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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第三章 王女レフィアラと王国滅亡の預言

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第100話 サダキと幻獣~鉱石の魔物~

~前回までのゼユウ~


賢者の森に魔物が増えたのは、ラゼン山脈からやってきているから。

カナミアに事情を聞くと、蘇生岩っていう強い魔物がいるらしい。

そいつの討伐の準備の為、一度解散。もし幻獣が出てきたら、放置する予定だ。


◇登場人物◇

●ゼユウ:主人公●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王●サダキ:天使

〇カナミア:アイーホルの勇者

 現在時刻は午前八時。ラゼン山脈の入口。


「出発するわ。」


 一週間分の食料を載せた荷馬車と共に、俺とホーメナとカナミアは、蘇生岩リバイブロックを討伐する為に行動を開始した。


 コーホメンバーは変わらない。

 サダキは入院、クーノが付き添い、ビッケは採掘。


 ギリュウはいると思ったのだが、用事があってアイーホルに戻っているらしい。


 (三人か。強敵らしいし、気を引き締めていこう。)


 今回ホーメナは、ハンネの剣を持ってきている。


 ホーメナは中~遠距離戦を得意とする、生粋の魔法使い。

 剣術はもちろん、接近戦は強くない。


 なのに、なんで剣なんか持ってきたのかというと。

 ハンネの剣は、魔法の威力を高める効果があるから。


 しかし、かなりの年季の入った剣。頑丈ではない。

 大事な形見なのだ。間違っても、壊したくはないはず。


 それなのに持ち出してきたという事は。

 それだけホーメナも本気。警戒するほどの相手。


 そして、厄介なのは敵の戦闘能力だけじゃない。


 最初の関門は、発見する事。

 岩に擬態しているらしく、中々見つからない。


 蘇生岩リバイブロックは、身を隠し、観察し、隙あらば襲い掛かる。

 一瞬のうちに獲物を葬り、魔力を吸収するらしいのだ。


 とは言え、こちらには賢者がいる。

 ホーメナは、土魔法のエキスパート。


 彼女の魔法、グランド探知ディテクションなら、不自然に動く岩が分かるし、二周すれば一周目との違いを発見できるという訳だ。


 時間を掛け、確実に追い詰めていく。


 そして、間もなく日が沈もうという頃。


「見つけたわ、あれよ。」


 見た目は、ただの岩。周りも岩だらけで、完璧な擬態だと思う。


 でも、言われれば魔力が変だ。

 一度、その異質さに気づいたら、気になって仕方がない。


 標的を誤る心配は、なさそうだ。


 第二にして、最大の関門。上手くやれれば、最後の関門。

 蘇生岩リバイブロックの討伐。


「ここで逃がさず討伐するのがベストだけど、無理はしないで。

 ラゼン山脈は魔物の巣窟として有名な場所。そこの西側のボスになった奴よ。

 安全第一、様子を見ながら戦って。」


 頷く。ホーメナの方針に異論はない。

 俺達は勿論、カナミアも、交戦経験はないのだから。


「それじゃあ、行くわ!」


 その声を合図に、俺は駆け出す。蘇生岩リバイブロック目掛けて、一直線に。


 周辺の岩が、動いた。

 当然だろう。居場所がバレているなら、隠れ続ける必要はない。


 (攻撃が来ると思ったさ。)


 飛んできた岩を避ける。そのまま突っ込む。

 より多くの岩が飛んできた。


 風剣ウインドソードで叩き落としていく。

 被弾せず防げているが、近づく事は出来そうもない。


 だが、それでいい。

 俺の狙いは、俺に攻撃を集中させる事なのだから。


 稲妻が奔る。


 カナミアの雷矢ライトニングアロー、そしてホーメナの石雨ストーンレイン蘇生岩リバイブロックに襲い掛かる。


 しかしその勇者と賢者の奇襲も、浮かび上がった岩々に阻まれた。

 当然、俺の苦し紛れに放った風刃ウインドカッターが通用するはずもなく。


 (本当に硬い、魔法を使いこなしているじゃないか!)


 蘇生岩リバイブロックが動く。

 岩が集まる。


 現れたのは岩の巨人。岩を纏う、岩の魔物。

 それが、俺に向かって突っ込んできた。


 (岩巨人ロックジャイアントかよ!)


 平然と中級魔法を発動させた奴に、同じく中級魔法の竜巻トルネードを放つ。

 飛んでいる岩を吹き飛ばしながら、岩の巨人にぶち当たる。


 雷の矢や、石の雨の追撃も入る。


 それでも。


 岩巨人ロックジャイアントの突進は止まらない。

 物ともしない。


 ダメージが通らない訳ではない。

 岩は砕けている。砕けた岩が、元に戻っていくのだ。


 そう、こいつは、蘇生岩リバイブロック

 擬態能力も、岩を操る能力も厄介だが、一番の問題は、耐久力だ。


 (くそっ!)


 ウイングを発動、空へ逃げる。追ってきた岩を雷矢ライトニングアローが砕く。

 そして標的が、カナミアへ。


 (生半可の攻撃では、ダメだ!輝刃ブレイズブレイドを!)


 成功率は上がってきている。不発にはならないはずだ。

 ただ、発動前の数秒間は無防備になるから、ホーメナ達の協力がいる。


 (!!)


 気づいた。ホーメナは隕石メテオの準備に入っている。

 なら、俺のやる事は。


 カナミアの雷矢ライトニングアローを浴びながら、彼女に拳を振り上げた岩巨人ロックジャイアントに向かって、上空から竜巻トルネードを命中させる。


 その場に釘付けにする為、途切れさせないよう放ち続けた。


 旋風に、水が混じる。

 カナミアの、ウォーターボルテックス


 真上からの風圧と、水の重圧で、岩巨人ロックジャイアントは完全に動けない。

 魔法で岩を飛ばす余裕もないようだ。


 (音制御ノイズコントロールで伝える前に、俺達の意図に気づいた。流石は勇者、場慣れしている。)


 隕石メテオでコアを破壊して、俺達の勝ちだ!


 勝ち筋が見えて油断するなんて事はしない。寧ろ、気合が入ったくらいだ。


 なのに、違和感。

 いや、嫌な予感。


 岩の巨人が、小さくなっている気がする。岩を削っているのだから、それは当然なのだけど。


 (岩が戻っていかない?)


 そこからは、あっという間だった。

 蘇生岩リバイブロックが消えた。


 対象がいなくなったので、俺もカナミアも魔法を止める。

 ホーメナが近づいてくる。


「逃げられたわね。」


 倒せた、訳ないよな。


「おそらく石くらいのサイズになって、風に吹き飛ばされる形で離脱したのよ。」


 コアは小さいかも、って話は出ていた。


「…俺の所為か。すまない。」


「いえ、私だけだと押さえきれませんでした。それに水に流される形で離脱した可能性もあります。」


「生命はなくとも生存本能とでも言うのかしらね。大したものよ。

 さあ、切り替えて。

 新しい情報が沢山増えたわ。

 討伐プランを練りながら、索敵再会よ。」


 そう、俺達は戦えたし押していた。次、戦えば、俺達が勝つ。


 蘇生岩リバイブロックも、同じ意見だったらしい。

 だから奴は、逃げ続けた。


 完全に身を隠した奴の発見は、非常に困難で。

 一週間、探し回った俺達は、一度も遭遇できなかった。




「ここまでね。一度、町まで戻りましょう。」


 蘇生岩リバイブロックには出会えずとも、他の魔物の襲撃はある。

 消耗もあるし、食料も尽きる。それしかない訳だが。


「悔しいですね。完全にこちらの魔力は把握されていて、おちょくられている気すらします。

 …きっと、こういう芸当があったから、のし上がれたんでしょう。

 いくら強くても進み続ける事しか出来ない魔物は、残れません。」


「凄いな、カナミアは。」

「?」


 思わず、口に出た。

 しまったと思うが、ここで止める方が変。続けよう。


「まだ余裕があるように見える。

 正直、俺はかなりしんどい。こんなに頑張ったのに、討伐は失敗。

 逃げ帰る結果になって、へこんでる。」


 なるべく、明るく言ったつもりだ。愚痴っぽく、嫌味っぽくならないように。

 顔には出さないが、ホーメナも同じ感想だと思う。


「私達は負けていませんから。」


 カナミアは、優しく笑う。


「私達は町へ戻って、魔道具を取ってくるんです。

 魔力の質を誤認させられるような物です。

 きっとフフゴケ商会なら取り扱っていますよ。

 そしたら奴は逃げないので、ホーメナさんが見つけてくれます。

 再び戦闘になったら、打合せ通り役割交代で挑みますよ。

 ホーメナさんが足止めで、私と、ゼユウさんで決めます。

 雷矢ライトニングアローは、どちらかと言うと、初速と連射性能が売りですからね。

 重い一撃を与える用の、雷大砲ライトニングキャノンを、お見舞いしてやります。

 小石になって逃げようと、警戒したホーメナさんからは逃げきれません。

 今度こそ、私達の勝利です。」


 くぐってきた修羅場の差を、見せつけられる。

 第一印象で、侮った自分が恥ずかしい。


「なら、確実に勝つ為にも、まずは無事に下山しないとね。」


 ホーメナが荷をまとめ出した。

 彼女に倣って、俺も撤退準備を始める。


 と、俺の脇を雷の矢が通り過ぎた。


 硬直する俺と、少し先で倒れる男。


 (盗賊!?)


 俺が認識するのと同時、別の方向で、もう一人倒れた。


「流石、いい反応じゃない勇者様。」


「そちらこそ、流石は賢者様です。

 敵の魔法攻撃が飛んでこなくて、お陰で荷物に被害が出ませんでした。

 自身の魔力制御範囲にある魔力に干渉し、魔法の発動を取り消す。

 無属性魔法、魔法解除マジックキャンセル

 見事な精度です。」


「その、無属性魔法って呼び方、好きじゃないのよね。 

 属性の特徴が無いからって無属性と呼ぶのは、しっくりこないっていうか。

 火球ファイアーボールの火を消したからって、無属性のボールになる訳じゃない。それは、火の消えた火球ファイアーボールであって火属性のままよ。

 だから私のは、無属性の魔法解除マジックキャンセルじゃなくて、土属性の魔法解除マジックキャンセル

 火属性の魔法解除マジックキャンセルや、水属性の魔法解除マジックキャンセルだってある。

 効果は、同じだけどね。」


「そうだったんですか。誤解していたみたいです、勉強不足ですみません。」


「あ、いえ。ごめんなさい。

 別にいいと思うのよ、どの属性でも関係無く扱える魔法で無属性。

 魔法は、正しい理解が大事。

 でも、正しい事なんて、基準が変われば変わってしまうわ。

 あまりにずれた考えでない限り、自分が分かりやすい解釈をするのが一番よ。」


「はえ~、流石です。奥が深いんですね。」


 こんな雑談をしながら、手際よく盗賊を縛り上げる二人。


「…いや、本当に凄いよ、二人共。」


 今度は俺も警戒しつつ、撤退準備を再開する。




 ラゼン山脈の入口まで戻ってきた。

 すでに日は沈み、真っ暗だ。


 町までは、まだあるので、今日はここで一泊。


 王国兵もいる見張り小屋に、お邪魔する。

 二人の盗賊も、ここで引き渡した。


 久しぶりの屋根のある建物にベッドだ。

 まだ安全圏ではないけれど、俺は熟睡。


 したと思ったのだが、変な時間に起きた。

 時計を確認すると、真夜中。


 トイレで起きた訳ではないのだが、折角だからトイレに行こうとして。


 窓から、『それ』が見えた。


 咄嗟に隠れる。そして、覗くように再確認。


 (幻獣…!?)


 金色の体色で、角を生やした馬。微かに、発光もしているような?

 賢者の森の中から、こちらを見つめている。


 (一応、放置する事になったけど…。)


 流石に見なかった事にして寝るのは怖い。

 味方と決まった訳ではなく、危害を加えない保証もない。


 (…動いた。)


 森の中へ戻っていく。


 ここで俺は、選択しなければならない。

 幻獣を追うか、追わないか。


 (いや、追いかけるのか?何で?)


 好奇心?違う。

 寝起きだった頭が、少しずつ、動いてくる。


 (自分で思っただろう、危害を加えない保証はないんだ。

 そんなのを、森に放置できるか。)


 サダキの顔が浮かぶ。

 大丈夫だ。逆に無害だと証明できれば、以降の安全は保障される。


 俺は、幻獣の後を追った。




 放置で決まった件を、独断で追っている。

 つまり、ホーメナ達は起こさない。


 (実は幻獣の正体は極悪獣で、俺が瞬殺されるような事になれば、とんだ間抜け野郎になるだろうな。)


 そんな事を考えつつ、尾行を続ける。音制御ノイズコントロールで気づかれてはないはずだ。


 幻獣は池の前までやってきた。

 水でも飲むのかもしれない。


「!?」


 予想外の事が起きた。


 幻獣に、岩が迫る。かなりのスピードで。


 幻獣は、咄嗟に避ける。

 しかし気づけば、宙に浮く岩に囲まれていた。


 (蘇生岩リバイブロックだと!?)


 一週間ぶりでも、あの攻撃は見間違わない。

 いないと思っていたが、山を下りて、賢者の森にいるとは思わなかった。


 (ラゼン山脈西側のボスじゃないのかよ!縄張りを簡単に手放すな!)


 勿論、言っても仕方ない。

 蘇生岩やつには、奴なりのルールがあるのだろう。


 とにかく、この状況ではホーメナ達に連絡しない訳にはいかない。


 音制御ノイズコントロールを発動。範囲ぎりぎりだが、届いただろうか?

 通信機を持ってきてないのが痛すぎる。


 (!…くそ!)


 飛び出す。


 幻獣は岩を捌ききれていない。

 このままでは、蘇生岩リバイブロックに殺される!


 蘇生岩てきの敵は、敵でない事を祈る。


「助太刀する!」


 幻獣に言葉が通じるかなんて知らない。若しくは、自分に言い聞かせたのかもしれない。

 今は、幻獣の助太刀をすると。


 風剣ウインドソードの二刀流で、岩を叩き落としていく。

 しかし、流石に一人では厳しい。ジリ貧だ。


 幻獣も避けるのに、精一杯みたいだし。


「うりゃあ!」


 幻獣の頭部へ直撃コースの岩を砕く。

 が、無茶しすぎた。


 体勢が崩れる。


 チャンスとみたか、岩が俺に殺到する。


「甘い!」


 ウイング展開。上空へ避難。

 したのだが。


「ぐ!」


 背中に、強い衝撃。

 岩の直撃をくらった。


 (甘いのは、俺か!)


 俺は池に落下して、

 (この池、深い!)


 沈んでいく。


 このタイミングで言うのもあれだが、実は俺、カナヅチなんだ。

内容は平常運転で失礼してますが、今回で100話。三桁いけました。

第0話があるので投稿数的には前回が100ですが(笑)


どちらにせよ、見ていただいた方、ありがとうございます。

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