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竜は静かに暮らしたい  作者: イエス・ノー
五章 サディルス魔国
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クーデター

「おいあんた、どこの奴だ?」


暇つぶしに裏路地の酒場で地元の業者と話をしていると柄の悪い男が声をかけてきた。


「よそ者だ」


「よそ者が俺らのシノギを横取りすんじゃねぇ」


「横取り?何言ってんだ?お前らがシノギを取れないからって文句を言わないでくれ」


確かに私は地元の業者全員に挨拶したわけではない。だがそれで仕事のことに文句を言われても困る。


「うるせぇ!ふん、ちょっと教えてやる必要があるな」


面倒だ。

なんで裏社会の奴らは喧嘩っ早いんだ。


まあ、舐められるのも癪なので相手をしてやろう。


「教育が必要なのはお前の方だ」


立ち上がると周りの業者が騒ぎ出して賭け事を始めた。


「どっちが勝つ?」


「俺はあのガラの悪い奴に賭ける」


「なら俺はあの不気味な奴に三万だ」


オッズは6:4でガラの悪い男が勝つと考えられている。


地元では有名なのだろうか。


「死ねっ」


なにこれ。

腕だけの力で殴りかかってきた。遅い。


掌で簡単に止められた。


「なにっ!?」


「この程度で驚かれてもな・・・」


ただの喧嘩だ。

力任せに殴ったり蹴ったりするだけでは私には絶対に届かない。


フックは手首で防ぎ、前蹴りは掬い上げれば勝手に転ぶ。


「てめぇ・・」


「どうした?こんなもんか?」


「うるせぇ!」


怒りで攻撃が単調になっている。殴ってくるタイミングで手首を掴んで手前に引き、横にまわって後頭部を持って顔面を床に叩きつける。


ゴシャッと嫌な音が響き、床に蜘蛛の巣状にヒビが入った。


「・・・」


動かなくなった。私の勝ちだ。

ちゃんと回復させておく。


「いい暇つぶしになったよ。酒代と修繕費だ」


自分の机に金を置いて酒場を出る。

酒場を出るときの私を見る目は危険人物を見る目だった。


-------------------------


「シュラ様、旦那様がお呼びでございます。ご案内致しますので私についてきてください」


町を歩いているとダル侯爵の執事が声をかけてきた。

屋敷は三分ほどで着いた。


いつものように応接室に通されて血の入ったカップが出された。

出された飲み物を飲まない・断るは失礼だと思っているので毎回我慢して飲んでいるが、何が美味しいのか全く分からない。


少しずつ血を飲んでいるとダル侯爵が来た。


「急に呼び出してしまい申し訳ない。呼んだ理由は近々クーデターを決行するから君の役割を決めておきたかったのだ」


「そうか。私の役割だが、王の捕縛でいいか?」


「捕縛?」


「私は情報屋から仕入れた王城の抜け道を知っている。王城で仲間と兵隊が戦っている間に私は裏口から侵入して王を捕縛するつもりだ」


情報屋がどうやってこんな情報を仕入れているのかは謎だが金を払って不利にならなければ教えてもらえるため情報屋は比較的信用しやすい。

嘘の情報を伝えれば信用がなくなり金が手に入らなくなるためよっぽどのことがなければ嘘をつかない。


「ふむ・・・どれほどの時間を稼げばいい?」


「最低でも三十分だな。城内にも兵は残るだろうし、隠密行動をしていれば必ず時間がかかってしまう。だからできれば殺し合いではなく時間稼ぎを目的に動いてほしい」


「分かった。仲間に伝えておこう。決行は一週間後。仲間が集まるのに時間がかかるし最終確認をしなければならない」


「なら私は王城の下見でもしておこう」


血を飲み干して別れを告げて屋敷を出る。


無理して血を飲んだので気持ち悪い。


-------------------------


一週間経った。


屋敷には深夜のパーティーという名目で仲間の貴族と護衛として兵士が集まっている。


どう考えても貴族一人の護衛が多すぎるが下手に関わると危険なことになってしまうので敵対派の貴族も何も言えないらしい。貴族社会とは面倒なものだ。


私も貴族からいろいろと話を聞かれたり、暗部としてのスカウトを受けたりしたが丁寧に断っておいた。


「諸君」


二階から声が聞こえた。

血の入ったワイングラスを持ったダル侯爵が私たちを見下ろしている。


「いよいよ今夜、この国を変える戦いが始まる。覚悟はできたかとは聞かない。覚悟がなければこの場にはいないからな。我々で手遅れになる前に今の愚かな王を打倒し、人間たちとの共存を目指す国を創るのだ!」


貴族たちが手に持ったグラスをあげ、雄たけびをあげる。

私は陰で食事をしている。私は彼らとは完全に別行動なので、正直言って今すぐ王城へ行ってもいいのだが失礼にならないよう話を聞いてから行く。


「では今から先鋒部隊が王城で奇襲を仕掛ける!後続は王城で時間を稼げ!では出陣!」


仲間たちが屋敷から出ていき、王城へ向かう。

貴族も戦えるものは戦い、それ以外はサポートや回復役を務めるらしい。


私も皿に盛った料理を食べ終え、一人で王城へ向かう。


前世ほど灯りがなく空気も非常に澄んでいるので夜空がとても幻想的だ。たくさんの星々や心なしか前世より大きく見える満月に照らされながら王城の裏口へと到着した。


裏口は壁に見える隠し扉に体を押し当てることで動く。前世の忍者屋敷にあるやつだ。


全身黒マントに白い仮面というのは見る人によっては怖く感じるかもしれない。前世なら不審者で職質を受けている。


裏口から入ると最初に目に入るのは巨大な地下迷宮だ。


『暗視』のおかげではっきり見えるが、とんでもなく巨大な迷宮だ。この迷宮には特殊な魔法が施されており、塀の上を歩こうとすると罠が作動し殺されてしまう。

情報屋曰く迷ったら二度と出られず、罠に嵌って死ぬか飢え死にするかの二択、また正解の道を進んでいても罠があり足止めから即死級の罠、魔法陣から対応する魔法陣へと飛ばされる強制転移など、やりたい放題である。


私は道順と罠の書かれた地図を持っているが、本当にどうやってこんな情報を仕入れたのか謎である。ちなみにこの地図だけで四千万もした。


地図通りに迷宮を進んでいき、罠を解除したりわざと作動させて道を作ったり魔法陣で転送されたりと大変だったがようやく王城に侵入できた。


しかし出口は王の部屋に直接つながっているわけではなく兵士詰所にある。


私が迷宮を攻略している間に奇襲を仕掛けたらしく兵士の数は少ないが見回りをしている兵士が数人いる。詰所の出入り口は遠くにあり、兵士が見張っているので物陰に隠れながら兵士を気絶させていこう。


物陰に隠れながら誰にも見つからない位置にいて私に気が付いていない兵士を探す。

待っていると私の近くに来たので背後から口を首を抑えながら物陰に引きずり込む。


「・・・!」


抵抗していたがすぐにおとなしくなった。

『拘束』の魔法で手足を縛り、猿轡をかませる。


あとの兵士も同じように気絶させて縛り、出入り口の兵士は騒がれる前に正面から気絶させた。全員箱の中に入れておいたのですぐには見つかるまい。


兵士詰所を出て警戒している兵がいないか探す。ほとんどの兵が鎮圧に向かっているらしく全くいない。


正門の方から怒声や斬りあう音、魔法による爆発音が聞こえる。


兵士詰所は二階にあり王の部屋は五階にある。


兵士に見つからないよう、たまに気絶させたり騒がれる前に昏倒させ、やっと王の部屋の前に来た。流石に警備は厳重だが、どうという事はない。


『五里霧中』


王の部屋の前の広場一面を濃い霧で覆う。


「なんだ!?」


「警戒しろ!」


「敵のすがあぐっ!」


「どうした!?こたえぐあっ!」


「ぐえっ!」


「へぶしっ!」


鎮圧完了。


正面から堂々と王の部屋へ入る。


王の部屋は黒を基調としており落ち着いた雰囲気がある。王の姿を探すが一向に見つからない。


『気配探知』を使おうとすると魔力の流れを感じた。流れをたどっていき、隠し扉を開けて進むとコートのようなものを着た長身の男がいた。男は黄緑色の複雑で大きな魔法陣に両手をかざしている。


「くそっ!もうここまで来たか!」


「降参しろ。そうすれば痛めつけない」


「・・・・ふふふ」


「?」


「我が降参するとでも?するわけがない!降参するのは貴様の方だ!もうすぐ異世界からの召喚が終わる・・・!」


異世界からの召喚?何を呼び出すつもりだ。


「ハアァァァァァ!!!!」


魔法陣が強く輝きだし、放電のような現象が起こる。


「くっ!」


目を覆い、光が収まるのを待つ。


光が収まるとそこには・・・・・。


・・・なんということだ。


「フハハハハアッ!?」


とりあえず手刀で眠らせて拘束し、魔法陣に目を向ける。


そこには・・・・。


「・・・・・え?」


「あれ・・・」


「ここ・・・どこ・・・?」


「俺たち学校にいたよな・・・・?」


・・・制服を着た三人の男子高校生とハーフなのか金髪碧眼の女子高校生がいた。

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