表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
五章 サディルス魔国
77/121

新しい問題

少し寝過ごしたようだ。体感で今は朝の九時ぐらいだろう。


エルラのことが気になったので王都へ行こうとすると、


「うう・・・ぐすっ・・・」


すすり泣く声が聞こえた。


声的に孫だろう。


『どうした?』


「シュラ・・・」


振り向くとアリアも静かに泣いていた。何があったんだ。


「ごめんなさい・・・私たちが不甲斐ないせいで操られて師匠を殺そうとしました・・・」


『ああ、そのことは忘れろ。私にも原因があったからな。だから泣くな』


「でも・・・」


このままではずっと泣きそうなので人になって二人の頭をなでる。倒れた獣耳が気持ちいい。


前世では孫が落ち込んだり泣いていた時はこうやって頭をなでていた。


「いいから泣くな。全員無事だし、元凶も捕まった。泣いてばかりだと体に悪いぞ。それに泣き顔も可愛いが私は笑顔の方が好きだぞ」


「・・・」


「・・・・無自覚タラシ」


孫にひどいことを言われてしまった。タラシ?どこがだろうか?

私はただ慰めているだけなのだが。


しかし二人とも泣き止まない。どうしようか。

あ、そうだ。

二人の獣耳を触ってみよう。


しゅくしゅく。


「ひゃっ!?」


「く、くすぐったいです!や、やめ・・・んっ」


「ほら、無理矢理でもいいから笑え」


敏感なようなのでくすぐってみる。


「んん・・・!」


しばらく続けたがなぜか我慢していた。二人とも顔が真っ赤だ。息でも止めていたのだろうか。


「み、耳に触るのはマナー違反です・・・」


「そうなのか?」


「敏感だもん」


笑わせるのは難しそうだ。


なら美味い物を用意しよう。


「ちょっと待ってろ」


『転移』で王都に行き、材料と道具を買って住処へ戻る。


「なにそれ?」


「すぐに分かる」


道具を『念動』で動かし材料を刻んで混ぜ合わせる。


出来上がったのはクリームシチュー。皿に分けて二人に渡す。


「これって・・・」


「なんですかこれ?」


「食えば分かる」


何か落ち込んだ時には美味いものが一番だ。


『辛くなったら飯を食え』と前世の友がよく言って私が落ち込んだ時に居酒屋に連れて行ったりしてくれた。


「優しい味です・・・」


「よくシュラが作ってくれたなぁ」


三人で会話をしながらゆっくり食べ、すべてなくなるころには全員笑顔だった。


「ほら、何かあったら美味いものが一番だ」


「そうだねぇ」


「美味しかったです。また作ってください。それで今日の予定はなんですか?」


「とりあえずギルドに行ってエルラの確認、それと学院への報告とアリアの修行だな」


「師匠・・・」


アリアにもう二度とあんな思いをさせない。


「まずは約束を・・・と言いたいところだが、すでに奥義を使えるから約束が果たせないな」


「じゃあ秘義を教えてください」


「秘義は私が認めたらだと言っただろう。そうだな、Sランクになることが前提だな。修行すればSランクになれるかもしれない。さて、まずはギルドだ」


いつものように竜になって二人を乗せて王国へ向かう。


-------------------------


「シュラさん、ギルドマスターがお呼びです」


入るとすぐに受付にそう言われた。予想はつく。


「分かった」


返事をしてギルドマスターの部屋へ向かう。


「来たな、《Sランク殺し》シュラ」


「なんだその二つ名は」


「あんたが短期間に二人のSランクを殺したからだよ。エルラは自首して罪を認めてるから死刑は確定だろうよ。ああ、すでに《Sランク殺し》の二つ名はすでに冒険者やギルドで広まってるぞ」


「最初の《調律者》が一番いいのだが。《惨劇を齎す者》と《Sランク殺し》が広まっては私がサイコパスにされてしまう」


「Sランクは全員ある意味サイコだろ」


「ひどいな」


彼らはサイコではない。個人主義なだけだ。


「それであんたを呼んだ理由だが、総ギルドマスターから苦情が来た。Sランクを一人失うだけでも大損害なのに二人も失ったら損害どころの話じゃなくなるんだ。だからお前が責任を持って補填しろ」


「無理言うな」


Sランクがそう簡単に生まれるわけがない。


候補はいるが、身内と弟子で何か問題になったりしないだろうか。


「とにかく、早くSランク冒険者を育て上げろ」


「期限はあるか?あったとして、間に合わなかったらどうする?」


「あんたの悪口を広める」


「子供か」


陰湿だな。


「一応候補は二人いるが、一人が私の弟子だが構わないか?」


「なに言ってんだ?冒険者は実力主義だから細かいことは気にしないぞ」


「分かった」


修行に孫も巻き込もう。


-------------------------


学院の報告が終わり、森の広場で修行をする。


学院の施設が破壊されていたが、きっと異世界人の彼らがやったのだろう。私は関係ない。


アリアの間違いを指摘したりアドバイスをしたり魔力を操作する練習をさせる。


終わったら私との模擬戦、休憩を挟んで魔物との実戦。狩った魔物はギルドで売って依頼をこなしたりする。


孫は・・・一人でやらせている。私に刀や居合のことを聞かれてもまったく分からない。一応模擬戦の相手はしているが。


-------------------------


翌日、ようやく学院に復帰できた。


エルラの件は知る必要がある者にのみ教えた。


そして異世界人の彼らだが、完全に問題児だった。


「先生、また壊しちゃいました・・・」


「お、俺は悪くねぇ!的が脆すぎるんだ!」


「あ、あの・・・誰も僕の相手をしてくれません・・・・」


「回復魔法がすごいからっていい気になるなっていつも言われてうんざりよ。どうにかできないの?」


魔道具がなければ施設は壊すわ道具は壊すわ孤立するわで大変だった。


全力の彼らとまともにやりあえるのは私だけなのだが、彼らがもう少し実力をつければ私でも勝てなくなる。


もうどうしようもないのだが、退学はできないしこの世界に家族はいないし冒険者になるにはまだ精神が未熟。

さまざまな点で問題児だった。


「おいおい、魔道具無くしたらもうすでにSランクの実力あるんじゃないのか?」


「強者は騎士団としてはうれしいのですが、年齢や精神の未熟さ、そして常識外れの強さを持っているため騎士団での不協和音の原因になりそうです・・・」


「このことが国の上層部に知られたら政治や軍事利用しようとする輩が絶対に現れる」


本当にどうしよう。


異世界人の彼ら、Sランクの件、そしてリリアからの報酬に悩み事。


頭が痛すぎる。


「ハルにもっと強力な力封じの魔道具の開発を頼んでおこう」


異世界人の彼らの件はこの意見でまとまった。


Sランクの件も時間をかければ解決できる。


今一番考えなければならないのはリリアの報酬か。リリアの権威が失墜するのは避けたい。


学院の授業が終わり、修行も終わった後リリアの元を訪ねた。


「・・・うふふ」


また人形を抱いてるのか。


「入るぞ」


「ひゃあっ!?ち、ちょっと待ってください・・・いいですよ」


執務室へ入るとまた人形が増えていた。


「この調子だと私の人形で執務室が埋まりそうだな」


「え、えっと・・・」


「趣味なのかもしれんが、私の人形だけ増えるのもあれだな。仕事はちゃんとやっているのか?」


「や、やってますよ・・・それで報酬の件ですが」


「私もそのことで相談しに来た」


「問題の張本人に相談されても・・・」


問題の張本人と言わないでほしい。私からすればこんな面倒なことを持ち込んだリリアが問題の張本人だ。


「竜様、いい加減に欲をだしてください」


「静かに暮らしたい」


「報酬にならないじゃないですか・・・貴族になってくださいよぉ」


リリアがそう言いながら机にもたれかかる。


「おねだりをする孫に見えてきた」


「私は孫ではありません!一人の女です!」


「?」


「・・・はぁ、すぐに決めてくれないと私が薄情者だと上層部から非難されます」


「形だけの爵位とかはないのか?」


「・・・・それです!新しく爵位を作ればいいんです!」


できるのだろうか。


「次の会議で特別な爵位を提案します。それなら面子を保てます」


「面倒なことにならないようにな」


「分かってますよ」


後日、私に公爵と同じ爵位の『竜爵』という爵位が与えられた。公爵と同等って、面倒な予感しかしないのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ