表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

"往生"

作者: タマネギ

定期券を買いに行った。

明日で切れるのと、

買い方を変えようとして、

窓口に向かった。


使っている路線では、

秋から磁気定期券が無くなり

ICカードに、統一される。

いつも磁気なので、それもあった。


大勢の人で駅は混雑していた。

外国人の子供がはしゃいでいた。

真夏過ぎる太陽の熱に、

往生しながら歩いた。


日曜日のこの時間は、

大抵、部屋の中にいる。

それと、畑以外のところへ

出かけることはないから。


購入の申請書を書き始めた。

そこへ窓口の人が、

わざわざ声をかけてくれた。

ICカードに変えられますか。


自分のような人も、

多いのだろうと思った。

そして、少しほっとした。

申請書は結局尋ねるものだから。


世界は富みながら、

世界は貧しくなりながら、

争いながら、迎えながら、

カード化、デジタル化か。


脈略の無い思い方が、

背中から腹に滲んだ。

どこへ向かっているのか。

良いものとなるのか。


まるで意味のない思考が

絡まりあってくる。

定期券を持つ暮らしが

急に、可愛そうに見えた。


定期券を使う暮らしは、

見えない轍を作っている。

心の轍ということだ。

良い悪いとかではなく。


轍はどこにも繋がっていない。

それでも、なにかを目指して

人は生き続けてやがて死ぬ。

世界を螺旋にする定期券。


申請書を出して、

カードの定期券を受け取る。

声をかけてもらって

助かりました、ありがとう。


磁気定期券を記念に残した。

失くしてしまうだろうけど、

たぶん、もう会えないのだ。

相変わらずステラレネーゼ。


帰り道でも駅は混雑していた。

外国人も日本人も、老いも若きも、

男も女も、分けられない人たちも、

暑さをかき分けて生きていた。


どうするか、この暑さ。

どこか涼しいところへと、

皆が向かってゆく。

夏に乗る定期券と思った。


夏の間はそのカードで

思い出づくりにまっしぐら。

轍を作るなら、自分を愉快にさせて、

昇る天国への螺旋階段。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ