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第一章15 『ピエロ』

 ノブナガは俺の左腕手首を掴みながら、俺をジロリと見つめている。この大広間をノブナガの威圧が支配していた。


 タダより怖いものって――――俺は恐る恐るノブナガを一瞥する。


「あのやっぱりこんな高価なモノ、申し訳ないって言いますか――ちょっと俺には似合わないって――そのお返しします」


 俺はこの言葉を告げて、ノブナガはもっと睨むのかと思ったが――その予想に反してニヤニヤしている。


「何を言うておる。これは褒美だ。わしの依頼とは何ら関係はない」

「っ――だったら!」

「今のうちに恩を売っておこうと思おてな、お主に〜次は逃がさん!!」


 と言うとノブナガの掴んでいる力が強さを増す。痛くは無いが絶妙な逃げれない力。この人は俺がサンって知っているのか、この人この感じは拒否はできない。さすが魔王ノブナガ。


「わかりました。やればいいんでしょ、やれば!!」

「きっさま!!!!! ノブナガ様の依頼だぞ!!!!」


 とうとう痺れを切らしたカツイエが立ち上がり、俺に迫ろうとした。


「カツイエ、二度はないぞ」


 押し殺した声色で、真っ直ぐカツイエを睨みつけるノブナガ。その一言でカツエイはこうべを垂れて、直ぐに平伏した。

 そして、ノブナガは俺の方に、また視線を転じた。


「期間はいつでもよい、好きな時にクエストをやれ! 場所はアルクス教国に通ずるレッカイドウだ」

「――――」


 この人――マジでめんどくさい事を――――


 アルクス教国はリアルでいう場所の京都だ。レッカイドウは東海道である。

 アルクス教国に多く住んでいる種族は耳長族(エルフ)だ。そんな近くで魔物発生を鎮火とか、嫌な予感しかしない。


「俺がそのままバックれるかもしれないですよ! 行かずにやらずに放置する――――」


 そう言葉を紡いでいたが、俺はノブナガの表情を見て直ぐに口を閉じた。ノブナガは満面の笑みを俺に見せている。


「それもよい、わしの選択だ」

「じゃあ――帰ります」


 ノブナガは俺の左手首を()()離し立ち上がり、踵を返し、上段の間に腰掛けた。

 俺も立ち上がり、踵を返し、そのまま宮殿を後にした。




 ---




 カツイエは動揺していた。それはそうだ――冒険者の服を着た、どこからどう見ても初心者の姿。

 しかも、Aランクだと――感で主君は言っているのだから。


 しかし、絶対の主と認めるノブナガの言葉。信じるのが家臣、だが少し、少し、気になってしまう。

 なぜかそう言っている自分でさえも、あのライトと言う男が、Aランクだと不思議と感じてしまう。だからこそ気になってしまうカツイエだった。


 ――ノブナガはカツイエの猜疑を感じ、告げた。


「カツイエ!」

「はっ! ノブナガ様!」

「直感を大事にしろ! 見た目に騙されるな! もうわしは逃がしはしない。わしはサンを逃した。だから二度は逃がさん! 決してな! あやつは必ず他の国も欲する!」


 カツイエは驚愕した。


「ノブナガ様! サン殿!?」

「ただ、似ているのだ! わしの感だ」


 ノブナガはニヤリとしながら扉をずっと見つめていた。もう一人この場でニヤリとしているモノに気付かずに――――



 ---



 とりあえず今は装飾品は外しておこう。ノブナガの依頼はもう少しレベル上げしてから向かえばいい。期間はないのだから。


 とりあえず道具屋に行き、準備をしてからレベル上げだな。


 俺はこの街で有名な道具屋に向かった。お店が有名、ん〜店主が有名なのか。


 俺が向かうのは赤レンガ調の建物だ。俺はその道具屋に入る。

 道具屋に入ったあと直ぐに目に付いた――張り紙がいたるところに張られている。


「全品20パーセントOFF。閉店でもするのか、この店」


 俺はまじまじと、その張り紙を見ながらボソッ呟いた。その言葉にこの店の店主が反応した。


「今日はめでたいからな!! 兄ちゃん買ってくれ!!」


 この店の店主は人族(ヒューマン)で小太りの五十歳位の男だ。この人はプレイヤーでリアルと同じ姿にしているらしい。


「何言ってるんだよ!! あんた!! 先ずはいらっしゃいませだろ!!」


 店主に向かって、めっちゃくちゃ怒鳴っている女性は、この店主の奥さん。夫婦揃ってゲーム内でプレイし同じ店で働いている。


「なんか、おめでとうございます!」


 そう告げると、店主はにやにやが止まらなくなる。


「ふふふっ! 噴水広場だよ! 噴水広場ばっ!!」


 俺は直ぐに店主の言葉で理解した。レインの事だろうな。あの場面をふと頭の中で浮かび上がる。


 俺はあの時、大型ビジョンに映って多くの民衆に見られたはず。


 しかし、誰も俺を見ていなかった。おかしい、ノブナガと神輿の上に乗っていた時も、民衆は誰も俺の方を見ていていない。


 あのノブナガなら、レインをジャンプキックした俺なら、爆笑してその事を自ら話すだろう。けれどしなかった、どういう事だ。

 レインを吹っ飛ばした、本人なのに目の前の店主も俺を知らない。


「――――」

「なんだなんだ!! 知らないのか? 噴水広場で子供を泣かした勇者レインを、ピエロの仮面を付けた青髪の男がジャンプキックしたんだよ!!」


 とてもスカッとしたみたいに、笑顔で話す店主。それに俺は息を呑んだ。


「えっ……」


 俺はリアルと同じ姿で黒髪だ。青髪じゃない――――仮面なんか付けていない。





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