ロリババア
いろいろと話して誤解を解き、彼女・・・オートの住む島に案内してもらえることになった。
茶色い竜、アークは相変わらず怯えながら威嚇してきていた。
『お前なんか主の魔法で一発だかんな!』
と言っているが全く痛くなかった。
ちょっと唸ると黙る。面白い。
「あ、見えてきました」
顔を前に戻すと本当に巨大な浮島があった。ラ〇ュタみたいだ。
上空から見ると普通の建物は少なく、籠城を目的とした作りになっている。また、迷宮のような入り組んだ通路も見える。
観察していると高射砲に似た兵器がこちらを向き、サイレンが響き渡った。
「待ちなさい!ドラゴンの主に無礼ですよ!」
ドラゴンの主ではないと言ったはずなのだが、こういった方が都合がよいらしい。
しかし聞こえているのかいないのか私だけでなくオートまで標的にしたのか高射砲の一部が向きを変える。
『誤解されてるんじゃないか?』
「そのようですね。私が邪竜に支配されたとでも思っているのでしょう」
『どうすれば誤解を解ける』
「おばば様ならどうにかしてくれるはずです」
そんな会話をしていると攻撃された。魔力を濃縮し高速で撃つ単純だがそれなりに強い攻撃だ。
翼で受けてみたが衝撃だけでダメージはない。こんなんで戦えるのだろうか。
今の攻撃が合図となったのか集まっていた騎竜兵が魔法を撃ってくる。基本的には私が転生した世界の魔法と同じのようだ。
少し違うのは私のように魔法の発動を一気にするのではなく事前に詠唱を済ませておき、魔法名を叫ぶことで発動するトリガー式が多い事か。
「いけえええ!巫女様のお目を覚まさせて差し上げるのだあああ!」
厳ついおっさんが何やら叫んでいる。巫女?
「わたし、騎竜隊団長兼巫女なんです。わたしは巫女だけが使える技を持っていますのでこうして軍に配属されているんです。あ、決してコネで団長になったわけではなく実力でなったんですよ」
『そうか。それより、軍は本当に強いのか?私からすればせいぜいマッサージ程度の強さにしか感じないが』
ああそこ、最近凝ってるんだ。もう少し強く当ててくれ。
「騎竜兵たちは軍でも精鋭です。隊長で少数精鋭、わたしのような団長クラスともなれば極撰精鋭ですよ。悪魔たちをこれまでに数えきれないほど倒してきたんですから。そんなことより、おばば様おそいなぁ」
『おばば様?』
「ドラゴニュートと呼ばれる種族でとんでもなく強いんです。おばば様なら話を聞いてくれるはず」
・・・・。
『来ないが』
「なら呼びますね」
オートは息を大きく吸うととんでもなく大きな声で叫んだ。
「ババアーーーーー!!!!!出てこいババアーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
ババア?おばば様ではないのか?
「なんじゃなんじゃ」
後ろから声がしたので見て見ると私の背中に幼女がいた。青い長い髪と琥珀色の瞳でまさに魔女といった格好をしている。
幼女なのにのじゃ口調・・・ロリババアというやつだろうか。
「失礼なことを考えるドラゴンじゃの」
『よく分かったな』
読まれたら読み返す。
『読心』を使う。
(妾の可愛い義娘が邪竜の眷属になってしまうとは)
『私は邪竜ではないぞ。それに支配もしていない。しようと思えばできるがするつもりはない』
「妾の考えていることが分かるのか?」
『心を読むのは簡単だ』
簡単とは言ったが相手が油断していなければ使えないどころか相手に気づかれてしまう。一見ずるそうに見えるがちゃんとデメリットもある。
「そうかい。少し試させてもらうぞい」
私に手を向けて何かを呟き、ゆっくりと目を開けた。
「ほう、異世界からの来訪者か。異世界は存在するとは思っていたが、まさか異世界からやってくるとはのお。面白そうじゃ」
『異世界の話が聞きたいのなら話すからまずは誤解を解いてくれ』
会話している間にも攻撃は続いている。アークがずっとギャアギャア騒いでいるので正直うるさい。
「約束じゃ。よし・・・皆の者、攻撃をやめい。このドラゴンは邪竜ではない。このドラゴンを調べさせてもらったが妾ですら勝てるかどうか怪しい。敵対よりも融和を選ぶべきじゃ」
立ち上がり大声で宣言する幼女。
兵士たちは動揺し、おばば様まで支配されたのではと言い出す者もいたがやがて落ち着き、全員が器用にドラゴンの上で平伏した。
「数々の御無礼、失礼いたしました。どうか私の首一つでご容赦ください」
オートと同じセリフを言ういかついおっさん。私は殺す気はないのに。
『気にするな。私の見た目のせいで誤解するのは仕方がない。詫びなら翼を休められる場所を提供してほしい』
ちょっと疲れが出てきたので陸で休みたい。
「ならば神殿はどうじゃ?神聖な気で満ちておるから居心地がいいぞい。ああそうじゃ、条件と言ってはなんじゃが、妾に協力してくれんかの?」
協力・・・悪魔のことか。
『意味もなく殺めるのは無理だが、奴らが攻めてきたのなら協力しよう』
「交渉成立じゃ。妾はシュタット。お主の名は?」
『人としての名前ならシュラだ』
「シュラか。ドラゴンの名前はないのか?」
『種族名としてヴィッツ・ヴェルナードがあるが私個人の竜の名はない』
「ならば妾がつけてやろう。そうじゃな・・・種族名から取ってヴィヴェルはどうじゃ?」
『いいとは思うが発音が難しいな』
「じゃあエヴォル」
『・・・今は名はなくともいい』
なぜか名付けはリリアにしてほしいと思った。なぜだろうか。
不思議に思いながらも浮島へと向かって行った。
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「どうじゃ?」
『最高だ』
神殿はところどころ崩れたり植物が生えたりしているが、逆に神秘的になっていた。神殿の中央で太陽の光に当たりながら丸くなって翼を休めている。
「満足してもらえて何よりじゃ。さて、異世界のことを聞かせてもらおうかの。妾はこう見えて研究者なのじゃ」
ノートと筆を取り出し、様々なことを聞かれた。
「お主の世界では魔法は一気に発動するのか?」
『そうだ。選択、想像、構築、充填、発動を一気にやる。ほとんどの者は詠唱をするが私は無駄だと思っている。イメージがしっかりできていれば発動するし、現象の原理を理解していれば威力も高くなる。例えば炎なら私は可燃性のガスをイメージしてガスに着火して放つイメージだ』
「ガス?」
『空気だ。大気の中には目に見えないほど小さな原子や分子が漂っていて、原子の組み合わせで様々に変化する。酸素、窒素、水素などだ』
「???」
だめだ、前世のように科学化学が発展していないから理解してもらえない。
理解してもらうために魔力でモニター擬きを作り、絵と共に説明した。
シュタットは目を輝かせながら熱心にメモを取り、いくつも質問してきた。
私も楽しくなり、いつしか科学化学だけでなく数学や哲学の議論までし始めた。
「なんでいじめが起きるんじゃ?」
『人が弱いからだ。弱い者は自分より弱い者がいなければ落ち着かない。だからいじめで自分より弱い立場の者を作り優越感に浸るんだ。愚かとしか言いようがないな』
「世の中のすべての知恵を一言にまとめると?」
『私たちは産まれ、生き、そして死ぬ』
「なんで生き物は死ぬんじゃ?」
『悠久の時ではなく限られた時間の中で生きることで自らの命を燃やし、輝けるからだ。私は人が一生をかけて造った作品が好きだ。自らのすべてをかけたり、夢を追いかけている間が最高の幸せであり輝くからな』
「面白いのぉ」
気が付くともう夜だった。よほど熱中していたらしい。
「こんなに楽しい時間を過ごしたのは初めてじゃ。明日もまたいろいろと話したい」
『私もだ。誰かと議論するのは楽しい』
シュタットが神殿から出ていき、私は眠りについた。




