第99話 サダキと幻獣~お見舞い~
~前回までのゼユウ~
賢者の森で、サダキが魔物に襲われた。
しかもサダキの友達が幻獣を見たって?
賢者の森で何か起きている?ホーメナと一緒に調査開始だ。
◇登場人物◇
●ゼユウ:主人公●ホーメナ:賢者●クーノ:天使●ビッケ:魔王●サダキ:天使
〇ハナ先輩:職場の先輩
〇レンちゃん&シン君:サダキの友達。ふれあい教室にも来ていた。
〇カナミア:アイーホルの勇者
コーホのメンバーは五人。
サダキは入院で、クーノが付き添い。
ビッケは数日前から、宝石の原石の採掘に出かけている。
あいつの城がある島の、更に奥へ進んだ所にある火山島。
採れそうだという話になって、ツアーまで組んだ。
周辺の魔物はビッケが何とかして、安全対策の確認をしたホーメナの許可が下りた感じ。
一応、ビッケが魔王である事は公表していない。
ルートレスの魔王は、城を放棄して、クーランへ向かった事になっている。
『手付かずの秘境』なんて触れ込みで、そこそこの人数が集まったらしい。
放棄されたとはいえ、魔王の城付近に近づこうという人間が、そこそこの数いてビビる。
(ふれあい教室にきたマダムに、あそこは廃城ではないと説明したのに、一か月と経たずに廃城か。何が起こるか分からないな。)
まあ、そんな訳で。
残りのメンバーである俺とホーメナは、賢者の森の調査に来た。
レンちゃんが目撃した幻獣の捜索と、魔物の捜索。
それから、事故の確認の為だ。
ハナ先輩達、バーベキュー大会に参加した人に話を聞いた。
魔物自体は、変な特殊能力持ちではなく、割と普通のタイプだった。
にもかかわらず接近を許してしまったのは、監視をしていた王国兵が居眠りをしてしまったから。
一歩間違えれば大惨事。職務中に居眠りなど、言語道断。
「とはいえ王国兵の負担が大きすぎるのも問題だろ?賢者の森のイベントには、俺がフォローに入るよ。納涼祭にキノコ狩り、流しそうめんだって控えてるし。」
「そうね。そこは、お願い。」
二人で森を見て回る。
「増えてるよな、明らかに。」
すでに、四回、魔物と遭遇して倒している。
おそらく、ラゼン山脈から来たのだろう。
最初こそ、ルートレスの魔王が町にいる事が原因じゃないかと思っていた。
けど、それは関係ないらしい。
どちらかというと、ビッケは魔力の質的に魔物に嫌がられるそうだ。
「…今日はこのまま森を回って、明日は詳しい人に話を聞いてみましょう。」
それから、何体かの魔物を倒したが、当然のように幻獣は現れなかった。
翌日。
午後からはホーメナと一緒に、詳しい人に話を聞く予定だ。
まだ時間があった俺は、サダキの見舞いに訪れる。
単純に、様子が気になったから。仲間だから、普通だろ。
「いらっしゃい、ゼユウ。来てくれて嬉しいです。」
クーノは午後から来るそうだから、サダキ一人だ。
その彼は、ベッドの上で何かを書いていた。
アイウエオ、カキクケコ、サシスセソ…。
カタカナ五十音順、書き取り練習。
この地方に伝わる大昔の言語。クーノ曰く、異世界の文字らしい。
「こんにちは、サダキ。起きていて大丈夫なのか?」
一週間の入院と聞いている。
クーノは、折角入院したのだから、色々と検査をさせたいらしい。
サダキは特殊だから、分からないでもない。
「大丈夫です。
早く、また、かくれんぼがしたいです。」
同じ笑顔でも、サダキとビッケはこんなにも違う。
心が洗われるようだ。
「それにしても、カタカナとは渋いチョイスだな。」
「知らない文字や言葉を覚えるのは好きなんですよ。
ゼユウも、カタカナ知ってるんですね。」
「昔の知り合いに、詳しいのがいたんだよ。サダキみたいに、勉強が好きだった。」
ハンネの事だ。文字というか、歴史全般って感じだったかな。
ふと、その時のやり取りを思い出した。
「サダキって、クイズに興味ある?」
「え、どんなのですか?やってみたいです。」
尻尾があったら振り回したんじゃないかと思うほど、興味を持たれた。
まあ、退屈だろうしな。
「この国の、歴代の女王様には共通点、いや、法則があるのは知ってる?」
「…わからないです。…ごめんなさい、詳しくなくて…。」
そんなに落ち込まれると悪い事をした気分になるから、やめて。
「大丈夫だ。それがクイズの問題だから。
流石にノーヒントだと無理なんで、本を持ってくる。
書き取りの続きをして、待っていてくれ。」
「そんな、悪いですよ。」
「俺も入院した時、ビッケから本をもらった。
次、サダキがお見舞いに行く事があったら、何か用意してあげるといい。」
そうして俺は、本屋を目指した。
「今のルーティル様は、39代目…。
この国って、代々女王様が治めているんですね。」
俺が買ってきたのは、歴代の女王の活躍がまとめられた本だ。
「最初の病院を建てたのは、19代目のナシーテト様。
5代目のキティルバーナ様は、賢者の森に最初の木を植えた人!
凄いです!」
そんなに喜んでもらえるなら、プレゼントした甲斐があったというもの。
楽しい、いや、嬉しいな。
「改めて、クイズの問題は、『歴代女王様の法則とは何か?』だ。
理由は知らないけど、偶然じゃないと思う。
大した事でもないけど、今のサダキなら、きっと分かる。
ちょっと、考えてみてくれ。」
いい暇つぶしにはなるだろう。
「追加のヒント。
24代目のハルテレッサ様は、今の王宮庭園を造られた人。
32代目のメメルテ様の時代に、コア王国を滅亡させる戦争があった。
それじゃあ、頑張って。」
そう言って、席を立つ。
待ち合わせの時間には少し早いが、もう行っていても構わないだろう。
「あ、ゼユウ。」
着席する。
「どうした?」
「えっと、ですね…。」
ちなみにお礼なら、本を渡した時、四、五回は言われた。
「ゼユウは、幻獣を、倒すんですか…?」
サダキには珍しく、目を合わせずに、聞いてきた。
「それは、この後、決まると思う。場合によっては、倒すよ。」
倒せるかどうかは、分からないが。
「あ、あの!」
サダキは、俺に伝えたい事がある。だから、静かに聞く。
「サ、サダキは、一瞬、見たような気がしただけですし、本に出てくるのと、同じかも分からないんですが、悪いのじゃ、ないと思うんです!
だから、倒さないで、ほしいです…。」
「サダキは、好きなんだな。幻獣。」
本に出てくるやつが。
「…助けてもらって嬉しくて、だから、今度は守りたいって思うのは、サダキにも分かります。」
そう言えば最初のサダキは、そんな感じだったな。
クーノを守りたかったんだ。
「分かった。ちゃんと伝えるよ。」
サダキの頭を、ポンポンと叩いて。
俺は部屋を後にした。
ホーメナの言っていた、詳しい人というのはカナミアの事だ。
男爵の件の後も、ずっとラゼン山脈の調査を続けていたらしい。
前回も、解りやすい説明だったから期待がもてる。
…まあ、その節は迷惑をかけたから、気まずさは少しあるんだが。
「ゼユウさん、ここでーす。」
カナミアが手を振っている。
前回も使わせてもらったお洒落な店、シークレットデイズ。
そのオープンテラスの席で。
俺は遅れていない。寧ろ、早い。
しかし、カナミアもホーメナも俺より早かった。
「…お待たせしました。」
「いえ、またお会いできて嬉しいです。」
違和感。カナミアは、こんな感じだっただろうか?
礼儀正しくはあったが、何というか、前回より距離感が近い?
(まさか、ギリュウと進展があって機嫌がいい、とか?)
などと考えていると、目の前に資料が出される。
「結論から言うと、原因は、蘇生岩と呼ばれる魔物です。
ラゼン山脈で、こいつが活動するようになり、魔物が森へ降りてくるようですね。」
「逃げてきている?魔物に知能はないって聞くけど、逃げる事なんてあるのか?」
魔物に無いものは、生命、知能、慈悲。
「本能で動くと言われているし。
本能的にヤバいと思えば、逃げる奴はいるんでしょう。」
逆に有るのは、本能、魔力、生前の習慣。
「その通りです。蘇生岩は、レアな魔物で情報は少ないんですが、今いるのは、かなり攻撃的な奴ですね。」
「私も知らないわ。どんな魔物なの?」
「宝石の原石が、魔力暴走した魔物ですね。
岩ですから、防御力は高いです。しかも砕いても、再生する。
おそらくコアがあって、それを壊さない限り倒せません。
しかも、ラゼン山脈には岩がゴロゴロありますからね。
魔法で、ガンガン飛ばしてきます。」
「魔法を使うのか!?」
魔物は魔力で動いているし、所謂、魔力弾を放ってくる奴もいる。
でも、魔法を使う魔物なんて、聞いた事なかった。
「ええ。鉱石系の魔物に見られる現象ですね。
魔力を持っている訳ですから、理屈では可能でしょう?
動物にも魔法を使う子がいるみたいですし。
聞いた事ないですか?
遠海の島に棲息する、大猩猩っていう動物。」
ニコニコで語るカナミア。動物が好きなのかもしれない。
「原因は、間違いない?
蘇生岩も、別の何かに追いやられて暴れている可能性は?」
「ありません。現在のラゼン山脈西側のボスは、間違いなく、こいつです。」
「もう一つ。蘇生岩が活動を始めた理由は分かった?」
ドキッとした。王国滅亡を企む、何者かの陰謀なのか?
「この一か月の調査では、分っていません。
元々、自然発生してもおかしくはない魔物です。
しかし、人為的に生み出された可能性を否定できる証拠もありません。
討伐を見送っていた理由の一つに、調査が完了していないから、というのはあります。
でも実害が出ている以上、討伐するべきでしょう。
勿論、協力します。」
ホーメナとカナミアが、握手した。
「見送っていた理由は、他にもあるのか?」
「単純に、強いからですよ。」
「討伐すると決めた以上、早いほうがいいわ。明日の午前中でいいかしら?」
「構いません。八時にラゼン山脈の入口に集合、どうですか?」
「了解よ。」
話はまとまった。これで解散して、明日に備える。
そんな雰囲気。
でも、あと一つ。決めておきたい事がある。
「カナミアは、幻獣って知ってる?」
「…幻獣ですか?いえ、分からないですね。」
簡単に、一昨日の事情を話す。
子供達が、幻獣を目撃したと。
「幻獣が現れたのは賢者の森だから、今回のラゼン山脈での蘇生岩の討伐には関係ないかもだけど…。
現れた時の対応を決めておきたい。蘇生岩討伐後も含めて。」
魔物は危険な存在だ。意思疎通が出来ず、暴れ回り、危害を加えてくるから。
魔物なら倒さないといけない。
果たして賢者と勇者は、どんな判断をするだろうか。
「私は、放置でいいと思うわ。」
ホーメナが言った。
「そうですね。まだ情報が少なく、覆る可能性はありますが、現状では魔物と言うより動物です。
会ってみたいですね。」
「貴重生物だろ?捕まえて、研究とかしなくていいのか?」
二人に、凄い顔された。
「…ゼユウ。」
「いや、それは、ちょっと…。」
「失言すまなかった。俺だって、やりたい訳じゃない。」
何にせよ、サダキのお願いは聞けそうでよかった。
その他、軽い雑談とかして。注文したコーヒーを飲んで。
笑顔で手を振りながら、カナミアは去って行った。
「なあ、ホーメナ。」
「何?」
「カナミアって、あんなキャラだったっけ?」
「一か月ぶりの、ちょっとした知り合い。
前回、自分がどんな感じだったか、忘れちゃったんでしょう。そういう経験少なそうだし。」
話題を変えよう。
「明日の、蘇生岩討伐、頑張ろうな。」
「ええ。こんな所で、躓いていられないわ。」
俺は嬉しかった。
きっと今は、ホーメナと同じ目標を持てていると、確信できたから。
歴代女王様の法則とは何か?
答えは、第102話(予定)!
…たぶん、間違っていないはず。




