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第一章56 『面影』

 別れ際に見せたあの時の様にジールははちきれんばかりの笑顔を俺達に向けた。ジールに追従しているミリファも穏やかな笑みをしている。


「大丈夫だ。俺はあの時のことを今すぐ聞こうとはしない。いつか話してくれるんだろう? 俺達はたまたま食事に寄っただけさ」


 俺が頭に少し過ったことを前起きでジールは言う。俺が知る中でジールはトッププレイヤーで少ない好漢だ。


「俺達も今から食事をするつもりだった。一緒にどうかな?」


 俺の言葉に少し驚いた様子のジールだったが、ニッカと白い歯を見せて答えた。


「もちろん! 一緒に食べるか!」


 そして俺達は木の円卓を囲い腰を下ろしている。しかし流石はジールとミリファだ。俺達の周りには人が居ない。ジールとミリファが座ってから近くに居た者は場所を移動した。


 ウェイトレスが恐る恐る近づき、俺達は注文を済ませ時間が空く。


「でも本当にたまたま会ったな~まぁ冒険者ならここに寄るか!」


 自分でそう言って笑っているジール。二人がここに居るという事は、ダンジョン消滅など周辺はだいぶ落ち着きを見せたということだろう。


「まぁな冒険者だからな。ちょうどギルド創設の申し込みを終わらせたところだった」

「――」

「――」


 ジールとミリファは驚いた顔を見せた。その後、ため息をしそうになったジールは我慢して言葉を零す。


「一足遅かったみたいだな」

「そうね」


 先程までの明るさが嘘かの様に二人は落胆していた。俺は何かまずい事を言ってしまったのだろうか?


「二人を俺達のギルドに勧誘するつもりだったんだが。加入ではなく創設なら諦めるしかないな」

「俺たちを、か?」

「あぁ」


 ジールとミリファのギルドは現在DDフロアのダイヤⅢの中で一番古参のギルド、神虎である。神虎は帝への献上を行わず、ある一部のメンバーが勧誘する者しか入れない。かなり敷居の高いギルドである。


 神虎は名前の通り、剣神と白虎と言われている者が構える二枚看板のギルドである。もちろん神虎のメンバーも猛者がゴロゴロと居る。そのギルドの幹部が俺達を勧誘とは正直驚いた。


 俺達は装備はいい物を着けて入るが、俺とシャロは神虎に見合うレベルではない。ましてや、戦闘場面も見ていないのに勧誘とは――俺が訝しむ瞳を見せると。


「あ~すまんすまん! 勝手に話を進めてしまって。俺が神虎に誘ったのは兄ちゃん達を気に入ったからさ!」

「俺達を気に入った?」


 会って間もない俺達のどこをジールは気に入ったというのか。俺とシャロの二人を。


「嬢ちゃん名前を教えてくれないか? 俺はジールという」

「私はミリファです」


 お腹が空いているシャロは良い香りがする厨房に夢中だったが、二人の慇懃を聞き視線を転じた。


「私はシャロと言います」

「おおよろしくな! ショロちゃん」

「よろしくね!」


 シャロは挨拶を済ますと再度厨房に虜になった。可愛らしい姿に俺を含め三人が笑みが零れる。


「話しを戻すと、俺がライトとシャロちゃんを誘ったのは俺の尊敬する英雄に二人は似ていたからだ」

「俺じゃないでしょ? 達でしょ? 魔法職の者なら誰だって尊敬するわ」


 ジールとミリファは何かを思い巡らせ「ふふふっ」と笑っていた。


「尊敬か? 二人がか?」

「サンだ」

「サンよ」


 二人の答えがドンピシャで被る。俺は前で尊敬と聞き恥ずかしくなり、少し目を逸らした。二人が……俺を尊敬だと?


「本当は俺達のギルドにサンを入れたかったがな~」

「だから早いに越したことはないでしょ? 迷ってるからダメだったのよ」

「っだから今回は他が目をつけられてない今を狙って……まぁダメだったが」

「そんな事もあるわよ。早いうちに会えただけでも幸運よ」

「そうだな!」


 また二人で会話を始めるジールとミリファ。短時間で見たことの無い、二人の喜怒哀楽を見て俺はポカーンとしていた。


「しかしサンか」


 言葉が自然と零れた。それに二人は俺に視線を転じる。


「悪い悪い。置き去りにしちゃったみたいだな」

「サンの話になると熱くなるんだから~」

「それはミリファも同じだろ」

「そうね」

「要するに、二人はサンの面影があったから誘ったって事だ」

「そういう事!」


 俺とシャロが似ている? まさかの答えに思考が追いつかない。サンとシャロがか?


「まるで二人が合わさってサンみたいな感じだな」

「その例えわかりやすい!」


 すると、ウエイトレスがステーキセットとハンバーグセットが乗っているキッチンカートを俺達のテーブルに寄せた。


「マスターマスター来ました」


 シャロの耳がぴょこぴょことさせ興奮していた。俺もお腹が空いたな。


「とりあえず飯にするか」

「そうですね」


 ジールの言葉に同意しながら、シャロの可愛らしさに癒されるのであった。


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