第一章30 『前兆』
馬車から出た俺は周りを睥睨した。馬車に並走していたのはシルバーウルフだった。シルバーウルフは茶色い狼でDランク冒険者が対応できるモンスターである。
===============
N:シルバーウルフ LV:25
===============
シルバーウルフの群れに囲まれていのに、この人はなぜ俺達に警告しなかったのかと疑問に思うが。俺が馬車から出たきたのを気づいて、行商人はとても驚いた顔をしていた。
「なんで出てきたんだ! 大丈夫だ、おじさんが守ってやる」
その言葉に俺は耳を疑った。俺は用心棒で雇われたんじゃないのか?
行商人は真剣な顔つきになり必死で馬車を操っていた。背中は語っていた、守ってやると。俺のレベルがそう言わせてるのか……。これはこの人の性格がそうさせたのだろう。仕方ない。
「――――」
俺は直ぐに馬車の上に跳躍した。その音に気づいて行商人は俺の方に一瞥した。
「危ないだろ!! 馬車の中に」
──ドパンッ!
不安定な足場をものともせず、俺は身体を半回転させながら六発の銃弾を放った。馬車を追いかけているシルバーウルフを穿ち瞬殺した。
===============
500G獲得しました。
ふかふかな毛並み×3獲得しました。
===============
目で確認出来たモンスターの数は十体、あと四体だな。
行商人は俺を見たまま固まっていた。未だに信じられないものを見るような目で俺を見つめている。
「おじさん、前! 前!!」
行商人は慌てて手綱を強く持ちしっかりと前を向いた。シルバーウルフは仲間が殺られたのを気づいて、直ぐさまに散開しようとする。
「逃がすかよ、軌道予測っと」
――――ドパンッ!
俺は四発の弾丸を地面に放った。弾丸は地面にぶつかり跳弾しシルバーウルフに正確に襲った。
===============
ふかふかな毛並み×2獲得しました。
===============
「もういなさそうだな」
「――――」
「また何かあったら直ぐに知らせてください。いいですか、直ぐににです」
「ありがとう! 助かった」
行商人は口をあんぐりさせながらウンウンと頷いた後、お礼を言う。そして、馬車に入ると目を輝かせているシャロが居た。
「マスターレベルが上がりました」
「おめでとうシャロ!」
どうやらシャロはレベルが上がったようだ。レベル15か俺の方はまだレベル3である。野盗などが襲って来ないかと考えしまう事に、少し複雑な気持ちになる。街道を抜けて町へと向かっているが、冒険者とは遭遇しない。
「町に着いたらシャロ、町のギルドでメイジへの転職クエストを受けよう」
「はいマスター。ありがとうございます」
シャロはそう言い会釈をした。俺自身の事よりもシャロの事を優先してしまう自分がいる。
「気にするなシャロ。仲間だろ」
「シャロは仲間じゃありません。シャロはマスターの物です」
「シャロは物じゃないぞ」
「シャロはマスターのです」
シャロはドヤ顔をしながらそう告げる。シャロは無表情だが何となくそう見えてしまうのは、以心伝心って言うのだろうか。それは少し嬉しい事だ。
その後は何事もなく、あっという間に隣町に着いた。数時間で着くとはやはりアルカディアの馬車は速い。
着いた町の名前はクキュウ町である。かなり久しぶりに赴いた。そんなに広くない町だが、旅人の憩いの町である。
「ゴールドは本当にいいのかい?」
「いらないですよ! そういう契約なので」
「しかし!」
行商人は町に着いた途端、報酬を俺に渡そうとする。俺は断りをいれ、俺は馬車から去ろうとする。行商人は納得がいかない様子である。
「なっなら! 君達のアイテムを僕が買おう」
行商人は一切引き下がらないので売却できるアイテムを俺はアイテムボックスから探した。
ふかふかな毛並み10個だな。先程手に入れたドロップアイテムである。これを売ろう。
「ふかふかな毛並みを売ります」
「ほぉう、いいアイテムじゃないか! 100000Gで買おう」
「えっ――いやいや高すぎでしょ!!」
ふかふかな毛並みは1つ5000G前後である。1つ10000Gで買取ってどう考えてもおかしい。この人もノブナガの差し金なのだろうかと考えてしまう。
「トレード申請をするね、OKなら許可して欲しい」
「いいんですか?」
「ちょっと、たまたま欲しくてな」
メニュー画面の一覧からトレードを選択し俺は物と個数を選択した。
通常は安全の為にモノをアイテムボックスから取り出して、目で確認してからこの動作をするが、行商人は完璧に自分を信用している。 それを省く取引はフレンドか信用がある同士のみである。
俺は取引OKを押したスムーズに取引が終了した。売買取引する時はこんな感じである。手渡し売買ももちろんある。
「そのお嬢さんも買取させてもらうよ」
行商人はシャロにもそう言い、シャロは一度俺の方を一瞥し俺が頷いた後、アイテムを売り捌いた。
通常の倍の金額で売れ小金持ちになってしまった。
「名前を教えてもらえるかい?」
「俺らですか?」
「二人ともね」
「俺はライトと言う」
「シャロです」
「ほうほう、今のうちに縁をつけとこうと思ってね」
この人は自分が気になった人の名前をしっかりと記憶しておく人なんだな。律儀な人だな。俺は行商人に少し近づき話す。
「あの〜元白銀の巨頭のサラって人物、どこにいる知らないですよね?」
「おぉ、かなり有名な人物だな! 名前は当たり前だか聞いた事はあるが、どこにいるか耳にしたことがない。サンは勇退したらしいがサラは脱退だ。多くのギルドが勧誘のため躍起になって探しているが情報はないらしい、すまないな」
「いえいえ、ありがとうございます」
「行き先に幸運があらんことを」
そう言い行商人は町の中へと去っていった。
他のギルドも探していているのに、まだ情報がないのか。仕方ないとりあえず冒険者ギルドだ。
「シャロ、行こうか」
「はい、マスター」
俺達は冒険者ギルドへと向かった。
しかしおかしい。町にはあまり冒険者の姿が全く見えない。俺達は木造の冒険者ギルドへと入った。
冒険者ギルドに足を踏み入れた瞬間に視線が俺へと集まった。その冒険者ギルド内には数人しか冒険者がいない。ここは大都市ではないのでサポートの為のHDPは居ない。女性のギルド職員が五人ほど居る。
「ようこそ、冒険者ギルドへ!」
「メイジへの転職クエストをお願いしたいんですが!」
女性のギルド職員がにっこりと微笑み対応してくれる。先程からマジマジ見られている気がするが。
「かしこまりました。お連れ様のですね」
(この人レベル3なのになんて装備をしているの、それはそうとこの人、私と距離を空けすぎじゃないかしら)
「はい! その――何かあったんですか?」
俺の問に目を大きく開け、小さな声で女性のギルド職員は答える。
「厄災の黙示録が現れたので、それに伴い、冒険者達はPKされてしまい――――」
ここにも黄泉姉さんの影響がそれとも――
「その厄災の黙示録は女の人でしたか?」
「いいえ、情報によると男の人です。蜘蛛のメンバーだとその者は言っていたらしいです。名をサナダのユキムラと」
厄災の黙示録――――蜘蛛のメンバーの一人の噂であった。
読者のみなさまへ
お読みいただきありがとうございます!
「面白かった」
「続きが気になる」
と思われた方は、よろしければ、広告の下にある『☆☆☆☆☆』の評価、『ブックマーク』への登録で作品への応援をよろしくお願いします!
執筆の励みになりますし、なにより嬉しいです!
またお越しを心よりお待ち申し上げております!




