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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
六章 束の間の平穏
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アレルギー

肝試しが終わって夜食の時間の時に事件は起きた。


ホテルのメニューは海の幸をふんだんに使った海鮮料理だ。


海鮮料理には甲殻類も含まれており、アレルゲンの一種である。


もう何が起きたか分かっただろう。


馬鹿な教師が甲殻類アレルギーを持つ生徒に海老を無理矢理食べさせた。

何が起きたか思い返そう。


-------------------------


化粧を落として真っ黒になり、生徒やホテルの従業員にヤクザと間違われ、いまだに私を見るなり逃げてしまうキャロルを見ながら夜食の会場へ向かった。


今回はビュッフェ形式ではなく予め机の上に料理が置かれていた。アレルギーの生徒はちゃんと別の食材で代替しているため問題はなかった。


ところが食べ始めてしばらくすると馬鹿な中年女性の教師が、


「なによこれ!また海老が入っていないじゃない!」


と言い出した。


しかしすぐに近くの生徒が


「甲殻類アレルギーで海老が食べられないんです。だから別の食材があるんです」


と説明していたが、教師は「アレルギーは甘え」などとほざいて無理矢理食べさせようとした。


最初はすぐに引き下がったのだが、しばらくするとかまぼこやスープを持ってきて、


「これなら大丈夫でしょ」


と言っていたがアレルギーは加工しても意味がないし、特に海老アレルギーならどうしようもない。海老のアレルゲンは過熱してもなくならないためだ。


「すいません、海老が含まれるものや出汁すら食べられません」


アレルギーを持つ生徒がそう拒否すると、


「まだ好き嫌いがあるの?アレルギーなんてあるわけないじゃない!甘えよ甘え!食べないから貧弱な体のままなのよ!食べなさい」


と逆ギレしてまた食べさせようとした。


「おいおい、あいつ教師のくせにアレルギーを理解してないのか」


「研修の時に教えられたはずですよね」


「シュラはアレルギーを理解してるか?」


「してるさ。『食べたくない』ではなく『食べてはならない』だろう?しかしこのままでは危険だ」


危険と感じたので立ち上がって注意しようとしたが遅かった。


既に海老を食べさせられていた。


「んー!」


「ほら、食べれるじゃない。アレルギーなんて・・・」


言い終わる前に生徒が倒れて細かく震え始めた。体中に発疹ができている。


「アナフィラキシーだ!」


私が叫ぶと食堂の外で待機していた従業員がようやく気付いて倒れている生徒を見て顔を青ざめ、どこかへ走り去った。キャロルも従業員についていった。


すぐに生徒に駆け寄る。周りの生徒は呆然としており、教師に至っては、


「そんな演技をしても騙されませんよ。もう、食べたくないからってそんな演技をするなんて」


と最悪なことを言っていたが医学があまり進歩していないこの世界ではアレルギーのことを理解していない生徒が多いが、教師が理解していないのはどう考えてもおかしい。


海老アレルギーにはエピペン注射だがそんなものない。

軽度のアレルギー症状なら吐かせればいいが、重度だと呼吸困難や意識不明になるため下手に吐かせられない。


オスローたちもやってきたがどう対処すればいいのか分からないようで戸惑っている。

しかしすぐに対処しなければ生徒が死んでしまう。


効くかどうかは分からないが『毒分解』と『水中呼吸』をかけている。


前世なら絶対にやってはいけないだろうがバケツを用意させて状態異常の魔法をかけ、生徒の口に指を突っ込み吐かせる。

気管支が狭まっているため窒息してしまいそうだがやらないよりはマシだろう。


回復魔法をかけ続けながら吐かせる。かなり苦しそうだ。


吐いている間、オスローとハル教授は馬鹿教師と口論をし、クリア教授は目に涙を溜めながら回復魔と解毒の魔法をかけ続けている。


「下剤と鎮静剤、それと飲み水です!」


従業員とキャロル、それにホテルの救護班が来た。


後は救護班に任せて近くの病院から医師が来るのを待つ。医師と言っても回復魔法のスペシャリストと薬師だが。


生徒は運ばれていったが、生徒全員が呆然としていた。

みんな料理が残っていたが、食べる者は誰もいなかった。


-------------------------


昨日あんなことがあったので臨海学校は中止となった。


来たときと同じように馬車に乗って護衛がつく。アナフィラキシーを起こした生徒はなんとか一命をとりとめ、慎重に運ぶなら移動してよい状態になった。

もちろん問題の教師と生徒は離されているし護衛も厳重になっている。


あんなことがあったのに自分の罪を認めないのはある意味すごいと思う。

問題の教師は学院に帰ったあと軟禁されて前世で言う教育委員会で審査されるが、最低でも研修からやり直しだろう。


私たちは当事者として学院と保護者への説明義務がある。


学院に着くと生徒は解散、アナフィラキシーの生徒に直接関わった生徒は学院長室に呼び出された。それ以外の教師は臨海学校の出来事を報告する。


「二日目の夜にバッカ先生が原因でアナフィラキシーを起こしたと聞きましたが」


あの問題の教師はバッカという名前らしい。名前の通り馬鹿なようだ。


学院長は両肘を机に着き手を組んで口元を隠している。


「止められなかったのですか?」


「・・・はい、止めるのが遅すぎたようです。もっと早ければアナフィラキシーを起こすことはなかったでしょう」


「あまりシュラを責めないでいただきたい。シュラはアナフィラキシー症状が出たとき真っ先に対応していた。後から聞いたが、シュラが無理矢理吐かせていなければ助からなかったと救護班から聞いた」


「そうです。シュラ先生は魔法も使って助けようとしていました」


「そうですか・・・確かにシュラ先生が対応していなければ生徒は死んでしまいましたからね。感謝します。大切な生徒の命を救ってくださり、ありがとうございました」


立ち上がり、頭をさげる学院長。

ちゃんと感謝するときは感謝できる人のようだ。


前世のクソ上司は感謝どころか嫌味しか言わなかったな。


「頭をあげてください。教師として当然のことをしたまでです」


「立派な人ですね」


当たり前のことだと思うが。

死が常に隣り合わせで、誰かを見捨てなければ生き残れないことがよくある世界だから価値観が違うのかもしれない。


「問題のバッカ先生は厳格な審査をしてしかるべき対応をさせていただきます。わざわざご苦労様でした。保護者や理事長へ説明するときもよろしくお願いします」


「ん?俺たちも理事長・・・リリア女王に会わないといけないのか?」


「アナフィラキシーを起こした生徒が侯爵の子でして、貴族の事情などでかなり厄介なことになっているのです。安心してください、直接会って説明するだけですから」


「会うだけでも恐れ多いです」


私は何度も会っているし、何なら意外な一面も知っているので緊張しない。


しかしやはり女王なようで一般人からすればかなり緊張するようだ。


貴族ね・・・発狂して喚き散らさなければいいが。いくら良い貴族でも子供のこととなれば発狂してしまうだろう。

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