するようになった。

 かなり重要な年だと思うけど?」


「私もそう思うよ。」


 私は、全部を話した。隠している事なんてないよ。


「あの事故の前までは、滅亡している世界なんて無かった。少なくとも、私が閲覧できる範囲では。

 だから滅亡の原因は、あの事故にあると思うんだよ。」


 直接の原因か、また別の原因に、動機に繋がるのかは分からない。

 けど、少なくとも、発端ではあるはず。


 だから男爵の件が、一段落ついた時にゼユウに伝えた。

 滅亡の原因は、私だと。


 事故はサダキの研究で起きて、サダキを連れてきたのは、私だから。


「…事故とゼユウに関係があるかは、分からないけど。」


 ゼユウで思い出して、一言、付け加える。


「クーノさんは今、話した事が全部だとして。」


 ビッケ再び。


「2年前、僕はこの国にいなかった。

 サダキさんは、それどころじゃなかっただろうし、ゼユウさんには記憶がない。

 となると、ホーメナさんだ。

 君からみた、2年前の事故はどうだった?」


 皆でホーメナを見る。


「残念だけど、事故の存在は知らなかったわ。

 賢者の森で暮らしていたし、ゼユウの件があって、それどころじゃなかったし。」


「ちょっと待ってくれ。」


 ゼユウだ。


「今更なんだけど、2年前の時系列を整えたい。

 事故があって、ハンネが王宮に行ったんだよな?

 俺がハンネに拾われたのは、どのタイミングだ?」


 私は通信機でチゴマさんに確認。ホーメナは日記帳みたいのを取り出して調べた。

 結果。


「事故→ゼユウ拾われる→ハンネ王宮だね。」


「…根拠は無いんだけどさ。事故ってゼユウさんに関係あるんじゃないかい?」


 タイミング的にね。




 それからも、もうしばらく。

 皆で、あーじゃない、こーじゃないと話し合った。


 結局、それ以上の情報は出なくて、今日は解散。


 その帰り道、私は考える。


 私は今でも、フィアに会いたい。

 でも、彼女を生き返らせるという行為は、正しい事なのかどうか、分からなくなっている。


 まずは、フレン王国を守ってから。

 そう言って、保留にしている訳だけど。


 (分からないよ…どうしたらいいか…。)


 私だけの話ではない。多くの人が関係している。


 (どうすれば…皆が納得できるんだろう…?)


 空には分厚い雲があり、星の光は届かなかった。

クーノの過去編はお終い。

まずは王宮の秘密が明らかに。

次は…?

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