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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
七章 天空世界
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会議が終わり、神殿へ向かう途中で私は振り向いた。さっきから尾行されていたのだ。


「何のつもりだ」


「ちっ」


舌打ちしながら出てきたのはメタトロンだった。


「何の用だ?」


「貴様を殺す」


「は?」


「貴様は邪竜だろう!アスモデウスと共謀して裏切らせたふりをして本当は悪魔の味方なのだろう!?」


何を言っているんだ。


確かに私はある日突然現れてすぐにアスモデウスを倒してしまった。これだけなら怪しいと思うかもしれないが決めつけられるほどの証拠などない。


「偶然」この世界に飛ばされて「偶然」神殿に棲むことになって「偶然」アスモスが来て倒しただけ。それだけだ。


・・・。


ここの地形は・・・。


「お前の勝手な思い込みで私に害を加える気か」


「思い込みではない!事実だ!」


だめだ、予想はしてたが完全に話は通じない。


盲信しているというか、狂気的というか、悪魔やそれに関わる者は等しく悪といった心情が目からよく分かる。どろりとした不快な感情が詰まっている。


「最後に言い遺すことは?」


「それは私の台詞だ」


「馬鹿にするな!」


「えい」


「ぶっ」


剣で斬りかかってきたので顔に砂をかけてやる。動きが止まったので右手で顔面を掴み地面へ叩きつける。


「会話に夢中になって私が少しずつ高い所へ移動していることに気が付かなかったか」


「ぐ・・・卑怯だぞ」


「何が卑怯なんだ?殺し合いではお互いにたった一つの命を賭けているんだ。戦いに卑怯などない」


「真面目に戦え!」


「私は騎士ではないのでな」


わざわざ相手に合わせる必要などない。


戦場では持てる力を出し切ることが相手への礼儀だと師範から教わった。騎士は正々堂々とした戦いをするが私のような冒険者などは「勝てばいい」という考えなので何でもありだ。


冒険者や傭兵はいつ死んでもおかしくないから生き残るにはあらゆる手を使って勝つしかないためこういう考えになる。

一方騎士は冒険者や傭兵のように金ではなく肩書や名誉を重視するため立派な肩書や名誉をもらうために正々堂々と戦い卑怯な真似はしない。


「悪魔が正々堂々と戦ってくれると思うか?わざわざ正々堂々と戦う悪魔なんぞ数えるほどしかいないだろうな。彼らは侵略者で支配者だ。目的を達成するためには手段を選ばないだろうな」


「くそっ!」


左手で魔力弾を放ってきたので避ける。同時にメタトロンが私の拘束から逃れる。


「ふっ!」


速い。『縮地』か知らないが一瞬で間を詰めてきた。


「『白扇』!」


メタトロンが叫ぶと私の背後に巨大な白い扇が現れた。


何だと思ったら扇の羽がバラバラに分かれて一気に襲い掛かってきた。


「よそ見していいのか?」


「しまっ・・!」


扇に気を取られてメタトロンの動きを見ていなかった。


体を捻じって躱すが扇の刃までは避けられず何発かは受けてしまう。


円を描くように走って躱しているがメタトロンが一気に距離を詰めて斬りかかってくるのでどうしてもどちらかの攻撃を受けてしまう。


しかも厄介なことに回復が効かない。回復を阻害する何かの力が働いているようだ。


逃げ回って扇が消えたところでようやく魔法を使う余裕ができた。『身体強化』と『韋駄天』、念のため『鎮痛』をかける。『思考加速』は酷い頭痛がするので使わない。


今の私は手甲がない上に服も私が魔力で作ったものではないため非常に防御力が低い。一応手に魔力を纏わせてはいるが手甲には劣るし維持にも集中力と魔力の消費がいる。


「死ねっ」


斬りかかってきたので右手首を掴んで捻る。


「むっ」


「なんだと!?」


今の技は手首を捻って腕と肩の関節を極めて引き倒す技なのだが捻る前にメタトロンは自ら跳んで拘束を逃れてしまった。


この世界には同じか似たような技はないはずだ。危険を感じて跳んだのだとすればすさまじい勘だ。


だが慌てる必要はない。


『無明の檻』


自分を中心に広範囲に光のない監獄を作り出す闇魔法だ。『暗視』のおかげで私にははっきりと見えるがメタトロンは何も見えていないはずだ。


「そこかっ」


見えていないと思っていたのに。


なんと耳を澄ませて音を探り、気配を探知して私の急所を突いてきた。


「ぐふっ」


「死ねえ!」


ぐりぐりするな。


何とか心臓は避けたが胸を突かれてしまった。光の一切ない空間で動く相手の心臓を骨を避けて正確に突くとは・・・本当に人間か?


『無音』と『気配消去』を使う。


「無駄だぞ。いくら魔法で誤魔化しても多少の音や気配は漏れてしまう」


私の方をしっかりと見ながら笑うメタトロン。出血がひどいので早く戦いを終わらせたい。

あ、そうだ。


『閃光』


「ぐわっ!?」


暗闇からいきなり目を潰すほどの閃光が放たれた。


メタトロンは目を押さえて苦しんでいるが私も『暗視』のせいで光に敏感になっていたためダメージを受けた。

しかし完全に潰されたわけではないのでメタトロンの位置ははっきりと分かる。


『不死鳥天舞』


全身に炎を纏いメタトロンの傍で舞う。


すると私の動きに合わせて炎が爆発したりするのでメタトロンにかなりのダメージを与えられる。炎の脚で蹴ったり殴ったりと、火に耐性のない敵に対しては非常に有効だ。


「ああああああああ!!!」


メタトロンの全身が燃え絶叫しながらのたうち回る。殺すつもりはないのですぐに消火する。


それが間違いだった。


もう少し消火するのが遅くても問題はなかった。生きてさえいれば火傷は治せる。後遺症まで治すには魔力消費がかなり多い『完全回復』を使う必要があるが。


全身が爛れたメタトロンは私を包んでいる炎が消えたと同時に私の心臓を突いてきた。


俯せの状態から一瞬で起き上がり私の心臓を突く。『思考加速』があれば心臓は躱せたかもしれないがかけていなかったので躱せず心臓を貫かれてしまう。


どうやって一瞬で貫いたのか。いや、それを考える暇はない。


剣が引き抜かれ、血が噴き出す。


全身から力が抜けて地面が迫ってくる。


このまま死ぬのだろうか?不思議と恐怖はなかったが心配なことはある。

キャロルやアリアやリリアは今どうしているだろうか。私がいなくなって変なことになっていなければいいが。


地球でも思ったが、死ぬ直前は時間が経つのが遅い。『思考加速』を使っているわけでもないのにゆっくりと時間が流れている気がする。


走馬灯・・・竜に転生した時から今までのことが思い出される。


一説によると走馬灯は記憶の中から生き残る方法を探すためらしいが、そんなものあっただろうか。


・・・・・・あった。


この世界に転生したばかりの頃、使える魔法を確認した頃。


その中に生き残れるかもしれない魔法があった。


その魔法を使い、私の意識は途絶えた。

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