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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
七章 天空世界
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神と目覚め

真っ白な空間。


初めはどこか分からなかったが、私はこの空間に既視感を感じていた。


しばらく考えてようやく思い出した。


ここは私が死んだときに来た女神と会った場所だ。


「あ、お客さん?」


後ろから声をかけられたので見て見るとそこには薄着を着た中性的なかわいらしい少年がいた。


「誰だ?」


「あ、自己紹介が遅れたね。ぼくはフィリス。神様だよ!えっへん!」


「女神はいないのか?私を竜に転生させた女神は」


あの女神に聞きたいことがいくつかある。


なぜキャロルまで転生したのか。人間の数が定員オーバーと言っても、なぜ人間の数が決められているのか。

人間の、ということは獣人または魔族に転生できる可能性もあったはずだ。


「え、君あの転生者なの?ちょっと待って調べるから」


フィリスと名乗った少年は両こめかみに指を当てて考え始めた。


「・・・なるほど、『守護者』か」


神妙に呟いて頷く少年。


「守護者?」


「・・・この際だからいいか。君が異世界に竜として転生した・・・いや、させられた理由を教えようと思う。これから僕が言うことは他言無用だからね」


「分かった」


「まず、君の世界が転生されられた世界なんだけど・・・あれは滅びの運命にあるんだ」


何だと?


「それも近い将来にね。でもまだ猶予はあるからあわてる必要はない。そして君が転生されられた理由。君を転生させた女神はなんて言ってた?」


「転生してくれないとノルマが達成できなくて左遷させられると言っていたな」


「それ真っ赤な嘘だよ。僕ら神には階級こそあれど左遷とかないよ。君を転生させた本当の理由は運命を捻じ曲げてもらうため。要するに、世界の理から外れた異世界からの転生者である君に滅びの運命を回避してもらうためだね」


「私でなくともよかっただろう」


「転生には厳しいある試験があってね。君はその厳しい試験に合格したからだよ。あ、君の孫もだね」


「私やキャロルの他に転生者はいるか?」


いたのならその転生者も私と同じように騙されて運命を捻じ曲げるようにする使命があるのだろうか。


「もういないけど、君の生徒のように『異世界人』ならごく稀に何らかの理由でやってくるよ。でも世界は広いし次元も違うから大抵は次元の狭間で死ぬか生命の生きられない星で死ぬかだね。生きることができる世界へたどり着くことすら天文学的な確率なのに、君のいる世界にたまたまやってくるなんてもう言葉で表せないほどの極小確率になる」


転生者はいないが異世界人は来ることがある。


もしかするとまた異世界から誰かがやってくるのだろうか。


「あんまり詳しくは言えないけど、この時代にやってくる転生者又は異世界人は大体同じ使命があるよ。それと僕からのプレゼントを贈っておくから起きたら確認してね。それじゃばいばい」


プレゼント?


確認する暇もなく私の体が光の粒子になって意識が途絶えてしまった。


-------------------------


「・・・」


倦怠感。


全身に重い鉄球を括りつけられているようなだるさがある。


なぜこんなことになっているかというと心当たりはある。私が死に際に使った『生命変遷』という禁術のせいだ。


この魔法は自分の全魔力と魂の一部を代償にどんな怪我や病気も治癒するというものだ。

全魔力と言っても最低でも一般的な魔術師百人分の魔力は必要だし魂の一部を使うという事は寿命が減り、魂の存在感を少し失うことになる。


体感であと二回ほどで魂は深刻なダメージを受けて壊れてしまうだろう。この魔法は危険すぎるため禁術なのだ。


魂を修復するためには『死神の魂片』というとある素材が必要なのだがこれが出てくるのは神話の中だけであるため存在しないと言われている。


また全魔力を消費したことによりすさまじい倦怠感に襲われている。目を開けるだけでもしんどいが、状況を確認するために頑張って目を開けた。


喪服を着たオートと目が合った。


「ひゃああああああ!!」


驚いた声を出して後ずさる声が聞こえて水の入った桶が倒れる音が聞こえた。今気づいたか私は棺桶の中に入れられている。


私の服も白装束にされている。


起き上がって周りの状況を確認したいが魔力切れによる倦怠感で指一本動かない。

こういうときはポーションか何かを飲むのだろうがそんなもの持っていない。しかし似たような効果を持つ魔法はある。


『魔力の渦』


魔力を消費せずに使える安静の状態で動かなければ少しずつ魔力を回復する魔法。回復量は少なめだが何もしないよりは圧倒的に早い。


倦怠感は消えないが『念話』ぐらいは使えるようになった。


「アンデッドになるとはのぉ」


『死んでないぞ』


シュタットが私を覗き込んできた。


「誰じゃ?」


『私だ。念話で話しかけている。ひどい倦怠感で体が全く動かん』


「便利じゃのぉ。しかし、なんで助かったんじゃ?お主は完全に心臓を貫かれておったぞ」


『「生命変遷」という禁術を使った』


「禁術まで使えるとはのぉ。ところでお主、自分の変化には気づいておるか?」


変化?


そう思っているとシュタットが手鏡で私を映した。


『・・・何だこれは』


赤黒かった髪は白く輝いており、深紅の瞳も水色に変化している。


あのフィリスという少年が言っていた贈り物はこれか?


・・・いや違う。


体の内側や魔法に意識を集中するとすべての能力が強化されており、竜の時に使えるであろう必殺技のようなものも覚えている。

こんなに強化して何をさせるつもりだ。


「オートがかなり驚いておったぞ。いきなり見た目が変化したかと思えばどう見ても死んでいたのに蘇ったからの」


『驚くのも仕方ないだろう』


私だって目の前でそんなあり得ないことが起きたら腰を抜かす。


そういえば私が殺されてからどれほど経ったのだろう。


「お主が死んでから今日で二週間目じゃ。本来ならすぐにでも埋葬するつもりじゃった。しかしアスモデウスがお主に縋りついて泣くわ喚くわ暴れるわ・・・仕方ないから保存の術をかけておいたんじゃ。今はアスモデウスはベルフェゴールの拠点で大暴れしておる。襲撃は成功じゃろう」


『何かすまんな』


アスモデウスが私に執着しているせいで大変なことになっていたそうだ。


というか私が寝ている間に襲撃したのか。そして襲撃は成功か・・・いや待て、アスモデウスが最前線で暴れたら裏切ったとバレる。


・・・・もういいか。手遅れだ。


次は誰が標的になるのだろう。

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