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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

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第105話 ビッケが捕まった~暗殺者~

~前回までのゼユウ~


アルテドの捜索を開始した。

休憩中、俺とホーメナは微妙な雰囲気になってしまう。

凹んでいた俺は、捕まった。俺達が探している、アルテドに。


◇登場人物◇

●ゼユウ:主人公●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王●サダキ:天使

〇アルテド:王女の死亡記事を書いたとされる男


□アンカバーズ:六年前廃刊になった雑誌。王女の死亡記事を載せていた。

「用があるのはこっちも同じだ。

 だから、こんな事をしなくても、ちゃんとついていくよ。」


 俺は、アルテドと名乗った男についていく。

 ぬけ道というか、裏道というか。人と全くすれ違わない。


「なあ、これ、外してくれよ。」


 これ、とは勿論、魔力制御装置のこと。


「ダメだね。」


 振り返らずに、男は喋る。


「それを外したら、兄ちゃんは俺を拘束して、仲間の所へ連れて行く。

 流石に、魔法を使える兄ちゃんは倒せないからな。」


「…よく調べてるんだな。」

「昔は記者だったし、今は探偵だからな。」


「ビラを配っているのは、あんたか?」

「着いたら教えるさ。もう少しだから、慌てるな。」


 こいつが本当に、俺達の探しているアルテドかは分からない。

 しかし、情報を持ってそうではある。


 なら、大人しくついていくのはありだ。

 そうすれば、害は加えられない、と思うし。


「ほら、ここだ。」


 男が足でゴミ袋をどかすと、蓋付きの縦穴が現れる。

 蓋を開けると、中は真っ暗。辛うじて、埋め込まれた梯子みたいのが見える。


「閉めないといけないからな。先に入ってくれ。」


 (すげーやだ。)


 暗すぎて足場は見えないし、何か隠れてそうだし、何より臭いがきつい。

 清潔とは程遠い。


 まあ、行くしかないんだが。


「明かりは?」

「無い。気を付けて下りてくれ。

 足を滑らせて落ちた場合、打ちどころが悪いと、死ねる。」


「…。」


 俺は、慎重に下りた。

 長いのか短いのか分からなかったが、幸い、無事に地面を踏めた。


「真っすぐ進んで、突き当りを右だ。」


 相変わらず、真っ暗。壁に手をつきながら進む。


「その扉だ。鍵はかかっていない、入ってくれ。」


 足で、押すように開ける。


 すると、部屋の壁のランプがついた。

 魔法か、魔道具だろう。


 雑多な物が散乱する、小さく小汚い隠れ家という印象。


「お疲れ様。まあ、適当にくつろいでくれ。」


 タオルを投げ渡されたので、手を拭く。

 まだ、ねちょねちょする。水で洗いたい。


 くつろげと言われたが、正直、物に触れたくないから、立ったまま話す。


「それで?あんたの目的はなんだ?」


「なに、兄ちゃんに聞きたい事があるんだよ。

 でもそうだな。ここまで来てくれたお礼に、先に、そっちの質問に答えようか。」


 イスに座って、ニヤニヤする男。

 何というか、落ちぶれたビッケみたいだ。


「正直、聞きたい事だらけなんだけど、質問はいくつでもいいのか?」

「いくつでも構わない。しかし、拒否権と時間制限がある。」


 取捨選択が必要という事か?


「ビラを配ったのは、あんたか?」

「そうだ。」


 OK。男の確保は確定だ。


「どうして?」

「真実だと分かった。そして、それが隠されていた。だから、教えてあげたんだ。」


 いけしゃあしゃあと言うじゃないか。


「お陰で、混乱が起きてる。」


「それも含めて、選択だ。自分で選ぶというのが重要なんだよ。

 否が応でも、人は選択しなければならない。

 それは悪い事じゃない。

 選択に向き合っても、挑んでも、備えても、逃げ出してもいい。

 選択は、自由なんだよ。

 でもね、知らないんじゃ選択は出来ない。自由が無い。

 それは、悪い事だよ。」


 わかった。


 この人は、ビッケと同じ人をリスペクトしている。

 もしくは、ビッケがリスペクトしている人だ。


 俺はこの人を捕まえて、相手はビッケにさせよう。


「質問は以上だ。そっちの聞きたい事を聞いてくれ。」


 そして俺を開放してくれ。そしたら、あんたを捕まえるから。


「へ~、意外だよ。てっきり、王女様の死の真相を聞いてくると思ったのに。」


「確かに聞きたかったけど、時間制限があるんだろ?

 それに、俺よりも知りたがっている仲間がいるんだ。

 だから、そいつに話してほしい。」


「それが、兄ちゃんの過去と関係あるとしても?」

「…何を、知ってるんだ?あんたは。」


 辺りに、異音が響いた。

 …警報音のように、聞こえる。


「時間切れか。想定より大分早い。

 上手く行けば、ここで開放するつもりだったんだが。」


 男は立ち上がる。


「残念だけど、話はまだなんだ。兄ちゃん、こっちに来てくれ。」


「…。」


「ちなみに、今きているのは、兄ちゃんの仲間じゃない。ほら、急いでくれ。

 巻き添えで死にたくないだろう?」


 これも、選択というやつだろうか?

 この男の話を信じるかどうかという。


「…わかった。行くよ。」


 男に続いて小部屋の奥へ。

 頑丈そうな扉をくぐり、更に進む。


 暫くして、後方で爆発音。

 衝撃があり、パラパラと上から何か落ちてくる。


「実は、殺し屋に狙われていてね。」


 今更ながら俺は。

 現状が、かなり危険なのだと知る。




「アンカバーズが廃刊になって、職が無くなった俺はこの国を出た。」


 廃刊の一年後に出国したはずだから、今から五年前の話だろう。


「俺はウスーマまで行ったんだ。オスノの南で、グンターの西。

 ワイバン大陸、最西の国だな。」


 暗い道を先導しながら、アルテドは身の上話を喋っている。


「知人を頼ったんだ。で、探偵を始めた。

 中々、楽しかったし、評判もよかった。転職は大成功って訳さ。」


 道は相当悪い。慣れているからか、アルテドはどんどん進む。

 だが、待ってくれとは言えない。暗殺者に追われているのだから。


「ある日、やばいネタを拾っちまった。

 よくある話と言えばそうで、俺としては、どうでもいい話だった。

 でも、当事者は臆病な奴でな。

 暗殺者を使って、俺を消そうとした訳だ。」


 ついていくのがやっとの俺は、口を挟まず黙って聞いている。


「俺は逃げた。

 グンター、オスノ、アイーホル。

 いくらもらったかは知らないが、しつこい奴なんだよ。

 フレン王国まで戻ってきたのに、相変わらず狙われている。」


「こっちとしては、迷惑な話だ。

 あんたが来た事で、得体の知れない殺し屋も、国内にやって来て。

 挙句、街を混乱させられた。」


 徐々に明るくなってきた。目的地は近い、かもしれない。


「確かにそうかもしれない。

 でも、俺だけの所為ではない、と考えている。」


 男が扉を開けた。

 眩しさに目を細める。地上に戻ってきたんだ。


 さっきの小部屋よりは大きな部屋。そして、物も少ない。


「ここは水が出るからな。手を洗ってくるといい。」


 男が奥を指さす。


「戻ってきたら、本題だ。」




「三か月前、俺はアイーホルにいたんだ。」


 男は壁を背にイスに座っている。

 俺も同じようにする。


 二人共、窓から見えない位置だ。

 本の知識ですまないが、暗殺者=窓から狙撃のイメージがあるから。


 建物ごと破壊してくるような破壊者でない事を祈る。


「ラゼン山脈の厄介な魔物が討伐されたって聞いたから、山を越えて、ネクーツに行こうとしたんだよ。東大陸に逃げるつもりだったんだ。

 でも出発直前に、手紙をもらったんだ。」


「手紙?どうやって?」


「宿泊先のドアの隙間に挟まっていた。

 あれは怖かった。

 上手く潜伏できていたと思っていたし、実際、殺し屋の襲撃も無かった。にもかかわらず、俺の居場所を突き止めた奴がいるんだからな。」


「手紙の内容は?」


「調査依頼だった。

 『フレン王国の王女の死の真相を調べてほしい。』ってね。」


 それは。

 アンカバーズが追っていて、辿り着く前に潰された内容で。


 ビッケが興味を持っている内容だ。


 より正確には、『王女の死を隠しているのは、何故か?』だが、それも『死の真相』の中に、依頼内容に含まれているはずだ。


「報酬は、暗殺者の排除。

 フレン王国内での身の安全は保障する。

 ただし、余計な事まで探る場合、安全の保障は取り消す。

 そんな内容だった。」


「…あんたはそれを引き受けて、余計な事まで探った訳か?」


「その通り。手紙の主は暗殺者よりよっぽど怖い。

 どう転んでも、俺は安全じゃない。

 だから、弱みを握りたくてね。徹底的にやった。」


 それで、天使の預言を突き止めた、と?

 国民に流布するという余計な事までしてくれた訳だが、この男の実力は相当なモノだ。


 となれば、その男の動向を把握できる手紙の主は、もっと凄いという事なのか?


 手紙の主は…。


「手紙の主は、兄ちゃん達、コーホの中にいると考えている。」


 コーホの存在がバレている事には、驚かない。が。


 (コーホの中に、いる?)


 信じられないし、意味が分からない。

 そう思いたい所だが、一人の人物が浮かんでしまっている。


「さっき兄ちゃんは、王女様の死の真相を知りたがっている仲間がいるって言っていたじゃないか。その仲間について、詳しく教えてくれよ。」


 ビッケ、なのか?


 ビッケがこの男を呼び寄せて、この状況を作ったのか?

 そこまで、王女様の死の真相を知りたかったのか?


 だとしても、無理だ。

 ビッケはフレン王国を出れない。アイーホルには行っていない。


 (でも、協力者がいたとしたら?)


 ホーメナは言っていた。


 ツアーに参加した、そういう人と繋がりを持った可能性がある。

 ひょっとしたら、それこそが、ツアーの真の目的だったかもしれない。


 (既に繋がりがある者と、ツアーで会っていた。というのも考えられる。)


 ビッケは、魔の王なんだ。臣下がいるんじゃないか?

 そいつが、ビッケの指示を受け、国外で暗躍する。おかしくない話だ。


 (…でも、それは。)


 ビッケでなくとも、同じことが言える。


 例えばホーメナなら、可能だ。

 国外に協力者をつくり、その者に指示を飛ばすくらい。


 (王女様の死の真相を知りたがっている人がビッケの他にいても、おかしくはないけど…。)


 彼の場合は、好奇心と王国を守る為。

 彼とは別に、真相を求める人物がいるとすれば。それは、何の為に?


「仲間は売れないか。…まあ、いいさ。」


 俺が言葉を出せずにいると、アルテドが喋り出す。


「想像以上に敵さんの動きが激しい。今日で仕留める気だ。

 たぶん、俺は逃げ切れない。だから。」


 何かの装置みたいなのを眺めながら言う。

 あれで暗殺者の動きが分かるのだろうか?


「どうせなら、長年の疑問を解消したい。」


 アルテドが、俺を見た。


「兄ちゃん、何者だ?」


 本当に、ビッケみたいな事を言う。


「調べたんじゃないのか?」


「二年前に賢者の森に現れて、賢者に拾われた記憶喪失の青年。

 現在はコーホの一員。

 ラゼン山脈の蘇生岩リバイブロックを討伐した功績を持っている。」


「十分、詳しいじゃないか。」


 もう、話せる事はないぞ。


「俺はさ。」


 遠くを見るような瞳だ。過去を思い出しているような。


「兄ちゃんを見た事がある。10年前にな。」

『ビッケが捕まった』っていう、ギャグみたいなタイトルなのに。

王宮とゼユウの謎に迫る、シリアスな話(笑)。

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