第一章24 『モトメルモノ』
俺は急いでその場所へと向かった。本当はシャロを背負って行った方が速いのかもしれない。しかし、焦る心を抑える為にシャロのペースに合わせた。
目的地に近づくつれて俺の心臓が跳ねる。あっという間にリーマン草原に足を踏み入れた。俺は直ぐにリーマン草原の異変に気づいた。
おかしい、モンスターがいない、人がいない。これは一体……。
このエリアに着いた時から、風が肌に絡みつく異様な不快感が伝わる。
しかし……一人だけ、一人だけ。俺の瞳に映った。
「姉さん……」
その声に親しげな笑みを見せながら、俺の元へ走り出し抱き着いてきた。
「太陽くんだ! 僕の僕の太陽くん」
「姉さん……だよな!! よかった……本当によかった」
「太陽くん〜僕を見てるね。変わったね」
黄泉はベッタリと俺にくっつき頬をスリスリさせている。そして、黄泉は妖艶な笑みを見せる。
「姉さん……今までどこに居たんだよ!!!」
「ん〜研究かな! 太陽くんのクローンが欲しくて。でも久しぶりに会った感じだとその研究は要らなさそうだな!」
妖艶な笑みをこぼしながら、俺をギュッと抱きしめて離れない黄泉。
久しぶりに会えた家族の言葉なのにすーっと、神経が凝結したような気味悪さを少し感じた。
俺は黄泉の言葉が追いつけなかった。
「姉さん……何言っているんだ。とても心配したんだぞ!!」
「変わった! 変わったよ! 太陽くん〜僕、とても嬉しいな〜だってずっ〜とゲームばっかりしてるんだもん。でもね男の子だからそれは許すよ! お姉ちゃんだもん。けど桜はいらないかな。桜は邪魔かな。太陽くんずっと!!! 桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜ばっかりだもん。血を繋がっていない妹の方が大切なの? 僕は太陽くんの子供を産みたいよ」
そう告げると俺を強く抱きしめ上目遣いをして俺を覗く。黄泉が桜に対しての気持ちが嫉妬ではなく殺気になっている事を、俺は直ぐに感じ取った。
「姉さん、どこに居たんだよ!! 戻ってきてくれ!」
「いいよ〜桜を捨てたらね。もう会わないって約束してくれるならいいよ〜」
すると俺から少し離れて、黄泉は即答する。その瞳はなぜか少し怖かった。
姉さん家族だ、大切な。教えてくれないのなら――――
「システムコール!!! カプセルに入っている人物の健康異常がある!! 確認をお願いしたい!! 対象者は萩生田黄泉!」
「さすが太陽くん!! 大好き!」
システム通知が目の前に現れる。
===============
報告:萩生田黄泉はカプセルに入っておりません。
===============
どういう事だ……。
黄泉姉さんはカプセルを使ってダイブしていないって事か。
まさか――――
「姉さん……ゲームの世界に入ってしまったのか? このアルカディアに」
と告げると黄泉は「ふふふっ」と笑みを零しながら俺から少し離れた。
「太陽くん、ゲームの中に入れるわけないでしょ! もし可能だとしても僕は太陽くんのクローンを作るのが目的だったのだよ! 本末転倒じゃないか〜」
「じゃあ!! どうしてアルカディアにいるんだ! 姉さん」
その問いに、鋭い視線を送る黄泉。視線の先には黙って見守っていたシャロが居た。
「本当は僕も太陽くんに会えたのは僥倖だったのさ。僕はそこのクロノピースが欲しくてダイブしたんだ!! でも、桜を捨てて僕を大切にしてくれるみたいだから、もうクロノピースはいらないかな〜」
「姉さん、俺は桜を捨てない。姉さんも捨てない……よ」
「じゃあ! 僕と桜どっちが大切!」
「そんなの選べる訳ないだろう!!」
「じゃあ! 桜を消せば一択だね!」
「姉さん……」
黄泉姉さんはカプセルに入っていない……。どうやってダイブしているんだ。どこにいるんだよ……クロノピースって。
――――わかんねぇよ!!!
どうして黄泉姉さんは桜をそんなに憎んでいるんだ。
「とりあえず。これは予定外だから太陽くんの記憶消去かな〜せっかくラブラブの思い出を消すのは勿体ないけど仕方ないよね! 太陽くん変わったみたいだし。またラブラブさ! 嬉しいな〜」
興奮気味に饒舌で話していた黄泉は、左手を俺に向けた。
――――空間が歪む。
===============
パッシブスキルが行使されます。
異常耐性<SSS>
===============
――――空間の歪みが元に戻る。
黄泉は目を見開いて動揺をしていた。
「えっ――――どういうこと!」
「――――姉さん!!」
俺は直ぐに行動を起こした。
===============
PVP申請をしました
===============
===============
ルール:双方のどちらがHPがゼロになる。
そして、この戦闘は二人しか見えない、逆も然り。
勝ち:――
負け:一定時間の行動不可HPは1になる。
===============
「へぇ僕と戦いたいんだ! 僕を求めてるんだね太陽くん!! でも大丈夫だよ〜僕を見て太陽くん〜」
===============
PVPは拒否されました。
===============
俺が出したPVP申請は拒否された。俺は黄泉の言葉にハッとしてステータスを覗いた。
===============
PN:ヨミ<厄災の黙示録>
LV:―― JOB:――
===============
「厄災の黙示録だと……」
「僕、また驚いちゃったよ太陽くん。まさかレベル以外にも見えているなんて、これはイレギュラーかな〜太陽くん自身が」
俺の頬を何かが掠めた。俺のHPが削られた――――鋭い視線が俺を襲う。
読者のみなさまへ
お読みいただきありがとうございます!
「面白かった」
「続きが気になる」
と思われた方は、よろしければ、広告の下にある『☆☆☆☆☆』の評価、『ブックマーク』への登録で作品への応援をよろしくお願いします!
執筆の励みになりますし、なにより嬉しいです!
またお越しを心よりお待ち申し上げております!




