第一章60 『設定』
その男はこの場に現れると同時に、冷たい視線を俺だけに送る。燕尾服を着ている、金色の髪を後ろで束ねている男は、顔は無表情だが、無言の睨みは、俺に強く刺さった。
なんだ……? この嫌な視線は……。
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PN:アマクサ<厄災の黙示録>
LV:??? JOB:???
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俺はその男のステータスを確認した。――――アマクサ……か新しい厄災の黙示録だな。しかし、厄災の黙示録は名前と種族は見ることが出来るが、レベルと職業は判らないのか。
これは……何かしらの意味があるのか?
「あれが……あなたの想い人、ですか? まあ随分と想像と違いましたので、驚きましたよ。まさかあなたが求めていた救世主が……レベル6の男だとは――ふふふ。まあ私の方はそちらの獣人族の女性の方が、気になりますが……」
物珍しげに俺とシャロを見ていたアマクサだったが、シャロの方へと視線を固めた。シャロはレベル30の普通のメイジだ。目に止まるとすれば装備品だが、シャロより俺の方がレア度の高い装備を身につけている。
どうしてアマクサはジロジロとシャロを観察しているんだ? まさか……こいつ、シャロの可愛さに惹かれたのか? 何て……そんな訳ないか。
「ああ、あれが俺様の相棒であり、救世主となる男だ! アマクサ、ライトの見た目に騙されると直ぐに殺られるぞ!」
「ほぉう……あなたがそこまで認めるとは、興味深い。彼が、私達を救うであろう……救世主ですか。まあいいでしょう、面白い」
アマクサはユキムラの言葉を聞き、今まで無表情だった顔が、ガラリと変わる。パックリと割れた口元は、まるであの時の黄泉のような笑顔だった。何かに取り憑かれたかのような薄気味悪い笑顔を――――俺にみせた。
「ユキムラ、お前、本当に……アルカディアを壊そうと、それが目的なのか? ならなぜ、俺がお前達にとっての救世主なんだ? 俺がお前達を倒すことが、お前達にとっての……救済なのか?」
ユキムラの発する救世主という言葉が、妙に引っ掛かった。
厄災の黙示録はHPがゼロになると消滅する、それがアルカディアの設定であり、作られた悪と言われている厄災の黙示録の存在意義だと、俺は思っていた。
だが、何か違う……。
そう、それならば、どうして俺の姉の黄泉は、厄災の黙示録なんだ? プレイヤー側である黄泉がなぜ、NPCの役割を担っているんだ?
だとすると、厄災の黙示録がゼロになると、消滅するという認識が、そもそもの間違いだという事になる。データではない黄泉が消滅する事なんて……。そう、黄泉とユキムラは俺の目の前でログアウトをしたんだ。
どこかで俺と同じように、アルカディアへとダイブしているんだ。なら、厄災の黙示録以外のNPCはHPがゼロになるという事なのか?
――――判らない……。
「おいおい、何かあった、みたいだな……ライト。俺様も、こんなに早く再会する予定ではなかったんだ。俺様とお前に起こったイレギュラーか……。フフフ……ハハハハハハフッ! 元凶はどちらも同じって事だろうがな!!」
「――ユキムラ! お前……やはり黄泉姉さんを知っているのか!!」
考えに耽っている俺に何かあったと悟ったユキムラだったが、俺の煩悶の原因と、ユキムラが俺と再会するキッカケを作ったのが黄泉だと、ユキムラは理解し、なぜか高笑いをした。
――ならユキムラから聞き出すしかない、黄泉姉さんの事を。俺は再度戦闘態勢に入る。
逃がしはしない――絶対に!!
「ふふふっ……実に面白い。ナンバーがありませんね。彼女は一体、どこからダイブをしているのでしょうか? ふふふっ面白い」
「なんの事を言っているんだ!?」
俺とユキムラが戦闘になろうとしている中、アマクサの独り言がやけに響いた。また置き去りにされている俺が、アマクサに質問を飛ばすと、なぜかユキムラとアマクサは目を見開き、声を失っていた。
しかし答えは返って来なくとも――理解した。
アマクサは黄泉の事を考えて零した言葉じゃない、それだけは理解出来た。そうアマクサはシャロに釘付けになりながら、言葉を零した言葉、だった。そうシャロを考えて。
シャロもダイブをしていると――――アルカディアに――――
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