表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/8

第四話 SS級冒険者パーティー登場!

金ならいくらでも払う。この使い古されたセリフが大好きです。

 ロンビンはこの数日間、ガイコツのお面を横にかぶるリーガルと常に行動をともにした。


 魔物スケルトンのリーガルはおとなしくて従順な性格で、戦闘の際も骨を使った打撃攻撃の威力が強い。ロンビンの、特に精神面を支える良き相棒になっている。そして今度こそ、裏切られないことをロンビンは心から願っていた……。


 良く晴れた天候の本日、ロンビン達が冒険者ギルドで用を済ませていると、見知った連中がこの場に現れた。


 隣国の第一王子。


 公爵。


 公爵令嬢。


 着飾った格好の、黒髪の美少女奴隷。


 他にも二人、王子の取り巻きらしき男達がいる。


「おお、SS(エスエス)級冒険者パーティーの『公爵と王子デューク・アンド・オージ』じゃねーか!」


「デューク・アンド・オージと言えば、この国や隣国の危機を何度も救った偉大な冒険者パーティじゃねーか、すげぇな!」


 皆に聞こえるよう大声で喋った、酒を飲む二人組。彼らは第一王子から金をもらって宣伝しているだけの偽客(サクラ)だということを、あなたに知らせておく。ちなみにこの国にも隣国にも、SS級というランク名は存在しない。


 王子はロンビンを見つけると、自ら近寄って来た。


「お前はあの時の平民じゃないか。(うるわ)しき公爵令嬢を譲ってくれてありがとよ」


 感謝の気持ちが全然込められていない。あいかわらず、王子はロンビンへの態度が(いちじる)しく悪かった。


 王子に構わず、ロンビンは同行する令嬢に目を向ける。別に(にら)んだわけでもなかったが、


「……あの時に助けて頂いたことだけは感謝していますわ、平民」

 

 久し振りの再会が、こんなにも冷たいものであった。ついにロンビンは彼女からも平民と呼ばれてしまう。


「おい平民! 二度と我々の前に姿を見せるなと言っただろうが!」


 公爵に怒鳴られるが、ロンビンにも言い分がある。


「なら、こんなとこに来ないでほしいですね、公爵殿。領地をほったらかして冒険者ごっこだなんて、暇そうで何よりです」


「うるさい黙れ! 私は王子と一緒に見聞(けんぶん)を広めているだけだ! お前のような平民出とは違うのだよ!」


「おぉ~、こっちの嬢ちゃんは美人じゃねえか。おい、平民。お前の連れか?」

 性格の悪そうな王子の取り巻きの一人が、ロンビンに話しかけてきた。リーガルの肩に手を回している。


「その手をどけろ」


「やだね、この平民が」


「……アンタが、第一王子の使者として奴隷を買いに来たやつか?」


「なぁんだテメェ、俺のことをご存じかぁ、俺も有名なもんだよなぁ! で、お前はあの汚ねぇ店の常連かぁ? あのクソジジイにもっと接客態度に気をつけろって伝えておけやぁ」


 この男を殴るのを我慢するのが、ロンビンにはどれほど難しかったことか。こんな男にフラれたなんて噂があったなんて、到底信じられない。奴隷商の冗談であってほしいとロンビンは切に願う。


「ついでに、お前の態度も気に入らねえなぁ。平民が貴族であるこの俺様と対等に喋ってるんじゃねぇぞ。迷惑料として、この女は俺がもらっていく。いいな?」


「いいのか? そいつは、お前が見向きもしなかったスケルトンだが」


「ゲッ、触っちまったよ気持ちわりィ!」

 急いで男は手を離し、リーガルを突き飛ばして倒した。


 倒れたリーガルは、静かに立ち上がる。ロンビンも怒りを抑えて、静かに見守った。


「女が手に入らなかったからって奴隷ショップでスケルトンなんて低俗な化け物を買うなんて、最低の人間だな。さすがは平民だ」

 見下し口調のまま王子は言い放つ。


「お前、おっさんにきちんと金を渡さなかったそうじゃないか」

 ロンビンは王子を無視し、取り巻きに言った。


「だからなんだっつぅんだよ。王子様のお役に立てるんだからタダで献上しろやあのクソジジ――」


 ロンビンは鋭い突きを男に放った。男は一発で気を失った。


 周囲の冒険者、それに公爵パーティーのご一行、全員が凍りつく。


「なっ、なんてことするんだ平民っ! この俺の部下に暴力を働くなんて、死刑だぞ!」

 王子はものすごく動揺している。


「ここはお前の住む隣国じゃない。そんな法は知らん」

 対してロンビンは冷静だ。


「だ、だがッ、この国の法律はどうかなッ! 御父様(おとうさま)!」


「なんで私に振るっ!」


 公爵はうろたえていた。


 そんな中、ロンビンは倒れた男の腕を持って床を引きずり、そのまま男を素早く振り回し、ギルドの閉じていた扉を破壊した。


 リーガルを除いた全員が仰天(ぎょうてん)する。


 ロンビンは外に出た。


「おっ、俺をどうするつもりだ平民っ!」

 目を覚ました男は引きずられながら騒いだ。


「故郷の隣国に帰してやるよ」

 ロンビンは冷静で冷酷だ。


「たっ、助けてくれっ! 金ならいくらでも払うっ!」

 男は暴れるが、どうにもならない。


「払わなかったからこういう事態になってんだぞ? 今さらそんなこと言ったってもう遅い。――上手く着地しろよッ!」


「ぎゃああああああああ!」


 ロンビンは背負い投げの要領で男を宙に飛ばしたのだが、魔法の力で押し上げたことによって速度が大幅に加速した。


 彼は空高く舞い上がり、山をも越えて行った。

犠牲者の名前は考えていません。キャラクター名は、隣国の第一王子の使者、です。


今回も読んで頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ