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第一章61 『思い』

 何故か俺の問いを消化するのに時間が掛かっていたユキムラとアマクサだった。だが、俺自身もアマクサとユキムラの予想外の瞠目に息を呑んだ。無言の時間がこの場に流れる。


 ――――ユキムラとアマクサは何にそんなに驚いているんだ?


 すると先程までシャロに夢中だったアマクサが俺の方に視線を変更し、手を顎に当て、考え始めた。


「なるほど……あなたがここまで夢中になる理由がわかりましたよ、ユキムラ。まさか……私の言葉が聞こえていたとは……。システムの不具合ではなさそう……ですね? しかし、驚きましたよ、本当に」

「いいや、俺様もビックリしている……。前回の時は、俺様の言葉は何も聞き取れていなかったが、今回は完璧に聞き取れてやがる。これも……やつの影響か? ハハハハハッ!! アマクサ、始めるぞ!!」

「ふふふっそうですね!!」


 ユキムラとアマクサは瞳を合わせた後、コクりと頷き――戦闘体制に入った。俺の問いは宙に舞った後、返ってくる事はなかった。しかし二人ので双眸で俺は理解した。


 ――――聞きたい事があれば、実力を示せか?


 俺は横にいるシャロを一瞥して、自然と言葉が零れた。


「シャロ、少し下がっててくれ!」

「マスター、シャロも戦います」


 ショロは下がる気は全くなかった。少しでも俺の助けになりたいというシャロの意思が、俺の鼓動を早くする。その俺の異変にユキムラは目を細めた。


「アマクサ、α(アルファ)を投入してくて!」

「了解しましたよ!」


 ユキムラの言葉を聞き入れた後、アマクサは右手を前に出し、宙に円を描く。するとユキムラがなぞった円が黒く染まり、亜空間が出現する。


 ――なっなんだこれは……。


 その亜空間を目にし、俺の直感が全力で警鐘をし始めた。すると亜空間ゲートから獣人族(ビースト)の男五人が一瞬で眼前に現れた。


 これはスクロールとは全く違う――転移か? アマクサのスキルとでも言うのか?


 こいつは……かなり厄介な敵になる。北エリアに溢れて居たフロストウルフもアマクサが転移させたのか……。者、場所関係なしに移動できる敵、今回の厄災の前回と質が違う。


 俺はその時、自分の異変にようやく気が付いた。なぜ……俺は目の前に現れた敵に弾丸を放たない? 相手はレベル50前後の五人だ。簡単に瞬殺できる敵だ。


 俺は消えるかもしれない命に逡巡……しているというのか?


「お前!! いつからそんな……腑抜けになったんだッ!!!」


 5人の男の背後から壮絶な殺気と共に咆哮のような苛烈が飛ぶ、俺は声を飛ばしたユキムラを一瞥した。ユキムラは苦虫をかみ潰した表情をしていた。


 その顔は怒りより哀の表情だった。


 ……どうしてユキムラはそんな顔をしている?


 まるで俺を事を心の底から心配をしている表情に俺は戸惑った。


「ふぅ……お二人さん速すぎるわ。ハッハッハコイツらが厄災の黙示録か!! なかなかの敵だな!」


 そう告げたのは、俺達を追い掛けて来た――ジールだった。ジールは巨大な銀色の大剣を構え、俺の横に並んだ。


「戦えるのか?」


 ジールは俺を一瞥し、俺に告げた。この言葉は俺のレベルに対して放った言葉では無いのは、直ぐに理解ができた。ジールは相手の力量を判断し――俺にそう、声を掛けたのだ。


「あぁ……問題ない。厄災の黙示録は俺が相手をする」

「了解!!」


 ジールは俺の言葉の糸を理解し、強く返事を返す。


「おい!! 誰かわからねえが! 今俺様は機嫌が悪いんだ!!! この五人は俺様がライトのレベル上げの為に用意をしたんだ! 邪魔すんじゃねえよ!!」


 ユキムラは槍を回しながら先頭に躍り出た。


「……どういう事だ? 厄災の……黙示録がプレイヤーの為にだと……」


 ジールはユキムラの言葉に動揺の顔を見せた。ユキムラはジールの顔を見て、放っていた殺気が消え、槍を縦に構えた。


「どういう事だ? 男!! なぜ俺様の言葉が真実だと理解出来る?」


 ユキムラはジールに言葉を投げかけた。


「俺は……相手が嘘をついているか、分かるんだ。何故かアルカディアでもその能力が付いてまわっているが」

「フハハハハハッ!! なるほど、面白いやつをが集まっているな」


 だからジールはあの時、俺が嘘をついていると分かり。厄災の黙示録の事を俺から聞き出そうとしたのか。しかし、どういう事だ、現実世界の事がアルカディアでも反映されているとは――


 すると、ユキムラは俺に指差し、強い瞳を魅せ告げた。


「アルカディアにいる俺達は消えない、そしてNPCも消えない」


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