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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

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第104話 ビッケが捕まった~アンカバーズの記者~

~前回までのゼユウ~


ビッケが捕まった。

勝手に国外へ出た事と、ニードルの所持と、秘匿情報の流布の疑いで。

俺達コーホは、秘匿情報のビラ配りの犯人の捜索を始めた。


◇登場人物◇

●ゼユウ:主人公●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王●サダキ:天使

〇チゴマ:王宮の偉い人〇ハナ先輩:職場の先輩

〇アルテド:王女の死亡記事を書いたとされる男


□アンカバーズ:六年前廃刊になった雑誌。王女の死亡記事を載せていた。

 アルテド。

 六年前、例の記事を書いた人物の名前だ。


 アンカバーズのバックナンバーから名前を調べた俺達は、二手に別れる。


 クーノとサダキは、チゴマさんに協力してもらい、出版関係者から情報を得られないか当たってもらう。


 俺とホーメナは、出入国の記録を漁る。


 ここ一年くらいの間の物は、賢者の森側で管理しているから、ハナ先輩達に調べてもらうようお願いした。


 それ以前の物は王宮管理だから、二人で探す事になる。


 地下の倉庫にやってくる。

 何気に、俺が王宮の敷地内に入ったのは初めてだ。…初めてだよな?


「出入国記録だけで、こんなにあるんだな。」


「50年分くらいね。スペースの問題で無理だったけど、本当は、もっと取って置きたかったのよ。

 コア王国の残党の洗い出しも途中で放置状態。

 …今はそれより、アルテドよ。」


 六年前の帳簿を、手元に用意した。


「まずは、アルテドが出国したかの確認よ。

 単純に、記録に名前があるか探して。」


「わかった。」


 二人で黙々とページをめくっていく。


「見つけた!アンカバーズが廃刊になって、一年くらいで国を出ている。」


「OK。

 なら、次は戻ってきているかよ。

 入国する場合は、別の名前になっている可能性があるわ。

 入国した後、出国していない人物は、後で総当たりよ。控えておいて。」


「…わかった。」


 手書き文字の帳簿の見比べ。慣れていない仕事ではない。

 とはいえ、件数が多いから。数時間も続けるときつい。


 集中力がいるからな。見落としたら終わりだし。


「少し、休憩にしましょうか。」


 ホーメナの言葉に頷いた。




 王宮敷地内でくつろぐ訳にはいかない。


 チゴマさんにもらった許可証を提示して身体検査を受けて。

 裏門みたいな所から、こっそりと出る。


 少し離れていたが、シークレットデイズまでやってきた。


 最初は知らなかったが、王宮の関係者の店らしく、コーホの事情も知っているらしい。

 どうりで皆使うし、際どい話も普通にした訳だ。


「クーノ達の方も情報は無いみたいね。まだ、あてが残っているみたいだから頑張るって言っていたわ。

 ハナ達の方は、団体さんの相手をしているらしく、まだ調べられてないみたいね。」


 王宮敷地内への出入りは気軽には無理だし、したくもない。

 今の内に甘い物でも飲んで、英気を養っておこう。


「正直、こんな状況になるとは思わなかったわ。」


 ホーメナが呟く。


「確かにな。アルテドが王都にいるなら探し出して事情を聞く。

 いないなら、捜査は振り出しに戻る。

 どっちにしろ、長い戦いだ。」


 これこそ人海戦術が有効なのだが、人を集めるのは難しい。


 王宮正面には人が集まっていた。ビラを見て、事情の説明を求めている人達だ。

 その対応にも、人はいる。


「…まあ、そっちもあるけど。

 私が言ったのは、別の件よ。」


「別の件?」


 何か抱えていたのか?同時進行で事件が起きているのか?


「預言の犯人。ほぼ私とビッケの二択じゃない。」


 ガラガラとはいえ、何て話をし出すんだ。

 預言というワードは、今、デリケートに扱うべきだろ。


 慌てて音制御ノイズコントロールを使おうとして、既に似たようなものが使われているのが分かる。


 店側のサービスだ。

 しかもこの店の防音レベルは、かなり高い。俺が使う必要がないほど。


「誰がそんな事、言ってるんだよ?」


 少なくとも。俺はそうは思っていない。


「私はビッケが黒だと思っているし、ビッケは私が黒だと思っている。」


 確かに、ビッケはそんな事を言っていた気がするけど。


「お互い単独行動が多い。一応、全部に理由がある。

 例えば、ビッケは資金調達という理由で、発掘ツアーをやったじゃない?

 ニードル500個を発見した、やつね。

 ビッケの言った事は全部本当だと思う。

 でも、全てを話したとは思えない。

 例えばよ?ツアーに参加した中に、違法な商売をする人間がいて。

 その人にビッケが近づいて、ニードルの取引を持ち掛ける。

 で、今回、200個のニードルを受け取ったっていう可能性よ。

 …ビッケにしては、簡単に捕まったの。だからこそ、言い訳に見える。

 『僕が計画したのなら、もっと上手くやるさ。』そんな事を言いそう。」


「…流石にこじつけじゃないか?そんな事いい出したら、クーノやサダキだって…。」


「そう。もちろんゼユウにも当てはまる事がある。

 でもね?これは四か月の積み重ねの問題なのよ。

 怪しいと思える行動を記入していくと、彼がダントツ。

 …第三者的に見ると、私もね。」


 記入していたのか。


「おそらくクーノもそう思っている。サダキは分からないけどね。

 ゼユウは違うの?」


「俺は、違うよ。」


 ここで。

 言うべきだろうか?自分の考えを。


 俺の中で一番怪しいのは、記憶を取り戻した、俺だと。


 言うべきだろ?

 それこそ、ホーメナには。


 あってるとか、間違っているとかではない。可能性の話として。

 あるかも知れない事だから、心に留めておいてくれと。


 そう思う。思うのだが。


 怖い。


 言ってしまったら、取り返しのつかない事になるんじゃないかって。

 何かが、壊れてしまうんじゃないかって。


 何かって?

 分からないよ。


 分からないから、こんなに怖いんだ。

 考えつくのなら、対策だって立てられる。


「まだ、コーホの中に犯人がいるとも決まっていない。」


 言うにしても、まずはこの件が片付いてから。

 そういう言い訳が思い浮かんで、それを採用。


「…確かにねぇ…。」


 ホーメナは俺から視線を外して、コーヒーを飲んだ。


 なんとなく、ガッカリされた気がして。

 この空気を変えたくて。


「でも、ホーメナとビッケの二択なら、犯人はビッケだな。

 いっそ、このまま捕まっててもらうのも手なんじゃないか?」


 意識して、明るく言った。

 ホーメナは。


「…ねえ、ゼユウ。どうしてそう思うの?」


 呟いた。


「…どうしてって。」


 あたりまえだろ。ホーメナがする訳がない。

 そう言おうとした。


 ゼユウ犯人説を推している俺は、ホーメナを疑っていない。…はず。


 でも、言えなかった。

 彼女は俺を睨んでいるから。


「私の言った事を、簡単に信じないでよ。」


 視線を逸らした彼女の呟きは、どういう意味だろう。

 彼女が、分からない。


「だってホーメナは、犯人じゃないだろう?」


 沈黙が嫌で、出た言葉。弱々しく縋るようなセリフ。


「その質問に、意味はないわ。

 私が犯人じゃない場合、犯人じゃないって答えるし、犯人だったとしても、犯人じゃないって答えるから。」


 考える。ホーメナの発言の意図を。




 脳内会議を始める。

 参加者は、俺と、イマジナリーホーメナと、イマジナリービッケ。


「俺はホーメナと気まずいのは嫌だ!なのに、今、凄く気まずい!なぜか!?」


 いきなり叫んでしまう。困っているから、助けてほしい。


「何故も何も、君の失言が原因じゃないか。」


 ビッケが、心底つまらなそうに言った。


「失…言?」


「思い返してみなよ。

 『でも、ホーメナとビッケの二択なら、犯人はビッケだな。いっそ、このまま捕まっててもらうのも手なんじゃないか?』

 そう言ってから、明らかに不機嫌になったじゃないか。」


「なんでそんな事いったのよ…。」


 イマジナリーなのにホーメナが不機嫌で悲しい。


「…それは、ホーメナに味方だと伝えたかった。

 君の意見に賛成だと、従うと…。」


「それじゃないかな?」


 ビッケが、ビッケのボーズ(頬杖つき脚組み)になった。


「このセリフだけを見た場合、ショックを受けるのは僕さ。

 信用してもらえなくて悲しいからね。

 でも、文脈ってあるじゃないか。

 このセリフを言う前、君は何て言った?」


「…前?」


 ちょっと待ってくれ。思い出すから。


「預言の犯人は、私とビッケの二択だと言った私に対して、

 『俺は、違うよ。まだ、コーホの中に犯人がいるとも決まっていない。』

 って、言ったのよ。あなたは。」


 という事は?


「君は意見を変えたんだ。ホーメナさんの意見に、乗り換えたんだよ。

 簡単にね。」


 待ってくれ。


「ホーメナさんの意見に従って、間違えたらホーメナさんの所為にするつもりなのかな?ゼユウさんは。」


「そんな訳ないだろ!」

「ゼユウ、私はね。」


 ホーメナに見つめられる。


「ビッケが、限りなく怪しいと思っている。

 でも証拠はないの。それに、仲間を疑いたくもない。

 間違っているなら、間違っているで構わないの。

 ほしいのは、同調じゃなくて情報。

 ゼユウにも、考えてほしいのよ。」


 そう言って、ホーメナは席を立った。


「ホーメナさんの、全部の意図は分からないけどさ。

 ゼユウさんにも考えてほしいと思っているのは事実だと思うよ。

 『私はビッケが黒だと思っているし、ビッケは私が黒だと思っている。』

 そうでないと、こんな変な言い方にならない。」


 ビッケも立ち上がり、俺の肩を叩いた。


「言うべき事は、分かるよね?」




 俺の意見を、ゼユウ犯人説を伝える。


 何かが壊れるかもなんて考えている場合じゃない。

 今、ホーメナとの関係が壊れそうなのだ!


 でも、どうやって切り出そう?

 もう単純に、『俺の考えを聞いてくれ!』でいいか。


 そうして、口を開いた時。


 ホーメナの通信機が鳴った


「…うん、…うん。わかったわ。ええ、大丈夫。」


 短くないやりとりを、固唾をのんで見守る。


「ハナの方、やっぱり難しいみたい。悪いけど、ゼユウはそっちに行って。

 もう少し、ゆっくりした後でもいいから。」


 そう言うと、彼女は立ち上がる。


「先に戻るわ。また、後で。」

「ホーメナ!少し待ってほしい。」


 呼び止めるが、彼女は止まらない。


「会計は経費で落とすから、安心していいわ。」


 ホーメナは去っていった。

 取り付く島もない雰囲気。追いかけても、余計に話がこじれそうで。


 (ホーメナも、俺と衝突したくないから出て行ったんだ。

 だから俺も、頭を冷やした方がいい。)


 そんな事を考えながら、俺はしばらく動けなかった。




 とはいえ、いつまでも呆けていられない。

 切り替えていこう。ハナ先輩の所で、アルテドの調査だ。


 そう思って、店を後にしたのだが。


 (…はぁ。)


 正直、めちゃくちゃ凹んでいる。


 (切り替えろ、切り替えろ…。ハナ先輩が心配するだろ?

 まさか、慰めてもらおうなんて、考えてないよな?)


 とぼとぼ歩く。

 そう、俺の注意力は死んでいた。


 だから、男が近づいてきたのにも気づかない。

 その男に腕輪を着けられて、通信機を盗られるまで、ポカンとしていた。


「よう兄ちゃん。ちょっと付き合ってくれよ?」


 ようやく何かに巻き込まれそうだという事が分かった俺は、男に回し蹴りを放つ。

 男は軽やかな身のこなしで、それを避ける。


 間合いを取りつつ、男と睨み合う。

 皺のある、小柄な男。当然、面識はない。


 (魔法が使えない。きっとこの腕輪は、話に聞く、魔力制御装置…。)


 ガチャガチャと腕輪を外そうとするが、外れない。

 間抜けな自分を殴ってやりたい。


 (魔法なしで勝てる気はしない。何とかこの男を撒いてホーメナと合流…。

 でも、不審者を王宮まで連れて行くのか?いや、言ってる場合じゃないか?)


 そんな事を考えている俺に対して、男は。


「俺は、アルテド。」


 自己紹介を始める。


「あんたらが捜している、アンカバーズの記者をしていた男だ。」


 そう言って、そいつは。

 ビッケがいつも被っているような帽子を、被った。

音制御なんて魔法がある為、ほぼ全ての建物には対抗の魔法が使われています。

いい料理屋とかなら、個室ごとにも。


かなりの実力者なら突破できてしまいますが、出来るからといって、やってはいけません。禁止する法律もあります。


そういえば、第一章の『金欠』で、盗聴しまくってた奴がいたような…。

ウーイング王国は魔法レベルが低い為、そういう意識も低く、法律もないのかも…。

でも、やったのは別の国で…。

…。

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