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第一章55 『神の恩恵』

 アルカディアには神の恩恵というものが存在する。四年に一回、全世界のダイヤⅢの中で一番貢献度が高いギルドが選出される。


 選ばれた一番になったギルドのギルドマスターと年間累計貢献度が一番高いギルドメンバーにはアルカディアから()()にその恩恵が貰える。


 神の恩恵、それは願いがひとつ叶うというものである。


 2060年にアルカディアが稼働されてから30年経った今、日本の、アルカディアでいうDDフロアのギルドがその栄光を勝ち取ったのは一度しかない。


 ギルドマスターが現実世界でどの国で登録してるかで、そのギルドはフロア()を振り分けされる。


 現在、神の恩恵を手に入れる事はゼロに限りなく近い一である。ダイヤⅢのギルドのみ降格というのが存在する。一年間に一定数の貢献度を下回るとダイヤⅡに降格してしまう。


 ランクがダイヤⅢになる事でもとても至難な道程。なのに、全世界のダイヤⅢの中で一番になるのは夢のまた夢である。


 しかし目指す者も数多いる。ゼロから離れた一の方、神の恩恵への一番の近道。それは単純だ――ダイヤⅢのギルドに加入すればいい。手が届く所に行けばいいと皆考える。


 すると受け入れる側はもちろん加入するメリットを求める。至極当然のことである。それをアルカディアでは帝への献上と言う言葉を用いてるみたいだ。


 神の恩恵を求める多くの冒険者は、ダイヤⅢのギルドに入る為の、献上の品を探すのに必死だった。だが、それを断ち切ったギルドがある。


 DDフロアのギルド、大海の覇者と白銀のギルドである。


 大海の覇者は無条件でどんな者も受け入れ、箱をでかくする事を目標にしたギルドである。ダイヤⅢのギルドになった現在でも大海の覇者は方針は変わらない。


 これが出来るのは絶対の統率力、カリスマ性を持ち合わせているギルドマスターが居てできる御業である。


 それとまた別の路線を走っているギルド、白銀の巨塔だ。


 白銀の巨塔は少人数で成り上がったギルド。しかもDDフロア内では年二回、一位になったギルドである。最初から強いギルドに加入するという流れから、自分の手で掴み取る、自分の力で上を目指すという、本来のゲームの根本に戻ったのだ。


 そのギルドの勇者、レジェンダリー職業のレインは、誰もが憧れ一目置く存在である。傍から見たらレインの道は英雄譚である。()()()()()()()()()()


 だからこそ、トヨトミの目的が神の恩恵なら、大海の覇者に加入した方が近道である。いや、5千万の献上であれば、他のフロアのダイヤⅢでも加入はできる。


 トヨトミは本当に――ヘリオス騎士団に全てを賭けているんだ。俺はトヨトミの強い思いを受取り覚悟を決める。上を目指す覚悟を――


「今は! 今はお前が一番だけど絶対に抜かす! 私がこのギルドでは一番だから!」


 苛烈にエレナがトヨトミに指を指し言い放つ。


「私が一番だから」


 再度、低い声でボソッとエレナは言い、冒険者ギルドから立ち去って行った。エレナ()の初めて見る表情に、俺は息を呑んだ。


 こんな悔しそうにしている顔を――見た事がない。


「じゃあ~俺も抜かされないように頑張りますか~」


 と言いながら両腕を上げストレッチをしているトヨトミ。


「本当によかったのか?」


 この言葉は無粋だが、零れたしまった。俺とトヨトミは出会って間もない。


「俺はアニキのギルドしか入る気はないので~じゃあ俺も一狩り行ってきま」

「――」


 俺の問に即答で答えたトヨトミは、もう次を見据えていた。そして、エレナと同じように冒険者ギルドから去ろうとした。


「魔王、敵から畏怖を込めて言われた言葉。またの名を第六天魔王」

「――――」


 トヨトミはすれ違いざまに俺だけに聞こえる声量で言葉を流す。その言葉を言いニッコリと微笑んだトヨトミは颯爽と消えていった。


 トヨトミは俺がサンだと知っているのか? まさかな……。


「ライト様!」


 力強くハンベイは俺の名前を言った後、俺の手を話した。


「ハンベイは僕は一度アスラル共和国に戻ります」

「ハンベイ……」


 ハンベイの真剣な表情に俺は理解した。ハンベイの思いを――


「ノブナガ様に直接話し直ぐに戻れます。ライト様だから……」

「あぁ待っている! あまりにも遅いと俺から迎えに行くからな!」

「ライト様……」


 俺の言葉を聞き、ハンベイは綺麗な花を咲かせた。そしてハンベイは俺とシャロにお辞儀をし、アスラル共和国へと向かって行った。


 ――――これは責任重大だな。


「マスター、シャロは強くなります」


 シャロがまるで戦闘態勢の前かの様にケモ耳をぴょこぴょこ、しっぽをフリフリさせていた。


「頼りにしているシャロ」

「はい、マスター」


 俺とシャロだけになってしまったが、シャロの存在が替えが効かない絶対になっていた。




 とりあえずシャロの冒険者ランクを上げてかジョブチェンジのクエストを受けよう。そしてサラの情報を――


「シャロ、何か食べてから冒険者ランクを上げよう」

「はい、マスター」


 ここの酒場で何か食べてからにしよう。シャロは相当お腹が空いているはずだ。俺達は併設されている目の前の酒場に行こうとする。


「よっ! 先程ぶりだな」


 俺はその声の元へと視線を転じた。


「ジール!」


 そこには入口から入ってきたジールとミリファの姿があった。


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