第一章54 『全てを捧げる覚悟』
「これで申し込みは完了となります。ギルドのメンバーは必ず一人だけは公表されなければなりません。公表はどなたにされますか?」
職員が言うようにギルドメンバーは基本的には自己申告制だが、一人は正確な情報を公にしなければならない。多くのギルドはギルドマスターがそれを担うが。仕方ないこれは俺が行おう。皆は俺の為に集まってくれたんだ。
「俺――」
「はいアニキはダメ~アニキが出たら全ての冒険者は目の色を変えるから。そんな事になれば絶対釘打たれでしょ~ここは俺が名前を立てますよ」
俺が宣言をしようとするとトヨトミは遮り、そう告げた。だがそれに納得いかないものが居た。もう目線で判るよエレナ。
「何言ってるの! 私がするに決まってるでしょ。私が無理やり進めているんだから!」
「無理やりじゃないぞエレナ。俺はエレナと同じギルドに入れて嬉しいぞ!」
俺の背中を強く押してくれるエレナの行動は素直に嬉しかった。逡巡しそうになった俺の意思に道を示してくれたんだ。するとエレナの顔が徐々に赤色に染る。そして素早く振り返り、顔を隠してしゃがみ込んだ。
(そんなこと真顔で言うんじゃないわよ、バカ)
「じゃあ俺で確定で~」
「トヨトミもありがとな。一緒に家族を探そう」
その言葉を聞き、トヨトミは目を見開き固まった。そして頭を掻きながら見えないように口元を綻ばせた。
(俺はアニキの為なら――)
「シャロもありがとうな。ハンベイ、いつでも待っている」
「シャロはマスターのです」
「ライト様、ありがとうなのです」
シャロはケモ耳をぴょこぴょこさせ喜んでいた。ちみっこのハンベイは俺の手をムギュムギュしていた。あぁ癒しの空間だ。
「じゃあ俺でお願いします」
「かしこまりました」
癒されている俺を他所にトヨトミはプロフィール画面を職員に見せた。メニューから開くことが出来るプロフィール画面は名前、レベル、職業などが記載されている完全な個人情報である。まあ俺がステータス確認すると現れる画面と同じである。
「おめでとうございます。これでギルドヘリオス騎士団は創設されました。ランクはブロンズからのスタートとなります」
「ありがとうございます」
そして職員に軽く会釈しその場を離れた。俺達はカウンターから少し離れた場所で各々メニューを確認する。俺はメニュー欄からギルドという項目が増えているの確認した。そのギルドを開くと加入人数とギルドランクが載っていた。
勿論、ギルドマスターは不明となっている。ギルドのメンバーリストにはトヨトミの名と――あれ? エレナの名前が載っている。エレナはプロフィールを開示したのか。
ギルド画面からプロフィールの開示はいつでも出来る。開示されたプロフィールは在籍しているギルドを退会しない限りは公表され続ける。
プロフィールを見せるメリットは、フレンドと同じ効果を得ることが出来る事である。よく使われる機能は連絡とアイテムの受け渡しだ。NPCとどこでも連絡が出来るのはプレイヤーにとってはかなりのメリットである。
「シャロはどうしたい?」
「マスターいいですか?」
「もちろん、シャロの好きなようにすればいい」
「ありがとうございます」
やはりシャロは俺の返答を聞くまで、何もしていなかった。俺の返事を聞きメンバーリストの欄にシャロの名前が載る。シャロといつでも連絡出来るのは安心する。メンバーリストに載せていなくとも、掲載されているメンバーにはその恩恵を使うことが出来る。
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おめでとうございます。
ギルドランクがゴールドⅡになりました。
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え……? どういう事だ。俺は表示されたシステム通知を瞳に映し動揺する。ギルドランクがブロンズから二段階上がっている。
俺はもう一度ギルドを確認した。すると、寄付の欄が50000000Gとなっていた。何だ……これ。誰がこんなに寄付をしたんだ。
「トヨトミ! 何これ!」
とエレナはトヨトミに言うが、この金額これをトヨトミが寄付したものなのか?
ギルドメンバーであればギルドに寄付できるが誰が寄付したかは確認が取れない。個人のギルド貢献度などは確認はできるが、それは本人の開示次第である。
「あっこれっすか? ギルド創設記念ですよ~」
トヨトミは自分が寄付したのを認め――軽く言うが、5千万だ。現実世界でも使えるお金5千万なんだ。俺とトヨトミは、見た目の判断になるが年齢は余り変わらないはずだ。冒険者ランクもDランク、このお金を稼ぐには相当な時間を要したはずだ。
俺も同じだったからこそ痛い程に判る。その苦労が――
トヨトミはなぜ創設したばかりのギルドにこんな大金を……。俺がトヨトミを見つめていると。
「――」
「アニキ! 俺はこのギルドに全てを賭けているんです。俺はダイヤⅢになる為ならどんな事でもしますよ。その報酬を手に入れるために」
トヨトミの強い瞳に俺は息を呑む。ギルドの最高ランクの報酬。そうか――そういう事か。この高い目標があの勇者と合間みえる道筋になるとは――今の俺は知らなかった。
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