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第一章48 『絡まる糸』

 俺の前に悠々と現れたのはエレナだった。この装備はエレナの方で間違いないが。エレナの装備は初心者装備の冒険者シリーズのままである。しかし、また間違えると何が起こるか判らない。俺は念の為にエレナのステータスを確認した。


 ===============

 PN:エレナ<人族(ヒューマン)

 LV:31 JOB:ウォーリア

 ===============


 なっ……レベル上がりすぎだろ。もう二次職のウォーリアになっているじゃないか。さすがはスキル持ち……だな。


「ライト! 私もライトのギルドに入るわ!」


 エレナは胸を張りながら、そう強く宣言をした。


「エレナ、俺はまだギルドは作っていない」

「何よそれ! 早く作りなさいよ!」


 そうエレナは言うと片頬を膨らませながら、腕を組んだ。エレナとここで会えたのは俺にとって僥倖だった。ギルドを設立するには冒険者ギルドで申請が必要である。そして、創設人数は最低四人は必要だ。


「シャロもライトのギルドに入るんでしょ?」

「はいエレナ、シャロもマスターのギルドに入ります」


 エレナはシャロに視線を転じると優しく微笑んだ。シャロもエレナと会えて嬉しそうだ。今回はシャロはエレナとティアを間違えなかった。


 シャロもステータス表示でレベルを確認してから返事を返したのだろう。レベルは誰しもが見れる。


「ライト様、僕は一度ノブナガ様にお伺いを立てます。少し待っていてください!」

「えっ……ハンベイ!」


 ハンベイの言葉に俺は冷や汗が出る。俺の外套を優しく掴みながらハンベイは言うが、ハンベイはノブナガの元を離れ、俺のギルドに入ると言うのか……。とても嬉しいがその後どうなるか考えただけでも、何とも物恐ろしい……。


 しかし、この真っ直ぐな視線は答えなければならない。俺は全てを腹に据えた。


「ハンベイ、その時はよろしく頼む」

「はい! ライト様!!」


 ハンベイは嬉色を見せ、花が開いたような笑顔を俺に向けた。それを優しく見守っていたエレナが口を開いた。


「私はエレナよ! 同じギルドメンバーとしてよろしく頼むわ!」


 エレナは少し照れながらハンベイに握手を求めた。ハンベイは直ぐにエレナの手を結んだ。


「ハンベイと言いますのです。よろしくお願いいたします」


 エレナはハンベイの事を快く受け入れた。そして、侃侃諤諤と話すエレナはターゲットを変更する。


「貴方達はライトのギルドに入るの?」


 突然の乱気流にもまれたハヤト達は鳴りをひそめて居た。しかし、ハヤトとアユミは目から光線を出し続けていた。


「ラッライトさんのギルドなんて恐れ多いです! わわ私達、ギルド作ったばっかりなんです」

「アユミ――そうだよなぁ! サンさんのご兄弟のギルドなんて……あれこれ言っちゃっダメだ!?」

「それ言ったらダメ!」


 エレナの、思いもしなかった言葉にアユミとエレナは激しく狼狽した。アユミに至っては珍しく、舌もつれを起こしていた。ハンベイとエレナはハヤトの言葉を聞き逃さなかった。ハヤトが言葉を零した後、直ぐにハンベイとエレナは俺のを方へと目を向けた。


「ライト様が……サン様の?」

「ふ〜ん、なるほどね」


 ハンベイはハヤトの言葉を反芻していた。エレナは目を細め、腕を組んで難しい顔をしている。ハンベイにサンとの繋がりがあるとバレたのは……。ハンベイにはちゃんと話そう。その方がいいな。


「ハンベイ、後で大事な話がある」

「ハイなのです!」


 ハンベイは俺の袖から手へと掴む先をチェンジした。そしてエレナは俺にアイコンタクトをして話を続けた。


「なら、ギルドを設立するにはあと一人必要ね」


 エレナの言う通りハンベイがまだ加入できない今、俺、シャロ、エレナの他にもう一人必要である。


「マスター、ティアはどうでしょうか?」


 シャロの言葉にギロリと俺を睨むエレナ……。


「ティアって誰? そう言えばあの時も、その名前を聞いたわ!」

「――――」


 声色を変えて俺に詰め寄るエレナ。エレナの背後から龍が見える……気のせいか?


「ティアはエレナとそっくりな人です。私もティアをエレナと間違えました。それくらいティアはエレナに似ています」

「ふ〜んシャロがそこまで言うなら、あの時は私が悪かったわ! 私に似ている人ね〜会ってみたいわ! そのティアって人は今ログインしてるの?」

「確認してみる」


 エレナとティアは知り合いではないのか……。しかし、正堂さんはティア(柚葉)の事を知っている感じがした。俺の直感が外れたのか? エレナ()は嘘をついている様には見えない。


 俺はメニューからフレンド欄を開いた。フレンド同士であれば相手がログインしているか直ぐに判る。――――ティアはログインしていないみたいだ。


「ティアはログインしていない」

「そう! ならそのティアって人がログインしたらギルドを作りましょう!」

「あぁ!」


 このメンバーで新しいギルドを作ろう。俺はエレナに背中を押され、決心した。


「そろそろ行きましょう。待ってるから」

「あぁそうだな!」


 リムはハヤトにそう言い、風のように冒険者ギルドから去って行った。


「ライトさん、俺達はこれで! ダンジョンに行ってきます!」

「また会いましょう!」


 ハヤトとアユミは俺達に暇を告げる。そして、元気いっぱいに手を振りながら去って行った。俺達も()()、ハヤトとアユミを見送った。


 とりあえず、シャロの二次職への転職クエストの授与とエレナの装備を揃える事だな。そして、サラの情報を――


「アニキィ〜何かお困りの様子で!」


 周囲と溶け合っていた男が俺に声を掛けてきた。にへら笑いをしながら男は現れた。


「何この気色悪い男」


 エレナは睨み、辛辣にその言葉を男に飛ばした。


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