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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
七章 天空世界
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正面突破と暗殺

諸事情により更新ペースが落ちています。申し訳ございません。

「ベルちゃんいる?」


「・・・・・なに」



ベルフェゴールの部屋は無駄なものがないどころか最低限必要なものしかなかった。質素というより物寂しい。


部屋の奥に大きめのベッドがあり、布団の中から銀髪の幼い少年が眠そうな声で出てきた。


「わざわざ訪ねてきたのにお茶の一つもないの?」


「・・・お茶ならあるよ」


そう言っておそらく茶葉を投げてきた。いくら幼い少年と言えどトップに位置する悪魔の一人なので茶葉一つでもとんでもない凶器になる。あり得ない速さで茶葉がまっすぐ飛んできた。


アスモデウスは茶葉を受け止めると胸の谷間へ隠した。アリアやリリアが見れば怒るだろうな。


「何の用?」


気だるげで今すぐ眠りたいと言いたげな顔と声。


「ベルちゃんのおうちのこと。トラップが凶悪で多いし誰でも構わず作動するからどうにかしてほしいの」


「無理。要件はそれだけだねさようなら」


どんだけ話したくないんだ。嫌いというより早く寝たいという様子だった。


「ちょっとぉ」


「・・・すー・・・すー・・・」


「・・・」


何だったんだ。


アスモデウスに目でサインを送られたので部屋を調べる。


「空洞が多いな。この中に罠があるはずだ」


床、壁、天井を『空間探知』で調べるとかなりの空洞が見つかった。欠陥ではなくわざとだ。

アスモデウスがベルフェゴールを見張っているので調べられるものは調べておく。


巧妙に隠されていたり妨害されたりしたせいで詳しくは調べられなかったが、いくつかのことは分かった。


罠はすべてベルフェゴールがいるベッドから操作できるようになっており、一回限りの使い捨てではなく何度も使えるようにされていた。また、一つの罠に数種類の動作があるらしくどの罠が作動するかは分かっても何が来るかは分からない。


罠にかかったりゴーレムたちに見つかったりすると死ぬ。普通に死ぬ。

少し調べたがゴーレムたちはみんな繋がっており一体が異常を検知すると他のゴーレムたちにも伝わり、応援も呼べるため見つかると大量のゴーレムたちが来る。


ベルフェゴールもそうだが恐ろしいのは罠の多さとゴーレムたちだ。


調べられる物は調べ終わったので念のため『念話』で調べたことを伝えて帰還する。


神殿に着くとオートが迎えに来てくれてアスモデウスは作戦を練ると言って会議室へ行った。


-------------------------


数日後、シュタットやオートも含めた騎士たちが会議室に集まり会議を開くことになった。事前に参加者には私が撮った『録画』の映像を見せている。


「ベルちゃんへの襲撃だけど、作戦は大きく分けて二つよぉ」


そう言って黒板に『正面突破』と『暗殺』の二つをこの世界の文字で書いた。この世界でも『言語理解』は文字にも適応されるらしい。


「まずは正面突破。真正面から堂々と襲撃するの」


「馬鹿じゃねぇのか」


騎士の中の誰かが呟く、確かにこれだけではただの馬鹿な作戦だ。


「最後まで聞きなさぁい。正面突破の簡単な流れはこうよぉ」


・大人数でベルフェゴールの拠点を襲撃。

   ↓

・悪魔処理チーム、制圧チーム、襲撃チーム、脱出・帰還チームに分かれて襲撃する。

   ↓

・襲撃が終わったあと生存者を連れて帰還


とアスモデウスが黒板に書いて振り向く。


「悪魔処理チームはその名の通り騒ぎを聞いて来た悪魔の対応、制圧チームは拠点内の破壊やゴーレムの対応、襲撃チームはアスモデウスの討伐、脱出・帰還チームは脱出ルートの確保や乗り物の調達・運転の対応よぉ・何か質問は?」


「ある。脱出・帰還チームだけ明らかに安全だろ」


「安全じゃないわよぉ。彼らもそれぞれのチームに混じって戦って生存者を連れて脱出する役目があるわぁ。他に質問は・・・ないわね。じゃあ次は暗殺よぉ」


・数人がアスモデウスの側近として潜入

   ↓

・細工チームが罠解除や幻影、防音などの細工をして戦闘を隠す

   ↓

・脱出・帰還チームと共に帰る


暗殺の方がよさそうに見えるがそうでもない。


正面突破は大人数で挑むため悪魔やゴーレムの対応を任せることができ、私たちはベルフェゴールと集中して戦える。

しかし死者はかなり出るだろうし何が起こるか分からない、不確定要素が多すぎる。


暗殺は安全だが実際に戦う人数は限られるしアスモデウスが訪問した日に殺されたとバレればアスモデウスはもう内通者として使えなくなる。


難しいところだ。


「みんなの意見を聞くわぁ、まずはご主「シュラだ」


ご主人様はやめろと言ったはずだが。


「ああっ、そのごみを見る目がたまらない・・・!」


・・・。


ハアハア言い始めて説明をしなくなったので代わりに私が意見を聞くことになった。


「・・・私としては危険を承知で『正面突破』を選ぶ。暗殺だとアスモデウスに利用価値がなくなる可能性があるし時間がかかる。正面突破なら素早く実行できてそれぞれが集中して自分の役割を全うできると思うが、どうだ?」


「妾は暗殺じゃの。アスモデウスが裏切ったとバレたところで妾らには大してダメージはないからの。今までのように襲撃するだけじゃ」


「わたしも暗殺です。秘密裏に討伐した方がいいと思います」


「おれは正面突破だ。罠の解除に時間をかけるより破壊してどんどん進んでいった方がいい」


正面突破と暗殺のどちらにするかで議論したが、なかなか決まらなかったので多数決にしたら引き分けとなってしまった。


「アスモデウス」


いまだに頬を紅潮させてハアハアして妄想の世界にいるアスモデウスの顔を軽くはたいて現実に戻す。


しかしさらにハアハアし始めて、


「もっとぉ・・・」


とほざく。後でねだられたりしても面倒なので魔力を纏わせて全力ではたく。


スパアアアアァァン!


高い音が響き、目に見えない速さで真横へアスモデウスが吹っ飛んだ。


「さっさと現実に戻ってこい」


だが強すぎて思いきり壁にめり込んでしまい動かなくなった。


「濡れたぁ」


・・・聞かなかったことにしよう。


「・・・とりあえず下準備にかかる手間や実際の細かい流れを確認してもう一度話し合おう」


心なしか私を化け物のようにみんなが見ていたが気にしないでおく。


-------------------------


「まさかずっと決まらないとはな」


色々な視点から議論したりもしたのだが、誰一人として意見を曲げなかった。この世界の住人は折れるということを知らないのか。


ちなみにアスモデウスはいまだにめり込んでいる。


数日間議論した結果、作戦は『正面突破』ということになった。

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