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継承英雄譚、担々  作者: シロクロゲンヤク
第一章 勇者レーラスの魔王討伐記
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第0話 王国

世界観と、物語の簡単な説明。

魔法があって、勇者がいて、魔王がいて。

その勇者が魔王を討伐する為に、旅に出るんだよ~って事が、

伝わるといいなと思って書きました。

*???視点*


「今や魔法は、生活に欠かせない物となっています。」

 

 夏の終わり。星の綺麗な夜だった。

 

「しかし魔法は魔王を生み、魔王は魔物を造りだしました。」

 

 王宮前の広場は人々で溢れかえっている。

 

「魔物は各地で暴れ回り、私たちの住む場所を、大切な人を、奪ってきました。」

 

 人々の視線を一身に受け、演説しているのはこの国の女王だ。

 

「魔物はいくら倒しても、魔王がいる限り造られ続けます。そして!」

 

 女王は60歳と聞いていたが、まだまだ元気な様子。

 滑舌も通りもよく聞きやすい。

 

「魔法がある限り、魔王を完全に打倒する事は出来ないのです。」

 

 そう言えなくもない、不十分な解説が続く。

 意図的だろう。自分達の正当性を主張しているのだから。

 

「我々は、魔物の恐怖に怯え続けてでも魔法のある生活を送るか、

 魔物の脅威を無くす代わりに魔法のある生活を捨て去るか。

 その二択を、常に迫られてきました。」

 

 女王が息を吸い込む。ここからが本題という訳か。

 

「しかし今、我々には、いや、我が王国には、科学の力が、機械があります!」

 

 広場が一瞬にして明るくなる。星々の輝きが陰るほど。

 

「魔法などなくとも、我々は豊かな暮らしを享受できるのです!」

 

 確かに魔力は感じない。科学の力という事か。

 

「今こそ我々は魔王を打倒し、魔法を捨て、真の平和を勝ち取る時なのです!」

 

 女王の隣にひっそりと立っていた人物が、光に照らされる。

 

「彼の者こそ14代目の勇者!伝承に謳われる真の英雄!」

 

 (勇者は今魔法を使っているぞー、それはよいのかー。)

 そういう野次は心の中だけで自重する。

 

「その名は、レーラス!光の道を歩む者!」

 

 女王が拳を天へと突き出した。

 勇者も、それに倣う。

 

 広場は沸いた。

 

 王国に住む人々にとって、女王は絶対。

 だから彼女が拳を上げれば、同じように拳を上げる。

 

 本当に期待している人も探せばいるのかもしれないが、おそらく少ないだろう。

 この40年で、13人もの勇者が旅立ち、魔王討伐は成功しなかったのだから。

 

 その後の女王の話は、勇者へのサポート体制の説明、勇者の旅の計画の概要、稼働可能な機械と配給率、今後の計画と続いた。

 

 機械で魔王を倒す訳ではない。

 魔法を使う勇者が魔王を倒した後、生活を支えるのが機械という話。

 

 (全く、回りくどい。)

 

 最後の締めの言葉が終わると、万雷の拍手で幕となる。

 

 勇者は最後まで一言も喋らず、女王の後ろに立っていただけだ。

 それが与えられた役割で、周囲から不満の声が上がる事もない。

 

 (結局最後まで聞いてしまったか。)

 はたして国民は何を思ったのか。どれだけ理解できたのか。

 

 帰路につきながら、女王について考える。

 

 (女王は父親の仇の魔王をどうしても殺したかった。

 その為に、もっともらしい理由を、勇者が旅立つ度にいい続けたと聞く。

 それで今回は、国の産業政策か。)

 

 女王の真意は分からない。

 

 ただ、王国が機械産業に力を入れているのは確か。

 

 (まだ恨みで動いているのか、それとも、本当に国益だと思って魔王を倒したいのか。)

 

 ふと、足を止め振り返る。

 

 広場は依然明るい。全部の光を奪い取ってしまったかのようだ。

 広場から離れれば離れるほど、闇が深くなっていく。

 

 (さて、どうしたものか。)

 

 その闇に、とけるように立ち去る。

 

 もう振り向いたりはしなかった。

 

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