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第一章46 『種族』

 優しい表情を魅せ、俺に近づいた機械人形(メカ)の男。その男の見た目は完璧に人族(ヒューマン)寄りであり、初見では種族の見分けがつかないだろう。俺のステータス確認、バクがなければ。



 ===============

 PN:アル<機械人形(メカ)

 LV:87 JOB:トリオ

 ===============



 俺の眼前にいるアルは、かなりの高レベルの機械人形(メカ)だった。このレベルでこの見た目の機械人形(メカ)は珍しい。


 アルカディアの種族、機械人形(メカ)の殆どは、見た目が人族(ヒューマン)寄りである。しかし、機械人形(メカ)人族(ヒューマン)の事をあまり良く思っていない。


 この事から一目見て、機械人形(メカ)だと分かる機械を、露出しているのが大半である。高レベルの機械人形(メカ)なら、尚更それを大切にする。それは機械人形(メカ)の種族としての矜恃である。


 長い白髪を靡かせているアル。アルのエメラルドグリーンの瞳からは、種族に対しての敵意は全く感じられない。それとは全く別の視線を俺は感じた。


「俺は、お礼を言われる事は何もしていない」

「いえいえ、貴方はワタクシをあの場から助けてくれました。罵倒してた者の連れを威圧して、収めてくれましたよね?」

「――――」


 俺は罵倒をしていたミズキの連れらしき者に、スキルの威圧<S>を放っていた。その連れはスタン状態を解除されたと同時に、ミズキを連れ出して行ったのだが。そこまで気づいていたのか。


 ミズキのレベルはレベル47、アルのレベルは87だ。ここは非戦闘区域ではない、アル自身でもあの場をどうにか出来たはずだ。アルは一切しようとしなかった。俺はそれを疑問に思っていた。


「ワタクシの名前はアルと言います。種族は機械人形(メカ)です。感謝です」


 アルはそう言い右手を前に出し、俺に握手を求めた。アルの出した右手は銀色の機械らしい右手であった。これはワザと種族を隠しているわけでないと、アルは自らの名乗りと行動で表した。


 アルの誠意に対して、知らぬ存ぜぬは違うと思い、俺は握手を返して名を名乗った。


「俺はライトだ」

「僕はハンベイです!」

「私はマスターのシャロです」


 俺に続いて、ハンベイとシャロもアルに挨拶をした。アルはその光景をみてにっこりと微笑み、言葉を交わす。


「よろしくお願いします。ライト様、ハンベイ様、シャロ様。もう少しここでお話し、したいのですが――ワタクシは仲間を追いかけなければなりません。申し訳ないのですが」


 アルは申し訳なさそうに言葉を繋ぎながらも、アムル王国の大門を一瞥する。急いで追わなければ、ならない状況なのに義理を大切にするか――


「あぁ問題ない。何か返して欲しくてした訳じゃない。しかし、何故、あの時動こうとしなかったんだ?」


 俺は口火を切った。大切な者を傷つけられて、護る力があるのにそれをしなかったアルに対して。


「あれが最良の選択です。種族で争う事は決していけない。ワタクシにはそれを見せなければならない者が、そこに居たのです」

「――――」

「ライト様なら判るかと。ではワタクシはこれにて。アルム王国で必ず、この御恩をお返し致します。ギルド眠りの眠りの森の兎の名にかけて」


 アルは左手を前にして腹部に当て、右手は後ろに回し礼をつくした。そして、その場から去って行った。


 アルが発した言葉が俺の中でグルグルと回る。俺がサンだった時のギルド白銀の巨塔のメンバーは全て人族(ヒューマン)だった。その頃にはあまり感じていなかった視線を、ライトになってから、俺は身に染みて感じる。


 ――――現実世界ではリアルブレイクとリアルブレイブと言われている二つの思想が存在する。


 リアルブレイクはアルカディアから何らかの害があり、アルカディアを避けてプレイヤーしない人の事を言う。

 俺の周りに該当するのは、妹の桜と中神正堂がそうである。


 厄介なのは、リアルブレイブの方である。

 それはプレイヤー至高主義の思想である。アルカディアでは他の種族よりも能力が低く、平均的な人族(ヒューマン)を絶対神に愛されていると唱えてる者である。

 または、現実世界で親しい人がアルカディアに奪われて憎悪に満ちている者の事もリアルブレイブと言う。


 俺をアスラル共和国から追撃して、それからフレンド登録したトヨトミもリアルブレイブだ。

 現在は兄は神隠しにあっているが……兄がM廃人でアルカディアに潜り続けていたからか――そのせいか――トヨトミはNPCであるシャロに一度も視線を向けていなかった。


 もう一人は先程のミズキだ。ミズキは完璧なプレイヤー至高主義のリアルブレイブだろう。

 俺が獣人族(ビースト)のシャロと耳長族(エルフ)のハンベイを連れている事に冷たい威圧を送った。まだ他にもいたが……。


「――俺達もアムル王国行こうか」

「ハイなのです」

「はいマスター」


 俺はシャロとハンベイ、左右から手を握られている。その暖かさを感じながら、俺は丸の記号が刻まれている大門へと向かった。




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