第107話 ビッケが捕まった~進展~
~前回までのゼユウ~
アルテドを暗殺者から、守りぬいた。
でも、アルテドは重症。当分喋れない。俺も入院する事に。
入院中、俺は考える。答えの出ない問いを、ずっと。
◇登場人物◇
●ゼユウ:主人公●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王●サダキ:天使
〇アルテド:王女の死亡記事を書いたとされる男
□アンカバーズ:六年前廃刊になった雑誌。王女の死亡記事を載せていた。
「アルテドを撃ったのは、お前か?ビッケ。」
「答えはNOさ。」
考え疲れた俺は、部屋に入ってきたビッケに、何も考えずに聞いてみた。
「しかし、意味の無い質問だね。
撃っていないなら、NOと答えるし、撃っていたとしてもNOと答えるよ?それだと。」
ホーメナみたいな事を言いながら、イスに座る。
「出所おめでとう。」
「ありがとう。ゼユウさんがアルテドを捕まえてくれたお陰さ。」
どうやら仮ではなく、本当に出られたようだ。
「ゼユウ、調子はどう?」
「こう見えて私は、うさぎリンゴが得意だよ。確認してほしい、特に今回は自信作で…。」
「ゼユウ、お見舞いに来ましたよ!」
ぞろぞろと、コーホメンバーが集まって来る。
皆、俺が呼んだんだ。
「お見舞いの品です。」
サダキから本を、クーノから剥いてあるリンゴをもらう。
お礼を言って、一旦、棚の上へ。
「聞いてほしい事があるんだ。」
目が回るほど考えて、俺は一つの結論に辿り着いた。
俺一人が考えていた所で、何も分からない。
だから、俺が知っている事は全部、皆に伝える。
皆と一緒に考える。
言ってしまって、動いてしまう事もあるかもしれない。
取り返しのつかない事が起こるかもしれない。
誰かが、傷つく事になるかもしれない。
でも、確かな事は分からない。黙っている利点はないんだ。
知らなければ、選べない。
まずは知らなければならない。
(それこそ、ホーメナやビッケは、俺より考えるのが得意だから。)
仮に、どちらかが犯人だったとしても。
いや、だとしたら二人に同じ情報を渡す事で、最悪を防げる。
そう、思う事にする。
「まずなんだけど、俺なりに預言の犯人について、考えてみたんだ。」
ゼユウ犯人説を披露する。
改めて俺の事情を、ビッケから聞いた事を。
10年前に俺を見たという、アルテドの証言も加えて。
「だから俺の懸念は、800個のニードルだ。
出来れば、俺の知らない場所に移動してほしい。」
スッキリした。
だれも茶化さず、聞いてくれて嬉しい。
「ニードルは移すわ。それで、あなたの気が楽になるなら。」
ホーメナは、申し訳なさそうに俺を見る。
「ごめんなさいね。あなたに、気苦労をさせたみたい。
そしてありがとう、話してくれて。」
彼女は、いたずらを思いついた子供のような顔になる。
「何か、変な気を遣っていたみたいね。
私も自分の考えを言わせてもらうわ。
ずばり、ビッケ犯人説よ。」
俺に話してくれた内容。
ビッケが怪しい動きをしていると、彼女は言った。
「なら、僕はホーメナ犯人説を推させてもらうよ。
理由は、ホーメナさんが自分で言ってくれたよね?」
お互いが、お互いを疑いあう。
最悪な状況にも思えるが、何ていうか、雰囲気が明るい。
忌憚なく意見を言える、みたいな。
「サダキは、コア王国の方々だと思います。ゼユウは…、違うと思います。
だって、10年前なら、ゼユウは6歳で、だから!」
「私はビッケだと思うよ。これで、ビッケが二票。ビッケにはもう一度、捕まってもらって…。」
「…僕は、ゼユウ犯人説に変えるよ。これで二対二。決選投票さ。
さあ、サダキさん。君の一票で、一人の男の人生が終わるよ。
心して選んでくれ。」
「!?そ、そんな…。」
「いや~サダキさん。この間の一緒にやった虫取りは楽しかったねぇ~。」
「…俺、ビッケ犯人説に変えようかな。」
「!?」
まるで皆で遊んでいるみたいで、楽しかった。
「アルテドから聞いた事なんだけど…。」
ひとしきり笑ったら、真面目な話に戻る。
情報は多いほうがいい。些細な事でも。
「10年前、王女様が亡くなるのを目撃したらしい。
これについて、知っている人はいるか?」
「僕は、亡くなったのは知ってたよ。記事を読んだからね。
けどそれが10年前なのは初耳かな。書いて無かったと思う。」
「私も初耳。病弱とは聞いた事があったけど、会った事はないわね。
賢者といっても、王族と会った事なんて片手で足りるわ。」
「サダキも分からないです。会った事はないです。」
正直、この三人の返答は予想できていた。
本命は、クーノだ。
彼女は、王宮の秘密に一番詳しいはずだから。
「…。」
彼女は答えなかった。
別の話題にする。
「レフィアラ様、という名前を出した時、アルテドの様子が変わった。
そもそもなんだが、王女の名前はレフィアラ様で合ってるか?」
この名前は、名前の無い墓の前で、ビッケに教えてもらったものだ。
「…確か、」
ホーメナが口を開く。
「違った気がするわ、王女様の名前。何だったかしら?」
「フィアトリーヤ。」
「そう、確か、そんな感じ。」
クーノが呟いて、ホーメナが頷いた。
「え、でも、それは変です。」
サダキは、女王の名前の法則を説明する。
「今は、ルーティル様で、『ル』ですから、次は『レ』のはずです。」
そう考えると、フィアトリーヤではなく、レフィアラのはずなのだが。
「ビッケは、レフィアラ様の名前を何処で知ったんだ?」
「アンカバーズのバックナンバーだよ。古本屋に置いてあったやつさ。」
ばつが悪そうな顔で、ビッケは続ける。
「最初は四冊おいてあったんだ。
中々面白い内容だったよ?記憶に残るくらいはさ。
でも、買うほどじゃなかった。」
確かビッケは、魔王城に行って、必要な物を買う為に、王都へ来たはず。
その頃の話だろうか?
「それがさ、預言が~とか、コーホが~とかの話になって。
これは何かあるぞと。
図書館で調べたりもした訳。
花火大会の記事を見かけた時に、雑誌の事を思い出してさ。
買いに行ったんだよ。で、三冊しかなかった。
古本屋に確認してくれてもいい。
僕の事は覚えてないかもだけど、雑誌が売れた記録くらいはあるだろうし。」
勿論、最初の時、買っておけば~みたいな話はしない。
それを責めるのは酷い事だし、寧ろよく三冊も買ったとほめるべき。
「六年前に廃刊になった雑誌のバックナンバーなんて、入手は困難だろ?
ならダメ元で、古本屋に聞きに行くのはありか?
店員が購入者を覚えていたら、追えるかもしれない。」
記事を書いた本人が近くにいるのに、話を聞けないとはもどかしい。
「でも、それで分かる事は、ビッケの言っている事が正しいという事と、王女様の名前だけ?費やした労力と結果が釣り合わないよ。」
クーノの意見はもっともか?
「どうかしら。レフィアラという名前で、アルテドの様子が変わった。
という事は、この名前について調べる事は、かなり重要な事かもしれない。」
ホーメナの意見も、否定できない。
「ゼユウさん、アルテドの様子を詳しく教えてもらえるかい?」
「…ちょっと待ってくれ。思い出す。」
あれは、確か…。
「声を殺して、笑いだした。それで、何かを呟いて。
『王宮が何を隠しているのか、分かった』と、言っていた。」
「と、言うことはだよ?」
ビッケが、クーノを見る。
「レフィアラと言う名前で分かるのは王宮の秘密。つまり、クーノさんが話してくれれば、解決さ。」
静寂が、訪れる。
さっきまで、誰かが何かを話してたのに。
「…ごめん。ちょっと、お花を摘んでくるよ。」
クーノが席を立つ。
誰も止めないし、声を掛けたりもしない。
「休憩にしましょう。私もちょっと、席を外すわ。」
「サ、サダキも。ちょっと、喉が渇いて。ゼユウ、何か、飲みますか?」
「ああ、冷たいのを頼む。」
そうして、二人も出て行った。
(…。)
ビッケと二人きりだ。
彼を見ると、ビッケのポーズ(頬杖つき脚組み)でニヤニヤしている。
「どうしたよ?」
機嫌が良さそうじゃないか。
「いや、何、進展しそうだなと思ってね。」
「まだ、そうとは限らない。結構、話したし、今日はこのまま解散かもしれない。」
「いや、進むさ。
クーノさんは話してくれる気でいる。だから、相談じゃなくて報告しに行ったんだよ。」
「言い切るじゃないか。
でも、もしそうなら、早く皆で腹を割って話せばよかったな。」
そうすれば、もっと早く進展したかもしれない。
「それは違うよゼユウさん。」
ビッケはノリノリだ。
「四か月間、同じ屋根の下で一緒に生活して、僕らにはある程度の関係値が出来た。
どんな奴か分かってきて、だからゼユウさんが話してくれた事が響いたんだ。
相当悩んだ末に、打ち明けてくれたと分かったからね。
過程は大事なんだ。
例えば、裁判で無罪判決が出たとする。
それで時間遡行して裁判初日に戻り、被告人が判決理由をつれつれ喋り出したとしたら、どうだい?
結果だけじゃ、反感しか買わないよ。
だからさ。
ゼユウさんの打ち明けたタイミングは、かなり良かったって事だよ。」
何て言うか、本物のビッケだなと思って、安心する。
これが、ある程度の関係値というやつか。
「果たして王宮の秘密は、滅亡の預言に関係しているのか。
そして、ゼユウさんの過去と関係しているのか。
はは、楽しくなってきたじゃないか。」
「なあ、ビッケ。」
「何かな?」
「ビッケがリスペクトしている相手って、アルテド?」
「いや、僕がリスペクトしているのは、ヨルタムアーの魔王さ。
僕がクーランへ向かう前に、亡くなったけど。」
ん?確か、ヨルタムアーって…。
俺が思い出そうとした時、扉が開いて、三人が戻ってきた。
サダキから、飲み物を受け取る。
「お待たせ皆。」
クーノが口を開く。
「ゼユウも話してくれたから、私も話すよ。
私が知る、王宮の秘密を。」
視線がクーノに集まる。
「私が召喚されてから、今まで何をしていたのかを。」
次回からは、クーノの過去編。
少しずつ、謎だった事が判明していきます。




