第一章28 『旅立ち』
シャロは武器屋から出てからアイテムボックスを確認しては瞳を輝かせていた。シャロは判りやすい、顔に出さなくとも、耳としっぽで感情で表している。
「マスター、シャロはとても嬉しいです。これで魔法使いになれます。マスターマスター装備してもいいですか?」
俺はシャロのその姿を見ると、何にも代え難い喜びを感じる。だが、シャロの言う通り、武器屋で揃えたアイテムを装備だな。その前に――――
「シャロ、俺の背中に来るんだ!」
「はい! マスター」
俺はシャロの前に身をかがめて、シャロを背負う準備をした。するとシャロはまるで自分がスライムかの様にダラッ〜と体重を全て俺に預けて来た。
こっこれは双丘が俺の背中に密着して――――サラ、サラ、サラだ。俺は頭の中で得意の呪文を唱えた。
俺は素早くシャロを負んぶし屋根へと跳ね上がった。
「まっまじかよ――――この距離で気づくのか!」
俺は尾行を振り切る為に屋根を素早く駆けた。瞬く間に後方からの追求の手は届かなくなる。――――アイクに比べると天と地だな。
「はぁはぁはぁ……無理だわ。なんだあれ、早すぎる――――初心者装備でレベル3なのに、なぜ追いつかないんだ。……わけわからない」
黒髪の男は屋根の上で息を切らし愕然としていた。その男は今は白旗を上げたが、憑き物がついたような執念を纏っていた。
「マスター。屋根をぴょんぴょん駆けてます。速いです。すごいです」
シャロは負んぶされながらもキョロキョロして街を眺めていた。いつもと見える風景が違うからか、楽しそうだな。
とりあえず行商人の馬車を探すか――
俺はアスラル共和国の入口付近へと向かった。
アルカディアでの移動手段は様々ある。
それは無料の移動手段はゲートだ。大都市には大型の特殊なゲート(転移装置)があり。大都市以外にも小型ゲートが偶に存在する。
そのゲートをくぐると一度、訪れた事のあるゲートがある場所に転移ができる。
その他の移動手段はスクロールだ。
〇〇へのスクロールと書かれているスクロールは街などで購入する事ができる。これを使用するとスクロールに書かれている場所に転移できる。
スクロールはとても高価な為、手が届かない。訪れた事のない場所でも転移できるアイテムは最低何十万、百万ゴールド以上する。
その他には俺が道具屋で手に入れたスクロールの旅人の方舟だ。これは一つ50000Gゴールドもする。
旅人の方舟は一度行ったことがある場所なら、何処へでも飛べるスクロールだ。旅人の方舟で転移できる最大人数は六人だ。
あの道具屋の店主は、何十万ゴールドの旅人の方舟とアイテムボックス<エピック>をまとめて、ぽんと出会ったばかりの男に手渡したのだ。その店主の恩恵と期待に感謝を噛み締めながら俺は目的の場所へと走った。
そしてアスラル共和国の入口付近の路地裏に、屋根から降り立った。俺は街から立つ前にアイテムボックスの装備アイテムを確認した。
「シャロ、装備アイテムを確認して、装備しよう!」
「はい、マスター」
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体装備:白神の魔鎧<エピック>+5
上昇値:HP+1400 MP+700 INT+250 STR+250 VIT+550 CRT+50 物理・魔法耐性+10%
アイテム説明:英雄が装備していた物を模造して作られた装備。鎧は柔らかく、とても頑丈。
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頭装備:白神のヘルム<エピック>+5
上昇値:HP+1400 MP+300 CRT+300
アイテム説明:英雄が装備していた物を模造して作られた装備。全てを見通すヘルム、とても頑丈。
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強化された……エピック装備とは。武器屋で俺のもちゃんとステータスを確認をしておけばよかった……。なんて物をノブナガは俺に渡したんだ。
俺は内心ため息をつきながらも二つとも装備をした。
白神のヘルムはヘルムともあって、完璧に顔をすっぽりと被さった。そのヘルムは色は黒光りした銀色だ。
覆われているのにも関わらず、視界は装備してない時と変わらない。凄いな……これ。
白神の魔鎧はヘルムと同じカラーリングでとても美しく。ごつくない、スマートな鎧だった。
シャロの方に視線を転じると、シャロのケモ耳が元気がなかった。
「シャロ、どうかしたのか?」
「マスターのお顔が見れない。シャロはそれ嫌いです」
無表情なのに少し頬をプクッ〜とさせているシャロ。
なんとも可愛らしい姿だ。俺はヘルムを装備したまま、設定で頭装備の見た目をOFFにした。
見た目OFFは装備したアイテムを隠すことができる設定である。
「シャロ、これでいいか?」
返事を聞く前に答えは出てるようだ。シャロの耳はぴょこぴょこと、しっぽはフリフリしている。
「マスター、似合います」
シャロにそう言われ何故か内心ホッとした俺である。顔が見えないヘルムは目立たない為には、ずっと装備する方が都合がいいが、シャロの元気を取ってまで優先する事ではなかった。
俺のノブナガのマントとブラッド漆黒は、能力値未鑑定装備になっている。
能力値未鑑定装備とは、最初に手に入れた者がその装備を確認すると、その能力値が表示をされる。それを行っていない装備の事を言う。
これはレジェンダリーの装備アイテムだけである。
レジェンダリー系は最初に鑑定した人で能力値は変わり、レジェンダリーは唯一無二の物であり。同じ名前のモノは存在しない。
そのレジェンダリー装備はレベル15になるとレジェンダリーの鑑定はできるが、俺にとってレベル15はかなり遠い。レベル15以上の者に一度譲渡して鑑定してもらえばいいのだが、せっかくのレジェンダリーだ。俺自身で鑑定したい。
装備アイテムは他にレベル制限というモノもある。ある一定以上のレベルでしか装備できない。アイテムや装備の能力値が付与されないとかもある。
今の俺のステータスはこんな感じである。
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PN:ライト<人族>
LV:3 JOB:ガンナー
HP:6694/6694
MP:10753/10753
STR:303
INT:1294
VIT:1006
AGI:999
DEX:75
CRT:625
LUK:999
パッシブスキル:限界突破、神のサイコロ、異常耐性<SSS>、物理・魔法耐性<+10%>
スキル:マジックバレット、リベンジリフレクト、ミネウチ<S>
SP:――
<装備>
左手:ブラッド漆黒
右手:――
頭:白神のヘルム
体:白神の魔鎧
足:冒険者の靴
装飾品:ノブナガのマント
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かなりステータスが上昇した。レジェンダリー装備が二つ、エピックが二つ、申し分ない装備である。足装備だな。
黄泉の事を考えると、もっとステータスを上げないといけないかもしれない。
「マスターどうでしょうか?」
「とても似合ってるぞ! シャロ」
「嬉しいですマスター」
俺がステータスを確認していると、シャロは装備を変えていた。シャロは頭装備を俺と同じように見た目OFFにしていた。
闇司祭のローブは紫色のローブにアクセントになっている白い星の模様がオシャレである。両手杖のフリューゲルは真っ白で先が八枚の天使の羽みたいになっている。
やはりエピック装備だ。見惚れてしまう造形美である。レアリティが高いと装備もかなり手が込んだものになる。
「すみません!! どなたか、どなた隣町まで護衛をお願いしたいのですが!!」
鬼気迫る声が俺達のいる路地裏まで響く――俺は直ぐに路地裏から声の元へと向かった。俺はその喧騒を目にすると男は周りを気にせずに必死で声を枯らしていた。俺はすぐに声を掛けた。
「どうかされたんですか?」
「あっ!! そっ……その、護衛を依頼してたパーティがPKされてしまい……。困り果てて、新たに護衛を依頼しようと探していたのですが、護衛が全く集まらなくて」
人が多いアスラル共和国で護衛が集まらないとは、よっぽどの事だろう。この人と同じように立ち往生している行商人はこの場に多く居た。
「何か原因が?」
「はい、他の行商人達、いや冒険者達もアスラル共和国から出るのを少し躊躇しているんです。先程……ものすごい数の人達が突然消えたみたいでして」
「――――」
なるほど、黄泉の影響か――――リーマン草原にいた人達は全てPKされていた。その影響がかなり出ているのか、これが厄災の黙示録。
「報酬はいりません。俺を隣街まで乗せて貰えませんか? 護衛はしますから」
とは言ったものの、レベルが低い俺達を護衛に雇うのだろうかと思いながら言葉を送った。しかし、その返事は早かった。
「えっ……いいのですかい?? 助かった……本当に助かった」
「はい! では行きましょう」
行商人はとても喜び、俺達は直ぐ様、馬車に乗り込んだ。そして、俺達は馬車に揺られながら隣町へと向かうのであった。
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