第一章57 『友』
俺は口にジューシーな肉を入れながら、ゆっくり考えに耽ける。ジールとミリファが俺を尊敬していたとは、しかも俺をギルドに勧誘しようとしていたなんて知らなかった。
トッププレイヤーにそう思われていたなんて正直、心の底から嬉しい。しかし俺は二人からそう思われるムーブはとっていないと思うが。少し心が安らぐと同時に、俺は決心する。聞くなら今のタイミングしかない。悪いが、少し手掛かりが欲しい。
「白銀の巨塔のメンバーのサラについて何か知らないか? 先に俺から聞いて申し訳ない」
俺の言葉に食事をしているジールとミリファがピタリと止まる。二人は少し瞬きさせた後、ジールが答えた。
「サラか――気にする事はない、兄ちゃんと俺の仲だ。サラの事はどこのギルドも勧誘のために必死に探しているが、会えてはいないみたいだ。もちろん見たって噂はあるが、どれも根も葉もない噂ばかりだ」
神虎の情報網を持ってしても、サラの居場所にかすりもしないのか………。もうサラはアルカディアに居ないのか?
俺の表情を見てジールは素早く言葉を入れる。
「二つだけ噂がある」
「噂?」
「ステージONEに賢者が新たに加入したと云う噂がある」
「キングの所にか――」
ステージONEはAフロアのダイヤⅢのギルドだ。しかも神の恩恵を二度も手に入れている最高峰のギルドである。そのギルドのマスターの名はキング。アルカディアのプレイヤーで唯一レベルが100の者である。
現在アルカディアのプレイヤーの最高レベルは99だ。勿論、NPCではレベルが100超えているものはいる者もいるが、稀である。前回のシーズンでキングは神の報酬で自身のレベルを上げることを望んだみたいだ。その意図は言及されていない。
しかしそのたった1レベルがアルカディアでの最強を決めた。全ての者が、アルカディアと言えば? アルカディアで一番は? と聞かれ、声を揃えて出るのはキングの名である。
サラはステージONEに居るのか?
「もうひとつの噂は、PVPで負けてからログインをしなくなったって話だ」
「どういう事だ……」
「今は治まっているが、アルクス教国で厄災の黙示録が暴れて、それを止めに入った者が居たんだ」
「――――」
俺がアカウントが消失していた時の話だな。ノブナガはそれからアルクス教国に人を派遣しているが。俺が受けた信長のクエストにもこれが絡んでいる。
「その時、厄災の黙示録に倒された者は賢者という話だ」
「なっ……」
俺は息を飲んだ。倒された……。サラがもし、もしNPCだったら……もう消滅している……。
あの時現れたバニーガールのサイコロの効果で、消されそうになった黄泉の言葉を俺は少し聞き取れた。俺の二つのパッシブスキルによりアルカディアの秘密が垣間見えた。
だがその現実は今の俺にはあまりにも重かった。
「大丈夫か? 顔が真っ青になっているぞ」
俺はジールの言葉でハッと意識を戻す。するとシャロがすっと俺の手を握る。
「マスター大丈夫です。シャロが付いています」
まるで桜の言葉の様に、優しく俺の心に入っていく。俺は何を煩悶していたんだ、情けない。俺はこんな顔をする為にアルカディアにダイブしたんじゃない。
黄泉の言葉には何かあるはずだ。まだ証左はない。
「大丈夫だ、ありがとう」
俺はそう言いシャロの手を強く握り返した。
「はいマスター」
「サラの件は何か分かれば必ず連絡する。俺達も協力しよう」
「そうね」
ジールとミリファはにっこりと優しく微笑み、俺に告げる。二人はどうしてそこまでしてくれるんだ?
「どうして?」
「決まってるだろ! 友達だからだ」
「ふふふっ」
「――」
「一緒に飯食えば、俺は勝手にダチだと思っている」
「好き嫌いはあるけどね?」
「それは、まぁ」
「ふふふっ」
俺とジール達が友達。そんな事――――そうか。
「フレンド登録いいか?」
「もちろん」
「あぁ」
俺はジールとミリファにフレンド申請をする。
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新しいフレンドが増えました。
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PN:ジール<人族>
LV:95 JOB:バトルマスター
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PN:ミリファ<人族>
LV:94 JOB:賢者
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「よろしくな!」
「よろしくね」
「マスターおめでとうどざいます」
「シャロありがとう。二人ともよろしく」
俺達は和やかな雰囲気で食事を再開する。友と食べる味を噛み締めながら。
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俺達はテーブルの上の物を片付け終えた。そして俺はジールに伝えようとする。
「ジール厄災の黙示録のことだが――――」
凄まじい爆発音が響く――――このギルドの外から――まさかもう動いたのか。厄災の黙示録が。
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