お風呂のしあわせ
今日は、夜風が気持ちいいので窓を開けてみた。
「か〜え〜るのうたが〜きこえてくるよ♪」
どこからともなく、懐かしい歌が聞こえた。
お向かいの、お風呂場からだろうか。
お湯のサバーンという音にまじって、
元気な声が響き渡る。
ぼくも、お風呂場でよく歌ったなぁ。
お風呂場で歌うと、声が響いてうまく聞こえるんだよな。
そして、大きい声で歌うととても気持ちがいい。
でも、近所迷惑になるから、母さんからはよく叱られたっけ。
「こら、ちょっと声が大きい!もう少し小さな声にしようね」
ほら、やっぱりあの子も叱られている。
「じゃぁ、次はね数字数える。10数えたらあがっていい?」
ああ、また懐かししい。
ぼくも、風呂場でよく数えたな。
「いーち、にーい、さーん、あれ?次はなんだっけ」
次は、よんだよ。がんばれ。思わず、教えたくなる。
「えーと、し、しーだ。んで、つぎがごーお、ろーく、なーな、なーな」
「ななの次は、なんだろうね」とお母さんが言う。
次は、はち、ぶんぶんぶんのはちだよ。
「おかあさん、ヒント!」
「ぶんぶんぶん」
「あーはち!はちだ」
「あたり!じゃぁ、続きからよろしく」
「きゅーう、じゅーう!わーい。ぜんぶ言えた」
「すごいね!あしたは、20じゅうまで数えようね」
「かえるの合唱は歌ってもいい?」
「いいけど、あんまり大きい声はだめよ」
「はーい。わかった」
久しぶりに、ゆっくりお風呂に入ってみようと思った。
大人になってからのぼくは、毎日の忙しさに振り回されて、
お風呂なんてシャワーでいつもすませていた。
今日は、お風呂を掃除して、
お湯をはってゆっくり湯船につかってみようと思う。
そして、かえるの合唱を歌って、数字を数えてみようかな。
でも、ちょっと恥ずかしいから鼻歌にしようかな。
さあ、お風呂が沸いたぞ!
こんな素敵な時間をすっかり忘れていたなんて。
だめな大人だな〜♪