救出と帰国
「私がお前を殺せばいいと思ってるの!?そんなのお前のただの自己満足じゃない!放置してたからって理由で死を選んで、逃げたのはお前の方じゃない!」
「・・・」
『おや?洗脳が解けていますね?リスクを冒してまでかけた超強力な洗脳があっさり解けるとは。おそらく自らの意思で忠誠を誓っていると思わせていただけで記憶まで改竄しなかったのが原因ですかねぇ。いくら強力な洗脳でも自分自身に何らかの疑問を持つとすぐに解けてしまいますから』
「つまりどういうことだ?」
『何かのスイッチで思い出か何かが蘇って疑問が生まれたのかと』
「たぶん分かった気がする」
「私の知ってる師匠はそんなんじゃない!いつも自信にあふれていて、弱気になることなんてなかった!私が道を間違えそうになったら正してくれた!だから・・・!」
アリアが腕を下ろす。
「昔みたいに・・・道を踏み外した私を叱って元に戻る手助けをしてよ・・・」
言われて思い出す。
最初の頃はちょっと力がついたら逃げ出して奴隷商を殺そうとしてたからな。そのたびに私は叱っていた気がする。
力の使い方を説明する私にうんざりしながらもアリアはいつもしっかりと聞いていたな。
「・・・・すまんな」
『ヒヒヒ、涙ぐましい物を見せてもらいました。お望み通りアリアの洗脳を完全に解いてあげましょう』
アリアが糸の切れた人形のように倒れかけるが支える。
『いやあ、思わず涙が出てきちゃいましたよ・・・・おかしさで』
「どういうことだ?・・・・ああ、そういうことか」
ちょっと考えたらすぐに分かった。
彼は解放するとは言っても『施設から』解放するのではなく『支配から』解放すると言っていた。
つまり約束は果たしたので口封じのためにここで私たちを殺害するつもりだろう。
『君のような勘のいいガキは嫌いだよ』
「ガキではないのだが。私は中身は爺だぞ」
『君のような勘のいい爺は嫌いだよ』
言い直すのか。わざわざ言い直す必要はないだろうに。
『あなたの予想通り口封じをします。戦うもよし、逃げるもよしです。どうぞご自由に』
『空間探知』『気配探知』発動。
エルラの居場所と施設の形は・・・多少暴れても問題なさそうだ。
『いでよ、追跡者!さて、いつまで耐えられますかねぇ』
出てきたのは緑色の気持ち悪い化け物だ。
カサカサ動くので気持ち悪い。
化け物は私を見ると一気に距離を詰めてきた。
アリアを抱えてギリギリで避ける。化け物が私の後ろにあった魔鋼の格子を噛み砕いた。噛まれたら終わりだな。
化け物が出てきたドアを力任せに蹴破り、エレベーターを作動させる。
二階に着くと同時に化け物が壁を突き破って進路を塞ぎ、掴みかかってきた。前へ跳んでかわし、近くにあった薬品入り瓶を投げつける。
「グギャアアアアアァァァァ!?」
瓶が割れるとどす黒い煙が現れて化け物を覆いつくし、異臭が漂ってきた。何の薬品だこれ。
実験室を駆け抜け、サーバールームのような広いホールへ出た。
入ると同時に後ろから全身が爛れて肥大化したさらに気持ち悪くなった化け物が出てきた。
完全にバイオ〇ザードだ。
逃げ回り、魔力が貯蔵されているタンクを見つけたので化け物がタンクの傍を通ると同時にタンクを魔力弾で撃って爆発させる。
化け物が吹き飛び動かなくなる。
この隙に次の部屋へと向かうエレベーターに乗り、魔道具だらけの部屋を駆け抜けて受付まで来て三重になった分厚い扉を魔法の超高温の炎で焼き切り、蹴破る。
「なっ!」
エルラがいた。
「チェックメイトだ」
「ネメ〇スはどうした!?」
名前まで完全にバイオハザー〇だ。
「死んではないだろうが魔力タンクの爆発で伸びてると思うぞ。さて、『拘束』」
エルラは足掻きもせずにあっさりと捕まった。
「意外だな。発明品で抵抗してくると思ったが」
「大切な発明品をこの程度で使いませんよ」
「だが捕まっては元も子もないだろう」
「私にとって発明品は自分の子供と同じです。子供たちが活躍する場はやはり大舞台にしたいという思いがあるんです」
よくわからないな。
とりあえず『集団転移』の魔法を構築し、化け物が来る前に施設から脱出した。
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アリアとエルラを頑張って背中に乗せて夜空を飛んでいる。
その間、ずっとエルラが発明品のことを話していたのでうるさかった。
「それにしてもまさかあなたの本性が竜だとは予想外でした。あなたと初めて出会った時から予感はしていましたが、竜はさすがに予想外です」
『お前もう死刑がほぼ確定してるのに余裕だな』
エルラは一応王国に所属しているのでギルドに引き渡した後王国の法で裁かれる。
もう外患援助と外患準備は確定したようなものだし、調べればいろいろと罪が明るみになるはずだ。最初の二つだけでもかなりの重罪なのに、他の罪も有罪になったら良くて無期懲役だろう。
「そうですねぇ。もっともっと知りたいことがたくさんありましたが、不思議と心は安らかです。おそらく心のどこかで誰かに止めてほしいと思っていたのでしょう。小さい頃の私の思い描いた研究者というのは世界の役に立つものを発見・開発する者でしたから。昔の私が今の私を見ればきっと絶望するでしょうね」
『・・・その情熱を傾ける分野が違えば歴史に名を遺す偉大な研究者になれただろうに。あれほどの化け物を造る技術があったのなら、世界の役に立つアイテムも作れたはずだ』
「そんな風に言われたのは初めてです。今までは疎まれ、馬鹿にされ、蔑まれるだけでしたから。・・・あなたのような人が私の傍にいれば、私はもっとまともな人間だったでしょうね」
『なぜそう思う?』
「洗脳する前にアリアがあなたのことを話していたのをを聞いていましたが、アリアの言葉からはあなたに対する絶大な信頼がありましたよ。『師匠なら大丈夫』『師匠なら私たちを助けてくれる』『師匠なら・・・』って。人の感情に敏感な私にはすぐに分かりました。私の洗脳にも苦しんでもかなり長い間抵抗していましたよ。キャロルも同様でした」
『・・・そうか』
「洗脳した後も会話の端々からあなたのことを尊敬していることが分かりましたよ。きっと心の奥底でもがいていたんじゃないでしょうか。私も実験として私自身に洗脳を施しましたが、本当の自分の意識が消えることはありませんでした」
『それならなぜ水、キャロルの記憶が消えていた?』
「洗脳の後遺症かと。大抵の場合は洗脳が解けた後ひどい頭痛と記憶の欠損がありますが時間が経つと治りますよ・・・おや、もう王都ですね」
いつの間にか王都についていたようだ。
いつもの森へ入り頑張ってアリアを下ろして人化する。エルラがアリアを触るのは何か嫌だ。
アリアを抱えてエルラをギルドへ連れて行く。時間的には黎明だが、ギルドはほぼ二十四時間営業なので入れる。
「すー・・・すー・・・」
受付嬢が寝ている。この時間では仕方ないだろう。
「おい」
「すー・・・はえ?」
「犯罪者だ」
「犯罪者はぁ、兵士のところ・・・・って、シュラさんにエルラさん!?ななな何の御用ですか!?」
そんなに動揺しなくても。
「犯罪者って・・・そのおんぶしてる女の子ですか?」
「違う。犯罪者はエルラだ。罪は分かっていることだけで外患援助と外患準備だ」
「ええ、他にも殺人罪とかスパイ罪もあります」
「はい?」
「そういうことだ」
『拘束』でさらに縛って放置する。
「ちょ、ちょっとーーーーー!」
何か聞こえたが無視する。
竜になって住処へ戻ると孫は寝ていた。アリアも寝かせて二人に毛布をかけ、私も丸くなって眠った。




