第一章59 『探していた救世主』
俺とシャロは、ジールを振り切って先に北エリアの入口に居た。俺がジールに差を付けてここに来れたのは、ジールはタンクよりのステータスのバトルマスターだからである。
アムル王国の南、西、東エリアには誰もが自由に行き来できる。だが北エリアに入るには、検問を受けてからしか、足を踏み入れることを許されていない。昔は街の中にも高い壁があり、北エリアとその他のエリアは完全に分けられていたらしい。
屋根の上にいる俺は視線を下に向ける。瞳に映る検問所に視線を凝らすと、この騒ぎなのに検問所にはたったの三人しか兵士は居なかった。
この状況になっている理由は、北エリアから逃げる貴族の護衛に人が取られているからである。それに伴い、地上ルート以外のセキュリティは緩々だった。
俺以外の冒険者も混み合わないルート、上から向かっているみたいだな。これなら検問所は素通りで問題ないかな。――――緊急事態だ。
――しかし逃げるしか選択ができない強者が向こう側には居るのか?
慌てて逃げる貴族や住民を目にして相手の力量を分析する。貴族は基本的には強い護衛を雇っているはずだが。
そして俺達は、そのまま北エリアの豪奢な住宅の屋根を駆けて行く。北エリアの街並みは他のエリアと違い、外観がガラリと変わる。色味も綺麗に統一され、紛い物が存在しない。
周りがわさわさと騒がしい中、俺達は直ぐに紛い物に気付く。
――街の中にモンスターがこんなにも居るだと?
視界に映るのは北エリア氷結のダンジョンで出会った、フルストウルフが北エリアを跋扈していた。しかもかなりの数のフロストウルフが街で暴れていた。
街の兵士たちや冒険者はフルストウルフを掃討するだけでも手一杯だった。レベル60前後のフロストウルフは熟練した冒険者でなければ単独討伐は難しい。
この状況だと、災害元にはまだ誰も行けてないかもしれない。仕方ない――
「シャロ! モンスターを討伐しながら行こう」
「はいマスター」
俺は直ぐにブラッド漆黒をアイテムボックスから取り出した。そして屋根を駆けながら、銃弾をフロストウルフに向かって放っていく。フロストウルフは弾丸をくらいポリゴンになって爆ぜる。
「何が起きたんだ?」
「フルストウルフが消えていくぞ!!」
「このまま押し切るぞ!!」
兵士や冒険者たちは目の前のフルストウルフが爆ぜていくのを疑問に思いながらも、指揮を高めモンスターを討伐に向かって行く。
――――この調子ならモンスターは何とかなりそうだな。
しかしおかしい、二十以上のフロストウルフを討伐していのにも関わらず、アイテムドロップのシステム通知が一向に現れない。それどころか同じパーティーにいるシャロのレベルが上がっていない。
これは一体どういうことだ?
「いた!!! やっと現れた! おいおいおいそれ銃か? マジで異職じゃねえか!! ライト、お前本当に面白いな。俺様を楽しませてくれる!!」
――――喜びの声が俺の耳に入る。シャロもその声を耳にし、直ぐに臨戦態勢に入る。――その声と共にビリビリと身体を刺す威圧感がその場を支配したからだ。
この声は――――
「ユキムラ!!」
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PN:ユキムラ<厄災の黙示録>
LV:??? JOB:???
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俺は声の主に視線を向けると、そこには歓喜に酔う、ユキムラの姿があった。――初めて出会った時とは違い、ユキムラの瞳には焦燥感は全くなかった。――ユキムラの瞳は恐ろしいまでの執念が刻まれていた。まるで昔の俺みたいに――
少しの間でここまでガラリと変わった、ユキムラの込められた意思に、自然と俺は武器を持つ手に力が入る。
あの時の直感は正しかった――こいつはアルカディアの脅威になる。ここで確実に消さなければ、大災害になりかねない。
「俺様の名前をちゃんと覚えていてくれて、嬉しいよ相棒!!!」
――ドパンッ!
俺は直ぐさま黒い銃からユキムラに向かって弾丸を放った。しかしその弾丸はユキムラの槍の回転により防がれた。まるで俺の攻撃を前から知っているかの様に――
「ふふふっこれは完璧な初見殺しだな。そのレベル、その種族で、まさか銃を扱うとは絶対に想像はできないな。しかもレベル6でこの威力、ふふふっ。ライト、お前は本当に俺様たちの救世主となりそうだな。いいや、俺様が成してみせるお前を―――― 」
獰猛な笑みを浮かべながら話すユキムラ。全身がゾワゾワとする気味悪さが身体を通る。
――――流石は厄災の黙示録、簡単には攻撃を通さないか。
「こんな所に居たんですか? 急に居なくなるので探しましたよ。全く」
ユキムラの背後から颯爽と現れた中性的な顔の男。俺は厄災の黙示録、蜘蛛の新たなメンバーと相対することになる。
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