第一章19 『ライフガンナー』
俺はただぼーっとしていた。草原に佇んでいるのだ。元のトッププレイヤーの俺が、けもみみ美少女に寄生をしているのだ。
「死んでください」
冷たい声でモンスター、リーフをぶっ叩くシャロ。物理攻撃が上がるショートソードを使わずに、ロッドを装備してリーフを殴って倒している。
リーフは白菜の形をしたモンスターである。
俺はシャロの戦闘を見守っていた。先程までは俺が率先してモンスターを倒していた。前回のように変な噂を立てられないように、俺は武器を装備せずに拳一つで戦闘をしていた。
前のステータスが残っている俺なら、弱いモンスターであれば素手でも何回か殴れば倒せる。まぁ元魔法職なのでSTRが低いが何も問題はなかった。
俺の戦闘を見ていたシャロはまるで汚物を見るように俺に冷たい視線を送った。俺は頑張って殴って倒す、殴って倒しても――感心もせず、ただジト目でシャロは俺を睨む。
シャロの視線に俺は耐えられなくなり。今は何もせずにシャロに寄生をしている。ダメ男に堕ちているのだ。
「マスター! レベルが上がりました。スキルポイントは50貰えました。全てINTに振ります」
「そうか! おめでとう」
シャロはリーフを簡単に二体倒して、トコトコ俺の元へとやってきた。レベルが上がっても、もちろんシャロは無表情のままだった。
俺はシャロのステータスを確認する。
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PN:シャロ<獣人族>
LV:2 JOB:冒険者
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シャロは順調にレベルが上がっている。だがおかしい、俺のレベルが上がらない。流石にレベル2までの道程はそんなに壁は厚くないはずだ。異職はこれが普通なのだろうか。
「シャロごめんな! 一人で戦わせて」
「何がですかマスター? マスターは強いので、これは私の練習の為です」
シャロは俺の職業の事を知っているのか。俺もそろそろ、この職業の事をシャロに話した方がいい。
「お兄さん達!! 俺達と一緒にレベル上げしませんか?」
俺は声の元へ視線を転じる。そこには人族の少年少女と耳長族の少女、三人が居た。
俺は直ぐにステータスを確認した。
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PN:ハヤト<人族>
LV:21 JOB:ウォーリア
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PN:アユミ<人族>
LV:21 JOB:メイジ
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PN:リム<耳長族>
LV:32 JOB:ウィザード
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一次職のウォーリア、メイジ。そして、二次職のウィザードか。
「もうそんな言い方だとわからないよ! 急にだし!! 多分、見るところ魔法職希望ですよね、15レベルまで私達がお手伝いします!」
とハヤトの言葉に追加するように話すアユミ。少し幼さが残るハヤトとアユミ。リムはそのハヤトとアユミの会話を笑顔で見ている。リムは二人より、少しお姉さんみたいだ。
まぁ断る理由もない。
レベル15まで、レベル上げがキツイのは魔法職だ。冒険者にはスキルがない、初めは物理攻撃に頼るしないので魔法職希望はしんどい。
レベル15以上になると魔法職が一番レベル上げが早くなる。それはスキルに関係する。
「あぁよろしく頼む! 俺はライトって言う」
「俺はハヤト!」
「私はアユミと言います!」
「私はリム、よろしく」
挨拶を交わし、俺はシャロの方を一瞥するが、なぜかシャロはそっぽを向いている。それを見て俺はシャロの変わりに告げる。
「この子はシャロって言うんだ!」
「ライトさんとシャロさんですね! 私とハヤトはリアルで姉弟なんです。リムさんはNPCです」
俺達の警戒心を解く為に、普通はあまりしないリアルの事をアユミは笑顔で俺達に話した。
「俺と一緒にレベル上げしようぜ! サンが勇退したんだ!! 俺が頑張ってサンの代わりになってやるんだ〜」
「もうハヤトはずっとそればっかり!」
瞳を輝かせながら元気に話しているハヤト。目の前で褒められて鼻が高い。なんか最近は俺のファンによく会うな。
「一番人気はレインです。あの人は圧倒的に人気なんですよ。サンなんて人は、他のフロアでは人気ではありません」
俺の心に釘を刺すように言う耳長族のリム。たっ確かにその通りだけど。
「ふん! わかってないな! リムはAフロアにずっと居たからわからないけど、DDフロアで1番人気なのはサンなんだ!! 日本男児はサンが誇りだ!」
「DDフロアでもレインが一番人気ですよ」
「まぁまぁまぁ」
むっむむむむと見つめあっているハヤトとリム、それを宥めているアユミ。なんだかんだ仲良いパーティだな。
これが……ゲームだよな。俺は和やかな光景を見てホッコリしていた。
「じゃあ! 一緒にミスリア鉱山に行こう!」
「「「お〜!」」」
行き先を決めたハヤトに続いて、片手を上に掛け声を上げる三人。俺とシャロはその行動にキョトンとした。
「お兄さん達も! ゲームなんだから楽しまなきゃ!」
「せーのですよ」
「行きますよ〜」
「「「「「お〜!」」」」」
少し恥ずかしかったが、嫌ではなかった。会話に参加していなかったシャロでさえ右腕をちゃんと上げてお〜って言っていた。表情、声色は変わらないが。
俺達はミスリア鉱山に向かった。ミスリア鉱山は初心者が二番目に訪れる狩り場である。
リーマン草原は最初の狩り場ともあって、特別に非戦闘区域だが他は違う。街の外は基本戦闘区域である。
俺達はリーマン草原を出て街道を歩いていた。まぁこれは居そうだな。
俺の思惑通り、それは直ぐに現れた。街道を歩く者を邪魔するように屯する男達。
「ハイハイ〜俺達は――」
――――ドパンッ!
「えっ?? 俺が話してる途――――」
刹那の弾丸で五人の男達が訳も分からずに戸惑いHPがゼロになる。武器を構える前、言葉を交わす前に一瞬で倒された。
やはり居たな。五人のパーティか初心者狩りだったな。通常はここら辺にはあまりいないが白銀の巨塔のメンバーを一目見ようとしたんだろう。祭りの後とかは特に多い。
喋らせる暇など与えるか。殺られる前に殺る。降りかかる火の粉は全力で倒す。それがトッププレイヤーだ。
「他には居ないみたいだな」
突拍子もないその光景にスローモーションのように緩やかになった時間の中でハヤトとアユミはある人物と重ねていた。
「「サン……」」
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おめでとうございます。
レベルが2上がりました。
SPを100獲得しました。
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――――えっ?? レベルが上がっただと……。
プレイヤーやNPCをPKしたとしても経験値は入らない。まさか……このジョブはPKでしかレベルが上がらないのか。
これが――――ライフ……ガンナー。
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