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第一章8  『会心の一撃』

 酒場から出ると、街は既に多くの人でごった返していた。勇者の凱旋を人目見ようとする人達の行動だった。俺は人ごみを掻き分けて噴水広場へと向かった。


「やはり、この状況だとアテナまで現れるか」


 何百のHDPのアテナが、アスラル共和国の人の流れをコントロールし、注意勧告などを出していた。アルカディアには人と同じような感情を持つNPCの他に、HDPと呼ばれるホログラフィックキャラクターが存在する。


 HDPはアルカディアの開発運営会社MOが完全コントロールしている、ホログラフィックキャラクターである。感情はなく複製が数多存在する。アテナは冒険者ギルドに居たルーシーと同じHDPである。


 HDPは監視システムキャラクターであり。プレイヤーがより良くアルカディアを楽しめる様に存在する。HDPはNPCと見分ける為にホログラフィックになっている。


 そのアテナは規律をコントロールするキャラクターであり。こういう時にはよく現れる。アテナは現実世界の警察みたいなものである。


「サガッテクダサイ」

「コチラハスムーズニイケマス」

「ユックリユックリデス」


 アテナの口調は片言である。それは威圧するためらしい。アテナの見た目は白銀の鎧に覆われているので性別と種族は分からないが、声色が女性だ。


 とりあえず下がダメなら、上からだな。俺は地面を蹴り、屋根へ飛び乗った。そして屋根をフルスピードで駈けた。

 一定以上のスピードはステータスのAGIに縛られる。


 AGI:移動速度と攻撃速度と回避に影響。


 俺と同じように屋根から噴水広場に向かおうとする奴は沢山いた。だが俺のステータスより早く動ける奴は、そうそう居ない――――神走りだ。



 ---



 五人のメンバーは銅像が聳え立つ噴水広場に集まっていた。アテナが一定の間隔でメンバーを大きな円を囲むように警備をしていた。


「おいおい! なんで!! ノブナガの奴はいねぇんだ!!!」


 周りから、羨望の眼差しで見つめられているのにも関わらず、イラつきながら悪態をついているレイン。


「一応報告はしたが……反応がない」


 と不愉快そうに答えるアイク。ノブナガとはアスラル共和国を統治しているNPCである。


「まぁいいじゃない。こんなにみんな、私達に見惚れているのだから〜」


 赤い髪をかきあげながら、その多くの視線を感じ浸っているアンリ。その横にはフードで顔を隠している二人が居た。


「まぁいい――まあまあ集まったな。さあ、はじめようか」


 レインが号令をかけると噴水広場の上空や街の至る所に、大型ビジョンが現れた。


「皆さん〜聞こえるか俺だ」

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」


 大型ビジョンにレインが映り、街は大歓声に包まれる。壮絶な活気にレインはニヤリと微笑む。


「俺のギルドに新しいメンバーが加入する。これを見ているお前達も、俺のギルドに参加出来る可能性だってあるのさ」

「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」


 街の人達は目を輝かせ、大型ビジョンを釘付し見守っている。その熱はたちまちに広がっていく。


「今日はめでたい日だ! 集まってくれてありがとう」

「「「「「おぉおおおおおおおおおおおおお」」」」」


「で、だ紹介──」



 ---



 俺はレインを眼下できる場所に着いていた。


「サラは……いないな」


 信じたくはなかったが……噴水広場にはサラの姿がなかった。サラは本当に白銀の巨塔を脱退した。フードの二人を確認して、俺はその現実を受け止めた。


「で、だ紹介――」

「――――サンはどうしたんだよ!!!!」


 歓声が上がる中、その喧騒を一人の少女の声が切り裂くように放たれた。声を飛ばしたのは涙をボロボロ流している獣人族(ビースト)の猫耳少女だった。


「あれは、さっき銅像を見ていた――獣人族(ビースト)の親子」


 声を上げたのは銅像を見て、瞳をキラキラさせて、大きくなったら結婚したいと母親と話していた――その猫耳少女だった。猫耳少女のその一言でその周りにいた人が同調するように、ザワザワし始める。


「俺、サンの大ファンだったんだよ」

「サンが引退ってありえねぇよな」

「大賢者のサンだぞ」

「私もサン様大好き〜」

「俺はあの冷たい目線のサラが大ファンだったけどな。ぐへへへ」

「俺もだ冷たい無表情のサラ。ぐへへぇ」


 猫耳少女の一言で様々な声が上がる中。レインが苛立ちながら再度話し始める。


「おいおいおい! 教育がなってねぇぞ!! 母親!! 空気読めよ!!」


 その一言で猫耳親子はうっ――と身をちぢこませる。それと同時にピタッとザワザワも消えていった。圧倒的な威圧がその場を支配させた。そして、少し声色を変えてレインが語り始めた。


「サンは勇退したんだ。最後に俺にギルドを任せた。俺等が抜けた分、キツいと思うけど頑張ってくれよってな……そう言ってくれたんだよ! リアルでやる事があるって。だから何も知らないガキがでしゃばるんじゃねぇよ!!!」

「ひっ――――」


 レインの強い舌鋒を聞き、猫耳少女はひぐひぐしながら泣いている。目を真っ赤にさせながらグスングスンと――――母親は娘を後ろから優しく頭を撫でて、「大丈夫、大丈夫だから」と宥めていた。


「しねぇぇぇぇぇ――レイン!!!」

「――――ぐへぇあはぁあ」


 俺が屋根から跳躍して放った、ジャンプキック。それを喰らったレインが壮大にくの字に吹っ飛ばされる。今の技はメテオストライクだ。カッコイイだろ。


「ふう〜スッキリした」

「「「「「……」」」」」


 ポカーンとしながら……口をあんぐりさせながら、レインが石ころのように吹っ飛ばされたのを、信じられないような目で見ている烏合の衆。俺はそれを見て、気づいた。


「やべぇ――やっちまった」

「「「ぇぇぇええええええええええええええ!!!」」」



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