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アビシャルシャフト  作者: ハック
3/4

町での戦い

――真っ暗だった。


何も見えない。

何も聞こえない。

ただ、冷たい闇が、全身を包み込んでいた。


(……俺、死んだのか?)


背中の痛みも、恐怖も、全部が遠くに消えていく。

思考も薄れて、意識が沈んでいく――。


その時。


――ピッ。


耳の奥で、電子音が鳴った。


『システム再起動を開始します。』


女の声。

だが、どこか機械的だった。


(システム? ……再起動?)


――ピピピピ……


視界が、点滅する。

ノイズの奥から、光が滲み始めた。


「……う、あ……」


ゆっくりと目を開ける。


そこは――見たことのない場所だった。


空は紫がかったグレー。

地面はガラスのように透き通り、無数のデータコードが光の線となって流れている。


空中には、数字と文字が浮かび上がっていた。


《Welcome to: Digital Layer 0》

《User: Fuse Hyoka / Status: Rebooted》


「……は?」

呆然と呟く。


(デジタルレイヤー? リブート? ……って、なにそれ。)


頭を抱えた瞬間、背後から声がした。


「起動完了、確認しました。ようこそ、フューズ様。」


振り向くと、そこに立っていたのは――あの女。

屋上で風にコートをなびかせていた、黒髪の美女。


「お前……屋上の……!」


女は優雅に一礼した。

「改めてご挨拶を。私はイリヤ。あなたの専属メイド、そして――ガーディアンAIです。」


「……ガーディアンAI?」


イリヤは微笑む。

「はい。あなたの命を守り、この世界を導く存在。

――“王”の再起動を確認しました。」


その言葉に、フューズの胸がどくんと鳴る。


(“王”……やっぱり、夢の中の……?)


「ちょ、ちょっと待て! 俺はただの高校生だ! 王様なんて関係ねぇ!」


「その記憶は、まだ封印されています。ですが――いずれ思い出すでしょう。」

イリヤの瞳が、淡く光る。


「……それまで、私はあなたをお守りします。命に代えても。」


「お、お守りって……いやいやいや、どういう――」


言い終わる前に、辺りの空気が震えた。


ガラスの大地が砕け、黒い霧が立ち込める。


「敵性データ反応――確認。」

イリヤの声が冷たく変わる。


「くそっ、なんだよ今度は!?」


闇の中から、無数の影が現れた。

人の形をしているが、顔がない。

データの欠片が集まって作られた“バグの怪物”だった。


イリヤが手を掲げる。


「――Weapon Folder Access:《Blade・TypeMaid》」


光が閃き、イリヤの腕に黒銀の刃が形成された。


「下がってください、フューズ様。」

「お、おい待っ――」


その言葉より早く、イリヤの身体が宙を舞った。

一瞬のうちに、三体の敵が霧のように崩れ落ちる。


(……な、なんだこの人……強すぎる……!)


しかし、次の瞬間。

背後からもう一体が現れ、イリヤに掴みかかった。


「っ……!」


「イリヤ!!」


フューズの手が、無意識に動いた。

その瞬間、視界に光のウィンドウが展開する。


《Weapon Folder Access: Hand Axe》


(これ……! あの時の……!?)


次の瞬間、右手に重みが走った。

銀色の斧が実体化していた。


「うおおおおお!!!」


振り下ろした斧が、黒い敵を真っ二つに裂く。


霧が散り、静寂が戻る。


イリヤが振り返り、微笑んだ。

「……さすがです、マスター。」


「ま、待て……今の、なんだよ……? なんで俺が……武器を……」


イリヤは静かに告げる。

「それが、あなたの力。

この世界――“デジタルレイヤー”の王に与えられた、再構築の権能です。」


「再構築……?」


彼女は頷いた。

「はい。あなたは“創造主”の系譜に連なる者。

そして今、封印がひとつ……解かれました。」


フューズは言葉を失う。

胸の鼓動が、再び早くなる。


(俺は……誰なんだ……?)


――その頃、現実世界。


ネットワーク公立学園の屋上で、黒い霧がわずかに揺れた。

そこにいた少年が、呟く。


「……リブート、確認。」


「ターゲット、フューズ・ヒョウカ。」


口元が、ゆっくりと歪む。


「“王”は、目覚めた。」

紫の空の下、風のように光の線が走る。

イリヤは静かに斧を構え、周囲を見回していた。


「マスター、敵性データは消滅しました。しかし――この世界には、まだ多くの“ノイズ”が残っています。」


「ノイズ……?」

フューズは息を整えながら辺りを見た。


ガラスの地面の下では、数えきれないほどの文字列が流れている。

0と1が川のように光りながら、どこか遠くへと流れ続けていた。


(ここが……“デジタルレイヤー”……?)


イリヤが頷く。

「はい。この世界は、現実世界と重なって存在するもう一つの層。

かつて“創造主クリエイター”と呼ばれた者たちが作り出した仮想の王国です。」


「創造主……? でも、なんで俺がここに……」


イリヤの瞳が淡く揺れる。

「あなたは“王の継承者”。すなわち、この世界を再起動する鍵なのです。」


「……俺が?」


その言葉を聞いた瞬間、足元のデータラインが赤く染まった。

警告音が空気を震わせる。


《Warning: Unauthorized Access Detected》

《Location: Layer 0 / Sector F》


「な、なんだ!?」


イリヤがすぐに構える。

「侵入者です、マスター! ……複数!」


黒い稲妻のような光が地面を走り、空間が裂けた。

そこから姿を現したのは――黒い装甲を纏った少女だった。


「久しぶりね、イリヤ。」

その声にイリヤの表情が一瞬だけ険しくなる。


「……リゼ。」


「お前が……リゼ……?」

フューズが呟くと、リゼは冷ややかに笑った。


「そう、そしてあなたが“王のうつわ”。ようやく見つけた。」


彼女の背後に、黒い鎖のようなコードが現れる。

その先に――テディがいた。


「ふふ……まさかリブートするとは思わなかったぞ、フューズ・ヒョウカ。」


「て、テディ……! あんたら、セントをどこへやったんだ!!」


フューズの怒声が響く。

だが、テディは不気味に笑うだけだった。


「セント・イリヤなら……“プリズンスカイ”の奥だ。もうお前の知る彼じゃない。」


「嘘だっ!!」


怒りに震えるフューズの右手が再び光を放つ。


《Weapon Folder Access: Hand Axe》


斧が再び形成される。


イリヤが制止しようと手を伸ばしたが、遅かった。


フューズは叫びながら駆け出した。

「俺の友達を……返せぇぇぇっ!!」


リゼが前に出て、冷たく呟く。


「――Weapon Folder Access: Chain・Bind。」


黒い鎖が宙を舞い、フューズの身体を絡め取る。


「くっ……!」


「まだ未完成ね。そんな力で私に勝てると思って?」


リゼが指を鳴らした瞬間、鎖が締まる。

苦しむフューズの姿に、イリヤの瞳が一瞬赤く光る。


「マスターに触るな。」


風が爆ぜた。

イリヤの身体から放たれた風圧がリゼを吹き飛ばす。

その隙にイリヤはフューズを抱き寄せ、鎖を断ち切った。


「フューズ様、後退を!」


「でも、セントが――!!」


「今は無理です! 力を取り戻すまでは……!」


その時、空の裂け目がさらに広がる。

黒いデータが竜巻のように巻き上がり、中心から巨大な影が姿を現した。


《System Error Entity “CODE:Ω”》


その名が浮かび上がる。


リゼが舌打ちした。

「ちっ……このタイミングで、システムの残骸が……!」


テディが叫ぶ。

「撤退だ、リゼ! 今の奴らでは勝てん!」


リゼは悔しげに唇を噛みながら、視線をフューズに向けた。

「覚えておきなさい、王の継承者。――次に会う時、あなたは私の敵よ。」


そう言い残し、リゼたちは霧の中に消えた。


風が静まり返る。

イリヤが深く息を吐いた。


「……大丈夫ですか、フューズ様。」


「……ああ。」

フューズは空を見上げた。


紫の空に、ゆらめく光のコード。


その中に――自分の運命が映っているように感じた。


(セント……待ってろよ。必ず、取り戻す。)


拳を握り、フューズは誓った。


――その頃。

黒い空の向こう、“プリズンスカイ”の最深部。


拘束された少年が、薄く笑った。


「……やっぱり、生きてたんだな、フューズ。」


彼の瞳が、赤く光る。


「待ってろよ。次は――俺の番だ。」


――冷たい音が、静寂の中に響いた。


ガシャン。


鉄の鎖が床を擦り、少年の体を縛り上げる。

薄暗い部屋の中央、青白い光が壁に波紋を描いていた。


「……ここが、“プリズンスカイ”か。」


セント・イリヤはゆっくりと目を開いた。

金属の首輪が光を放ち、神経に直接接続されたコードが微かに脈打っている。


(まるで、人間をデータとして封じ込めた檻だな……)


部屋の奥で、機械の音が鳴った。

霧のような影が形を取り、やがて一人の女の姿へと変わる。


「目が覚めたのね、セント・イリヤ。」


聞き覚えのある声。

その姿は――リゼ。


「……お前か。」

セントは淡々と答えた。


リゼは微笑みながら手に持つデバイスを操作する。

壁の光が変わり、セントの脳波データが空中に浮かび上がった。


「君の中にある“コード・キー”。それが、私たちの目的よ。」


「コード・キー……?」


「そう。かつて“王”が残した、世界の再構築プログラム。

フューズ・ヒョウカは“起動者アクティベーター”、そしてあなたは“鍵”。

二つが揃えば、ネットワーク全体を再起動できる。」


「そんなことをして、何になる。」


リゼの瞳が冷たく光る。

「私たちは“旧世界オールド・ネット”を取り戻す。

あの秩序と、真の人類支配を。」


セントは沈黙した。

拳を握る。鎖が鳴る。


「……くだらねぇな。」


「なんですって?」


「俺はただ……あいつを守りたかっただけだ。

あいつが笑ってる、それで十分だったのに……。」


短い沈黙。

リゼの微笑みがわずかに歪む。


「情に流されるのね。――まるで昔の私みたい。」


彼女は踵を返すと、出口に向かった。

扉が開く直前、彼女は振り返り、言った。


「でもね、セント。次に会う時、あなたはもう“人間”じゃないわ。」


扉が閉まり、静寂が戻る。


……しばらくして。


頭の奥に、声が響いた。


『……セント、聞こえる?』


セントの目が見開かれる。


「この声……フューズか?」


『無事か? どこにいる?』


「……わからねぇ。真っ白な部屋に、鎖だらけだ。」


『待ってろ、絶対助けに行く!』


通信が途切れる。


セントは小さく笑った。


「相変わらず、バカだな……お前は。」


彼の胸の奥で、何かが脈打つ。

赤黒い光――それは、怒りか、希望か。


《Warning: Emotional Overload Detected》

《System Override Initiated》


鎖が軋む。

床に亀裂が走る。


「……あの馬鹿を、死なせるわけにはいかねぇ。」


セントの両眼が紅く輝いた。

そして――


《Weapon Folder Access: Dual Blade》


鉄が弾け、鎖が切断された。


爆音と共に、檻が崩壊する。

風が吹き抜ける――


プリズンスカイが、揺れた。


一方その頃。

フューズとイリヤは、地上のネットワーク層で異常な波動を感じ取っていた。


「この反応……セント様?」


「セント……! やっぱり、生きてるんだ!」


空に浮かぶ光の線が、紅く脈打つ。


新たな戦いの幕が、静かに上がろうとしていた。

光が弾けた。

白銀の街を包み込むように、ネットの空が震える。


「これは……まさか、“キングス・コード”の反応……!?」


イリヤがデバイスを握りしめ、声を上げた。

フューズは眩しい光の中で目を細める。


「セントの位置が、動いてる……!」


脳裏に浮かぶリンクの映像。

彼の中で何かが共鳴していた。


――心臓の鼓動が速くなる。

頭の中に、無数の声が流れ込む。


《Authorization: Fuse Hyoka — Heir Protocol Activated》

《King’s Network Access Granted》


「っ……!? な、なんだこれ……!?」


全身を走る光の回路。

皮膚の下で、情報の粒子が渦を巻く。


イリヤが一歩下がる。

「ヒョウカ様、それは“継承コード”です! まだ安定していません!」


「止められない……! セントが危ないんだッ!」


叫ぶと同時に、光の翼が背中から広がる。

空間が割れ、足元の床がデータの波となって崩れていく。


――“転送ワープ”。


次の瞬間、彼の体は空の上――無限のクラウド層へと放り出された。


風がない。重力もない。

ただ、果てのない蒼だけが広がっていた。


遠くに見える、崩れた塔。

その中心に、鎖を引きちぎったセントの姿があった。


「セント!!」


フューズの声に、セントが振り返る。

血のような光が、彼の瞳で揺れた。


「来るな、フューズ……! 俺は、もう――」


「黙れッ!」


フューズは一気に距離を詰め、拳を叩きつけた。

拳がぶつかる音。

電光が弾け、空間が歪む。


「お前がどうなろうと、俺は見捨てない!」


沈黙。

セントの目がわずかに揺らいだ。


「……あの日も、そう言ったな。」


二人の記憶が重なっていく。

訓練の日。笑い合った夜。あの誓い。


「俺は、お前を――“相棒”と呼んだ。」


フューズの胸の紋章が輝く。

セントの体の光が共鳴し、二つのコードが交わる。


《Code Link: Complete》

《Dual Access Protocol Initiated》


轟音。

空全体が赤く染まり、データの雨が降り注ぐ。


「これは……融合反応!?」イリヤの声が通信に乗る。


二人の体が溶けるように光に包まれる。

声が、意識が、ひとつに――


『――これが、“キングス・コード”か。』


『行くぞ、セント。世界を、取り戻すために。』


光が爆ぜた。

プリズンスカイが崩壊し、無数の鎖が宙に舞う。


その中に、王の継承者が誕生した。


青い空の下、イリヤは小さく微笑んだ。


「……やはり、彼こそが“王”の器。」


風が吹く。

遠くで、雷のような轟音が響いた。


――物語は、次の幕へと進む。

Fuseは息を荒くしながら、静まり返った公園の中に立っていた。

焦げた芝生の匂い。風に揺れる木々。

彼の腕には、気を失ったままのイリヤが抱かれている。


「……イリヤ、大丈夫か?」


答えはない。彼女の髪が淡く光を放ち、まるで風に溶けるように消えていく。

まるでプログラムの欠片が解けていくように──。


「消えるなよ……っ!」


Fuseは必死に抱きしめた。

しかし、イリヤの体は少しずつ光の粒となって散り、残ったのは一枚のカードのようなプレートだった。

そこには古代文字のようなコードが刻まれている。


【MAID SYSTEM:Iliya - Sleep Mode】


Fuseの心臓が高鳴る。

あの時、Sentoの手に浮かんだ赤いコード。

自分の周りに現れた緑のライン。

そして今、イリヤの青い光──。


「……全部、繋がってるのか?」


風が吹き抜け、どこか遠くでサイレンの音がした。

空には黒い影がいくつも浮かび、ゆっくりと公園を包み込んでいく。


『Attention──全ユニット、コード反応を確認。対象:Fuse Hyoka。確保せよ。』


無機質な声が空から響き渡る。

次の瞬間、光の粒が集まり、人型のドローンが十体ほど出現した。


「……また、来たのかよ。」


Fuseは歯を食いしばる。

体中が痛い。立っているのもやっとだ。

それでも──倒れるわけにはいかない。


イリヤが守ってくれた。

Sentoが、何かを伝えようとしていた。


だから、Fuseは拳を握りしめた。


「起動……アクセス・コード──【KING MODE】!」


緑の光がFuseの体を包み、地面に無数のデータラインが走る。

風が巻き起こり、周囲の木々が軋む。


ドローンたちが一斉に飛びかかるが、その瞬間──


「《Command Access:Firewall Expansion》!」


地面から緑の壁が立ち上がり、ドローンの攻撃をすべて弾き返した。

Fuseの目が一瞬、金色に輝く。


「これが……俺の中の、コードの力……?」


風の中で、誰かの声がした。

柔らかく、懐かしい声。


『Fuse……あなたの“選択”が、世界を変えるの。』


「だれ……だ?」


しかし、声の主はすぐに消えた。


ドローンの一体が後方に退き、通信を開始する。


『対象Fuse Hyoka、起動確認──次の指令を──』


「次の指令なんか、知るかよッ!!!」


Fuseが叫ぶと同時に、緑の光が爆発的に弾けた。

まるで世界そのものがリブートされるように。


空が白く光り、コードが空間全体を満たしていく──

「……くそっ!!」


フューズ・ヒョウカは叫んだ。

彼の声は、静まり返った公園に虚しく響き渡る。

奪われた友の名を呼ぶこともできず、ただ拳を握りしめることしかできなかった。


「セン……ト……」


目の前には、意識を失って倒れている蒼髪の少女――イリア。

彼女を抱きかかえながら、フューズの胸の中に複雑な感情が渦巻いていた。

怒り、悲しみ、そして――恐怖。


(あの力……いったい、俺は何を……)


彼の右腕には、まだ淡い緑色の光が走っている。

データのような数字が空中に浮かび上がり、消えては現れる。

まるで彼の存在そのものが、何かのプログラムのように書き換えられているようだった。


「……俺は……何者なんだ?」


風が吹き、イリアの長い髪がふわりと揺れる。

その瞬間、フューズの耳に微かな声が届いた。


「……マスター……」


「イリア! 目を覚ましてくれ!」


フューズが呼びかけると、イリアはゆっくりと瞼を開いた。

その碧い瞳には、どこか哀しげな光が宿っていた。


「マスター……あの力を使いましたね……」


「力? あれはいったい……何なんだ?」


イリアは静かに首を振り、そして彼の胸に手を当てた。


「あなたの中に眠る“王のコード”……。それが、目覚め始めたのです」


「王……のコード?」


「はい。あなたこそ、この世界を変える『キーコード』を持つ存在――ヒョウカ・フューズ。」


「俺が……?」


信じられないというように、フューズは呟いた。

昨日までただの高校生だった自分が、突然そんな存在に選ばれるなんて。


「だが……センとはどうなるんだ? あいつは俺の親友なんだ……!」


イリアは目を閉じ、少しの間沈黙した。


「――彼もまた、“選ばれた者”の一人です。

ですが、今は“ネットワーク”の呪縛に囚われています。救うには……あなたの覚醒が必要です」


「俺が……救う?」


「はい。マスターがこの世界の真実を知り、コードの意味を理解すれば、彼を取り戻せるでしょう」


風が再び吹き抜け、空は茜色に染まっていた。

遠くで鳴る電子音のような風の響きが、まるで世界が変わり始めたことを告げているかのようだった。


フューズは静かに立ち上がり、空を見上げる。

握りしめた拳には、決意の光が宿っていた。


「わかった……絶対に取り戻す。センとも、この世界も!」


イリアは微笑み、小さく頷いた。


「はい、マスター……このイリア、あなたにすべてを捧げます」


その瞬間、二人の背後で淡い光の輪が広がり、

データの粒子が風のように流れて消えていく。


こうして、少年と少女の運命が、ゆっくりと動き出した。

それは――ネットの深淵に潜む“真なる戦争”の始まりであった。

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