始業式と異世界人と不安
会議をしてしばらく経ち、学院の始業式の日が来た。季節はまだ真夏で生徒や教師たちは汗をかいて苦しんでいる。
風の魔法で自分を冷やすことが出来る生徒が周りから睨まれるのもいつものことだ。
長い始業式が終わりかけたところで異世界人の彼らの紹介がされた。
「・・・では新学期から同じ学び舎の良きライバルとなる外国から来た編入生を紹介しよう。君たちから見て左からタキヤマさん、キリヤマ君、クウヤ君、テンドウ君だ。彼らは全員優秀な成績で編入したからいろいろと教えてもらうといい」
彼らが異世界人だということは知る必要のある教師にのみ教えており、徹底した緘口令が敷かれている。異世界人だとバレたら面倒事にしかならないからだ。
自己紹介が終わり、異世界人の彼らは私たちの所へ来た。
「話ってなによ?」
「学院内では敬語にしてくれ。誤解される可能性がある。それで話だが、君たちは学院から正式に危険人物に認定された」
危険人物というと彼らは意味が分からないといった顔をした。
「きっかけは編入試験の実技試験だ。一回で試験会場を破壊したのだから下手をすれば町に甚大な被害を与えるという事になった。だから今後は君たちの力を抑える魔道具を常につけてもらうことになる」
「待ってくださいよ、僕達はそんなことしません!」
「うっかりでやってしまう可能性があるからな」
「つまり先生たちは俺たちを信用していないってことか」
「確かにそういうことになってしまいますが、これは被害を事前に防ぐためなんです。自分たちでも付け外しはできるようにしますから。あ、でもいつ付け外しをしたかは分かるようになっているので」
「・・・」
「不満のようだな。確かに私も人外の力があるが、力の使い方はしっかり理解しているつもりだ。なんなら私もその魔道具をつけようか?」
これなら文句はないだろう。私だけ優遇されているわけではないからな。
「いいえ、大丈夫です。つまりは僕達が力の使い方を学べばいいわけですね?」
「そういうことになるな。お前らは冒険科にくるんだろ?俺がみっちり扱いてやるよ!ガッハッハ!」
「オスロー、静かに笑え。周りから見られてる」
「でもあたしたちは魔術科よ?どうするの?」
「魔術科のクリア教授にも話は通してあるから大丈夫だ。話はこれだけだが、なにか聞きたいことはあるか?」
「あの、学院の年間スケジュール表ってありますか?」
年間スケジュール表?そんなことを聞かれるとは思っていなかったな。
「表はないから口頭説明になるがいいか?」
「構いません」
「今は大体七月だから臨海学校がもうすぐあるな。各学科でオリエンテーションを提供するらしい。八月は定期試験だ。筆記試験と実技試験、それに各学科ごとの試験の三つだ。赤点を取ったらひどい目に遭うから気をつけろ」
「ひどい目?」
「冒険科の場合はオスローに虐められる。魔術科の場合は精神をやられるらしい。それとよく知らないが魔道具科の場合は魔道具の実験体にされるらしいぞ」
聞いた話によると魔術科はクリア教授が泣き崩れ、自分を責めだすので罪悪感でいっぱいになり、不合格の生徒は早く泣き止ませようとして課題を達成しようと躍起になるのだとか。
課題を達成した後はクリア教授に抱きしめられるが、クリア教授の大きなアレのせいで窒息するらしく、ある意味恐ろしい罰だと言われている。
冒険科では強化訓練という名目でとにかく虐められる。一学期の頃に一度だけ見たが、あれはもう強化訓練というより単なる虐待だった。虐待された子は今ではかなりの実力者になったが。
魔道具科は・・・思い出したくもない。怪しい緑の光が実験室から溢れ、中からハル教授の不気味な笑い声と恐怖を心の底から湧き起こす声色で説教をし、中から生徒の断末魔の悲鳴が聞こえ続けていた。しばらく待ってドアが開くといつも通りのハル教授と「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」と呟き続けるげっそりとした生徒が出てきてどこかへ行ってしまった。その後、その生徒は見ていない。
「九月には文化祭。十一月は誕生祭がある」
「誕生祭?」
「この世界の誕生を祝う祭りだ。学院ではパーティーと他の学院との交流がある」
この学院は行事が多いような気がする。息抜きができるので良いと思う。
「他に質問は?」
「クラブはあるのか?」
「ない。専門科目がクラブのようなものだ」
「委員会はあるの?」
「生徒会を頂点に風紀委員、文化委員、図書委員、管理委員、保健委員、外部委員がある」
「外部委員?」
「他の学院との関係維持や交流の準備役を担当している。入るには学院から認められる必要がある。他に質問は?」
もう質問はなかったので今日は解散となった。
そう言えば孫を見ていないが、どうしたのだろうか?
-------------------------
学校が始まってしばらくしても孫が来ることはなかった。
アリアも出席しておらず、だんだんと不安になってきた。
「おい、恋人はどうした?」
オスローが声をかけてきた。
「恋人?」
「とぼけるなよ、キャロルのことだ」
「・・・ああ、恋人ではないと言ったはずだが」
「隠すなよ。んで恋人はどうしたんだ」
言っていることは軽いが顔は真剣そのものだった。
「分からない。終業式にアリアと外国へ旅行しに行くと聞いたのが最後だ」
「おいおい、何かあったんじゃないのか?」
「その可能性は大いにある」
冷静に取り繕っているが内心はかなり不安に思っている。
孫とアリアがいない。孫はAランク冒険者、アリアもCランク冒険者だが一対一ならBランクほどはあると思っている。
その二人が何かに巻き込まれた。
しかし何にどう巻き込まれ、どこにいるのかすら分からない。
「行ってこい。学院には俺から話しておく」
「いいのか?」
「仲間だろ。仲間がピンチかもしれないのに見捨てられるわけないだろ」
「・・・ありがとう」
着替えて武器の確認をしてから学院から飛び出す。
まずはギルドだ。
「すまない、キャロルかアリアという名の冒険者の依頼履歴を確認したい」
「どうしたんですかシュラさん?まずはカードを」
「これだ」
「少々お待ちください。ええと・・・二人とも二週間前に魔国への商人の護衛依頼が最後ですね」
「どの魔国だ?」
「サディルス魔国です。つい最近クーデターが起きた国ですね」
「ありがとう。それが知れれば十分だ」
カードを返却してもらい、門を出て竜になり魔国へ向かう。
孫とアリアが無事なことを願いながら。




