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第一章43 『絡み合う因縁』

 ユキムラの決意を固めた瞳を目にしてから、俺はずっと拳を握りしめていた。ユキムラは必ず俺の障碍となると確信したからである。しかしながら理解出来たこと言えば、ユキムラは黄泉と同じ様にアルカディアをログアウトしたということである。


 そもそも作られた悪と云う設定の厄災の黙示録は必ずNPCのはず。この二人がNPCで無いとすれば、ユキムラと黄泉は一体何処からアルカディアへダイブしたというのだ。


「クソっ――訳が分からない」


 ――ボソリと俺の言葉は宙に舞った。俺は数分立ち尽くした後、シャロとハンベイの元へと歩いた。そのハンベイは変わらず、ぐっすりと眠っている。


「――マスター」


 シャロはハンベイを抱き抱えたまま、俺の名前を小さく言う。俺はその声を聞き、霞がかったような頭が回転を始めた。


 今まで何も情報もチャンスもなかったじゃないか、諦めるしかなかった、家族をだ――――しかし今回は違う。俺の前に微かだが、道先が見える。その先にはきっと――――


「シャロ、ハンベイを守ってくれてありがとうな!」

「はい、マスター」

「しかし、ハンベイは泥のように眠っているなぁ」


 俺の言葉にこくこくと頷くシャロ。俺は笑顔で優しくシャロの頭を撫でた。ダンジョンも消滅したんだ。アムル王国に向かおう。やらなければ行けない事は沢山ある。


「――お前達! 大丈夫か?」

「一人は眠っているけど、状態異常ではないみたいね」


 そう俺達に声を掛けてきた男女。男の方は極限まで鍛え上げられた筋肉を、グレーの布で覆い隠している大柄で短髪の男と、妖艶な笑みを浮かべ、腰まである青髪を煌めかせている女だった。


 俺はこの二人を知っている。サンだった頃、何度か見かけた事がある。いや違うな、冒険者ならこの二人を知っていない方がおかしい。


「おい! 二人とも黙って俺達を惚けた顔して見ているが、本当に大丈夫なのかよ?」

「問題ないわ、ステータスを見てもHPもMPをフル、何度も言うけど、状態異常もないわ。貴方もそれは目視出来るでしょ」

「まぁそうだが、あんなランクのモンスターが放置されていたんだ、万が一があるだろう」

「まぁね」


 二人は俺達を目にしてから、少し戸惑っている様子だ。その原因は俺のレベルが原因だな。


 二人はダンジョンの消滅の為に冒険者ギルドから手配されたんだろう。その目的の場所にレベル6の俺が居て、ダンジョンが消滅しているとなると、疑問に思うはず。――となると言うべき言葉はこれだな。


「俺達は大丈夫だ」


 女と話していた男は、俺の方に直ぐ向き、ニカッと笑って近づいてきた。


「そうか! 無事で何よりだ! モンスターはもう近くには居ないが、厄災の黙示録が現れていると情報が出ている。直ぐにアムル王国に戻るといい」

「あぁ、そうするよ!」


 俺はシャロから、ぐっすりと眠っているハンベイを背中で受け取り、この場を離れる事にした。そして、俺は笑顔で見送る二人に軽く会釈しながら足早に去ろうとした――


「そう言えば――だ! ダンジョンをクリアした奴が誰か知っているか? 冒険者ギルドの情報だと、この近くにフロスト系のモンスターが多く出現していたはずだ。兄ちゃん達のレベルじゃあ、無事で済まないはず」


 その言葉が俺達の足を止めた。内心ため息をつきながら、俺は男の方へと踵を返した。――――もちろん、話す気はなかった。


「モンスターがここら辺にいたのか? 俺達は何も遭遇していないが」

「――――そうか」

「マスター」

「俺達は先を急ぐ」


 すると、男は俺達の行先に素早く移動し、進路を妨げた。女の方はゆっくりと歩き、男の方へ横路並びになる。男は一拍を置いて、鋭い双眸で見つめながら声を飛ばす。


「わりぃ兄ちゃん達! 最後の質問だ、厄災の黙示録と会ったか?」

「知らない」

「……これも嘘か」


 間も開けずに俺は男の質問を返した。しかし、男が零した言葉は鮮明に聞こえた。この男は嘘を見抜く能力があるのか――――俺は直ぐに二人のステータスを確認した。



 ===============

 PN:ジール<人族(ヒューマン)

 LV:95 JOB:バトルマスター

 ===============


 ===============

 PN:ミリファ<人族(ヒューマン)

 LV:94 JOB:賢者

 ===============



 二人は異職、レジェンダリージョブではなかった。俺を見抜いた嘘は、ジールのスキルなのか? しかし、トップランカーの二人と、ここで相見えるとは思っていなかった。


「わりぃが兄ちゃん、ダンジョンの方はいいが、もう一つの厄災の黙示録に関して知っているなら逃がす訳には行かねぇ」

「この子達、蜘蛛のアクセサリーを身につけてる訳では無さそうね、ヒール側ではないみたい」

「あぁ、そんな事は分かってる! ごめんな兄ちゃん達、俺達にも事情ってモノがあるんだ!」

「仕方ないわね」


 そう言うと、ジールは銀色の大剣をアイテムボックスから取り出し軽く片手で握りしめる。それに応じて、ミリファもアイテムボックスから両手杖を取り出し構えた。


 二人はまだスキルを使っていないが、ビリビリと威圧を肌に感じた。これは避けられないな。俺は決意しアイテムボックスから武器を取り出そうとした。


「あらあら、ダメですよ、ノブナガ殿の家臣達を傷つけては、面倒事になりますから」


 ジールとミリファの背後から声を飛ばし、悠々と現れる中性的な男。その男は優しい表情で俺達を見つめるが、瞳はただただ冷たかった。






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