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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
七章 天空世界
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《色欲》の悪魔 アスモデウス

「ピーピー」


声が聞こえる。まだ起きたばかりなので眠い。


重い頭を持ち上げて軽く振って眠気を飛ばす。


『どうした?』


エルクレアがいた。


「ピー」


『強くなりたい?まだ早い』


いくら竜でも幼体で小鳥サイズであれば弱い。最初から強いわけではない。

私は例外だが。


「ピュピュ」


『しかしだな・・・』


「ヒュ」


『・・・じゃあブレスは吐けるか?』


基本中の基本だ。息を吐くだけで出せる。


「ヒュー」


『フロストブレス・・・氷属性のようだな』


予想はできていたがあまりにも弱い。三センチほどしかないうえにせいぜい扇風機の弱い風程度の涼しさしか感じない。


『鍛えれば鍛えるほど強くなるわけではない。体の成長と共に強くなっていくものだ。それに戦場のことを理解しているか?』


「ピ?」


『分からないだろう。戦場は何でもありだ。奇襲から不意打ち、仲間割れでさえ立派な戦術だ。戦う者は皆たった一つの命を賭けている。己以上のものを護ろうとするのなら卑怯などない』


「ピ」


『殺せなければ殺される。卑怯と思えば殺される。戦場にルールなどない。お前に戦場は向いていない』


「ピピ!」


『・・・身を護る程度なら教えてやる』


人化は無理なので竜用の護身術を教える。護身術といっても逃げるためのものだが。

アクロバット飛行や急加速・急減速などを教え、飛行が上達するコツなども教えた。


私の周りで飛び回っているとオートが来た。


「おはようございます」


『おはよう』


「ピー!」


「エルクレア、何してるの?」


『逃げるための護身術を教えていた』


「まあ、ありがとうございます。エルクレア、ご飯だからおいで。シュラ様は神殿の者が食事を運んできますので」


オートは私のことをシュラ様と言うようになった。シュラでいいと言ったがシュラ様と言ってきかなかった。


オートと入れ違いで給仕係が来た。大きな皿の上に珍妙な果物?や肉などがある。

給仕係は礼をすると出ていった。


果物みたいなものを食べてみるが正直普通だった。歯ごたえはいいがそれ以外は普通である。

前世の品種改良がすごかったのかもしれない。


食べ終わってしばらくすると不意に禍々しい気配を感じた。


『誰だ』


「あらぁ、いいドラゴンがいるじゃなぁい」


見ると黒目黒髪で角と尻尾のある露出の多い服を着たどうみてもサキュバスにしか見えない美女悪魔がいた。妖艶な笑みを浮かべている。


『何の用だ』


「うふふ・・・その前にお姉さんといいことしなぁい?」


甘い匂いや声でいちいち妖しい動きをする悪魔。


『断る。私はやることがある』


「大丈夫よぉ。すぐに気持ちよくなるからぁ」


『気持ち悪いの間違いだろう。よくそんな恰好ができるな。見ていてこっちが恥ずかしい』


キャロルといい勝負だ。キャロルがこの悪魔のように詰め寄って来たら・・・考えるのはやめよう。


「きっ、気持ち悪い・・・」


何やらショックを受けている。


『エロいから誘惑できるとでも思っているのか?言っておくが私の精神は一応爺でお前は好みじゃない。男というのはな、ただ誘惑すればいいんじゃないんだ。相手は何を好み、どういう性格、態度がいいのかを見極めろ』


なんでこんなこと言ってるんだろう?いいこと言ってるように聞こえるかもしれないが言ってることは誘惑の仕方というとんでもない内容だ。


『それと悪魔だろう?悪魔がどれほど強いのかは知らんが、ここにいると面倒なことになるんじゃないか?』


「・・・フフフ・・・ここまで馬鹿にされたのは初めてだわぁ・・・痛めつけてじっくりと悲鳴や命乞いを聞いてから支配してあげる・・・・」


『やるのか?』


不穏な気配を感じたので戦いやすい人になり手甲をつける。


「死ねぇ!」


悪魔の手が巨大な爪になり斬り裂こうと振り下ろしてくる。


かなり大きいな・・・受け止めることも退くこともできなさそうだ。


ならば弾くまで。

タイミングを合わせて弾く。


「一撃目を防ぐのね・・・」



「『裂身爪・二連』!」


一撃目よりも強く重く速い攻撃。これは受けるしかないか。


「ぐっ!」


受け止めきれず手甲が壊れ、腕がちぎれ体まで深い傷を負った。


「アハハハハ!」


狂気的な笑い声をあげる悪魔。


「ここは細工しておいたわよぉ。外からは何も起きていないように見えるし、音も一切遮断してるわぁ。助けなんて来ないわよぉ」


『完全回復』で腕を再生し体の傷も治す。消費魔力量がかなり多いな。あまり使うべきではない。


「なっ!?」


動揺して目を見開く悪魔。目の前で致命傷を負った敵が一瞬で何事もなかったかのように回復したのだから驚くだろう。


手甲を壊されたので手を魔力で覆い、『身体強化』を使う。


「仕切り直しだ」


「・・・いいわねぇ・・・・いじめがいがあるわぁ」


顔面への突きは首を動かすだけで躱され、足払いをかければバク宙と同時に足で攻撃。体術もかなり使えるようだ。


「次はアタシの番よぉ」


急に体が重くなる。おそらく呪術か重力魔法だが、物理法則を捻じ曲げる魔法は行使が超高難度で使える者は数えるほどしかいないから呪術だろう。

かなり強力な呪術のようでなかなか解呪できない。


悪魔は私が動けないのを見るとニヤリと笑って柱を登り始めた。何をするかはもう分かる。


「『心潰し』」


プロレス技のムーンサルトプレス、日本名は月面水爆。

倒れた相手へ高い所から飛び降りて攻撃する技だ。


「取ったあ!」


悪魔の身体が目の前にくる。正確に私の心臓を狙って肘を出している。


・・・・しかし、悪魔は知らない。


私は重力魔法が使える。


つまり。


「うっ」


「はぁ!?」


重力の向きを変えて移動できる。体は動かないのでかなり無理して動いているため負荷がすごい。


悪魔の上に乗り動けなくする。


「がはっ!」


地面に亀裂ができたが傷一つつかないのはさすが悪魔といったところか。


呪術はようやく解けたので自由に動けるようになった。


悪魔のむき出しの腹に足を乗せて力を入れる。


「悪魔について聞かせてもらおうか」


「ふふ・・・言うわけ、ないじゃない」


「ほう」


足に力を加えた次の瞬間。


「あ、あああぁぁぁぁんっ!」


嬌声が響き渡った。


「!?」


「はぁ、はぁ・・・あ、足をどかしなさぁい」


妙に艶っぽい声。睨んでいるが視線も熱がこもっている気がする。


・・・。


「あ・・・ん」


ちょっと踏むと悪魔は顔を赤らめて熱い吐息を出している。まさか・・・。


「もっとぉ・・・」


・・・・・・開いてはいけない扉を開いてしまったようだ。


試しに力をさらに込めてみる。


「んんんん!あっ・・・あっ」


これは・・・これ以上やってはいけない。いろいろと不味い。具体的には下手するとR18指定されてしまう。


ビクッビクッと震えて恍惚の表情を浮かべる悪魔。こころなしか目がハートになっている気がする。


「ご主人様ぁ・・・」


念のため言っておくが私はノーマルである。精神は微妙だがSMの趣味は微塵もない。


「ああ、いいっ!その冷たい目がいい!」


どうしよう。


「・・・悪魔のことを教えろ」


「はいっ!アタシ達はぁ、下等生物の人間を支配するために来たのぉ。アタシはアスモデウスって言う名前の大悪魔の一人よぉ。他の大悪魔はアタシを入れて七人いるわぁ」


「・・・」


「アタシは《色欲》アスモデウス。あとは《暴食》ベルゼブブ、《強欲》マモン、《怠惰》ベルフェゴール、《嫉妬》レヴィアタン、《憤怒》サタン、そして《傲慢》ルシファーよぉ」


七大罪の悪魔そのままだ。細かいところは違いそうだが大まかなところは同じだろう。


「アタシの能力は相手を完全に支配することなのぉ。相手を屈服させればできるから便利なのよぉ。『催眠』『魅了』『洗脳』『忠誠』をいっぺんにかけて記憶も改竄できるからものすごく強固なのぉ」


「悪魔のトップは?」


「アタシ達がトップよぉ」


こいつがトップの一人か。戦闘よりは調略に向いている能力のアスモデウスですらなかなかの強さだから他の悪魔はかなり強いだろう。


「ご主人様ぁ、御褒美ぃ~」


「・・・」


おもちゃをねだるような純粋な目で見つめてくる。


・・・・・・。


ぐりぐりぐりぐりぐりぐり。


「あああっんんっはあ、はあ、はあ・・・ああああああああん!」


「・・・気持ち悪い」


「ああっいいその目がいい!濡れる!というか濡れた!」


最後にとんでもない下ネタを言ってきやがった。

余談ですが、七大罪や七美徳は様々な種類があり、その中で最も有名なカトリックの最近の七大罪は『遺伝子改造・人体実験・環境汚染・社会的不公正・貧困・過度な裕福さ・麻薬中毒』とされています。

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