第一章36 『作られる悪意』
それから俺とシャロはメルの森からクキョウ町に戻っていた。町に戻るその道中にシャロは俺の方をちらりちらりと見ていた。俺がシャロを見ると、なぜかシャロはビクッとして目線を遠ざける――その繰り返しだった。
とうとう、嫌われてしまったのだろうか。
最初からここまで好感を持ってくれてたのが、不思議だったのだから。……おかしくはない。しかし、少し寂しい。いや少しではないかなりだ。このいつもとは違う歩く二人の距離感が俺にそう思わせる。
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「シャロ、さっきはごめんな」
「何がですか? マスター」
シャロは目線を合わせず即答した。ケモ耳はぴょこぴょことしっぽフリフリしている。これは嬉しい時のサインだ。
「その……」
「マスターは魅力的なのでモテモテです。シャロは……」
シャロが俺の言葉を遮ってそう告げた。悲しんでいると動作を見なくても声色で判った。
「俺はシャロのそばにいる。シャロがそう望むなら」
「マスター」
シャロは俺の元までトコトコ歩いてきたが途中で止まった。俺は優しくハグをした。そう俺からハグをした。
「マスターは私が死守します。もう渡しません」
「シャロ、そうかありがとうな」
俺は少し苦笑いに近い笑顔を見せながらシャロを撫でた。これも桜に似てるな。それから俺達はクキョウ町の冒険者ギルドへと向かった。いつもの距離感で――――
冒険者ギルドは閑散としていた。夜の帳が降りたから? いや違う。腰掛けてる六人の男達が原因だろう。俺達に視線を送る男達を無視しながらカウンターへと歩いた。
「おかえりなさいませ。クエストは無事終えたようですね。新しいクエストでしょうか?」
「買い取りをお願いします」
「はい、わかりました。こちらのアイテムボックスに送ってください」
(見えない、見えない!! わざと私の視界を邪魔するように立っているこの子……)
シャロは先頭に立ち、ギルド職員と話す。俺はと言うとシャロの背後で待っていた。
「ビッグボア、ですか、これはビッグボアの霜降り上級肉と鋭い牙です。お二人で倒されたのですか?」
「私が倒しました。一人でです。マスターのも換金しましょう」
「あぁ、ありがとうシャロ」
エリアボスのドロップアイテムを、目にしかなり動揺を見せるギルド職員だったが、いつもと変わらない無表情で淡々と話すシャロ。
「えっ! はい!」
(冒険者プレートを隠して見えない。でもビッグボアを単独で倒すのにはCランクは必要なのに)
「おいおい、可愛い獣人族ちゃんよ〜俺達とパーティ組もうぜ〜」
下卑た笑いを浮かべる男。厄災の黙示録のせいでここまで治安が悪くなっているのか。俺は男たちのステータスを確認する。相手はパーティはレベル30前後で六人の人族。俺は直ぐにPVP申請をする。
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PVPを申請しました。
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ルール:ノーマルPVP。
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ノーマルPVPは戦闘区域と同じ状況になる。決められた参加者以外には影響はない。
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PVPを拒否されました。
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「いい度胸じゃん、揉んでやるよ〜」
声を掛けてきたシーフの男が俺に向かって、短剣を装備し迫る。
「えっ? ここでPVP!? レベルが低い貴方じゃ勝てません!! 直ぐに逃げて――」
「大丈夫ですよ。すぐ終わりますから」
ギルド職員は突然の事で動揺の声を上げる。俺はブラッド漆黒をアイテムボックスから取り出し、素早く弾丸を放った。
――ドパンッ!
シーフの男は何もわからず、ポリゴンになって爆ぜた。
「ばっかな人族が銃だと……銃声は一発しか聞こえなかった……のにどうして」
五人の仲間がポリゴンになって、驚愕している一人の男。俺は直ぐに残されえた男に詰め寄った。
「親玉はどこにいる?」
「……身体が動かない……」
俺はスキル、威圧<S>を使用した。男は状態異常のスタンになる。それが男の動揺に拍車をかけた。
「口は動くだろ? 教えろ」
「知らない……この蜘蛛のアクセサリーを貰っただけだ。俺はそれ以外は知らない」
「――そうか」
「耳長族だ!!! 耳長族がくれたんだ!!」
戦慄しながら男は叫んだ。これ以上は聞き出せないだろう。俺は引き金を引いた。
――――ドパンッ!
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おめでとうございます。
レベルが1上がりました。
SPを50獲得しました。
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厄災の黙示録の蜘蛛の恩恵。厄災の黙示録から送られた蜘蛛の形をした、特殊のアクセサリーを身につけていると、非戦闘区域でも戦闘が可能になる。アクセサリーを貰い受けた者は一度倒されると、そのアクセサリーも消え、ペナルティーが与えられる。
今倒したのがNPCかプレイヤーかは判らないが、蜘蛛は本格的に動き出したみたいだな。
厄災の黙示録の目的は終焉。このアルカディアを終わらせる、それが目的。どうやって終わらせるかは不明だが。
厄災の黙示録はNPC、プレイヤーを狩る。それだけが目的の作られた悪意、俺が知っている限りだと。早く九人の蜘蛛を潰さないと――今回の厄災の黙示録は一体どんな奴なんだろうか。確定してるのは頭のカンタダだけである。
しかし、黄泉姉さんは別枠の厄災の黙示録って事だよな。蜘蛛の一人はサナダのユキムラか――――耳長族が蜘蛛のアクセサリーを配っているか。
「レレレレレレジェンダリージョブ!!!!!!!! じゃないですか!!!」
「マスターに近づいてはダメです。仕事です」
「ぐ……ぐぬぬぬぬぬぬッ」
指先を顎に当て考えている俺に、ギルド職員は目をハートにさせて俺に飛びかかろうとしたが。シャロがピシャリと威圧と込めた言葉でギルド職員を止めた。
「シャロはランクアップ試験は受けないのか? シャロならBくらいまでは余裕、いやAでも行けるぞ!」
「マスター、明日受けてもいいですか?」
「あぁ! いいぞ」
「マスター」
「お腹空いたなシャロ。夜ご飯を食べようか」
「はい」
俺はシャロの動作を察して、そう告げた。この言葉は正解だったみたいだ。俺達はギルドを出ようとしたがギルド職員が声をあげた。
「お名前を!! お名前だけでも」
「ライトって言う」
「シャロです」
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PN:アンズ<人族>
LV:52 JOB:エンチャンター
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俺はステータスを確認した。この人なかなかレベルが高いな。しかし……こんな感じ昔もあったような――――少し身震いがした。
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PN:ライト<人族>
LV:6 JOB:ガンナー
HP:6694/6694
MP:10753/10753
STR:303
INT:1294
VIT:1006
AGI:999
DEX:75
CRT:625
LUK:999
パッシブスキル:限界突破、神のサイコロ、異常耐性<SSS>、物理・魔法耐性+<10%>、オート防御<B>
スキル:マジックバレット、リベンジリフレクト、ミネウチ<S>、威圧<S>、神時計
SP:150
<装備>
左手:ブラッド漆黒
右手:――
頭:白神のヘルム
体:白神の魔鎧
足:冒険者の靴
装飾品:ノブナガのマント
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