第一章38 『ウゴキダスモノ』
俺達はアムル王国へ向かう馬車に乗っていた。この馬車はハンベイが数分足らずで手配した。前回も豪奢だったか、それを超える馬車をハンベイは用意していた。
クキョウ町を出てから、俺とシャロは頭装備の見た目影響OFFにし、シャロは装飾品を外した。それからハンベイは満面の笑みで近づき、なぜか俺の手をニギニギしている。
数分経った今はと言うと、俺の膝の上でちょこんと座っている。そして俺の手をずっとニギニギしている。なんとも可愛らしい、ちみっこエルフである。
俺がサンだった頃はハンベイがこんな甘え坊のイメージはなかった。シャロはというとハンベイがどんなに甘えていても、優しい視線をハンベイに送っている。
ハンベイはノブナガの依頼でクキョウ町に派遣されていたのに、抜けて大丈夫なのかと聞いても『問題ないのです』の一点張りだった。ハンベイがそう言うなら問題ないだろう。
「マスター、ダンジョン楽しみです」
「そうだな! アムル王国に着いたら冒険者ギルドでランクアップ試験も受けないとな」
「はい、マスター」
「ハンベイもお手伝いするのです」
「ハンベイ、ありがとうな」
しかし、アムル王国ではダンジョンがそんなに多発しているのか――――
アルカディアにはダンジョンが二つ存在する。一つ目は固定ダンジョンだ。これは全フロア共通ダンジョンである。二つ目の突発的ダンジョンは転移門が至る所に突如現れるダンジョンである。
二つ目のダンジョンに関しては、ダンジョンコアを破壊すれば、ダンジョンは消える。ダンジョンの達成者にはアイテムが必ず何かしらドロップされる。固定ダンジョンに比べるとイージーであり、冒険者の間では人気である。
だが固定ダンジョンと違う点は様々な場所に出現する他に、そのダンジョンを放置してしまうと近くのモンスター活発的になってしまう点だ。そしてそのダンジョンを長時間放置してしまうと、転移門からモンスターが溢れ出てしまう。
なので、どの国もダンジョンへの転移門を発見すると、国は冒険者ギルドへ依頼し冒険者達が速やかにそれを対処するのである。冒険者達も大金を稼げるので自ら探す人が多い、冒険者にとっては一種のイベントみたいなものに捉えている。
「その、お名前はなんと言うのです? 僕の名前はご存知のようでしたから」
と俺の膝にちょこんと座っているハンベイは上目遣いで俺にそう言った。俺はシャロに目線を送り、そして、自己紹介をする。
「俺はライトと言う」
「シャロです」
「シャロとライト様ですね」
「様はいらないぞ!」
「よろしくお願いします」
なぜかハンベイはとても大事そうに「ライト、ライト」と何度も呟いていた。シャロは今回はちゃんと自らハンベイに自己紹介をしっかりした。シャロは「よろしくお願いします」とちゃんと伝えていた。
前回のハヤト達との雲泥の差の対応に俺は少し驚きながら、膝に乗っているハンベイの頭を優しく撫でた。
「ハンベイ、アムル王国は今どんな感じなんだ?」
「アムル王国はダンジョンの鎮静化と蜘蛛の下っ端の処理に追われているみたいです。そして、冒険者が多く集まり対処をしているみたいです」
「そうか、アムル王国に着いたらできる限りの事をしよう!」
「はい、マスター」
「はい! ライト様」
俺とシャロとハンベイは気合いが入り、先を見つめていた。すると――――ピロンピロンピロン。これはリアルからの合図。前回は失敗したから今回は念話にしよう。
「マスター念話にするんですか、シャロに聞かれたら嫌ですか?」
「ハンベイも聞いちゃダメです?」
俺の考えている事を簡単に見透かすシャロとハンベイである。二人とも上目遣いで、あざと可愛いポーズをして俺に聞いた。そのように言われたら返事は一択である。
「大丈夫、普通に通話する」
俺がそう言うと、二人はなぜが全体重を俺にぶつけてきた。ムギュとされた。俺は癒されながらも相手を確認する。そしてその連絡を繋げた。
「正堂さんどうしたんですか? 今ダイブをしていて」
『あ〜そうだったのか、すまない』
「でも今は大丈夫です! あっそうそう澪とたまたま出会ってフレンド登録しましたよ! しかし、俺はもう澪にレベルを抜かれました」
『そうなのか!! よかったよかった。あの子は太陽くんと遊ぶんだって張り切って寝れなかったからね』
「澪が――そうなんですか?」
『これからもずっと澪の事を頼んだよ』
「えっ! 正堂さん」
『我が妹の夫は君と決めている。ふふふっ絶対に逃がさないよ』
声色で分かる正堂さんは本気だと。しかし、ワクワクして眠れないとは澪にも子供っぽい所があるんだな。
「そういえば正堂さん! 澪にそっくりなキャラクターがアルカディアにが居たんですよ!」
『――そうなのか、まぁそんなに事もあるんだな。太陽くん! その――――よかったらその子も仲良くして欲しい。お願いだ』
会話の後にほんの少しだが静寂ができた。正堂の声はあの時、MOで話した時と同じ、いやそれ以上に強い言葉だった。この雰囲気で黄泉の事を話すのは止めておこう。なんとなくだが、そんな気がする。
「分かりました。そういえば正堂さん話ってなんでした?」
『あ――!! そうそう。赤神が太陽くんに会いたいと言ってたよ。まぁしかし、私は彼とは会わない方がいいと思うよ』
俺の返事を聞いた、聖堂はいつものような素振りに戻った。正堂は柚葉について何か知っているのか、詮索はよそう。あんなに動揺している正堂はあまりいい気がしない。
しかし赤神が俺に会いたいとは――赤神光秀はアルカディアの運営開発会社MOの開発局長である。そんな大物が俺に会いたいとは、それに何故、今になって。
「――――」
『気が向いたらおいでだそうだ。だが、気をつけた方がいい。マッドサイエンティスト赤神だからね』
「正堂さん、連絡ありがとうございます」
『あぁ頼んだよ。太陽くん』
「はい!」
通話を終えたが最後の「頼んだよ」は後者の話ではない。きっと最初の話のことだろう。ティア、柚葉か、エレナ、澪か、そして、赤神光秀か――――
アムル王国に着いたら、冒険者ギルドでサラの情報を集めなければならない、冒険者達が集まっているのならチャンスだ。
「マスター太陽、マスター太陽」
「太陽様、太陽様、太陽様」
シャロとハンベイが目を輝かせながら俺のリアルの名前を連呼している。ここは防音の馬車と分かって二人は言っている。
「俺はライトな!」
「マスター太陽」
「太陽様、太陽様です」
これはまずい、アムル王国に着く前にちゃんと話しておこう。どうやら、めっちゃくちゃこの名前は気に入られたようだ。
---
――――アムル王国の城内。
白銀の西洋風の城、その豪奢な謁見の間で話し合う二人が居た。
「ノブナガは絶対にアムル王国には来ませんよ」
「ノブナガ殿はそんな事はない」
「俺達は口止めをされていたんですが、サンが勇退した理由はノブナガが原因なんです」
悲しそうな顔し話す、白銀の巨塔のメンバーのアイク。その話を聞き、目を見開いている王座に座る男。
「なんだと……」
「俺達の白銀の巨塔の新メンバー発表の際も、ノブナガは現れなかったんですよ。しかも……ノブナガは刺客をその場に送って俺達を邪魔をしたんです」
「そう……なのか。本当に!! サン殿を消したのが……ノブナガ」
「はい……そうです」
「本当に本当に……サン殿は……」
「仲間の俺が言うんです。それまではノブナガに口止めされていて、俺達は今それで影響を受けないAフロアにいるんです」
「……なっ! そうか……」
「俺は――用があるので、これで」
「――――」
そう言い残し姿を消したアイクだった。玉座に座る男の顔には、絶望が渦巻いていた。
読者のみなさまへ
お読みいただきありがとうございます!
「面白かった」
「続きが気になる」
と思われた方は、よろしければ、広告の下にある『☆☆☆☆☆』の評価、『ブックマーク』への登録で作品への応援をよろしくお願いします!
執筆の励みになりますし、なにより嬉しいです!
またお越しを心よりお待ち申し上げております!




