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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
七章 天空世界
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凱旋と子供

遅くなりました。

「ごしゅじんざまぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


何か『ザマァ!(゜Д゜)』と顔文字付きで煽られたような気がする。


「うわぁあぁぁぁっぁあ!」


奇声を上げながらタックルでもしそうな勢いで近づいてくるのはアスモデウスだ。相変わらずあぶない服を着ている。


三日ほどでようやくまともに動けるまで回復したのでリハビリとして軽いトレーニングをしていたら襲撃にいった軍隊が帰ってきて、その軍隊を押しのけるどころか文字通り吹き飛ばしながらアスモデウスがやってきた。


「あああああああ!」


涙と鼻水で整った顔をぐちゃぐちゃにしながら抱き着こうとしてくる。


私は左へ半歩ずれて右腕を横へ上げた。


「おぐうっ!」


見事に首に直撃し下半身の勢いが余って後頭部をおもいきり地面にぶつけるアスモデウス。


「まじかよ」


「やっぱ竜は人と違うな」


「まあ悪魔だから大丈夫だろ」


「容赦ねえな」


「いいえ、あれは我々の業界ではご褒美よ」


騎士たちが何か言っているが無視する。最後の女騎士からアスモデウスと同類のにおいがしたので関わらないようにしよう。


「あ・・・ああ・・・・・」


今のをまともにくらって意識を保っているあたりさすが大悪魔である。


「おかえりなさい、勇士たちよ。それとアスモデウスは・・・・えっと・・・・」


オートが来て労いの言葉をかけるがアスモデウスを見て言い淀んでいる。


「どうした?」


「悪魔ですから」


確かにそうだ。一応敵なので誉めるわけにはいかない。


「まあ・・・・・こいつは眠らせておけばいいんじゃないのか」


馬鹿にされたり殴られることで快感を感じる変わり者だからな。


「ああ・・・私もシュラ様に踏みにじられたい・・・・」


同類の女騎士が何か言っているが精神衛生上よくないので聞き流す。


「と、とりあえず今夜は勝利を祝って宴を開催します。あの『光明酒』もだしますので好きなだけ飲んでください」


『光明酒』の時点で騎士たちが騒ぎ出し、すぐに大気を震わすほどの大歓声を上げた。おそらく幻の酒なのだろう。

私は何もしていないので飲まないことにしよう。それとこっそりとやっておきたい実験もあるので何かしらの理由をつけて宴には参加しないでおこう。


騎士たちが宴が待ち遠しいと口々に言いながら自分たちの寮へ帰っていく。残されたのはオートとアレな顔をしているアスモデウスと私だ。


「すまないが私は宴には参加しないでおく」


「なぜです?」


「私が何もしていないのと一人でやっておきたいことがあるからだ」


「シュラ様は作戦計画に協力してくれましたよ?」


「ずっと安全な場所にいて全く戦いに参加しなかった者が命を賭けて戦った者たちが参加する宴に参加する資格はないと私は思っているからな」


凱旋してきた騎士たちを見たときに目を失ったものや四肢の一部を失ったもの、全身に傷がある者などがたくさんいて想像を絶する激戦だったのがすぐに分かった。その騎士たちと一緒に私が宴を楽しむ資格はない。


「ですが・・・」


「すまないが私は頑固でね、なんと言われようが宴には参加しないぞ」


アスモデウスは適当なところに持っていって放置しておく。誰かが見つけてくれるだろう。


私は神殿には帰らずこの世界の平民の服を着て髪を黒く染めて街に出た。


道には露店が並んでおり、軽食から怪しい骨董品まで様々な種類のものがある。あいにくこの世界の通貨を持っていないので何も買うことが出来ないが見るだけでもなかなか面白い。


しばらく進んでいると薄暗い裏路地から誰かの声が聞こえた。

その声はかなり小さく何を言っているのかは分からなかったが声音からして助けを求めているのだと分かった。


気になって声のする方向へ進んで行くとだんだんと禍々しい気配を感じるようになった。


気配の発生源はどうやら地下にあるらしい。声も地下から聞こえる。

魔法が進化した『空間精査』でおおよその位置と気配の数を探る。以前よりも詳しく正確に探知できるようになった。


禍々しい気配は放出されている方向などからおそらく大きめの魔法陣、それも生贄の魔法陣だろう。魔法陣を囲むように五人の気配を感じ、魔法陣の中心にいくつかの弱々しい気配を感じる。


別に襲撃するだけなら造作もないのだがさらに精査すると厄介な仕掛けが施されていることが分かった。

生贄など特殊な儀式などに使用される魔法陣などには保険またはもともと何らかの効果がつけられている。


例えば失敗しても一度だけなら使用した素材が失われない、妨害が入っても自動的に最後まで魔法陣が儀式を続けてくれる、ひどくなると証拠隠滅として魔法陣が町一つを吹き飛ばす大爆発を起こすなんてものもある。

こういうのは知識と技術と素材があればかなり面倒だが誰でもできる。私だって本気を出せば過去を改変する魔法陣すら作れてしまう。しかし素材はどうやっても手に入れられないので不可能だが。


過去改変は説明が難しい。本当に過去の歴史を変えるのではなく『もともとそうだった』という状態にするだけである。


最も分かりやすい例はSCP-240-〇P の『0匹のイ〇ゴ』である。


前世の友の息子が私に教えてくれたのだがはっきりいって理解できなかったが今になると理解できた。


閑話休題。


私の下にある魔法陣は妨害されても最後まで儀式を続けるというもの。解除するには魔法陣と魔法陣の作者、それに効果をつけた術者の魔力の波長を解読する必要がある。今回はおそらく魔法陣の波長と製作者の魔力の波長だけでよさそうだ。製作者と効果をつけた術者が同じなら手間が省ける。


さて、時間がないので襲撃するか。


『身体強化』『暗視』


地面を蹴破り地下室へ入る。


地下室は五人の黒ずくめの男たちと二つの魔法陣にそれぞれ少年少女が寝かされていた。魔法陣が二つあったのは予想外だ。


「なにも」


一人をすばやく眠らせて残りの男も眠らせる。全員眠ったので『拘束』の魔法をかけておく。


「大丈夫か」


呼びかけてみたが返事はない。妖しい光を放つ魔法陣に生命力を吸われているようだ。


『魔力感知』『波長感知』『暗号解読』


三つの魔法を並列同時起動させる。以前なら無理だったが今ではなんとか出来る。


魔力波長を読み取り、解読し、魔法陣の機能を停止させる。


しばらくすると二つの魔法陣が光を失った。


少年少女の様子を確認するとかなり衰弱していたが命に別状はなさそうだ。

いったい何の儀式の生贄にされる予定だったのだろうか。魔法陣から感じる禍々しさや彼らの恐怖に歪んだ顔を見ればろくでもないことだったのがすぐに分かった。


彼らをどうするかで悩む。


聞いた話によると神殿は安全のために騎士団やそれに関わることのほとんどは隠匿されており、必要な情報以外は基本的に知らされない。

つまり平民たちや貴族でさえ悪魔たちと今どうなっているのかよく分かっていない。

となると当然一応騎士団に関わっている私のことも隠匿されていることになり、素顔を見せても分かってもらえないし街中で竜になると大騒ぎになる。


しばらく悩んだ挙句、いったん神殿に連れて帰ることにした。


『透霧』で私と彼らを透明にする。今思ったが、なぜこの魔法だけ名前が微妙に和風っぽいのだろう。

気にしてもしょうがないか。


『浮遊』で抱えられなかった子供たちを浮かせて私の後をついてくるようにする。


空は薄暗くなっており、露店を畳む人が増え外にいる人も少なくなった。


神殿につくとすでに宴の準備が始まっており騒がしくなっていた。

事情を説明するためにシュタットかオートを探す。


しばらく歩いていると二人を見つけた。


「すまない」


「ひゃあっ!」


「ふむ、何者かの気配がすると感じておったがお主じゃったか」


いきなり目の前に現れた私にオートは驚きシュタットは納得したようにうなずいていた。


「どうしたんじゃ?」


二人にさっきあったことを話した。


町の裏路地の奥の地下で何らかの怪しい儀式が行われていて、襲撃して子供たちを助けたこと。

男たちは拘束して放置していることを話した。


「この時期に怪しい儀式、それに二つの魔法陣と少年少女か・・・」


「何か知っているのか?」


「知っておるとも。それは悪魔召喚の儀式じゃ。少年少女を生贄にすることで悪魔を呼び出すものじゃ」


「規模にもよりますが上位悪魔である魔将クラスの悪魔を呼び出すことすらできます」


なかなか凶悪な儀式だった様だ。


相談した結果、子供たちは一時的に預かって保護者を探し、いない場合や何らかの理由で引き取ってもらえなかった場合は神官として育てることになった。


さて、少し休んだら実験するか。


え?メタトロンはどうしたたのかって?


彼は職務放棄して楽しい所へ旅行しに行ってしまいました。

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