第一章18 『パーティ』
このベンチに腰を下ろしてからどれだけ時間が過ぎただろうか。いや実際あんまり経っていないのだろう。食事を終えてから俺とシャロの無言の時間が続いた。
とりあえず確認してみるか――俺はシャロのステータスを確認した。
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PN:シャロ<獣人族>
LV:1 JOB:冒険者
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名前はやはりシャロだな。先程からシャロの無言の視線ビームが痛い。
「あのシャロ」
「はい、マスター」
シャロは表情も声色も一切変わらない。気持ちを読み取る方法は、けもみみとしっぽの動きのみだ。
俺がシャロと名前を呼んだ後、なぜか尋常じゃないほど、しっぽをフリフリしている。
嬉しいのだろうか。
「その……なぜ俺の事をマスターと呼んでいるんだ?」
「マスターはマスターです」
「知り合いとか……帰る場所とかないのか?」
「マスターの側が私の帰る場所です」
と言われて俺は内心、汗がダラダラである。俺の問いに迷いも見せず、当たり前の様に話すシャロ。
しかしながらシャロの瞳は本当にそう思っている。瞳は雄弁とはよく言ったものだ……。
とりあえず俺はシャロの事を何も知らない。それだとしてもシャロを邪険にするのは良くない。
今後もしかしたら、俺の事を嫌ってマスターとか言わなくなるかもしれない。
これはおむすびの恩恵だろう。シャロの好きにさせよう。もしかしたら、シャロにも退っ引きならぬ事情があるのかもしれない。
「とりあえずシャロ、何かしたいことはあるかい?」
「マスターの側に居たいです」
いやいや、そんなこと言って……そんな瞳で見られても……。
けもみみぴょこぴょこでじっ――かっかわいゆい、と思ってしまった。
「そうか――じゃあ俺と一緒に冒険者やるかい?」
「はい、マスター」
とりあえず俺とシャロは一度ギルドに寄った。シャロはランク登録をまだしていなかったのでそうなった。
シャロは完璧に初心者、装備もレベルもだ。
それから冒険者ギルドでFランクの申請だけして、俺達は冒険者ギルドから立ち去った。
俺は少し気になった。シャロのギルド内での立ち回り方が、なぜか慣れている様な気がする。
ん〜これは俺の感だが――雰囲気、まるで歴戦の冒険者のように感じだ。
シャロは種族が獣人族なので、間違いなくNPCである。アルカディアは知ってのとおり四種族存在している。
ステータスが平均的な人族。
INT、DEXに特化している魔法型の耳長族族。
STR、VIT、AGIに特化している獣人族。
LUKはかなり低いが、人族よりもオールマイティで無限のMPを待つ機械人形。
これを見たら人族が不利なのはわかる。アルカディアは人族以外が強いゲームなのだ。
STR:物理攻撃に影響。
INT:魔法攻撃に影響。
VIT:最大HPと防御力に影響。
AGI:移動速度と攻撃速度と回避に影響。
DEX:スキル命中と魔法詠唱速度に影響。
CRT:クリティカル率に影響。
LUK:ドロップ率などに影響。
NPCはHPがゼロになるとプレイヤーと同じように、十二時間出現しない。条件や影響などはプレイヤーと全く一緒である。
「シャロはどの職業になりたいんだ?」
「賢者です」
俺の質問に即答するシャロ。シャロが賢者か……。
「シャロ、スキルポイントの50はもう使った?」
「INTに全て使いました」
「なっ、なるほど」
本当にシャロは賢者になるつもりだ。
INT、DEXに振り、少しVITに振る。これが理想のパーティ魔法職。
初めたばかりの冒険者にはスキルはない。スキルを増やすにはスクロールやクエストによって増える。
もしくは一次職になれば自動的にスキルは貰える。
まぁとりあえずシャロを15レベルにして一次職のメイジにするしかない。
俺はサラを探すのが目的なのに、なぜかこのシャロが放っておけない。
これは浮気ではない。まぁ……サラは片思いだけど。
シャロはどこかサラに似ている。無口のところやジト目や感情を表さないところ。しかし、見た目は違う。
これは何かの縁だ。そうだ。
こんなの可愛い子がマスターっと言ってくれるんだ。二度言うが浮気ではない。
「マスター行先は草原ですか?」
「あぁそうだ! リーマン草原だ」
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シャロからパーティ申請が来ました。
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――――早速来たな、さすがシャロだ。
この表記された名前に関しては、自己申告制である。偽りの名前でパーティー申請する事も出来る。
パーティ申請をする方法は、目視できる相手にパーティ申請と頭か口頭で唱えるだけである。その時に好きな名前を使える。
これもアルカディアの不思議な所である。
パーティに入ると、誰が倒したとしてもアイテムは自動分配され、経験値は平等に渡される。アンコモン以上のアイテムなどはバラバラだが。
狩りをする前に装備をロッドかショートソードに変えた方がいいな。さすがに武器が銃だとかなり目立つ。
ステータスが高い俺なら初心者装備でも十分にここのモンスターなら倒せるが。
俺はメニューからアイテムボックスを開いて、装備をブラッド漆黒からショートソードに変更しようとした。
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装備できません。
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えっ――じゃあ次はロッドだ。
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装備できません。
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――ぇええええええ!!!
もしかして……この職業は銃しか装備できないとか。
俺はこの後、知ることになる。
この職業の縛りを――――
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