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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

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第108話 クーノの秘密~前編~

クーノの口から、彼女の過去が語られる。


◇登場人物◇

●クーノ:天使

〇フィアトリーヤ:フレン王国の王女。愛称は『フィア』

*クーノ視点*


『ねえクーノ、気晴らしに旅行なんてどう?』


『ほら、こないだ見た映画、なんて名前だっけ?魔法を使うバトルものの。』


『楽しそうに見てたじゃない。きっと、ああいうのが好きなのよ。』


『これ見てよ、セール中だって。』


『つまんなかったら、すぐ戻ってくればいいし。』


『たまには何も考えずに、暴れちゃいなよ。』




『申し訳ありません。こちらのセール期間は、先週まででして。』


『似たような場所だと、こことか、あ、これなんてどうです?』


『いえ、最近はこういう所も人気ですよ。隠れた秘境、という感じです。』


『しかも今、ラインが出来ておりまして、その分、安いですよ。』


『承りました。それでは、こちらにサインを。』


『よい旅を。いってらっしゃいませ。』




 別に、旅行がしたかった訳じゃない。

 ただ、気を遣われるのは嫌だった。


 だから、離れるのはありだと思って。

 それだけ。


「おお、天使様…。」

「うん、天使だよ。」


 パンフレットは、ちゃんと読んだ。

 世界観は把握している。


 ここは、フレン王国。


 王女が呪われてしまったらしく、医者でも魔法でも治せない。

 だから、最後は神頼み。


 天使を召喚して、人外の力で何とかしてもらう為に、異世界の扉を開いた。

 それでやってきたのが、私。


 石造りの暗い部屋。

 床に魔法陣らしきものが描かれていて、真ん中に私。


 黒いローブの数人に囲まれて、彼らは皆、私に跪いている。


 映画で、似たようなシーンを見た。そういうものだと、聞いていたけれど。

 これは、テンションが上がる。


「どうか、天使様のお力を、お借りしたく…。」

「いいよ。王女様は、助けてあげる。」


「おお…天使様…。」

「ありがとうございます…ありがとうございます…。」


 悪い気はしない。

 こんなに歓迎された事は、今までなかった。


 案内されて、階段を上る。


 どうやらここは王宮の地下で、これから王女の部屋に向かうらしい。


 移動しながら、ポケットに入れている薬ビンを確認。

 ちゃんとあるし、割れたりしてない。


 出発前に渡された、王女用の回復薬だ。


 友人には、暴れるとよいと言われた。溜まった鬱憤を晴らす為に。

 でも私は、どうせなら美味しい物を食べて、チヤホヤされてぬくぬくしたい。


 王女様を助け、女王様に感謝されて、盛大なパーティーの主賓になりたい。

 褒美に、王宮にちょっと住まわせてもらう。ベッドはふかふかに違いない。


 そこそこ満足したら帰るのだ。長く滞在しすぎて、厄介事に巻き込まれる前に。

 そう、これが今回の旅行プランである。


 王女の部屋の前まできた。

 ゆっくりと、扉が開かれる。


 豪華で、可愛らしい部屋だった。

 そして、大きすぎるベッドで横になっている王女様。


 ゆっくりと、彼女に近づく。




 私は、見た目通りインドア派だ。

 本を読んだり、動画とか見て過ごしている。


 所謂、異世界旅行系の動画も、それなりに見た。

 ああいうのは、勢いとテンポが小気味良く、旅行に行かない私が見ても面白い。


 異世界あるあるは、知っている方なのだ。


 (このシチュエーション…見た事が、あるよ。)


 最初に、すっとぼけるパターンが浮かんだ。

 王女様の呪いを簡単に治して、『え、誰でも出来る事ですよ?』みたいな。


 実際、薬を飲ませるだけだから、誰にでも出来る。

 凄いのは薬であって、私ではない。薬を作ったのも、私ではない。


 『でも、薬を持ってきてくれたのは、天使様で~。』みたいな?

 そういうヨイショも悪くない。


 正直、無自覚無双系は嫌いじゃないよ。


 とはいえだ。

 私は自覚があるし、それでもやりたいなら、召喚時から仕込まないと。


 凄い天使様として登場したのだ。

 ここで路線変更したら、変な奴だと思われる。




 王女様の前まで来た。目を閉じ、寝ている。

 その身体をざっと見る。


 何か、黒い痣みたいのがある。これが呪いだろう。

 それ以外の事は、さっぱり分からない。


「儀式に必要なの、用紙して。」

 私は紙に、それっぽい物を書いて、案内してくれた人に渡した。


 演出の為だ。


 国が八方手を尽くして治せなかった、王女様の呪い。

 劇的に治した方が、説得力があり盛り上がる。パーティーも豪華になる。


 (…用意するのが大変なのは書いて無いはずだけど、不要な物を集めてもらってるんだよね…。悪いと思ってるよ。でも、折角なんだから、目一杯、満喫したい…。)


 目の前にいるのは、五歳の小さな女の子。しかも呪われて、苦しんでいる。

 そんな子と、彼女を助けたい人達を、騙し、利用するのは気が引ける。


 (せめて、しっかりと呪いは治してみせるから…。)


 もし、薬が効かなくて、呪いが解けなかったら。


 私は迅速に帰る。苦情を言う為に。

 返金請求だってするし、☆1評価で、ボロクソ書き込んでやる。


 そんな事を考えている内に、私の要求した品が届いた。

 それらを、それっぽく、部屋に並べていく。


 臭いがヤバいのや、スモークみたいのは無しだ。

 王女様に不快な思いはしてほしくないし。


 見届け人というか、証人達には壁に寄ってもらう。


 最後に明かりを消してもらい、私は地べたに座る。


「この度は、茶番に付き合わせて申し訳ありませんでした。」


 私が喋っているのは、異世界語だ。この世界の人達の知らない言葉。

 天使が謎の言葉を喋っていたら、雰囲気あるだろう。


「これには事情がありまして…。」


 ひとしきり謝罪した後、私はゆらりと立ち上がり、天法を発動。


 輝く光輪に、白い翼。

 この世界にもある天使のイメージ。


 難しい事ではないのだが、緊張はする。

 ここで全てが決まるのだ。


 王女様の顔を優しく撫でる。そして、自身の身体を近づける。

 角度によっては、口づけをしているように見えるかもしれない。


 そうして見えないように隠しながら、ポケットから取り出した薬を飲ませる。

 ちょっと口を開けて、数滴たらす感じ。


 寝ている相手に、流し込んだら大変だから。


 (一応、これで大丈夫なはずだけど?)


 身体を起こし、彼女の様子を見る。痣は消えてないと思う。


 ベッドの周りを、無駄に一周する。変化は見られない。


 (…なら、もう一度。)


 最初の位置に戻り、再び身体を近づけて…。


「…誰?」


 その瞳が開いた。


「天使だよ。」


 綺麗で、大きな目だった。


「私を迎えに来たの?」

「あなたを、助けに来たんだよ。」


 心臓はバクバクだ。それくらい、驚いている。


「そうなの?ありがとう。」


 王女様が、身体を起こした。


「あれ?」


 そのままベッドから降りて、立ち上がる。

 後ろで、声が漏れた。


「痛くないよ!」


 王女様は、両手を広げて一回転。痣は薄くなったような?

 後ろの声が、大きくなる。


「ほんとに助けてくれたんだ!」


 まだ明かりをつけていない、暗い部屋。

 私の光輪の光に照らされた王女様は、満面の笑顔で。


「ありがとう、天使さん。」


 私は思わず、見惚れてしまった。


 それが私と、フィアトリーヤの出会い。




 不滅の楽園。完全なる個。種の繁栄の放棄。やがて滅ぶだけの者達。

 それが異世界からの、私の世界への評価。


 暮らしている側からすると、ピンとこないものである。


 まあ、それでも。凄い技術があるんだなあって事は分かる。




 時間という概念はあるけれど、ある意味、それは超越したと言える。

 こと、異世界旅行という分野においては。


 簡単に説明すると。

 1月1日の10時に出発して、三か月、異世界で過ごしたとする。

 そして、帰ってくるのは、1月1日の10時って訳。


 三か月じゃなくて、それこそ、10年だったとしても同じ。


 勿論、別の問題は発生する。

 そして、その解決策もいくつかある。


 オブリビオンシステム、バックアップシステム、ウォッシュシステム、メモリーストレージシステム、等々。


 難しい話になったけど。

 ようするに、時間的問題は大丈夫だという話。


 後の問題は、法律とお金。

 流石に10年とかは、難しい。


 でも、1年くらいなら。延長する事に問題なんてない。




「まさか、こんな事になるなんて…。」


 王宮内の中庭。犬と追いかけっこをする王女様の姿を眺める。


「後悔してる?」

「…しては、ないよ。」




 王女様の呪いを解除して、感謝されて、パーティーを楽しんで、ふかふかのベッドで寝た。全部、予定通りだった。


 予定通りじゃなかったのは。

 王女様に、異常に懐かれた事。


 何度か遊んだし、話もしたし、気づけば後をついて来るし、ご飯は、だいたい一緒だった。


 一週間くらいして。

 予定通り帰ろうと別れの挨拶に行ったら、うわん、うわん、泣かれてしまった。


 私がいい気分になる為の、ダシに使った負い目はある。

 いや、そうじゃない。


 こんなに私の事を好いてくれた人は、初めてで。

 こんなに私の事を頼ってくれる人も、初めてだった。


 これでも私には、友達がちゃんといる。

 でもどちらかと言うと、私は世話をされる側。


 そういった意味でも、この状況は。

 貴重な体験であり、嬉しさもあり、気恥ずかしさもあり。


 私自身、もう少し続けたいと思える生活だったのだ。


 王女はもちろん、女王様も歓迎してくれたし。

 私は、一年間、この世界に残る事にした。




 それから三か月。

 王女様の護衛兼、世話係のハンネ隊長とも仲良くなった。


 こうして二人並んで、王女様が愛犬とじゃれあう様を眺める事も増えた。


「そう言えば、聞いた?」

「何を?」


「来週の流しそうめん。」

「あ~。」


 不満が出てるって聞いた。

 そうめんは良い、しかし流さなくてよくね?みたいな。


「クーノはどう?賛成?反対?」

「賛成だよ。」


 これは、イージー問題。


「流した方が、フィアが喜ぶ。」


「OK。じゃあ、協力してね。」

「ん?」


「賢者の森から、いい竹を調達しないといけない。」

「了解だよ。」




 開催された流しそうめん大会は、想像以上に大盛り上がり。

 途中、竹が割れたり、王女様がずぶ濡れになったりしたけれど。


 フィアも、女王様も笑っていた。




 スイカ割りもやった、肝試しも。

 納涼祭に、花火大会、バーベキュー大会。


 キノコ狩り、紅葉狩り、運動会。


 私はフィアと、沢山、遊んだ。

 その度に彼女は、弾けるような笑顔を私に向ける。


 もう私は、フィアトリーヤの虜だ。

序章。幸せな時間。


天上の国側は、実はこんなノリ。

でも、レーグ半島に集まった人達は、知りようがないし、千年前は雰囲気が違ったかもしれないので…。

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