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第一章1  『BAN』



 2090年・世界最高のバーチャルリアリティゲーム、その名はアルカディア。それはもうひとつの惑星と言われ、壮大なファンタジーで人気を博していた。アルカディアには未踏の地が多く存在し人々を夢中にさせていた。


 人気の理由は二つある。一つ目は、それはお金だ。アルカディアと現実世界のお金は同等の価値である。現実世界でお金を稼ぐよりもアルカディアで稼ぐ方がかなり効率が良い。


 その為、殆どの者はカプセルと言われるゲーム装置に入り、アルカディアで日々を過ごしている。現実世界のお金はアルカディアでは使えない、アルカディアのお金は現実世界で使う事が可能だ。アルカディアが発表されてから、現実世界では、紙幣や硬貨などが全世界から存在価値が消えた。現在はお金=電子マネーとなっている。


 二つ目は、アルカディアの時間はリアルタイムの十分の一で時間が進む。その為より時間を謳歌する事ができる。しかしアルカディアではPK、対人戦も存在し、決められた場所以外は襲い倒す事が出来る。


 これはルールの中の行動であり。倒された者は十二時間のログインが禁止される。その為、強い冒険者を用心棒として雇う事が多い。自分の資産(時間)を守る為に――――


「ハハハッ――今回のクエストは楽勝だったな!」


 高笑いしながら豪奢なソファーでくつろぐ、金髪マッシュヘア、碧瞳のかなりの美丈夫。レベル99のトッププレイヤー、その職業は勇者。僥倖があったのか男は頬を緩やかにしていた。


「まぁな! 人が減ったにも関わらず、こんなに早く終わるとは……存在自体が邪魔だったからなぁ。とくにアイツは――」


 金髪の男に同調しながら言葉を紡ぐ紫髪ミディアムヘア、黒瞳の男。レベルは99のトッププレイヤー、その職業はシーカー。その男は何かを思い浮かべると、苦虫を噛み潰したような顔つきで嫌味な笑を浮かべている。


「金にならない依頼ばっかり受ける。ただの偽善者、いなくなって清々するわ――全く」


 辛辣な言葉を飛ばしテーブルに足を置く、紅瞳、赤髪ロングヘアの妙齢。レベルは99のトッププレイヤー、その職業は聖王。吐いた言葉とは違い、見た目は誰もが一瞥してしまう程の女性である。


 とある酒場で話している三人。三人が所属ギルドは白銀の巨塔と言うギルドである。冒険者達が当たり前の様に利用する二階建ての酒場でこの三人は他の冒険者達とは違う待遇の席で過ごしていた。


「そういえば――アイツはどうして俺達と同じギルドにいたんだ?」

「俺が誘ったんだよ、理由はLUKが高かったから――ただそれだけだ」


 綺麗な指先を唇に当てながら質問をする勇者。その勇者の疑問になぜか表情をさらに落としその問いに答えるシーカー。


「あーそうだった! アイツはアイクが誘ったのか。

 まあアイツはLUKがどうしてか異常に高かった。それだけはかなりもの珍しかったが。何も期待せず、ただの装飾品として入れただけの人員。

 ただのアイテムドロップを上げるための――だがその装飾品は賢者だと言うのにDEXがゴミだから詠唱がおせぇ、おせぇ」


 DEX:スキル命中と魔法詠唱速度に影響。

 LUK:ドロップ率などに影響。


 勇者の返した言葉が満点の言葉だったのか満面の笑みを浮かべるシーカーのアイク。アイクは気分を良くして、すかさず勇者に問を投げかけた。


「レイン、どうやってアイツを消したんだ」

「親父に頼んだんだ。俺の親父は開発運営会社MOに少し顔が利くのさ……親父に頼んだら直ぐに実行された」

「さすがレインだな!」

「まぁな!」


 聖王は下世話で盛り上がる男二人の会話から少し耳朶が離れ、誰かを探していた。


「あれサラは居ないの?」

「サラか――いつもいる場所にも最近現れていない。ログインしているのかも怪しい。しかし珍しいなアンリが――――サラの心配なんて」


 アンリの質問に表情、声色を変えて答えたアイク。アイクは直ぐ様やり返すようにアンリに言葉を投げる。


「ただ、何となく――気になっただけよ」


 少し口元をニヤリとしアンリは自ら始めた会話を一言で終わらせた。二人もメンバーが消えたにも関わらずアンリには焦燥感が全くなった。


「サラは無口で何を考えてるか判らない」

「レイン、そうね」


 冷たい双眸で言葉をとしたレインは――今までクエストの成し遂げた以上の達成感に浸っていた。



 ---



 ――――東京。




「お兄様! お時間ですよ」

「んっ〜もう朝か」


 やけに近い吐息から流される言葉は天使の囁きである。瞼をムギュっして少しずつ覚醒させる俺。教会にも通っていないのに天使の囁きを毎日聞ける、俺はその特権を持っている。


 俺の名前は柳生田太陽(やぎゅうだたいよう)、16歳。


 一緒に住んでいるのは天使の声の持ち主、妹の桜だけ。そして俺が一家の大黒柱である。東京の一等地に構える豪奢な和風御殿。

 桜は俺の一個下でちゃんと学園で勉学に励んでいる。生きる為の全てのお金は俺が稼いでいる。そのお金はアルカディアによって――


 桜は黒髪ロングヘアで可憐な美少女で俺にとても甘々なよく出来た妹である。


「ご飯は作ってありますから、ゆっくり食べてくださいね! 私は少し、出かけて来ます」

「あぁ、ありがとう。行ってらっしゃい」

「はいお兄様! 行ってきます」


 桜は「ふふふっ」と俺に緩やかに笑顔を見せてゆっくりと踵を返した。

 桜が寝室から出た後、俺は間をあけずに寝室から玄関には行かずに顔を洗い。桜の手作りの朝食を食べてすぐさま専用の部屋に入る。


 そして、カプセルに――


 アルカディアのプレイヤーは人族のみである。アルカディアのNPCは人族(ヒューマン)耳長族(エルフ)機械人形(メカ)獣人族(ビースト)の四種族が存在する。プレイヤーは現実世界の性別しか選択が出来ない。

 これは発表された当初から変わらないルールである。


 縛りがあるゲーム、アルカディアが発表から爆発的に広がり、浸透した理由――それは他のゲームとは比べられない絶対があった。ゲームの一部であるNPCが本物の生命体の様に感情もあり、普通に接しているとプレイヤーと変わらないし、気づかない。

 同じ種族の人族(ヒューマン)だと、先ず絶対に分からないNPC(生命体)が存在した。だが、見分ける方法はある。それはフレンド登録が出来るかどうかである。NPCとプレイヤーはフレンド登録が出来ない。それで人族(ヒューマン)同士はプレイヤーかNPCかを判断する。


 アルカディアがリアルすぎてNPCと結婚をしたプレイヤーも多くいる。これをM廃人と言われている。昔はかなりの社会問題になった。


 俺はいつもの様にカプセルに横になり――俺はダイブする。



 …………………………。

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 ……。




 ===============

 ようこそアルカディアへ。

 新たな世界がそこに。

 ===============




 えっ――――どういう事だ。

 これは……最初のキャラリメイクの画面……。


 ――――俺のアカウントがない……。


読者のみなさまへ


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